バレンタインデーの為に気合を入れてチョコレートを作った斎賀玲。しかしどうやって渡せば良いか分からなくなった彼女は、当日になって怖気付いてしまったのだった!!頑張れ!斎賀玲!!!
バレンタインデー
それは全ての恋する乙女にとって避けられない重大イベントである。こと斎賀玲にとっても、それは例外では無い。
(うぅ……今年こそはちゃんとチョコを渡さなきゃ)
そう決意して今日という日を迎えたのだが、特になんのアクションを起こすこともなく学校を終え、帰路についてしまった。
学校で友人と交換しているついでに渡そうとも考えたのだが、それができるのならば去年まで敗北を重ねていないのだ。
旅狼の皆さんは、どうしているのでしょうか……
目の前の不安から少しでも逃れる為に、玲は同じクランに所属するメンバーの事を考える。例えばクランリーダーでありファッションリーダーでもある彼女、天音永遠は、いったいどんなバレンタインデーを過ごすのだろうか?
『やあやあ諸君!バレンタインデーは勝負の日!
頭から爪先までバシッと決めて、気になるアイツに突撃だよ!!』
『贈る勇気が出ない子には、私から後押ししてあげる!さあ!行ってらっしゃい!!』
それは街中に設置されているスクリーン広告
彼女は自信に溢れた迷いなき言葉で見る者の不安をかき消すようなエールを送っていた。
「って言ってたけど、実際どうなの?」
「変な勘繰りはやめてよね〜。あれはマジメに言ってるんだよ。ダメでもその場で分かるし、手っ取り早くて良いじゃん?」
「自爆も想定してるのがお前らしいな」
〜〜
「それはそうとさ、2人とも届いた?」
「届いたよ。というかこれって今流行ってるブランドのやつでしょ?良いのこんなの貰っちゃって」
「宛名そのままって聞いてたから今日一日中玄関前に張り付くハメになったんだが。妹に見つかったらマジで極刑に処されてるぞこれ」
「あはは、それ妹ちゃんの分もあるからちゃんと渡してあげなよ?」
天音永遠の場合:いつだって流行の最先端!
「それと2人とも、ホワイトデーは3倍返しね?」
「これの3倍とか何贈ればいいのさ」
「勝手に送りつけてその言い草、詐欺の事例とかで見たことあるんだけど」
「君たち私からのチョコって事の重大さを分かってないようだねえ?カリスマモデルからのバレンタインプレゼントなんだから、家の一つや二つ喜んで用意して欲しいよ」
「コトの代価が重すぎないか」
「そりゃそうだよ。どんな形でも、この日のプレゼントは特別なんだし」
「特別……かぁ」
ラッピング、材料、造形、全てにおいて友達用に用意したものと別で用意したそれは、紛れもなく特別なひとつだった。
だが、これを渡してしまって良いのだろうか。
変に凝ったものではなく、他と同じものを用意した方が気兼ねなく渡せたんじゃないか。
もし他の人と別のものを渡した事がバレたら、重いと思われたりしないだろうか。
もしかしたら気合いを入れすぎてしまった……かも、しれない。そう思うと、尚のこと足が重くなってしまった。
「でも実際さ」
「バレンタインだからって気合を入れてチョコレート作ったのなら、さっさと渡しちゃえばいいよね」
「うーん、そんな簡単なことでも無いんじゃない?いざ渡すってなると緊張しちゃうだろうし」
「そこがよく分からない。普通に話しかけて渡すのが難しいなら、こんな風に一緒に食べたりさ」
「それはちょっと特殊だと思うな……僕が言うのもどうかと思うけど」
ルスト&モルドの場合
互いにチョコレートを贈り合いその場で食べる
既に今日という日もあと7時間と少し。
迫るタイムリミットを前に、ため息ばかりが積もっていった
続きます