【完結】俺の世界、終わった。   作:渚 龍騎

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無理矢理詰め込んだ感が凄いですが、ご了承ください。
自分にはこれが限界でした。


救世の手は、手向けとして

 

 

 

 

 

 

 ダークメフィストの暗黒適能者。

 それはリンドウとアキハの娘──レイナ。

 彼女はコスモスのコズミューム光線によって闇を撃ち抜かれ、シュウに憎しみを浄化させれたことで、ダークメフィストの呪縛から逃れた。

 残るはダークファウスト。

 

 やることは変わらない。

 コズミューム光線、及びカラミュームショットで闇を撃ち抜き、ダークファウストから変身者を救い出す。メフィストと同様に、憎しみに呑まれている可能性が高い。

 

「コスモス、まだ行けますか?」

「僕はまだやれる。シュウこそ大丈夫かい?」

「もちろん」

 

 シュウは呼吸を整えながら嘯く。

 カオスヘッダーによる模倣の弊害か、頭は割れるほど痛く、吐き気すら感じる。だがここで倒れる訳にはいかない。

 カラミティのエネルギーは少ない。コスモスのエクリプスモードは強力だがエネルギーの消費が激しく、一分以上の戦闘は危うい。更にコスモスはコズミューム光線も放ち、大きくエネルギーを消費している。

 

 迅速に対応を考え、対処しなければ────。

 

 ダークファウストは不連続時空間(メタフィールド)を上書きする形でしか暗黒世界(ダークフィールド)を形成できない。ダークフィールドは光たる存在の本来の力を押さえ込み、闇の存在たる者の力を更に発揮させる。

 異生獣(スペースビースト)は存在しない。力こそ消費しているが、コスモスとカラミティの二人を相手に、ダークファウストは完全な不利。油断も慢心もしないが、少しばかりの安堵が残っていた。

 

『あまり無理はするな、シュウ』

「……大丈夫。ここでやらなきゃ、俺はこの力を得た意味がない」

 

 カオスヘッダーの心配に、冷静に答える。

 背中に圧しかかる責任感。肩に乗りかかる重荷を全て背負い込み、シュウは拳を握り締めた。

 ダークメフィストは、レイナの憎しみに漬け込んで利用していた。恐らくダークファウストも、操り人形(ウルティノイド)としてザギに利用されている。

 そんなことは、絶対に許されない。

 

「────」

 

 ウルトラマンだからこそ、やらなければならない。この力は誰かを助けるためのもの。

 グリーザもガタノゾーアも、ダークメフィストもなんとかできた。今回だってきっとなんとかなる。

 

「ふぅ……」

 

 光の巨人たちが一歩を踏み込んだ。

 大地を揺るがし、同時にファウストはダークフェザーで応戦。しかし先に前に出たコスモスが全てを弾き、高速移動で瞬間的に詰め寄ったカラミティが拳を振るう。だが受け止められ、その勢いを乗せて地面に投げ飛ばされた。

 四万トンあまりある巨躯が辺りの道路を陥没。更には激震に耐え切れなかった建物が崩壊する。

 

『──デェヤッ!』

 

 続いてコスモスが大きく跳躍して勢いのまま回転、ファウストに向けて踵を落とす。だが即座に背後に飛んで回避したファウストは、素早く両腕に暗黒を宿して大きく広げた。

 瞬間、紫紺の暗黒からダークレイ・ジャビロームが放たれる。同時にコスモスがゴールデンライトバリアを展開して防いだ。

 しかし一瞬速く動いたファウストのダークフェザーがコスモスを射抜く。続けて攻撃を仕掛けようと動き、横から飛び込んで来たカラミティのブレイキングスマッシュがファウストに直撃した。

 

『──チッ』

 

 ファウストの舌打ちが響き、カラミティの差し出した手を取りながらコスモスは立ち上がる。その二人を腹立たしく睨んだファウストは両腕を交差させ、闇の暗黒球弾ダーククラスターを天に向けて放った。

 ダーククラスターは上空で(またた)いて分裂、闇が嵐の如き豪雨として降り注ぐ。

 

『──オォォォォォッ!』

 

 天を見上げたコスモスが、全身に黄金を纏わせて構えた。両腕を広げていき、辺りの空間が揺らぐ。大地の振動はコスモスのエネルギーが巻き起こし、黄金の輝きが昇って──、

 

『──ダァァッ!!』

 

 耳を聾する轟音を激しく響かせ、コスモスから極光の柱が屹立──『エクリプス・ブローショット』が上空のダーククラスター全てを吹き飛ばす。その瞬間を狙っていたファウストが、隙を見せたコスモスにダークレイ・ジャビロームを放った。

