【完結】俺の世界、終わった。   作:渚 龍騎

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遅れてすいません。久しぶりです。
ようやく書きましたので、よろしくお願いいたします。


伝説絢爛 ─ ルシフェル ─

 

 

 

 

 

「──シュウ!」

 

 

 一人の少女の叫びが、響き渡る轟音によって虚しく掻き消される。それでも懸命に声を上げ、目の前のウルトラマンに向けて自分の想いを届けようとした。

 だが、その声は最早決して届かない。

 

 彼は、大切な彼は──闇に近づき過ぎた。

 ダークファウストの憎しみから救う為に、闇へと飛び込み、ダークメフィストの後悔から救う為に、暗黒を払った。

 そして最後にダークザギと戦って、闇に呑まれた。

 滲み出る憎悪と後悔が蝟集し、このままなにもしなければ、きっと彼はこの世に帰って来れなくなる。

 彼はいつだって悲しみから救ってくれた。

 両親が死んだ時だって、この命が尽きようとしてる時だって、ずっと側で支えてくれた。

 

 彼の優しさは、彼自身を一人にする。だから、守ってくれた彼と同じように、今度は私が彼を守る。

 ────救いたいから、助けたいから。

 この絆は、きっと嘘なんかじゃない。ずっと一緒に紡いできたこの絆を信じ抜く為に────、

 

 ────今なら、きっとその光に届く。

 手を伸ばして、必死に手を伸ばして届かせる。今起きていることから目を背けない。

 瞬間、あの遺跡が意識に映り込んだ。

 いつもは進めず、決して手の届かないあの石像に、今なら手が届く。必死に伸ばして、進もうとしない意識を前に向けて、ただひたすら前へ。

 この力を振り絞り、飾り付けないこの欲望で、ひたすらに駆け抜けて────、

 

 その右手に集結する光は、輝きに満ち溢れて、やがては形を成す。それはまるで短剣のようだった。

 強く握り締めると、中心の輝きに光が灯り、心臓の鼓動のような音が響く。

 

 

 ────諦めるな。

 

 

 その声が、自身の内側を巡る感情に渦巻く。

 この光は、幾重もの想いと、絆によって受け継がれて来た存在。永遠に消えることのない輝き。

 

 宿命と戦う熱き覚悟の英雄。

 運命に抗う青き意思の果実。

 

 今こそ────!!

 

 

 

「私が、シュウを──ッ!!」

 

 

 

 絆、ネクサス────!!

 

 

 

 己の本能に、受け継がれてきた絆を信じて、守りたいものを守る為に、その光を引き抜く。

 引き抜いたエボルトラスターを天に掲げ、その想いを轟かせる。瞬間、眩い輝きが辺りを埋め尽くした。

 

 

 

「シュウは、私の英雄(ヒーロー)なんだから──ッ!!」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「ウルトラマン、ネクサス……」

 

 

 

 それは受け継がれてゆく魂の絆。

 絆を受け継ぐ者(デュナミスト)と共に行く奇跡の使者──眼前のダークザギを睨み、足を広げて腰を低く構えた。

 ウルトラマンネクサスはダークザギの宿敵──否、ネクサスの本当の姿たる彼と深い因縁がある。太古の時代から続く守護神と破壊神による戦い。

 

『──シュッ!』

 

 ネクサスが駆け出すと同時、ザギも素早く立ち上がってから駆け出した。

 二体の巨人が一歩を踏み付ける度に、大地に地震の如き震動を巻き起こす。道路は陥没して、車はひっくり返り、駆け抜けた後の建物の窓が全て割れた。

 

 ザギが、ネクサスが、同時に拳を引き絞った。

 ────突き出す。

 超音速で突き出された拳同士が衝突して、辺りの大気が吹き飛び、衝撃波が嵐のように荒れ狂った。

 素早く拳を引き抜き、体重を傾けた直後にネクサスのアームドネクサスが光り輝いた。

 瞬間、空間が波を打つように揺らめいて、ネクサスの身体が青い光に包み込まれる。ザギの拳を屈んで回避し、その身を照らす光が消えた直後に、ネクサスは右腕から光輝く剣でザギを切り裂いた。

 

 ジュネッスブルー。

 それは運命に抗う青い果実。

 

