岸くんに憑依したので世界は救われないかもしれない   作:Iaなんとか

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幻惑乱舞のラプソディー

 

「先生~助けてください~! ヘンな人に追っかけられて…!」

 

「隠れてないで出てきたらどうかな~公安警察の狂真咲真軌(くるまざきまさき)さん♪

 いたいけな女の子に強制尾行*1をして泣かせるのは流石にナシだよね~☆」

 

「NISC*2所属、上席サイバーセキュリティ分析官*3の遠野帆稀さんですね。

 先程は失礼しました。」

 

「け、警察ですよ、先生!?」

 

「私は今年からの採用で祈梨(イノリ)ちゃんは関係なかったよね?

 どうして祈梨ちゃんを付け回したのかな?」

 

「それは…」

 

「NISCが『ミネルヴァの目覚め』事件を嗅ぎ回ってるのが気に入らないから…だよね♪

 公安*4はICPO*5と組んで、裏でコソコソと何か企んでいるようだけど…

 アストルムの案件は私たちのナワバリでもあるんだから、邪魔しないでね☆」

 


 

魔物の群れが安全地帯であるランドソル市街に雪崩れ込む。

 

それはネネカのプリンセスナイトであるマサキの能力、煌輝創正(デカダントライト)によるものだった。

 

ネネカの策略により分断されたトゥインクルウィッシュ…ヒヨリ、レイ、ユイ、そしてユウキの4人は、各々他のプレイヤーと協力して魔物を倒しながら、合流を目指す。

 


 

マサキの能力で操られたモンスターに追い立てられたレイは、市街近くの森の中で、襲い来る魔物を持ち前の剣技で一体ずつ倒していた。

 

「切りがない…早く合流できるといいんだけど。」

 

魔物は色んなモンスターをグチャグチャに合成したキメラのようだった。

そんな魔物が次から次へとレイに襲ってくる。慣れない敵との連戦はレイを疲弊させていた。

 

「ふう…これで打ち止めかな…?」

 

あたりを見回しても敵はいない。レイは一息つこうとする。

だが、前方からモンスターとは違う足音、グサッ、グサッっと、一歩ずつ草の生えた地面を踏む音が聞こえてきた。

 

「誰だ!」

 

そこでレイは()()()()()()()に邂逅する

 


 

街の外れでヒヨリはリンと一緒に戦っていた。

 

「あたしが敵を受け止めるから、ヒヨリはその間に魔物の後ろに回り込んで!」

 

「わかったよ、リンちゃん!」

 

この二人はユウキが最初にログインした時に仲良くなった。

かいつまむと、陰キャ(リン)陽キャ(ヒヨリ)の『友達になろうよ!』攻撃に屈してしまったのだ。

それから、ひよりと(リン)の交友関係は始まり、アストルムや現実(リアル)でも会うようになったのだ。その後も、ヒヨリはチアリーダーの姿で、リンが出場するゲームの大会の応援に行ったりもした。

なので、連携はお手の物である。二人の絆が発揮されていたとも言えよう。

 


 

ユウキはヒヨリと合流できたが、あることに頭を悩ませていた。

 

「ステータスも全部同じだよー。

 どうやって確かめたらいいんだろ~??」

 

ネネカによる『真似』は精巧だ。はっきり言って身内でも判別するのは厳しい。

ヒヨリは二人のレイ…レイAとレイBを前にどちらが偽物か、ぐぬぬと悩む。

 

「キミなら本当の私がどちらか分かるだろう?」

 

「もしかして分からないなんて…言わないよね…?」

 

ユウキは間違えて偽物を選んでしまったらどうしようかとメチャクチャ焦っていた。

 

「えっと…、そっちの方のレイが本物だと思う。」

 

散々悩んだ末に、ユウキはレイAの方を指差す。

 

「だと思う? そんな答えじゃ到底納得できないな。

 幼馴染としてもっとはっきり答えてくれると思ってたよ。」

 

レイAはユウキのあやふやな答えに怒りを表現した。

 

「そういえば、リアルでヒヨリとレイに会って戦い方について話し合ったんだが…

 ユイにも前線で戦えるように、スキルを覚えてもらうことになったんだけど、どう思う?」

 

ユウキはあからさまに話題を変える。

 

「うん、いいんじゃないかな。 ユイもソロで戦うこともあるだろうし。」

 

レイBはそれを肯定する。

 

「リアルで二人に会った? つまりオフ会を開いたってこと?

