窓から光り輝く煌めきに、病室にいた者たちは顔を覆い、目の前の出来事に理解できなかった。
窓を開けて見上げたその先。真紅に身を包む巨人が立っていた。
巨人は真っ直ぐに敵を見据え、拳を握り締める。巨人と対峙する巨大な怪鳥──ゾイガーは獰猛な眼差しで巨人を睨み、耳を聾する雄叫びを上げる。
刹那──巨人が駆け出した。
真紅に身を包む巨人──ウルトラマンカラミティは、一歩を踏み出したと同時に一瞬でゾイガーの眼前まで迫り、拳を振り抜く。
火花が撒き散り、ゾイガーは悲鳴に似た声を上げて蹌踉めくが、激痛を振り払ってカラミティを蹴り飛ばした。
「──っ!」
たたらを踏んだカラミティに向け、口から放たれた光弾がカラミティを更に吹き飛ばす。ビルを巻き込みながら倒れ、シュウは苦痛の表情を浮かべた。
「あ、あぁ……っ」
激痛から頭を振り払って、肩を大きく上下させながら立ち上がる。だがその瞬間に、二本の鋭利な爪で首をガッシリと掴まれた。
ウルトラマンティガとも並ぶ戦闘能力。自身の翼を引き千切る程の怪力は、カラミティを軽く持ち上げた。
「く、そ、あ゛ぁ……」
上手く呼吸ができない。首が圧迫され、その爪を剥がそうと腕に力を込めても、ゾイガーの怪力に勝る力は生まれない。必死に藻掻いても、その爪が離れることはない。
このままじゃ──マズイ。
意識が遠退く。視界が四方から暗黒に呑まれ始める。やがて藻掻いていた身体も、徐々に力が抜けて行く。瞬間、腹部に刹那の冷感──それは一瞬で熱を帯びて激痛へと変化した。
「あ……」
視線を下ろせば、腹部には鋭利な爪が突き刺さっていた。
抉るように、ゾイガーはカラミティを睨みながら、更に奥深くまで捻り込む。
「────ッ!」
声にならない激痛。光の粒子が血液のように溢れ、空気に吹き出て溶けていく。
掻き毟りたくなるほどの激痛に意識が支配されるが、ゾイガーは爪を一気に抜いてカラミティを投げ飛ばした。
態勢を変えることも、受け身を取ることもできずに大地に転がるカラミティ。辺りに震動を蚕食させ、カラミティはそのまま転がって倒れ伏せた。
「…………」
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
ただ痛い。のたうち回ることを強要していた『激痛』は、全身を侵食してシュウの意識を闇へと誘った。
ゾイガーの咆哮が響き渡る。一定の感覚で響く震動は、徐々に近寄って来ているのを感じた。
『シュウ』
カラミティの声が脳に響く。
「わかっ、てる……ちょっと、待って……」
今まで感じたことのない激痛に、脳が刺激して『痛み』を『熱』と変換させて身体に巡る。
ツバキは、毎日この痛みを味わっている。毎日毎日、この痛みを味わいながら、必死に隠し続けて笑っていた。
「ウルトラマンだって、こんな痛みじゃ倒れない」
力を、込める。抜けて行く意識を、遠退くチカラを、必死に掴んで身体に言い聞かせる──立て、と。
ここでやらなければ意味がない。ここで立たなければ全てが終わる。こんなところでくたばるほど、性根は腐っていない。
「最後まで諦めず、不可能を……可能にする──」
かつて
彼は最後まで諦めず、何度も立ち上がり、仲間たちと共に戦い抜いた。その彼が──ウルトラマンメビウスが紡いだ言葉を、シュウは自分に言い聞かせる、
「──それが、ウルトラマン……」
ゆっくりと、膝を抑えて立ち上がる。顔を上げて眼前を睨む──目を見開いた。
ゾイガーの放った光弾がカラミティに迫る。慌てて腕を交差させた直後、光弾が脇腹を抉り、カラミティの身体は後ろに吹き飛んだ。
「はぁ……ち、ふぅ……」
刹那、呼吸が整った。
