愛する恋人を救うには   作:アッシュクフォルダー

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第六話 消えたい

吉川詩音と宵崎奏は、朝比奈まふゆがいる、

誰もいないセカイへと、またやって来た。

 

「まふゆちゃん…」

 

「まふゆ…」

 

「なんで…また、来たの?

私は…一人にさせてって、言っていたよね?」

 

「わたしの曲を聴いてほしい、

だから、会いに来た」

 

「僕からもお願いだ、奏ちゃんの曲を聴いてほしい」

 

「曲…?」

 

「わたしの曲じゃ、足りなかったって、

まふゆは言っていた、

だから、もう一度、作ったの、

今度こそ、ちゃんと、まふゆを救える曲を」

 

「…もう必要ない」

 

「どうしてなんだ!?」

 

「まふゆ!」

 

「しつこい」

 

「まふゆ!僕たちは、まふゆちゃんを助けたい!

救いたいだけなのに!」

 

「そんな、バカみたいなことが通じると思っているの?

ミク、この二人を追い出して」

 

「…」

 

「ミク、聞こえないの?」

 

「聴いて」

 

「えっ?」

 

「この曲を…聴いて」

 

「ミクまで…なんなの?」

 

「お願い、まふゆ」

 

「僕からもお願い」

 

「…うるさい!私は一人で消えたいの!

もう放っておいて!」

 

「まふゆちゃん!」

 

「まふゆ!」

 

「詩音くんは、私の事、本当は何もわかっていない癖に!」

 

「そんな…」

 

「奏なんて、もう会いたくない!」

 

「まふゆ…」

 

「勝手に入って来ないでよ!」

 

「わかるよ…」

 

「…」

 

「まふゆ、私たちに言ったよね?

本当は消えたいんでしょって、

そうだよ、わたしも本当は消えたくて仕方がない」

 

「じゃあ、詩音くんは?」

 

「僕は…消えたい時もあったけど…

それでも、生きないとダメなんだ。

生きて、とにかく、生きないと、

親から授かった、この命を無駄にしたくない」

 

「詩音くんの、ばか、

わたしの命なんて、どうでもいい癖に」

 

「そんな訳ないだろ!

人の命を何だと思っているんだ!?」

 

「人間の命なんて、所詮は軽い、

不幸になるくらいだったら、死んだ方がいい」

 

「わたしは…自分の曲で、一番大切な人を、

不幸にしてしまった」

 

「え…?」

 

「わたし、作曲家だった、お父さんがいるの、

お父さんは、自分の曲で沢山の人を幸せにしたいって、

思って、ずっと頑張ってきた。

わたしはお父さんみたいになりたくて、

曲を作るようになった。

でも、私の曲がお父さんを追いつめた」

 

「奏ちゃんの曲が?」

 

「ずっと、苦しんでいた。

お父さんの作る曲は、古くて、受け入れられないって…

わたしは、それに気づかないで、

無理して笑っているお父さんに、

自分が作った曲を聴かせた。

それが、お父さんを余計に、追いつめた。

自分には、こんな曲は作れないって…思わせた。

お父さんは絶望して、もう曲は作れなくなった」

 

「それは…奏ちゃんのせいなの?」

 

「わたしのせいだよ、一番大切な音楽と、

未来を奪った。

だから、どうしようもないくらい、消えたくなった。

でも、お父さんは、わたしに曲を作り続けるんだよ、

って、言って、だから、わたしは…

誰かを救うために、曲を作らないといけないって、

思って、生きている。

どれだけ絶望しても、曲を作らないといけないって、

思うようになったんだ…」

 

「…」

 

「だから、わかるよ、まふゆの気持ち、

まふゆと少し違うかもしれないけど…」

 

「そう…奏は、お父さんに呪われているんだね」

 

「…」

 

「消せない呪いなんて、可哀想」

 

「まふゆ…奏に、今すぐ謝れ!

奏が、どれだけ苦労して曲を

作ったか、わからないのか!?

この子は、寝る間も惜しんで、

まふゆちゃんを救いたい一心で、

作ったんだ!だから…最初から決めつけるなよ…」

 

「詩音くんって、幼稚な人だね、

そうやって、感情に任せるから、困るんだよ」

 

「僕じゃ…まふゆちゃんを救えないのか…」

 

「うぅ…」

 

「でも、私は奏の呪いや、詩音くんのことなんて、

どうでもいい。

そんなものに、私を巻き込まないで、

奏は自分が救われたいから、

わたしを救おうとしているだけ、

必死になって、悪あがきをしているだけ、

そんなの、お互い、苦しいだけじゃない。

奏も本当は、消えたいんだから…」

 

「それは違う…」

 

「は?」

 

「まふゆに…わたしの曲が届いたって、知ったから、

だから、可能性が無くても、

わたしは、わたしの曲で、

まふゆを救いたい、絶対に救いたい。

例え、それが呪いだったとしても」

 

奏は呪いに立ち向かい、

まふゆを救おうと、自分の意思で語るのだった。

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