 報連相もそうだけど…私に声をかけもしないで集まるなんて…ひどいじゃないか!」

 

レイAは感情を顕わにユウキに詰め寄る。

 

そして、ユウキは…

 

「…両方ともニセモノだろ。

 片方の『真似』のレベルを落として気づきにくくしたようだが、残念だったな。」

 

…レイを二人とも斬った。

 

「偽物が見つかって良かったー おてがらだね♪

 でも、本物のレイさんとユイちゃんが心配だね。 探しにいってくる!」

 

ヒヨリは本物のギルドのメンバーを探しに行こうとする。

 

「あれは…オレの昔から()()()()()人物像そのものだ。

 だからこそ、本物と虚像との見分けは、簡単につく。 なあ、ネネカ(ヒヨリ)…」

 

ユウキはヒヨリに化けたネネカの肩を掴み、その首筋にダガーの刃を添えた。

 

「逃げるなよ…今、ここで決着をつけようか。」

 


 

魔物が蔓る街中に一人、ユイは取り残されていた。

 

物陰に隠れたユイは利き手に杖を握り、もう片手を自由にした。

そして、手慣れた手付きで小石を投げて魔物を誘導し、魔法で纏めてなぎ倒す。撃ち漏らした魔物は杖の先に素早く形作った魔力の剣で薙ぎ払う。空いた手に短刀を持ち替え、魔力を温存しながら、背後から忍び寄り一体、また一体と急所を掻っ切る。その後もユイは高低差や障害物を利用し、すり足と駆け足を舞踏のように組み合わせ、敵の死角から攻撃を仕掛けて次々と倒していく。

 

魔物の指揮をしていたマサキは一箇所だけ、不自然な倒され方をするグループがあることに気がついた。他のグループは戦闘によって順当に一体ずつ倒されているが、そのグループだけは、まるで盤面から駒を取り除くような、あるいは落ち物パズルのように、魔物が機械的に排除されていた。

 

イレギュラーを放置してはおけないと、マサキは現場へ偵察に行く。

 

そこでマサキは驚くべきものを見た。

 

公安警察のプロファイルによると、ユイ…草野優衣はごく普通の高校生だ。交友関係も友人に外国人が多く、友人の社会的地位が本人の置かれる社会階級と比べると有意に高いことを勘案しても、特に不審点はなし。如何なる特異性も発現していないとされていた。

 

だが、来てみればコレだ。ユイが魔物を蹂躙している。コレのどこが一般人だ。マサキは嘆いた。

 

建物の中で見張っていたマサキは他の建物の影に入ったユイを見失った。数秒後、部屋のドアからユイが現れ、魔力の剣で切りかかる。マサキは窓に飛び込み、間一髪逃げ出した。

 

割れた窓から差す月明かりに照らされ、ユイは言う。 

 

「ネネカさんのプリンセスナイトの…マサキさんですね。

 こう見えても、わたしは敵に容赦はしない主義なんです。」

 

マサキはその姿に魔王を見た。

 

そして、ユイは追撃に取り掛かった。マサキは逃げながらも剣を巧みに操り、ユイと切り合う。ユイの剣技は武道を習っていれば誰でも指摘できるほどの酷さだっだが、多彩な魔法と立ち回りで補っていた。一方、マサキは敵味方の区別のない魔物を近づけないように意識を割いていたこともあってか、逃げに徹していた。

 

これでもマサキは警官だ。柔道や剣道、けん銃操法、その他逮捕術、様々な訓練を受けている。それなのにスポーツさえしていない少女にこうも翻弄されている。アストルムにおけるステータスの差などを考慮してもあるまじき醜態だった。

 

しかし、マサキが気になったのはその戦い方である。ユイは何処かで見たことのある動きをしていた。体系化された動きと言ってもいいだろう。一つ一つは偶然の一致にしか思えなかったが、数十、数百と積み重なるうちに一つの回答を形作る。一つ一つは誰でも思いつくような戦型でも、それを組み合わせたとき、同じ体系にたどり着くことはあり得ない。マサキは確信した。

 

「映像で見たことがある。その戦い方はファランの不死隊*6の…

 深淵の監視者(Watch Dogs)が何故アストルムにいるのか教えてもらおうか!」

 