思考から激痛を振り払って、一気に起き上がる。既に放たれていた光弾の全てをブレイキングスマッシュで相殺。高速移動にて一瞬で距離を詰め、右脚を振り上げる。だが足を一歩引いて回避される──すかさず足を組み替えて後ろ回し蹴りを放ち、ようやくゾイガーに一撃を与えた。
蹌踉めくゾイガーに追い打ちをかけ、右腕を大きく引き、一気に突き出す。だがゾイガーは素早い動きで屈んで回避──剛力による回し蹴りがカラミティの腹部を刺激した。
「く……っ!」
故意的に傷を負った腹部を執拗に狙って、ゾイガーは蹴りを放ち、カラミティが怯む暇もなく光弾で追撃。カラミティは膝から崩れ落ち、肩を大きく上下させて呼吸が荒くなる。
「ゾイガーって……こんなに強いのか……」
これで尖兵かよ、そんな文句混じりの言葉を呟きながら、シュウは立ち上がる。激痛に顔を歪めながらも戦闘態勢を構えた直後──ゾイガーは視線をカラミティから別のものへと向けた。
「なにしてんだ……」
その視線はカラミティの背後や横にある建物群へ向けられ──ゾイガーは両腕を震わせて口を開いた。
「──ヤバイっ!」
意図に気が付いた瞬間、
ゾイガーの口から複数の光弾が放たれ、辺りの建物を一瞬で破壊。その幾つかが病院へと伸びて行き、カラミティが滑り込むように身体を盾にした。
背中に激痛が走り、全身へと駆け巡った。
カラミティが呻き声を上げる。それでもその場から両腕を広げたまま動かない。
意識が遠退くのを感じる。
視界がスローモーションに感じ、見下ろした視線の先に一枚の窓が映り込む──ツバキたちのいる病室。
シュウは目を疑う。そこには窓から外を覗くように、ツバキがカラミティを見上げていた。
「ツバキ……」
その間もゾイガーの光弾はカラミティを攻撃し続ける。火花が散り、光の粒子が血液のように吹き出た。
視界が明滅。それでもシュウは倒れず、意識を手放さずに病院を──ツバキを守り抜く意地を見せる。そして光弾を受け続け、シュウは更に目を見張った。
見上げていたツバキが突然、胸を抑えて蹲った。
爆発に似た轟音が聞こえる中──ツバキの呻き声が、苦しむ声が、荒くなる息が聞こえた。
「つば、き……っ」
光弾を受け続けながらも、シュウは立ち上がる。全ての光弾を受け止め、ゆっくりと立ち上がったカラミティは、眼前を睨んだ。
カラミティの異変に、光弾を撃ち続けていたゾイガーの動きが停止。その瞬間、カラミティが両腕にエネルギーを集中させて、三日月を描いた。
「──っ!」
三日月型に描かれた刃──カラミュームブレードを押し出す。三日月の刃は寸分の狂い無くゾイガーに直撃。黄緑色の血液が撒き散り、ゾイガーが悲鳴の如き鳴き声を上げる。瞬間、ゾイガーは翼を広げ空へと跳躍した。
「お、おい! オスだかメスだか知らねえけど、正々堂々降りて来い!」
空を飛び、カラミティを睥睨するように見下ろすゾイガーに、シュウは叫び散らす。
カラミティも空を飛ぶことはできるが、何分シュウがカラミティに変身してから数時間と経っていない。空を飛ぶ方法なんて知らないのだ。
『シュウ、私たちも飛べる』
「どうやって?」
『意識するのだ。自分は飛べるのだと、あとは流れに身を任せるだけだ』
「そんな簡単なの? よし──」
神経を集中させ、意識を一つに纏める。だがそんな暇などない。上空に飛び上がったゾイガーが、カラミティに向けて複数の光弾を吐き出した。
迫り来る光弾。しかし空中にいる所為か、その狙いは外れていきカラミティの辺りを吹き飛ばして破壊する。そしてその一瞬が、カラミティに空を飛ぶ時間を与えた。
巻き上がる紅蓮の中、両腕を広げたカラミティが風を切って飛び上がった。
空中に飛び上がった二つの巨影。暗雲の下に、光の尾を引いて超高速の戦闘を繰り広げる。だがゾイガーの速度はスノーホワイトをも凌駕し、スカイタイプでもようやく追い付ける速さ。