 暗黒の光弾が大気を切って穿き、前に出たカラミティがカラミュームブレードで相殺。素早く両腕を組み、渾身のエネルギーを右腕に宿す。そしてカラミュームショットを撃ち放つ直前────、

 

「──やめてぇぇ!!」

 

 ────声が響く。

 驚愕してコスモスとカラミティ、更にはファウストもその声の先に視線を向けた。

 崩れた瓦礫の山を懸命に乗り上げ、汚れに塗れた顔を拭きながら、目尻に大粒の涙を含んで、ウルトラマンを睨む少年──ダイゴだった。

 ダイゴは袖で涙を拭い去り、カラミティとコスモスを睨みながら叫ぶ。

 

「お父さんを、イジメないでっ!!」

 

 その轟いた声に、耳を疑った。

 驚愕を隠し切れず、目を見開いてファウストを一瞥。ダイゴを見下ろして、理解が追い付かなかった。

 

「ダイゴの、父親……?」

「そんな……」

 

 誰かが変身している可能性は十分に理解していた。だが、その正体が会話にすら出ていなかったダイゴの父親。子供の戯言なんてものではない──なぜなら、ダイゴの表情は悲哀を滲ませ、嘘偽り等とは到底思えなかった。

 

 驚愕による油断から、一気に詰め寄ったファウストが無雑作にカラミティを蹴り飛ばす。更にはコスモスの首を掴み、大きく投げ飛ばした。

 怒りで二人をあしらったファウストは、即座にダイゴを睥睨する。暗黒に塗れた瞳はダイゴの慟哭を射抜くように、肩で息をしながら睨んでいた。

 

「──ダイゴ!」

 

 慌ててリツカがダイゴを抱き寄せる。その二人を見下ろすファウストは、舌打ちを漏らして拳を振り上げた。しかしその瞬間、ファウストとダイゴの視線が交じりあった。

 

「────ッ!」

 

 カラミティが必死に手を伸ばした。

 だが、振り下ろされるはずの腕はピタリと止まり、ファウスト自身も困惑して声すら上げていた。

 振り下ろそうと身体を動かしても、ファウストの腕は動かず、寧ろ逆の手で抑えてすらいる。いくらファウストの意志が命令を施しても、()()の意識が全てを否定した。

 

『──邪魔を、するな!』

 

 頭を抱え、激痛に苦しむかのように呻きを漏らして、首を巡らせ、ファウストは大地に頭を叩き付ける。ダイゴの父親が、闇に必死に抗っていた。

 

『ダイ、ゴ……』

 

 巨大な手が、ダイゴに向けられる。その声は、かつて名を呼び続けた愛すべき者──理解し難いの光景に、リツカも気が付き始めた。

 「あなた……?」と漏らした声に、ファウストは助けを求めるように手を伸ばす。だがファウストの意識が勝り始めた。蹌踉めき、頭を抱えて声を上げた。

 

「負けないでお父さん!」

「あなたっ!!」

 

 二人の声が、ファウストの闇を鈍らせる。父親の意識が蘇りつつあり、ファウスト自身の行動も不規則になっていく。辺りのビルに拳を振り下ろし、大地に頭を叩き付け、二人の意識が戦っていた。

 ファウストを悪と捉えるなら、父親は善。混じり合うはずがなく相対。飲み込む闇に、抗い続ける意識。

 

「──シュウ今ならっ!」

「──はい!」

 

 残りのエネルギーを右腕に宿して、カラミティが構えを取る。蹌踉めくファウストのその内側、更には奥底に歪む暗黒に向けて──カラミュームショットを撃ち放った。

 その先の先──カラミュームショットが吸い込まれるように、振り返ったファウストに放たれる。

 全ての意識を注ぎ込む。カラミュームショットの本質を示して、ファウストの闇だけを打ち払う。

 カラミュームショットの全てが放たれ、全ての時の流れがスローモーションに感じた。

 流れ行く時の中で、静謐な緊迫感が収斂する。そして次の瞬間、真紅の光粒子がファウストの背中から溢れ出た。

 

「あとは、彼が闇に打ち勝てば……」

 

 コスモスがポツリと呟く。

 カラミュームショットに撃ち抜かれたファウストは、膝を付いて、ぼんやりとダイゴ達を見つめた。

 

「また俺が行くのは……」

「やめた方がいい。何度も闇から救えるとは限らない。それに、君の身体が保たない」

 