4年前、ある関東の地方都市で、少なくとも30名以上の犠牲者を出しながら、一切の経過が不明なまま事件が収束したことがあった(ガス爆発だったことになった)。警官も12名が殉職したその事件の手がかりは殺害された市民のカメラに残っていた、何者かが戦う様子を写したCGらしき映像のみ。公安警察による徹底的な捜査の末、ICPOの人間に『番犬部隊(Watch Dogs)』と呼ばれていることが漸く判明したが、成果はその事実だけであった。勿論、公安警察の面目は丸つぶれとなった。番犬部隊の情報を調べることはマサキの任務の一つであった。

 

「昔、聖杯戦争に巻き込まれたときに、ちょっとだけ教えてもらったんです。

 深淵歩きを知ってるってことはあなたも別班の人ですか?」

 

七冠ですら部隊名と『深淵を監視し、排除する』という極めて曖昧な任務目的しか把握していない、異常な組織。そして、別班*7。これもまた、()()()()()()()()()()()()諜報機関である。

 

「…私の負けだ、武装解除しよう。 君と話し合いがしたい。」

 

ネネカの同盟者(プリンセスナイト)として、勝てば莫大な利益を得られるが、先の見通しの見えない戦いを続けることと、既に終わった事件のことではあるが、今を逃せば二度と得られないであろう情報源を確保することを、天秤に掛けたマサキはユイと交渉することを選んだ。

ここで負けても分断という目的は達成できている。ユイはユウキの固有能力によるアストルムからの退場というメリットのない無価値な戦いを続けるよりも、情報交換を優先するだろうとマサキは考えていた。尤も、ユイは少し経歴が特殊なだけの一般人なので、そこまで考えは回らないのだが。つい最近、同じクラスに特殊部隊出身のモニカが編入してきたので、それを知っていたマサキはユイもそういう筋の人間だと勘違いしたのだ。

 

「えっ!? いいですけど…」

 

ユイは思わぬ展開にびっくりしながらも、とりあえず無難な返事を返した。

 

「少しの間、待ってはくれないか。」

 

「は、はい…!」

 

マサキが剣を地面に刺すと、モンスターは大人しくなり、街の外にのっそのっそと出ていった。

そして、マサキはネネカではない誰かと連絡を取り始める。その態度から、ネネカにハニートラップを仕掛けてるのではないかと疑っていたユイは、ネネカよりも他の誰かを優先したことに驚くことはなかった。

 

「ありがとう。 まずは、自己紹介から始めよう。

 私は警視庁公安部外事四課*8に所属する狂真咲真軌(くるまざきまさき)だ。

 今はWISDOMや七冠の調査も兼ねて、似々花さんの護衛を担当している。」

 

それはユイにとっては特に驚きのあることではない。

今、自身は様々な諜報機関が蠢く、陰謀の渦の真っ只中にいる。

仮想世界を舞台に再演された聖杯戦争。自身の予感が正しかったと、ユイは確信した。

 

「ここからが本題だ。恥ずかしいことなのだが、君が聖杯戦争と言ったその事件は、

 多くの殉職者を出したのにも関わらず、警察が何も把握できないまま闇に葬られたんだ。

 私たち警察は事件が発生したにも関わらず、何も掴めなかったことを酷く悔やんでいる。

 上層部(理事官)は、君が『聖杯戦争』と呼んでいる事件の真相を聞かせてくれるのならば、

 ミネルヴァの確保を諦めた上で、君たちの問題の解決に総力を以って協力すると言っている。」

 

どうするか少し悩み、どこまで話していいか分からなかったので仲間に聞くことにした。

 

「…わたしも話していいか相談してみます。」

 

ユイはイリヤ・オーンスタインに相談した。

 

「条件付きだけど、いいらしいです。」

 

「でも…その前に一つ、聞いてもいいですか?