カラミティが追い付ける訳もなく、徐々に距離を離される。故に、カラミティはブレイキングスマッシュとカラミュームブレードを駆使して攻撃。
舞い踊る二つの流星は光を散らして、天に昇る。
縦横無尽に天を駆けるゾイガーに、ブレイキングスマッシュは全て回避された。だが回避した先の位置に見当を付けて、カラミュームブレードを放つ。
狙い過たず、カラミュームブレードはゾイガーの翼を切り裂き、大地へと振り落とした。
「カラミティっ!」
『シュウ!』
二人の意識が合わさる。ゾイガーの隙を逃さず、カラミティが右腕に憎悪の如き紫紺のフレアーを溜め込んだ。
大きく右腕を突き出した直後にカラミュームショットが放たれ、狙い過たずゾイガーを撃ち抜いた。
溢れんばかりのエネルギーが一気に放出され、ゾイガーの動きが完全に停止。次の瞬間に、刹那の瞬きを閃かせて大爆発を起こす。大気の声なき絶叫と荒れ狂う爆風に辺りのものが吹き飛び、紅蓮が立ち昇った。
「はぁ……はぁ、はぁ……ツバキっ!」
慌てて振り返り、シュウは変身を解除することすら忘れて病室を覗く。リンドウやリツカが倒れたツバキを抱え、ベッドに寝かせていた。
ツバキの顔色は良くない。息も荒くなっているように見える。
「ツバキ……」
唇を噛み締める。何もできない自分が許せない。
カラミティの変身が解除され、目を開ければそこは病院の屋上。痛む身体を無理やり動かして、階段を駆け下り、病室の扉に手を掛けた直後──腕をガッシリと掴まれた。
「んな──っ」
声を上げるよりも早く、腕が握られて投げ飛ばされる。床に大きく叩きつけられ、肺から空気が漏れる。意識が飛び掛け、視界が明滅した。
激痛に顔を歪め、眇めた目で見上げた先には、ダークファウストが悠然と立っていた。
『──ふっ』
肩を震わせ、シュウを見ながらファウストは嗤う。
シュウは舌打ち──急いでいる時に限って、と癇癪を起こして怒りを顕にした。
「邪魔すんなよ!」
声を荒げた直後──ファウストが紫紺の光弾ダークフェザーを放ち、慌てて横に転がる。転がった先に、すぐさま距離を縮めたファウストがシュウを蹴り飛ばし、倒れても更に蹴り放った。
そして倒れたシュウの首を掴み、高々と掲げる。
「く……か、はっ……」
息が、できない。
ただの人間と超人とでは、明らかに差が大き過ぎる。シュウでさえも、ファウストの前では赤子のように扱われていた。
『脆い、貴様のチカラはその程度か……?』
「こ、の……っ!」
藻掻いても、ファウストが片腕を離すことはない。寧ろ更に強く締め付けられ、意識が遠退く。
──このままじゃ、マズイ。
死を間近に感じながら、シュウはカラミティプラックを懐から取り出した。
『なにか、言い残すことはあるか?』
「ちょ、っと……考える時間、もらえる……?」
苦しみながら軽口を叩き、シュウはファウストにカオスプラックを突き付けた。
次の瞬間にカオスプラックから真紅の稲妻が駆け、ファウストが苦痛の声を漏らして手を離した。
『ふ、ふ、ふ……』
笑いが聞こえる。腕を払い、ファウストは肩を震わせて笑った。
『面白い』
たった一言。ファウストがそんな場違いなことを呟き、聞かずにシュウは駆け出した。
大きく一歩を踏み込んでから足を大地に叩き付け、勢いと全ての勁力を拳に乗せてファウストに突き出す。だが片腕で受け止められ、腹部を蹴り飛ばされた。
胃が捻れるような激痛。喀血するように息を吐き出して、シュウは腹部を抑える。次の攻撃が来ることを予測したが、ファウストは鷹揚と両腕を広げ、
『それでこそ、戦う意味がある──』
たったそれだけを言い残して、ファウストの身体が紫紺の歪みに包み込まれる。不気味な笑い声を上げ、ファウストの姿は空気へ溶けるように消えて行った。
「あいつ、なんの為に出てきたんだよ……正体がツバキじゃないことを祈ろう……」