 ザギを蹴り飛ばしたと同時に背後へ飛ぶ。ザギの右拳が突き出され、漆黒の光弾ザギ・シュートが数発放たれるが、ネクサスはシュトロームソードで対抗──全てを切り落としては、短い予備動作でクロスレイ・シュトロームを撃ち放った。

 分子分解の性質を含む光線ではあるが、ダークザギの防御力は真正面からのオーバーレイ・シュトロームを弾くほど。クロスレイ・シュトロームでは威力もなにもかもが足りない。だがそれでも、気を逸らす程度はできる。その瞬間、コスモスがザギの動きを抑え込んだ。

 

『──ここは僕に任せて!』

 

 逡巡を押し切って、ネクサスは頷く。

 直ぐさま飛び込むようにシュウ──ウルトラマンカラミティの方へと近寄った。

 

『──シュウ、目を覚まして!』

 

 昏き闇の中──暗黒に最も近付き過ぎた故に、その精神は暗闇へと呑み込まれつつあった。

 ウルトラマンカラミティの瞳から光は消え去り、そこに映り込むのは闇なるもの。憎しみ、憎悪、怒り、恐怖、ありとあらゆる負の感覚がカラミティの瞳に翳されている。遍く暗闇の中で、シュウの意識は異常な恐怖に包み込まれていた。

 声は決して届かない。彼は目の前で両親を惨殺され、更には自分自身も生死の境目を彷徨っていた。だがそれでも、彼は決して最後まで諦めようとしていなかった。その精神は────、

 

『この闇を消し去らないと、シュウを助けられない……!』

 

 ネクサスは拳を握り締め、目一杯に引き絞る。そしてカラミティのカラータイマー目掛けて渾身の一撃を突き出した──ナックレイジェネレード。それは闇なるものを浄化し、自身の攻撃へと繋げる必殺技。本来であれば、相手の攻撃を変換させる技だが、今回はそれの転用である。カラミティにある闇をネクサスが持つ光で浄化していく。靄のように闇がアームドネクサスに溜まっていき、それを天に向けて撃ち放った。

 光へと変換させられた闇が天高く舞い上がり、瞬く間に見えないほどの距離まで伸びて行った。

 

『──シュウ!』

 

 名を叫び、カラミティの瞳に僅かな光が宿る。希望に縋り、最後まで諦めようとしない心に、輝きが灯る。震える手が伸ばされて、ツバキは力強くその手を取った。

 

『帰って来て! あなたは一人じゃない! ムサシさんがいる、ダイゴくんだってみんないる──私が、ずっとシュウの側にいるからっ!』

 

 その(想い)は、光となって内側に眠るシュウの意識を呼び覚ます。恐怖に呑まれた過去の中から、震えた手が誰かに強く握り締められて、一気に引かれた。

 意識が暗黒という名の海から浮上する。その手は強く引かれて、シュウの身体は抱き締められる。大丈夫、と宥めるような慈しみに濡れた声が聞こえて、シュウは笑ってからその顔を上げた。

 

「そうだよね。俺は一人じゃない」

 

 抱き締める彼女の背中に腕を回す。胸の中にその顔を埋めたこの世で最も大切な彼女を、シュウは強く抱き締めた。

 瞬間、辺りに蔓延る暗黒が、二人の秘める光によってすべてを吹き飛ばした。

 

『──シュウ!』

 

 ゆっくりと、ウルトラマンカラミティが起き上がる。その瞳、その胸に宿るものは闇ではない。高貴に輝く光。カラミティはネクサスを見下ろして頷いた。

 

『ありがとう、ツバキ。君の声が、俺を救ってくれた』

『良かった……本当に……』

 

 感謝を告げて、ツバキは安堵の声を漏らす。そしてシュウがツバキの変身しているネクサスをぼんやりと眺め、口を開いた。

 

『ジュネッスブルー、いいね、かっこいい』

『ふふ、ありがとう』

『よしそれじゃあ──』

 

 二人は構える。カラミティはカオスヘッダーとシュウの意識を統合させ、更なる領域へと至りながら構え、ネクサスは初めての変身でありつうも恐れることなく腰を低く腕を前に突き出した。

 

 

 

『『いっちょ、やりますか──!』』

 

 

 