 …ネネカさんへの態度って…全部が演技じゃないですよね?」

 

マサキにあっさり裏切られたネネカに憐憫の念を覚えていたユイは、マサキがネネカに度々向けていた暖かい眼差しまでもが嘘ではないと信じたかった。

 

「ハハッ…見破られてしまったか… 確かに情が移っていないと言えば嘘になる。

 私が護衛として初めて似々花さんに会った時、私は畏怖の感情を抱いていた。

 だが、彼女(ネネカ)は子供っぽいところ、何かに怯えているところを見てしまってはね…。

 まあ、こんなところだ。」

 

マサキが早々と降参した理由には、同盟者たるネネカを心をすり減らす戦いから脱落させ、更にはそうしても少年たちに悪くは扱われないであろうという算段があったのも事実である。

 

そして、ユウキ(オリ主)さえも知らない、世界の暗部を巡る秘密の対談が始まった。

 


 

蝶に変身しユウキの拘束をすり抜けたネネカはその変身能力で翻弄していた。

 

「らしくないな…」

 

ユウキは噛み付いてくる狼の分身を踏みつけながら呟く。

 

「なあ…どうして最初から諦めてるんだ?」

 

ユウキは戦っていて、不思議に思ったことがあった。ユウキにはレベルキャップによる圧倒的なステータス不利があるのにも関わらず、未だに勝負がつかないのである。

 

原作のネネカは格下であっても油断しなかった。常に有利な状況を作り出し、劣勢と見れば撤退する。だが、このネネカはユウキの実力に合わせるかのように手加減して戦っている。

それはミネルヴァを手中に収める上で、無意味な行為なのだ。仲間が合流すればネネカが不利になる。本気で勝つつもりなら、さっさととどめを刺して、ロマンから託されたソルオーブを奪ってしまえばよかったのだ。

 

「何のことですか?」

 

「だって、ネネカさんはあまり顔に出さないだけで実は感情豊かだろ。

 今のネネカさんを見てると、本気でミネルヴァを狙ってるとは思えないんだ。」

 

ネネカは冷静な人物像を装っているが激情家である。こだわりは強いし、挑発には弱い。

現実(リアル)でも会って、話したユウキ(オリ主)は原作のそれとよく似ているなとは思っていた。

 

「…そんなことありません。」

 

建前としては聖杯戦争の勝利を掲げながら、本音では自身にできるなどとは思っていない。

だが、七冠としてのプライドと、マサキたちとの契約が、ネネカを聖杯戦争へと追い立てた。

ネネカは『リタイア』という選択肢を選べないほどに精神的に追い詰められていた。

 

「嘘だ…。 絶対的な自信があるはずの『真似』を、易々と破られたのに平然としてた。

 ぽっと出の七冠でもないヤツに心を見透かされて…、本当に悔しくないのか?」

 

原作のネネカは分身が偽物と見破られれば、こんなものはいらないとばかりに捨ててしまう。それほどまでに分身を『本物』に近付けようとしていた。

このネネカの分身は原作以上に精巧だった。具体的には、原作の分身は交戦を経るたびに欠点が改良されていく。だがこのネネカが作り出す分身は初めから完成形、仲間との絆まで忠実にトレースしつつ、制御を可能とする。原作(無印)ではネネカは遂に達成することができず、性能をデチューンされた偽物を大量に用意していた。このネネカはたしかに原作を超えていたのだ。ユウキ(オリ主)というイレギュラーが居なければ、覇瞳皇帝(千里真那)でさえ、見分けることはできなかったであろう。

 

ヒトのココロを理解するための相当な努力が必要だったはずだ。原作でさえ、見破られれば悔しさを露わにするのに、このネネカは違った。勿論、ユウキは原作(ゲーム)現実(リアル)は違うと知っている。だが、原作(ゲーム)現実(リアル)、両方を知っているからこそ分かることもある。

このネネカのココロは燃え尽きていた。

 

「あなたに私の何が分かるんですか…」

 

「ああ、言ってやるさ…!

 いつも澄ました顔して、マサキを椅子にしようとか考えてるんだろ、このドSロリババア!」 

 

ネネカの煮え切らない態度に苛ついたユウキはあらん限りの言葉で罵る。

 

「何を…」

 

「幾らでも言ってやる!」

 

「…あなたの言葉は心に響きませんよ。」

 

ネネカはユウキが挑発していることは分かっている。だが、ネネカにとってそんなことはどうでもいい。聞かなければ心は傷つかないのだ。

 

「自分の感情に蓋をして…享楽に生きていれば、そりゃあ楽だよなあ…!