僅かに抱いた怒りを抑え、シュウは荒らげる息をゆっくりと整える。痛みはかなりまだ残っているが、和らぎ始めた頃に病室の扉を開いた。
「シュウくん……!」
入った直後、シュウの存在に気が付いたリンドウが声を荒げた。
リンドウとアキナ、そしてリツカの三人がツバキを囲んで慌てている様子だった。
「ツバキ! ツバキ!」
慌てて駆け寄ったシュウはツバキの名前を叫び、なにが原因なのか視線を巡らせて探す。ツバキは苦痛に表情を歪ませ、呼吸を乱して荒く肩を上下させている。薬の効果が切れるのは早すぎる。
「くっそ、血か……」
しばらく問題がなかった故、先送りにしてなにも考えていなかった。
ツバキは体内の血液を体外へ流して、逆に輸血パックに詰められた血液を体内に送る方法で生きていた。
いまや緊急事態の中、そんなもの用意していない。
「待ってて、今すぐ持ってくる!」
慌ててその場を離れようとした瞬間、腕が掴まれてシュウが振り返ると、ツバキが息を荒くしてシュウの腕を掴んでいた。
「ツバキ……?」
大きく荒く息をするツバキは、ゆっくりと震えながら指を指す──その先を辿ると、そこには画面が映し出されたテレビ。
「おい、マジか……」
シュウは顔を引き攣らせて、ポツリと呟く。その瞳が見つめた先のテレビに映し出されているのは、さっきと変わらない超古代都市ルルイエの映像。だが変わっていることが一つ──それは一目見たシュウも一瞬で理解できた。
『□□□□□□□□□□──ッ!!』
身体の奥底から震えあがるような、腹の底から響く甲高くも低い不気味な咆哮がテレビから響き渡った。
レポーターらしき女性が声を荒げ、悲鳴に似た叫びを散らして、次の瞬間にテレビの画面が切り替わり、砂嵐と耳に残るノイズに変わった。
「シュ、ウ……」
「ツバキ?」
「おね、がい……ウルトラ……マンに──」
「ツバキ……?」
途切れ途切れの訥々とした声が、やがて聞こえなくなる。彼女を見ると、ツバキは瞳を閉じて口を開かなくなっていた。
「ツバキ! ツバキっ!」
身体が熱い。意識が燃える。声を荒げ、必死にツバキの名前を叫ぶ。どうしたらいいのか分からず、シュウの思考はパニックに陥っていた。
────イヤだ、そんなのはイヤだ。
「ツバキ!」
「シュウくん!」
叫び散らすシュウを抑え、リンドウが正面に入り込む。だがシュウはリンドウを突き放そうとした。
「シュウくん! 彼女は気を失っているだけだ!」
「それでも……っ!」
いま何とかしなければ、ツバキはこのまま──それだけは絶対にイヤだ。
慌てて困惑する様子を見せるシュウの肩をガッシリと掴み、リンドウが真っ直ぐに見つめた。
「落ち着きなさい!」
「落ち着いてられるかよ!」
「彼女から伝言を預かってるんだ!」
「…………え?」
リンドウが怒りを顕にしながら口にした言葉。シュウの意識はその言葉へ向き、一時の冷静さを取り戻した。
ふう、と大きく溜め息を吐き、リンドウはツバキから告げられた言葉をシュウにゆっくりと伝える。
「君には、怪獣をどうにかすることを考えてほしい。ウルトラマンと共に世界を守ってほしいと、彼女は言っていた」
唇を噛み締める。
いつだって、ツバキは自分より他人を優先する。自分は助からないから、他人を多く助ける。だからいつも不幸を患い、その現実に焦燥して今に至っている。
「今のところこの場で、この現状に一番詳しいのは君だ。ここは私たちに任せてくれ」
「…………でも」
選択を定められないシュウに、リンドウは力強く肩を掴み、睨み付けるようにして叱責する。
「できるのは君だけなんだ! 私たちにはあの化け物どものことなんて全く分からない。ウルトラマンとコミュニケーションを取ることすらできないんだ! 君がここで決めなければ、全ては消えるんだぞ!」
