宵崎家のキッチンにて。
ある日、まふゆの父が、宵崎奏の家に、やって来た。
「どうぞ、お茶です」
「あぁ、どうも。
いつも、お気遣い、ありがとうございます」
「…」
まふゆは、暗い表情をしていた。
「それで、最近はどう?
体調を崩していないか?」
と、まふゆの父は娘を心配していた。
「大丈夫だから…」
「そうか、よかった。
あぁ、そうだ。宵崎さんとまふゆの為に、
ショートケーキを買ってきたから、
食べないか?」
と、まふゆの父は、ショートケーキを入れた袋を、
机に置いた。
「ありがとう」
「まふゆ、思っていることがあったら、言って欲しい」
「え?」
「もちろん、無理にとは言わない。
だが、お父さんが、宵崎さんの家に行くのは、
まふゆの気持ちが知りたいからだ。
だから、何でも言って欲しい」
「本当は…」
「うん、なんだ?」
「ケーキ、食べたくないの」
「そうだったのか…すまない、勘違いしていた。
じゃあ、好きな食べ物は?
買ってきてあげるよ?」
「わからない」
「え?」
「前から、あんまり、味覚が無いんだ…
何を食べても、同じ味だと思うんだ」
「あ、味が…!?」
と、まふゆの父は困惑する。
「そうだったのか、いつからか?
もし、良かったら、教えて欲しい」
「それは…生まれた時から、ずっと」
「えっ?」
「まふゆ…」
「物心がついた時から、全然、味覚が無くて」
「そうだったのか…わかった。
今日は時間だから、お父さん、帰るね」
「うん」
「それでは、宵崎さん、まふゆをお願いします」
と、まふゆの父は帰っていった。
「まふゆ、大丈夫?」
「大丈夫。でも、少し疲れたから」
「わかった」
「うん」
まふゆが、部屋を出た後、奏は考え込んでいた。
「詩音くんなら、何を考えているんだろう…?」
と、奏が詩音のメールに、連絡した。
(詩音君、突然だけど、今後、どうしたいの?)
(そうだな…僕は、まふゆちゃんと、
奏ちゃんの支えになりたい)
(そうなんだね)
(何かあったの?良かったら、聞きたい)
(ううん、何でもない)
(そうなんだ…でも、無理はしないでね?)
チャットを終えて、奏は考え込む。
「わたしとまふゆを支えたいか…
うん、助けてくれる人もいるんだね」
と、奏は感じていた。
宵崎奏は、やっぱり、吉川詩音に会いに行く事になった。
「まふゆちゃんに会いに行けれないことが多くて、
ここ数日は、テストに追われていて…」
「詩音くん。また、日曜日に、まふゆに会いに行って欲しい。
きっと、まふゆが喜ぶから」
「わかった。ありがとう。奏ちゃん」
吉川詩音はテストに追われていたが、
どうにか、朝比奈まふゆに会うように、努力をした。