 …お前の『真似(ゆめ)』はその程度の価値だったのか!!」

 

日常を散々引っ掻き回した癖に、肝心の本人は無気力で、とっくに物事を投げ出していた。

ユウキはそれが何より気に食わなかった。

 

「あなただって…アレを見たら…知ったら…絶望するはずです。

 この世界に救い(神の赦し)なんて…失われて、ないのですから…。」

 

ユウキの怒気に思わず、ネネカは口に出してしまう。

 

「ああ、知ってるよ… この世界がどうしようもないくらい、終わってるってこと…!」

 

「…! 晶が話したんですか…! こんな子供を巻き込んで…!」

 

「違う… ()()が晶に話したんだ…。

 『アイツ(主人公)』ですら、匙を投げたってことは…」

 

ユウキ(岸くん)にはどうしようもないから呼ばれた、それだけは憶えていた。

 

「そんなわけ…ありません。 

 第一、あなたが考える程、世界の終焉は優しくありません。

 とっくに人理継続保証は破綻しています。」

 

「ビーストクラスか? それともアルテミット・ワンか?

 七冠なのに、どうして…そう簡単に諦めれるんだよ!

 オレは運命(Fate)から逃れられなかったのに…どうして…!」

 

世界の未来なんて考えずに生きれたらどれだけいいことか。

七冠(黒幕)たちは好き勝手しているのに、自分だけは誰かのために駆けずり回らなければならない。

悲劇を覆そうとすれば、倍となって降りかかり、静観していようが、容赦なく不幸は訪れる。

この世界はどこまでも不公平だとユウキ(オリ主)は嘆いた。

 

「可笑しい…あなたは何者ですか?」

 

「そんなに興味があるなら、オレを真似ればいいじゃないか…!

 この手を取って…真似してみれば、少しは理解るかもしれないだろっ!」

 

この状況で何者かと問われて腹がたったユウキは投げやりに言った。

 

「わかりました…。 一度だけ、あなたの策に乗ってあげます。」

 

「ああ、一度だけでいい! オレを…信じてくれ!!」

 

ヒトの状態で触れる。それがネネカが真似するのに必要なことである。

一度、ネネカは条件を満たしている。

なのになぜ、ネネカはユウキの手を取ろうとするのか。

 

「やはり、真似れませんね…。」

 

「どういうことだ…? アイツ(岸くん)なら兎も角、オレを真似れないのは可笑しい…。」

 

「これは…もしや… ……。 …あなたに賭けてみましょう。

 薄明のような、わずかな希望ですが… あなたに未来を託す理由にはなります。」

 

ネネカはユウキに対してある違和感を感じた。それは本当に些細な違和感。

ユウキ(オリ主)人類悪(Beast)の象徴たる『獣』属性。其れは救世主(savior)を騙る、黙示録の(Beast)のしるし。

だが、この世界に救世主(Savior)は顕れなかった。ならば…誰が敵対者(Beast)と刻印したのか。

 

 

   TIPS : 七つの大罪(seven deadly sins)

 

   傲慢(pride)強欲(greed)嫉妬(envy)憤怒(wrath)色欲(lust)暴食(gluttony)怠惰(sloth)

   人類を罪へと導く、これら七つの悪徳を七つの大罪(seven deadly sins)と呼ぶ。

   嘗ては嫉妬(envy)を除き、虚飾(Vanity)憂鬱(melancholy)を含た上で、八つの枢要罪(eight evil thoughts)と呼ばれていた。

 

   型月世界において、救世主が持ち去った原罪とはこの七罪のことであり、

   その悪徳は個人的で一過性のものであるために、人類悪とは相容れない。

 

   虚飾(Vanity)とは無価値(Vanity)であり、原罪から零れ落ちた空虚(Vanity)な存在である。

   故に、救世主(Savior)は「虚飾(Vanity)」の理を以って、偽りの人類悪(Pretender)を仕立て上げた。

 

 

ザアザア雨の中、ラビリスタ(模索路 晶)と満身創痍となったクリスティーナが対峙していた。

 

「少年から聞いていた通り、アタシのオブジェクト変更がとびきりの弱点だったってわけだ。

 クリスの乱数聖域(ナンバーズアヴァロン)は周囲の状況を観測し、常に最善の行動を取り続ける能力だ。

 僅かにでも可能性があるなら、それを実現させる。 正攻法ではまず勝てないだろうね。

 でも、演算能力を飽和させれば精度は落ちるし、自身の能力が干渉すれば無力化される。

 誰にも予想できないトラブル(ドジ)も防げないし、搦め手にはとことん弱くもある。

 ラジラジあたりには勝てただろうけど、些か相性が悪かったね。」

 