 二人の巨人が、一気に駆け出した。

 ネクサスはシュトロームソードを展開して、真っ向からザギに挑む。カラミティがザギに吹き飛ばされたコスモスの身体を受け止め、ムサシに心配の声を掛けた。

 

『コスモス、大丈夫ですか?』

『ああ、ありがとう。よく帰って来たね』

『すいません、ご心配かけました』

 

 いや、と首を振ったコスモスは息を整えてから、カラミティと視線を交わせ同時に頷く。そして二人は腕を交差させて、まだ尽きぬ希望の想いをその身体に纏う。紐解かれた光が二人の身体に絡み付き、その姿を一変させた。

 

 ウルトラマンカラミティ トゥルーホープ

 ウルトラマンコスモス フューチャーモード

 

 希望を信じる二人の巨人が顕現。ダークザギに向かって駆け出す。ブレイキングスマッシュとエクリプススパークでネクサスの援護をしながら、距離を縮めて行き同時に跳躍──一気に急降下して、ザギに勢いを乗せた蹴りで吹き飛ばした。

 ザギの身体が大地を転がり、すかさず三人は光線を溜める。それに気が付いたザギは慌てて飛び起き、暗黒に包んだ両腕を広げて突き出した──放たれたグラビティ・ザギが一直線に伸びると同時に、三人が光線を放った。

 

 クロスレイ・シュトローム。

 カラミュームストライク。

 コスモストライク。

 

 三つの光線が混じり、一つの光となってグラビティ・ザギと衝突。本来であればこの一撃で大抵の怪獣は屠れるだろう。だが、ザギの自己進化プログラムをその程度では上回ることはできない。激突した二つの奔流は相殺され、辺りに大爆発を齎す。巻き上がる爆炎と、吹き荒れる嵐が辺りの空間すらも吹き飛ばして、炎の中からザギが一瞬にして距離を縮めて来た。

 

『□□□□□──ッ!!』

 

 振り払われた豪腕が防御(ガード)をしたカラミティの身体ごと吹き飛ばし、慌てて攻撃を仕掛けたネクサスの蹴りを回避。腹部へ向けて渾身の蹴り──その一撃はネクサスの身体を紙のように吹き飛ばした。

 コスモスが二連蹴りでザギの腕を払いながら、握り締めた拳を突き出す。その一撃によってザギは蹌踉めき、即座に足を組み替えて後ろ回し蹴りで更に畳み掛ける。復帰したカラミティも加わり、コスモスとの息の合ったコンビネーションで次々と攻撃を仕掛けた。

 

 コスモスの回し蹴りと、カラミティの下段蹴り。その両方を受け止めたザギが腕に一兆度の炎を纏わせ大地に叩き付ける。瞬間、閃光が瞬いて大爆発──巻き上がった粉塵の中からコスモスとカラミティが飛び退いた。

 

『三人の力でも押しきれない……』

 

 流石は伝説の超人を模して造られた破壊神。

 児童誌でも複数のウルトラマン──しかもウルトラ兄弟を相手に圧倒する実力を見せ、弱体化した状態でもウルトラマンギンガにこそ負けたが、ジャンナインを軽く倒すほどだった。

 爆炎の中からダークザギの姿が現れる。ザギは喉の奥から憎しみの限りを唸り、やがて右腕を翳した。その瞬間、カラミティたちを巨大な影が覆い尽くして青く遍いていた空から、惑星にも匹敵する巨大な暗黒球体が地球目掛けて落下して来ていた。

 

『おい、ウソだろ……ザギ・ギャラクシーか』

 

 ダークザギが持つ数多くの技の一つ──ザギ・ギャラクシー。それは小惑星群を降り注がせる技であるが、某ゲームでは超巨大な暗黒球体を降らせるというほぼ回避不可能のとんでもない技を披露していた。惑星一つを操るなど、ザギにとっては造作もない。

 無限のポテンシャルを持つコスモスのフューチャーモードでも、惑星を破壊するのは難しい。だがいまはカラミティとネクサスの力がある。三人の力があれば、惑星の一つなど破壊して見せる──三人のウルトラマンは上空を見上げて構えた。

 