 ダークメフィストからレイナを救えたのは、ほぼ奇跡に等しい。カオスヘッダーの模倣(コピー)能力と相手に感染する力があったからこそ救えたと言っていい。何度もできる荒業ではない。

 暗黒による影響は、暗黒適能者だけでなく、そこに飛び込んだ者をも蝕む。現にシュウとカラミティの身体にも影響が出ていた。

 

「見届けるしかないのか……」

 

 眼前で起こる出来事に、シュウは唇を噛み締めて祈りを込める。

 ゆらりと力なく伸ばされたファウストの腕は微かに震えて、助けを乞うようにダイゴ達に向けられていた。

 

『ダイゴ、リツカ……すまな、い……』

 

 訥々と囁かれた言葉に、リツカは首を振る。目尻に大粒の涙を浮かべ、震えながらも「あなたの所為じゃないわ」と、慰めるように答えた。

 なにがあったのかは分からない。ただその家族にも、限りのない不幸が襲ったのは確かだった。

 ファウストの震える手に、ダイゴとリツカがソッと手を伸ばして触れる。瞬間、弾けるように闇が溶け始める。果たされるのは、一つの約束。

 

「お父さん……」

 

 かつてに広がるダイゴの情景──それは、楽しげな一面から始まる。窓の外から流れ行く景色を眺めて、リツカとダイゴは笑っていた。

 そこにはもう一人──背中しか見えない父親が座っている。目の前の景色だけを見つめ、時折響かせる笑い声が、ダイゴ達に更なる色を滲ませていた。

 

『あとどれくらいで着くの?』

『もう少しだよ。ダイゴ、楽しみにしてるか?』

『──うん!』

 

 何一つ変わらない平凡な家族というべきか、何処かへ向かう車内の一時。ダイゴはこれまでにない程その気分を上げて、舞い上がっていた。

 その手にはウルトラマンゼロのソフビ人形を握り締め、花すら凌駕する満面の笑顔がそこにはあった。

 広がる景色に流れる風景──それこそ、次に起こるのは絶対的な最悪。悲鳴が巻き起こす不協和音。声にならない激痛が全身を駆け巡り、天と地が何度もひっくり返る感覚に陥った。

 胃が捻れるような不快感に、鉄がひしゃげて意識が吹き飛ぶ。それからは断面的な視界だけが脳裏に流れる。

 

『──ダイゴっ!』

 

 燃え盛る炎の中、ダイゴの名を呼んで手を伸ばす父親の姿。握り締めた手を決して離すことなく、抱き寄せたと同時に飛んだ。

 刹那、耳を聾する爆発音と吹き荒れた熱風が肌を焦がす。大地に叩き付けられる感覚に息が詰まった。

 

 ────あとはもう、何も分からない。

 ────楽しかった?

 ────なにも感じない。

 

 目を閉じると、最初に思い返すのは規則的だが起伏のない低い声。読経と遠くから聞こえる鈴の音が混じった一室で、ダイゴは最前列に座らされていた。

 念仏を唱える男の正面には、一つの棺が横たわり、更にその前には大量の献花と、それに埋もれるようにして朗らかに笑っている故人の写真が立っていた。

 

「お父さん……なんで……」

 

 胃の底から込み上げる吐き気に襲われ、拳を握り締めてから全身を震わせる。我慢しようとしても、俯いた鼻先から涙滴が伝わって濡れたズボンに染み渡って行く。

 それでもう、ダイゴの記憶は途切れた。

 唯一の父親を亡くしたと、理解もできず。

 

 

 ────私はお前だ。

 

 

 聞こえた言葉は、何処か心を鷲掴みにするような不気味さがあった。

 見える漆黒は暗黒よりも黒く、暗く、(くら)い。だがそれだけ、それ以上の感情(いろ)は見えない。

 闇に呑まれる意識で、世界が暗澹と化す。それは憎しみや憎悪なんてものを利用したのではない。

 後悔、悔恨、その意思こそがダークファウストの闇に利用されている。自分の所為で、そんな自責に心を蝕まれ、光は闇へと失った。

 

『──お父さん!』

 

 ────声が、聞こえる。

 

『──あなた!』

 

 ────声が、聞こえた。

 

 己が息子と交した約束──『最後まで諦めずに立ちあがれ』それこそが誓われた確約。

 その約束は、もう決して果たされることはない。何故なら父親は既に、()()()()()()()()()()()()

 ファウストの闇として、ダークザギの操り人形(ウルティノイド)として、ただその糸に操られるだけの存在。

 この世の理に反してしまった存在は、ファウストという名の糸が無くなれば、当然元に戻って消滅する。

 

「僕は…………」

 