それだけ怒号を叫び散らして、リンドウの力が優しくなる。表情も眉間にシワを寄せていたはずが、柔らかな表情へと変わっていた。
「君は誰よりもはやく行動して、あのグリーザをなんとかすることができたんだ。だから、頼む」
深々と頭を下げたリンドウ。
シュウは拳を握り締め、気を失っているツバキを見つめる。そしてゆっくりと力の失った手を握って、自分の額に当てた。
「すぐに、戻ってくる……ツバキ……」
「私たちになにかできることは?」
顔を上げ、シュウはリンドウやリツカたちに向けて口を開く。
「恐らく、今必要なものはツバキに適応する血です。輸血パックが、ツバキの病室に幾つかあったと思います。そこに必要なものは全て揃っています」
「彼女の病室は?」
「三階の一番端、一際大きな病室です」
分かった、とリンドウやアキナ、リツカたちが頷く。
「ですが、リンドウさんたちも何か病気なのでは?」
「ふ、私はただの胃腸炎だ。先の短いただの老いぼれだが、このまま若い者に任せて何もせず死ぬ訳にはいかない。それでは先祖に顔向けできん」
次にリツカへ顔を向けると、彼女はダイゴを抱き締めていた。
「大丈夫、すぐに戻ってくるからね」
リツカはゆっくりと立ち上がって、シュウの前に歩み寄る。そして訥々とした小さな声で口ごもり、
「わ、私も、手伝います……昔ここの看護師をしていたので、多少なりとも院内の案内はできます」
「ダイゴくんは良いのか?」
「……はい。アキハさん、ダイゴをお願いします」
「ええ、分かったわ」
リツカはシュウを見据え、リンドウも柔らかく笑って「あとは、君だ」とシュウに選択肢を与える。
ツバキのために世界を投げ売るか、世界のためにツバキを見捨てるのか──否、見捨てるのではない。リンドウたちにツバキを託すのかだ。
唇を噛み締め、シュウの覚悟は決まった。
「──ツバキを、よろしくお願いします。俺はウルトラマンにガタノゾーアの事を伝え、すぐに戻って来ます」
リンドウたちが精悍な眼差しで頷く。そしてシュウは飛び出るように駆け出した。
ガタノゾーアに勝つ方法は、未だに思い付かない。だがそれでも、勝てると信じて挑まなければ、勝利を掴むことなんてできない。
相手が邪神? 心の強さが不可能も可能にすると、圧倒的な力の前にも諦めないことを、ウルトラマンたちは教えてくれた。
「俺はこの世界を、一番大事なツバキを守りたい!」
だから──とシュウは開いた窓から一気に飛んだ。
懐からカラミティプラックを取り出し、その願いの全てを込めて叫ぶ──混沌の光が生み出す真紅の雷。
「──カラミティッ!!」
身体が、視界が、一気に光に包み込まれる。
暗黒が跋扈して呑まれる世界、憤怒の雷鳴が轟き、真紅の輝きが溢れて屹立。その中から巨大な光の巨人が飛び立ち、超高速の飛行速度にて南太平洋のガタノゾーアに向かった。
暗雲を縫って、より一層深く、広く、濃く空を覆い隠す暗黒。超古代都市ルルイエが眠る中心に、世界を闇で塗り潰す邪神が佇んでいた。
『□□□□□□□□□□──ッ!!』
世界中の大気が、邪神の絶叫により揺さぶられたかのような大音響。ビリビリと席巻する絶対的な絶望感が、海上を震動させて揺すり上げ、ブワッと全身から脂汗が噴き出した。
画面越しでは何も感じられなかった咆哮が、眼前に迫り、シュウは自らの無謀さを呪った。
だが、ここに来て逃げ出しはしない。
カラミティはガタノゾーアを見下ろすように見つめ、拳を握り締める。
暗黒を支配する絶対的な闇の象徴たる邪神。
ウルトラマンカラミティは暗黒を切り裂き、より彼方へと光を届ける為に──皆の覚悟を抱き、暗澹とする世界の中で眼前の邪神を睨んだ。
世界を守るため、彼女が好きな景色、彼女自身を救いたいがために、戦う覚悟を決めた。