 コスモスとカラミティは互いの腕を交差。一瞬の煌めいた輝きで、大きく腕を回した。

 ネクサスは下方部で腕を重ね合わせる。弾けた光がプラズマとなってその腕に纏った。

 同時にクロスパーフェクションとオーバレイ・シュトロームの超強力な光線が上空に向かって伸びて行く。大気を消し去り、雲を吹き飛ばして、光線は降り注ぐ惑星に命中。三人は雄叫びを上げて、更にエネルギーを込めた──直後、暗黒球体に亀裂が走り、大爆発を起こした。

 吹き荒れたエネルギーの塊が大気を吹き飛ばす。それは嵐のように吹き荒れ、大地に暴風として流れていった。

 

『こんなのを何発を撃たれたら、たまったもんじゃないよ!』

『だから、次の攻防で決着をつける──』

 

 正直いうと、今の一撃で大半のエネルギーを消耗している。それはコスモスだけでなく、一度きりの技を撃ったネクサスも同じ。ダークザギは憎しみや恐怖を力に変え、どれだけでも強くなる。それこそ文字通り、無限にだ。更に強くなる前に、ダークザギを倒さなければ、こちらに勝機はない。

 三人のカラータイマーは音を鳴らしながら点滅を開始し、それほど時間がないことを実感した。

 超新星爆発にも耐え得る肉体──それをウルトラマンノアのように木っ端微塵にすることはできない。だが、ウルトラマンギンガやウルトラマンᖴはダークザギのエナジーコアを破壊することで倒すことができた。それしか方法はない。しかしどうすればいい?

 

 逡巡に悩み、方法を巡らせていると、ダークザギが両腕を広げてグラビティ・ザギを放った。

 一直線上に伸びて行った闇の奔流が猛進。それが衝突する直前で、グラビティ・ザギが暗黒の輝きによって阻まれて大爆発を起こす。爆炎に顔を覆い、爆風から顔を上げたその先には、二人の暗黒の巨人が立っていた。

 

『……ファウストに、メフィスト……』

 

 二人の闇の巨人は振り返り、ゆっくりと頷いた。

 なにかを告げる、なにかを語る、そのすべてを言うまでもなく、ファウストとメフィストがザギを見据えて構える。ダークレイ・ジャビロームとダークレイ・シュトロームを撃ち放ち、ザギはリフレクションを展開して防いだ。

 メフィストとファウストの二人はザギに向けて次々と必殺技を撃ち放ち、それの悉くをザギは回避し、防ぎ、反撃へと繋げる。だがその一瞬が、ダークザギの命運を決めた。

 カラミティとネクサスが同時に跳躍。天高くに舞い上がったカラミティに向けて、コスモスが叫ぶ。

 

『カラミティ! 僕の力を使ってくれ──!』

 

  己の右腕に溜め込んだフューチャーフォースをカラミティに放ち、身体の奥底から力が湧き上がるのを感じる。コスモスから渡された力をも利用して、シュウはゆっくりと瞳を閉じた。

 その意識は、カオスヘッダーとより深く統合させ、より広い景色を共有する。ダークザギを屠り去る完全な一撃必殺の技を考え、カオスヘッダーはシュウの記憶からその一撃を模倣(コピー)した。

 コスモスから授かった光がカオスヘッダーと共に形を成し、それは巨大な弓となってカラミティの左腕に集束。それと同時に、隣にいたネクサスが自身のエナジーコアにエネルギーを溜め込み、その右腕に展開したシュトロームソードに重ね合わせた。

 二人は狙いを定めて、光の弓となった輝きを引き絞り、その全てを叫んだ。

 

 

 

《ファイナルウルティメイトゼロッ!!》

《オーバーアローレイ・シュトロームッ!》

 

 

 

 直後──射出された二つの輝きが、流星の如く猛進する。空間を貫き、その速度は光を超えてダークザギに向かって突き進んだ。

 ダークザギが気が付いた時にはもう遅い。ザギは両腕を交差させてオーバーアローレイ・シュトロームを受け止めるが、凄まじい貫通力を誇る光の矢はザギの腕に命中したと同時に爆発──更には一直線上に伸びたファイナルウルティメイトゼロが、弾かれた腕の中へと入り込み、ザギのエナジーコアに直撃した。

 無数の輝きが灯るファイナルウルティメイトゼロは、ザギのエナジーコアに直撃すると超光速で回転。光に満ち溢れた瞬間、ガラスにヒビが入ったような高い音が響き渡り────、