 ファウストとして、意識はそこになくただの操り道具になるか、それとも己の意思を貫いて悔いを残したまま、この世でもう一度『死を味わうか』。

 どちらにせよ、自分が元に戻ることは無い。

 

 ────どうすれば、いいのだろうか。

 

 逡巡は一瞬──どうするかなど、最初から心に決まっている。ふ、と男は鼻で笑って覚悟を決めた。

 その目に宿るのは光の矜持。暗黒に塗れた世界の中で、眼前からゆらりとファウストが姿を見せる。

 

『──私はお前だ、()()()

「……僕は、絶対に最後まで諦めない。その思いは、ダイゴが受け継いでくれる」

 

 それに、と言葉を続けて、アスカは顔を上げる。眼前のファウストを睨み、拳を強く握り締めた。

 

「僕は僕だ! お前のような影なんかじゃない! 何者でもない僕が、愛する人達を守り抜くッ!」

 

 光が──眩い輝きが、アスカの握り締める拳に宿る。その光は、ファウストの影を照らし尽くして、暗黒を焦がした。

 アスカの雄叫びが轟く。大きく振りかぶった拳を、光に乗せてファウストに突き出した。

 

『──お父さん!』

『──あなた(アスカ)!』

 

 二人の大切な者たちの声が、アスカに渾身の光を与え、全てを凌駕する一撃を生み出す。そしてダイゴとリツカの二人の声が、同時に響いた。

 

『『──諦めないでっ!!』』

 

 ファウストの顎を正確に捉えた拳は、辺りを照らし尽くす輝きと成りて、全ての暗黒を打ち払う。

 それは家族の絆が齎す光。過去に残した後悔は、未来への手向けとして他の者が受け継いでいく。やがてその後悔は、希望となって未来に流れる。

 不幸が招いた幸せの崩壊。

 アスカは招いてしまった不幸に家族を陥れて、自分が残した後悔に死後も悔やみ続ける。だがそれだけでは、アスカも家族も前には進めない。だからこそ、自分たちの手で切り開くしかない。

 光に包み込まられる瞬間、アスカの意識はまた別に誘われて────、

 

 

 ────ダークファウストに起こる先を、誰もが固唾を飲んで見守っていた。

 

 

 カラミュームショットでファウストの闇は撃ち抜いた。あとコスモスとカラミティにできる事は、ただその行方を祈って見守るだけだった。

 後悔に打ち勝つには、己自身の力。

 

「く……」

 

 なにもできない自分が憎い。だがそれではなにも始まらない。だからこそ、最後まで見届ける。

 そして、ファウストの身体から闇が抜けていく。闇はまるで霧のように霞がかって、その姿を元に溶かす。触れた掌からダイゴ達の温かな想いを感じていた。

 

「ファウストが……」

 

 消えていく。ダイゴとリツカの触れる巨大な掌は、やがて人間と同じ大きさの手となり、互いに強く握り締めていた。

 かつて感じた温かな体温。そこにいるのは、この世から消えてしまったはずの命。

 

「──リツカ、ダイゴ」

「……あなた……」

「お父さん……!」

 

 三人は、感動の再開ともいうべき展開に強く抱き締める。会えるはずのない奇跡は、闇の巨人が意図しない形で起こり、家族の絆が闇に打ち勝った。

 

「ごめんな、ダイゴ、リツカ……! 僕が道を間違えた所為で、君たちを大変な目に合わせてしまった」

「いいのよ……あなたのおかげで、私達はちゃんと生きてるんだもの……」

「お父さんが、最後まで諦めなかったからだよ!」

 

 まだ来る後悔からか、アスカは涙を流しながら謝り続ける。そしてダイゴとリツカも、感動のあまりに大粒の涙で軌跡を描きながら、首を振り続けた。

 その景色は、大切な人達が囲い合う愛の形。突然に訪れた不幸で、三人はなにも告げることができず、もう決して会えなくなってしまった。

 

「私は、まだあなたに何も返せてない……」

「いいんだよ。僕は君達と過ごせただけで幸せだった。君らが生きているなら、僕の行動にも意味があったんだって、誇りに思えるんだ」

 

 リツカの額にアスカは唇を付け、次にダイゴを抱き締めた。

 

「ごめんな、ダイゴ……お父さん、ダイゴの好きなウルトラマンにはなれなかったよ……」

「ううん! お父さんはボクを助けてくれたんだもん! ボクの大好きなヒーローだよ!」

 