ラビリスタはクリスティーナを完全に追い詰めていた。

 

「つまり、ワタシは会ったこともない坊やに負けたということか…」

 

ラビリスタの発言から、ユウキに自身の権能を完全に把握されていることを悟ったクリスティーナはまだ見ぬ相手への負けを認めた。

 

「降参ってことでいいんだね、クリス…。」

 

ラビリスタはオブジェクト変更の権能を用いて、天気を快晴に、戦いで荒れ果てたフィールドを元の草原にする。

 

「こうもメタを張られてしまっては勝ちようがないだろう?」

 

クリスティーナは原っぱに大の字に寝っ転がりながら、息をゆっくりと吐いた。

 

「よっと…」

 

ラビリスタもクリスティーナの隣に寝転び空を仰ぐ。

 

「…晶はWISDOMを出奔してから何をしていた?」

 

クリスティーナはラビリスタの方を向き、訪ねた。

 

「今、アタシは日本の公安調査庁*9って諜報機関で働いてる。

 そこでは世界中の人が、組織の垣根を超えて、人類の未来のために協力していた。

 国連はもう諦めてしまったようだけど、国家は、そこに住む人々は、まだ必死に抵抗している。

 クリス、もう少し人間を信じてみてもいいんじゃないかな?」

 

クリスティーナはラビリスタの問いかけに頷き、透き通る青い空を見上げながら続ける。

 

「真那と協力していたのも、より長く世界を維持するため。

 世界を救えるなら、その方がいいに決まってるだろう?

 ワタシは聖杯に相応しい人間を見定めようとしていただけだ。」

 

「クリス、そんなことを考えてたの…?」

 

「フフッ、そんなに驚くか、晶?

 ワタシの『絶対』を否定した坊やに、聖杯(ミネルヴァ)を託してみたい… そう思っただけだ。」

 


 

レイはもう一人の自分…自らに扮した()()()()()を見つける。

 

「私はこの聖杯戦争のゲームマスターのミネルヴァです。」

 

偽物のレイは容姿に見合わぬ声色で正体を明かす。

 

「キミが…ミネルヴァ…!? どうして私に?」

 

ミネルヴァというビッグネームに気圧されたレイは頭がいっぱいいっぱいになっていた。

 

「あなたの疑問は大きく2つ、何故私に化けているのか、そして何をしに来たのか、ですね?」

 

ミネルヴァは困惑するレイの言わんとすることを汲み取って、正しいか確認した。

 

「…ああ。 一体何がなんだかわからない。」

 

「それは順を追って説明しましょう。

 私がレイ、あなたの姿をしているのは、あなたたちの行動は常に監視されてるからです。

 ですが、このタイミングならば、私を似々花と誤認させることが可能でした。

 それが、こうして私があなたと話せている理由です。」

 

ミネルヴァがユウキと密談できたのは、単にプレイヤーが脅威ではなかったからである。

 

これまで七冠は同じ七冠にしか破れないという前提があった。プリンセスナイトでさえ、七冠の能力を向上させるための付属物でしかなかった。七冠に非ずんば敵に非ず。だから、七冠以外が警戒されることはなかった。ラビリスタ(模索路 晶)が戦闘をユウキたちに任せたのは慧眼といえよう。

 

しかし、状況は一変してしまった。ミネルヴァがプリンセスナイトですらないプレイヤー、しかも跳躍王(教授)との戦いを主導したユウキの関係者と接触するのは、ミネルヴァの高度な隠蔽能力を以ってしても不審を抱かせる可能性があったのだ。

 

「ここからが本題です。 私はレイに…

 


 

ネネカ   「それと、晶。 貴方のプリンセスナイトのお陰で霊子体が傷つけられました。

       固有能力を付与したのは晶なのですから、修復を手伝ってください。」

 

ラビリスタ 「わかったよ、その代わりに少年について思ったことを聞かせてほしい。」

 

      (いや、アタシは少年に固有能力なんて仕込んでない…。

       少年の特異性について、もっと調べるべきだったかな…)

 

ネネカ   「わかりました。 また後ほど連絡します。」

 


 

「国連が本当に隠したがってることはなんなんだ…?