 

 

 

『Uuuuuuuuaaaaaaaaaarrr──ッ!!』

 

 

 

 大爆発を起こした。

 ザギの咆哮。それはすべての終焉を指し示すような、終わりを告げるかの如き絶叫だった。その叫びは耳を劈く大音響と化して、辺りの空間にビリビリと張り詰めた殺意を散りばめた。

 荒れ狂う暴風の中で、巨人たちはその爆心地を見つめる。ファウストとメフィストの姿は隣になく、肩を大きく上下させて呼吸を整える三人の巨人はその全ての終わりを悟った。

 

『勝った……勝てた……』

 

 始めに呟いたのはカラミティに変身するシュウだった。巻き上がる爆炎を見上げて、勝利した事実よりも戦いが終わったのだと安堵の思いが大きかった。

 ぼんやりと眺めた先──思えば、なにもかもが一瞬の出来事のように感じられる。ただ、ツバキの信じた景色を守りたくて立ち上がり、いつの間にかにウルトラマンとして命を懸けて戦い続けた。

 何も分からない中で、死と隣り合わせになりながら、恐怖もなにもかもを乗り越えて戦った──コスモスが来て、ネクサスも助けに来てくれて、本来なら感極まる思いが込み上げるはずなのに、そんな暇もなくこの光を翳した。

 

 虚空怪獣グリーザ。

 最凶の『無』そのもの。理不尽の塊たる存在で、宇宙に空いた『穴』である。

 

 邪神ガタノゾーア。

 最恐の『闇』そのもの。超古代文明を滅ぼし、光の巨人を簡単に屠り去った邪神。

 

 暗黒破壊神ダークザギ。

 最強の『神』たるもの。全宇宙に真実の平和を齎すため、全てを破壊し尽くす破壊の神。

 

 カオスヘッダー。

 災厄の『光』たるもの。この世界を救うために立ち上がり、奇跡を信じて戦った輝き。

 

 全ては長かった。

 最強の破壊神を倒したことで、この物語は終わる。

 グリーザは飛来したダークザギの強大過ぎるエネルギーに引き寄せられ、人々の恐怖が具現化し、ザギの暗黒に触れることでガタノゾーアをこの現実に生み出してしまった。そしてカオスヘッダーは、とある〝光〟によって呼ばれ、シュウと共に戦い抜いた。

 これで終わる──そう、()()()()()()()()

 

 

 

『Uuuuuuuuaaaaaaaaaarrr──ッ!!』

 

 

 

 雄叫びが聞こえた。

 憎しみの限りを吼えた()()は、舞い上がる爆炎を振り払って姿を見せた。

 

『コイツ……まだ倒せてないのかよっ!』

 

 ダークザギのエナジーコアにはヒビが入っているのみで完全に破壊し切れていない。ザギの身体の至る所から炎が舞い上がり、ヤツは獣のように天高く吠え猛けた。

 流石の執念と言うべきか、闇の巨人にはウルトラマンと同様に完全な死が存在していないと言われている以上──ダークザギの肉体を完全に消滅させるほか倒す方法はない。だが超新星爆発にも耐えるあの肉体を消滅させられる火力の必殺技を持つウルトラマンなど、ウルトラマンノア以外いない。

 宇宙規模での無限の力を持つウルトラマンキングや、全宇宙のエネルギーを自由自在に操れるウルトラマンレジェンド辺りか。残された時間は少ない。全員がエネルギーの大半を消費して、大技も使用している──もはや立っていることすらようやくだった。

 

『クソ……これが、ダークザギか……』

 

 ギンガ、ᖴ、ノア、よくこんな相手に勝てたと心底思う。だが、疲労困憊なのはダークザギとて同じ。エナジーコアはもう崩壊寸前。ここであと一押しがあれば、ダークザギを倒すことも夢ではない。

 ダークザギは右腕を天高く翳して、三人が攻撃に備えて構える。その瞬間、ダークザギの身体から溢れんばかりの暗黒が霧のように溢れ出して、ウルトラマンたちが膝を付いた──意図して膝をついたのではない。身体から一気に力が抜けていったのだ。

 エネルギー切れ?

