吉川詩音と宵崎奏は、朝比奈まふゆがいる、
誰もいないセカイへと、またやって来た。
「まふゆちゃん…」
「まふゆ…」
「なんで…また、来たの?
私は…一人にさせてって、言っていたよね?」
「わたしの曲を聴いてほしい、
だから、会いに来た」
「僕からもお願いだ、奏ちゃんの曲を聴いてほしい」
「曲…?」
「わたしの曲じゃ、足りなかったって、
まふゆは言っていた、
だから、もう一度、作ったの、
今度こそ、ちゃんと、まふゆを救える曲を」
「…もう必要ない」
「どうしてなんだ!?」
「まふゆ!」
「しつこい」
「まふゆ!僕たちは、まふゆちゃんを助けたい!
救いたいだけなのに!」
「そんな、バカみたいなことが通じると思っているの?
ミク、この二人を追い出して」
「…」
「ミク、聞こえないの?」
「聴いて」
「えっ?」
「この曲を…聴いて」
「ミクまで…なんなの?」
「お願い、まふゆ」
「僕からもお願い」
「…うるさい!私は一人で消えたいの!
もう放っておいて!」
「まふゆちゃん!」
「まふゆ!」
「詩音くんは、私の事、本当は何もわかっていない癖に!」
「そんな…」
「奏なんて、もう会いたくない!」
「まふゆ…」
「勝手に入って来ないでよ!」
「わかるよ…」
「…」
「まふゆ、私たちに言ったよね?
本当は消えたいんでしょって、
そうだよ、わたしも本当は消えたくて仕方がない」
「じゃあ、詩音くんは?」
「僕は…消えたい時もあったけど…
それでも、生きないとダメなんだ。
生きて、とにかく、生きないと、
親から授かった、この命を無駄にしたくない」
「詩音くんの、ばか、
わたしの命なんて、どうでもいい癖に」
「そんな訳ないだろ!
人の命を何だと思っているんだ!?」
「人間の命なんて、所詮は軽い、
不幸になるくらいだったら、死んだ方がいい」
「わたしは…自分の曲で、一番大切な人を、
不幸にしてしまった」
「え…?」
「わたし、作曲家だった、お父さんがいるの、
お父さんは、自分の曲で沢山の人を幸せにしたいって、
思って、ずっと頑張ってきた。
わたしはお父さんみたいになりたくて、
曲を作るようになった。
でも、私の曲がお父さんを追いつめた」
「奏ちゃんの曲が?」
「ずっと、苦しんでいた。
お父さんの作る曲は、古くて、受け入れられないって…
わたしは、それに気づかないで、
無理して笑っているお父さんに、
自分が作った曲を聴かせた。
それが、お父さんを余計に、追いつめた。
自分には、こんな曲は作れないって…思わせた。
お父さんは絶望して、もう曲は作れなくなった」
「それは…奏ちゃんのせいなの?」
「わたしのせいだよ、一番大切な音楽と、
未来を奪った。
だから、どうしようもないくらい、消えたくなった。
でも、お父さんは、わたしに曲を作り続けるんだよ、
って、言って、だから、わたしは…
誰かを救うために、曲を作らないといけないって、
思って、生きている。
どれだけ絶望しても、曲を作らないといけないって、
思うようになったんだ…」
「…」
「だから、わかるよ、まふゆの気持ち、
まふゆと少し違うかもしれないけど…」
「そう…奏は、お父さんに呪われているんだね」
「…」
「消せない呪いなんて、可哀想」
「まふゆ…奏に、今すぐ謝れ!
奏が、どれだけ苦労して曲を
作ったか、わからないのか!?
この子は、寝る間も惜しんで、
まふゆちゃんを救いたい一心で、
作ったんだ!だから…最初から決めつけるなよ…」
「詩音くんって、幼稚な人だね、
そうやって、感情に任せるから、困るんだよ」
「僕じゃ…まふゆちゃんを救えないのか…」
「うぅ…」
「でも、私は奏の呪いや、詩音くんのことなんて、
どうでもいい。
そんなものに、私を巻き込まないで、
奏は自分が救われたいから、
わたしを救おうとしているだけ、
必死になって、悪あがきをしているだけ、
そんなの、お互い、苦しいだけじゃない。
奏も本当は、消えたいんだから…」
「それは違う…」
「は?」
「まふゆに…わたしの曲が届いたって、知ったから、
だから、可能性が無くても、
わたしは、わたしの曲で、
まふゆを救いたい、絶対に救いたい。
例え、それが呪いだったとしても」
奏は呪いに立ち向かい、
まふゆを救おうと、自分の意思で語るのだった。