 こんな手の込んだ、執拗な情報操作までして…」

 

「虚数空間って知ってるかな…?」

 

ここがFGOと地続きの世界なのは理解してる。 ということは…

 

「えっと…、虚数空間は…時間という概念なくて、必要のない情報が廃棄される()()()だ。

 で、見る人によって認識する結果が違う。

 だから、実数と虚数が交わることはなく、観測不能なんだ。

 だが、実数と虚数で誰もが同じ現象を認識した場合、()()()()()ようになる…。」

 

「うん、その認識でだいたい合ってる。

 アタシたち七冠(セブンクラウンズ)は、()()()()()()()()()()()()()

 虚数空間は泥で埋め尽くされていた。

 泥の性質を調べたアタシたちは…いや、これ以上は止めておこうか。」

 

「つまり、冬木のように泥が溢れるとヤバいんだな?」

 

いや、何かが違うな… その程度なら、七冠でも解決できるはずだ。

 

「いや、虚数空間を観測させてはならないんだ。

 これ以上、虚数空間に存在するナニカ(法則)を証明させてはならない。

 もう、手遅れかもしれない…いや、手遅れだろうけどね…」

 

「もう、世界の終焉は始まってるのか?」

 

「ううん、まだ時間はある。 そのために国連は手を尽くしてきた。

 でも、人類が正しく認識してしまえば、世界は終わる。」

 

フィクションが現実になったら、なあなあにしてた設定が肉付けされるのはわかるけど…

よりにもよってこんな補完のされ方があるかよ!

 

()()の中、宙の外に何があるのかは言えない。

 キミが冒険の終わり、旅の終着点に辿り着いた(ロストオーダーを完遂した)とき、初めて真実を証明するんだ。」

 

「アタシから言えるのは、『魔術師』が立ち向かうことは不可能だってこと。

 いいかい?」

 

*1
わざとばれるように尾行すること。対象に「お前は見張られているぞ」と圧力をかけるためにする。

*2
内閣官房情報セキュリティセンター。クラッカー対策の立案、サイバー攻撃の阻止やインフラの防護など、サイバーセキュリティの確保がお仕事。

*3
一般から募集されることもある。

*4
ここでは公安警察のこと。公安調査庁とは違う。

*5
国際刑事警察機構、インターポールとも呼ばれる。現実では各国警察の連絡機関にすぎないが、原作では各国の司法警察権を超越する国際警察として描写されている。他にも、テロリストの国連軍への言及などから、プリコネ世界は国連の権限が現実より遥かに強いことが示唆されている。余談だが、アニメ版ルパン三世の銭形警部は警視総監の命令で警視庁からICPOに出向しているという設定である。

*6
別名、深淵の監視者。深淵の兆候を監視し、その氾濫を食い止めることを目的とする。隊員に与えられた狼血を介し、部隊全員で一つの薪の王となった。右手には大剣を、左手には逆手持ちで短刀を握り、独特な剣術で戦う。また、使う魔術も取り回しの良さを重視した実戦向けの調整がなされている。

*7
自衛隊の陸上幕僚監部運用支援・情報部別班のこと。自衛隊が独断で外国に拠点を設け、諜報活動をしているそうな。勿論、シビリアンコントロールを逸脱した違法行為である。政府の答弁によると自衛隊の聞き取り調査により存在しないことが分かったらしい。この世界では存在はするが、世間には未だ露見していないことにした。

*8
主に国際テロリズムや中東に関する諜報活動を行う。原作では三課だったが、現実での移管に合わせて四課に変更してある。当時は正しい考証であっても、後々に振り返ってみれば…というのはSFの逃れられない宿命である。

*9
法務省の外局の一つで諜報機関でもある。名称の似た公安警察、公安委員会とは異なる組織。危険な団体を調査するのが職務。職員は特別司法警察職員ではないため、礼状を請求したり、執行したりはできない。公安警察とは守備範囲が被っており、度々問題を起こしている。

今後の展開の参考にします。 下に行くほど理解不能になるので注意!

  • プリコネルート
  • 多重クロスルート
  • 闇鍋ルート(勝手に戦えルート)
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