 否、それは違った。ウルトラマンの身体にある光が、水の泡のようになって抜けて行っている。なにが起こっているのかまるで理解できない。立ち上がることすらできず、意識をも徐々に消え始めていた。

 

『チカラが、入らない……』

 

 天に広がる青き空が、ダークザギから放たれる闇に覆い包まれる。太陽の光が完全に途絶え、この世界に遍く全ての光が闇へと変わっていく。それはダークザギが持つ最強にして、最悪の究極技──『ザギ・ザ・ファイナル』

 今の今までで、ダークザギが自ら究極技を出したことなどない。それこそウルトラマンノアが相手の時でさえも。

 

『それだけアイツも追い詰められてんのか……!』

 

 だがしかし『ザギ・ザ・ファイナル』は、今まで使われたことがない。詳細は名前と『全ての光を闇に変える』とだけが記載されている。それがどんな技であるのかまったく想像がつかなかった。

 その究極技は全ての光を闇へと変えるもの。光を頼りとし、チカラとするウルトラマンや、希望を捨てぬ人々にとって闇は邪悪そのもの。

 光──それは心の拠り所であり、力の根源である。

 光が消えることで、人々は絶望して生きるための希望を失う。そして光を失った者は(ダークザギ)によって従えられ、異生獣(スペースビースト)へと変身──即ち、死を意味していた。

 ウルトラマンも同じである。光をチカラとするウルトラマンにとって、光が闇へと変われば命を削られ、エネルギーが完全に消えていく。もはや立ち上がるチカラすらも残っていない。

 

 ダークザギの身体に眠る暗黒が遍き、それは地球を覆い尽くすだけでなく宇宙にまで跋扈する。だが『ザギ・ザ・ファイナル』の本質は、ただ全ての光を闇に変えるのではない。

 無限に存在する光が闇へと変わる。光を呑み込む無限の闇──なにもかもが変えられた暗黒全てがダークザギの身体を包み込み、辺りに生まれたスペースビーストを喰らい尽くした。

 

「──お父さんっ!!」

「──レイナっ!!」

 

 瞬間、遠くで叫び声が響き渡った。

 視線を向けると、助けたはずのアスカとレイナが苦しみの声を上げながら頭を抑えていた。

 目を眇めてみると、二人の身体に眠っていた闇が外へと溢れ出していき、ダークザギへと吸い寄せられている。更なる闇が闇へと誘い、巨大化し、ダークザギの闇を完全に超えた。

 

『まさか、有り得ない……』

 

 記憶に眠っていた()()が過る。ダークザギを超える闇──それが意味をするのはウルトラマンネクサスの外伝作品『再臨 ─ドリームス─』に記載されていた名前だけの一切詳細不明の魔神である。

 闇が弾けた。

 吹き抜けた風の如く、闇の中から一体の魔神が其処に誕生する。なにもかもを超えた『神』そのもの。ダークザギを凌駕した絶対なる暗黒だった。

 

 全てを見透かすような憎しみに塗れた蒼き瞳。血管の如く浮き出た真紅のラインが体中に張り巡っている。鋭い牙と爪を伸ばして、巡らせたその首にはファウストとメフィストの顔があった。

 その魔神の名は────、

 

 

 

 究極暗黒魔神──『ダークルシフェル』

 

 

 

 六つの瞳がギロリと正面を睨んだ。その憎悪に満ちた眼差しが三人の巨人を射抜き、カラミティとネクサスは一歩退く。その刹那──コスモスが吹き飛んだ。

 

『──コスモス!!』

 

 振り返った先──そこには魔神の顔があった。

 驚愕。逡巡を押し切って腕を振り払うが、一瞬にて動きが止まる。腹部から競り上がった熱が全身に巡る。視線を下ろすと、カラミティの腹部をルシフェルの鋭利な爪が貫通していた。

 

『あ……く、そ……』

 

 勢い良く爪が引き抜かれ、カラミティの腹部から血液の如く光の粒子が溢れ出た。激痛に堪えて正面を睨むが、容赦のないルシフェルの蹴りがカラミティを紙のように吹き飛ばした。

 ビルを巻き込みながらカラミティが転がり、激痛と振動に声を漏らした。

 慌てて背後から飛び掛かったネクサスが、シュトロームソードを振り下ろす。だがルシフェルはその刃を見ることなく片腕で掴み取り、握力に任せて粉々に圧し折った。更には困惑を隠し切れていなかったネクサスの首をがっしりと掴んだ。