 嗚咽すら漏らして、涙ぐみながらもダイゴは笑顔で答える。そんなダイゴを強く抱き締め、「ありがとう」と呟きアスカも涙を流していた。

 大切な家族の一時。これが一生続くのなら、それで良い。だがしかし、アスカはダークファウストという要を失って、いつ消えてもおかしくない状況だった。

 

「これで、良かったんですか……」

 

 三人の再開を遠くから見つめるしかなかったシュウが、コスモスに向けて問い掛ける。他にも方法があったのではないかと、ファウストとして消える運命を変えられるんじゃないか。

 なぜ命は全て救えないのか分からない。だがコスモスは、ポツリと語るように答えた。

 

「命は、全ては救えない。だけどそれは、決して無駄になんかならない。いつだって僕たちの背中を押してくれる。僕らは、救えなかった命を背負って戦い続けるしかないんだ」

 

 全ての命に意味がある──ムサシの言葉からは、シュウでは計り知れない程の重みがあった。

 命や希望の為に奔走し続けたコスモスたちは、いつだってその事を考え続けている。誰よりも命に付いて思っているのが、コスモスとムサシの二人。

 

「意味のない命はない……」

 

 口の中で呟き、シュウは家族を見つめた。

 すると家族を抱き締めていたアスカが、ゆっくりと離して振り返る。その視線の先には、満身創痍の状態でいるコスモスとカラミティ。

 

「ウルトラマン!」

 

 呼び掛け、二人にも聞こえる声でアスカがその想いを叫ぶ。父親としての役割を果たせないアスカの、唯一の願いは、ウルトラマンにしか頼めないものだった。それは────、

 

「僕の代わりに、二人を守ってほしい!」

 

 アスカは俯いて、唇を噛み締めながら拳を握り締める。それは、これから消えてしまうアスカの最後の願い。

 

「僕は、ずっとこの世にはいれない。だからこそ、ウルトラマン達に頼みたいんだ!」

 

 カラミティとコスモスは、何かを迷う訳でもなく、アスカの言葉にゆっくりと頷いた。

 そして爽やかに微笑んだアスカが、ゆっくりと口を開いて──、

 

「ありが────」

 

 アスカが言い終わる瞬間、コスモスとカラミティの身体が吹き飛ばされ、大地に転がった。

 何が起こったのか理解できずも、慌てて素早く立ち上がったカラミティとコスモスは、眼前を獰猛に睨んだ。

 隕石でも落ちたような轟音は、大地の真ん中にクレーターを生み出して、巻き上がる粉塵が全てを隠し切っている。その刹那、粉塵の中から穿たれた光弾がコスモスを吹き飛ばした。

 

「──コスモス!」

 

 粉塵が風に吹かれて、その中に跋扈する存在が姿を現す。漆黒の身体に身を包み、鮮血のような真紅の瞳は、相手の奥底まで震え上がらせる憎しみが込められていた。

 

 ────ついに、現れた。

 

 その姿を忘れるはずがない。

 その唸りを忘れるはずがない。

 その憎しみを忘れるはずがない。

 最強にして最悪──暗黒を齎す破壊の神。その咆哮は獣の如く、辺りに席巻する威圧感が本能に『逃げろ』と命令をしていた。

 吼え猛ける憎しみに一切の容赦はなく、欠片の躊躇も存在していない。聞くもの、見るものに、圧倒的な存在感だけを叩き付ける。

 ソイツは両腕を広げる。次の瞬間に、シュウは何もかも全てを呪った。

 

 

 

『Uuuuuuuuaaaaaaaaaarrr──ッ!!』

 

 

 

 咆哮が大気を震わせ、ビルの窓すら簡単に吹き飛ばす。その有り様に、カラミティとコスモスだけでなく、誰もがその存在感に驚愕していた。

 全てを無に返す暗黒の破壊神──ダークザギが、この地球に降臨する。




・アスカ
家族で遊園地に車で向かっている途中、道を間違えてしまい、ハンドルを切った瞬間に速度違反をした車と事故が起こった。
奇跡的に誰よりも早く目が覚めたアスカは、車に取り残されたリツカを救い出して、ダイゴを助け出した直後に車が爆発。庇ったダイゴは命に別状はなくとも、アスカは重症を負って死亡。

・レイナ
普通な生活を望む女性であったが、ある日の帰り道に集団的なとある事件に巻き込まれる。性的暴力を受けただけでなく、心身共に障害が残り、自分をそんな目に合わせた者たちに尋常でない憎しみを抱いた。

評価感想があればぜひ。
今後の更新などは、変な呟きと共に私のツイッターアカウント@hokattya258でお知らせしていますので、ぜひ興味があればよろしくお願いします。
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