ディーノの小冒険 作:むろふし
「くっ…ぎ、ぎぎぎ…ッ!!!」
「どうしたディーノ、それでおしまいか」
紋章無しでの剣の稽古。
浜辺で二人の木剣がぶつかり合うもディーノの渾身の一撃を容易く受け止めるバランだった。
「ふんっ」
「わっ」
ディーノの剣が弾かれてしまった。
海へ飛んでいく剣を見てあぁっと声を上げるディーノ。
「どれ、もう一撃」
「ちょ、ちょっと待ってよ父さん!!」
「どうした、敵は待ってはくれないぞ」
「違う違うよ!ほら!あれ見てあれ!船だよ船!こっちに向かって船が来てるよ!」
「むっ」
ディーノの言葉通り、海の向こうから船がデルムリン島へと向かってきていた。
このデルムリン島へと向かってやってくる物好きな人間などいない、もしいるとすれば、この島に住むモンスターを退治し名声を手に入れようとする者か、あるいは…。
「ディーノ、お前は母さんたちの元へ戻っていろ」
それだけ言うとバランはトベルーラを使いこちらへ向かってくる船へと飛んで行ってしまった。
「父さん!」
その頃、船の船員たちは怪しい笑みを浮かべてこれから何をするかを話していました。
「あれがモンスターたちの楽園とか言われてるデルムリン島じゃな」
「腕が鳴るぜ」
魔法使い風の老人と戦士風の男の言葉に頷き勇者風の男が悪役染みた悪い笑みを浮かべる。
「魔王が死んで大人しくなったモンスター共をぶっ殺して勇者としての名声を得る。こんなにおいしい商売はないぜ」
三人の男達が笑い合っていると僧侶風の女が待ったをかけた。
「ちょっと待ちな、今回はモンスター退治が目的じゃないんだから…?」
女は見てしまった。
デルムリン島からこちらへ向かって何かが接近しているのを。
「何あれ?」
「光がこっちに向かって近づいてくるぞ」
「ゴールデンメタルスライムか!?」
勇者風の男が喜びの声を上げて身を乗り出すが、その光は彼らに破滅を齎す光だった。
「なっ、なっ、なんだお前はァ!?」
「それはこちらの台詞だ。お前たち、あの島に何の用だ」
光の正体は人間だった。
それも、もの凄く強そうな男だった。
「おっ、俺…わ、私たちはロモス国王の遣いである!邪悪なモンスターを討伐する為に遠征の途中である!!そういう貴殿は何者であるかッ!!?」
勇者風の男がガクガク震えながら国の名前を出し精一杯に強がって見せた。
「人間に名乗る名はない。邪悪なモンスターの討伐といったがそれはあの島に住むモンスターの事を言っているのか」
鋭い眼光で射抜くバランの圧力に悪党たちは鼻水と汗を垂れ流して怯んでいる!
(やべえよやべえよどうすりゃいいんだよ)
(ちょっとどうすんのよでろりん!?)
(俺だって知るもんか!勢いで言っちまったもんはしょうがねえだろ!?)
(と、とりあえず、落ち着いて話し合うんじゃ!こうなりゃゴールデンメタルスライムなど関係ない!命あっての物種じゃ!下手すりゃわしら殺されちまうぞ!)
(あわわ、あわわわわ)
「そ、そうだッ」
「そうか、では死ねい」
「へっ?」
男の額から輝きが発せられた。
急な光に視界を奪われた4人は一瞬のうちに手刀を喰らい、気絶してしまった。
「人間とは困った生き物だ」
その後、バランに呼ばれたブラスのバシルーラによって悪党4人組はそれぞれ別の場所に飛ばされてしまいました。
「そ、それでその悪党たちはどうしたの?」
返ってきたバランとブラスにディーノは話をせがんでいた。
自分たち以外の人間に興味津々の様子だった。
「心配せずとも殺してはいない、ブラス殿に頼んで他所へ飛ばしてもらった」
「おそらく大人しくなったモンスターたちを退治して名声を得ていたニセ勇者とでもいうべき連中じゃ、本物の勇者様はモンスターだろうと情をもって接するお方じゃったが…嘆かわしい」
「これに懲りて反省してくれれば良いが…」
バランとブラスがため息を吐く中、ディーノはひとり冷や汗をかいていた。
(覇者の冠とか黒の核晶どうしよう…)