 抵抗は意味もなく、ルシフェルがネクサスを掴んだまま空いた腕を引き絞り、その腕に暗黒を纏わせてから一気に叩き付ける。闇が弾けて、ネクサスの身体が宙に投げ出された。それだけでルシフェルの攻撃は終わらず、吹き飛ばされたネクサスへ向けて右腕を翳し、念力を以て地面に叩きつけた。

 

『ツバキ……!』

 

 腹部を抑えながら、倒れたネクサスのもとにカラミティとコスモスが駆け寄る。手を取り合って立ち上がり、正面で鷹揚と腕を広げたルシフェルを睨んだ。

 禍々しい魔神はその牙を開き、喉の奥から獣の如き唸りを漏らす。それは憎悪が満ち満ちている低い憎しみだった。

 

『コスモス、まだ戦えますか?』

 

 問い掛けて、コスモスは頷く。だがカラミティもコスモスももはや限界。次の一撃が最後と言っていい。オーバーレイ・シュトロームにオーバーアローレイ・シュトロームを連続で使用したネクサスには、まったくといっていいほどにエネルギーは残っていない。いまツバキが立てているのも奇跡に近かった。

 コスモスとカラミティの二人が一歩前に踏み出して、クロスパーフェクションを撃ち放つ。二つの強大なエネルギーが絡み合い、組み合わさった光線がルシフェルに直進──だが次の瞬間に、放たれたクロスパーフェクションが引っ込みながら元に()()()

 

 

 

 まるで、()()()()ように────。

 

 

 

 何が起こったのかまるで理解できず、ルシフェルの右腕から爆大な暗黒の塊が光線となって放たれる。逡巡の判断で三人はバリアを展開したが、バリアなど意味を成さず一瞬にして破壊され、三人のウルトラマンに直撃──刹那の閃光が瞬いて、三人の絶叫が爆炎と共に巻き上がった。

 

 

 

 その瞬間、ウルトラマンは完全なる敗北を喫した。

 

 

 

 爆炎が天に昇り、その中から姿を見せたウルトラマンたちの瞳とカラータイマーからは完全に光が失われ、力なくそのまま地面に倒れ伏せる。そして三人の勇者たちは、光の粒子となって空気に溶けて消えた。

 絶望の巨人が、燃え盛る炎の中で肩を震わせる。嘲笑とも取れる声をその喉の奥から漏らして────、

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 絶望。恐怖。倒れ伏せた冷たい地面の感覚が、その事実を身体に染み込ませる。あまりにも力の差があり過ぎた。力が弱っていたとはいえ、まったくといっていいほどに歯が立たなかった。

 ダークザギの時は、まだ勝てる希望が持てていた。だがしかし、ダークルシフェルに対しては勝てる想像すらもできない。一切詳細不明──それはどんな能力を持っているのかも、予測ができない。弱点、そんなものも分からない。それでいてダークザギよりも遥かな強さを誇るなら、もはやウルトラマンの力では勝てない。

 

「嗚呼……ここまでやったのに……」

 

 ぼんやりと呟いて、隣に顔を向ける。その先には胸を抑えて呼吸を荒くしているツバキの姿があった。激痛が駆け巡る身体を寄せて、震える彼女の手を握り締める。彼女はシュウの名前を呟き、握り返した。

 ツバキが好きだと言った景色を守ろうと、彼女と最後まで過ごそうと、なにもかもを守り抜こうと努力し、命を懸けて戦ってきた。それが全て意味を成さない。命を懸けた意味があったのか、なんのために戦ってきたのか、もうなにも分からない。

 

「ごめん、ツバキ……ごめん、ごめん……」

 

 ただ漏れる言葉は、謝罪だった。

 震える声が言葉を紡ぎ、蓋から溢れ出した涙が後悔と共に流れ落ちる。嗚咽混じりの声で、ただただ謝罪を述べていると、涙が流れた頬にツバキが優しく手を添えた。

 

「謝らないで、シュウは、頑張ってたから……」

 

 ツバキは途切れ途切れの声で紡いだ。

 その手を握り締めて、シュウの涙が塗れる。そしてなにもかもを思い出した。

 なんのために戦い、なにを思って光を手にしたのか、全てを守り抜こうとしたこの覚悟。その全てを、その想いを、なにもかもを抱いて、シュウは唇を噛み締めた。

 その時、砂利を踏み締めた音が鳴り、振り返った先に怪我を抑えたムサシが立っていた。彼はボロボロな状態でもあるのに、柔らかく笑って見せた。

 

「たとえ宇宙の星屑になろうと、希望はいつも共にある。だから、自分自身を信じるんだ──!」

 

 その言葉を胸に、シュウは全霊で歯を食いしばった。

 

「諦めて、たまるか……ここまでやってきたんだ。ウルトラマンは、どんな時でも諦めなかった……命を落としてでも、この平和を守ろうと努力して来た」

 

 なら、とシュウはツバキの手を握り締めてから、彼女の身体を支えながらゆっくりと立ち上がった。

 

「それなら、俺だって諦めない」

「シュウ……」

 

 呼ばれて、視線を向けると、ツバキは頷いた。

 

「私も、諦めないよ……最後の一時まで、シュウと一緒にいたいから」

「俺もだよ」

 

 見上げた先──ダークルシフェルが両腕を広げて高らかに笑っている。ルシフェルを睨んだ直後に、ムサシが二人の肩に手を置いた。

 瞬間、エボルトラスターとカラミティプラック、コスモプラックの三つが光を灯す。三人はそれぞれのアイテムを握り締めて、お互いに視線を交してから頷いた。

 

「そうだ二人共。最後まで諦めちゃダメだ。本当の戦いは、ここからなんだ」

 

 三人が魔神を前に立ち上がった。

 眼前の暗黒を見据えて、光を強く握り締めた。

 

「本当の戦いは──!」

 

 ムサシが、コスモプラックを握り締める。

 

「本当の戦いは──!」

 

 ツバキが、エボルトラスターを引き抜く。

 

「本当の戦いはぁぁぁ──ッ!」

 

 シュウが、カラミティプラックを握り締めた。

 そして三人の想いが重なり合った。

 

 

 

 ────より高く。

 

 

 

 ────強く、願った。

 

 

 

『『『本当の戦いは、ここからだ!!』』』

 

 

 

 転瞬──光が、(はし)った。

 全ての絶望を照らし尽くす奇跡の光。それは二つの人の形を形成して、眩い輝きを放ちながらダークルシフェルを焦がし、簡単に吹き飛ばした。

 その輝きは宇宙全土を照らす。光をより彼方へと届け、その想いを聞き入れ、その祈りは伝説へと至った。

 

 全ての神々と居並ぶ至高の伝説。

 その光は全てを超越し、その力と栄光が語られる英雄たちの伝説が、今此処に彩られる。万物万象を凌駕した極限至高の伝説が、今此処に絢爛する────!

 

 一つ。

 それは全宇宙に語られる伝説の戦士。

 全能の神に相応しい戦闘能力を持ちし、今世紀最強と謳われる伝説のウルトラマン。

 

宇宙の大いなる二つの力が出会いし時

その輝きの中で、真の姿を現す

 

 そしてもう一つ。

 それは幼き頃に憧れた銀色の流星(ウルトラマン・ザ・ネクスト)それは受け継がれてゆく魂の絆(ウルトラマンネクサス)を繋ぎ、紡いで誕生する伝説の巨人。太古より全宇宙の平和を守り続けてきた神の如き光。

 それは、太古からの約束。

 

 ────その時、誰もが上を見た。

 希望を諦めぬ者たちが、彼らを呼び醒ました。

 絶望に呑まれゆく世界ならざる、宇宙の果てより、伝説に語られし英雄たちが今こそ此処に──!

 ()の名は────、

 

 

 希望を諦めぬ伝説の戦士ウルトラマンレジェンド。

 光を受け継ぐ究極の巨人ウルトラマンノア。

 

 

 

 奇跡の輝きが、今此処に顕現する────!!

 

 

 




ダークルシフェルは知っている人も少ないかもしれません。
ルシフェルは本来ウルトラマンネクサスのラスボスを務めるはずだった巨人で、その全容は明かされておらず、ウルトラマンネクサスの短編外伝小説にて登場しており、ウルトラマンノアと対峙して終わっております。
その為、ルシフェルの能力や強さは完全に独自設定になります。
次回最終回です。

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