ディーノの小冒険   作:むろふし

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勇者ラーハルトとパプニカの姫前編

「よくここまで成長したものだ…」

 

ニセ勇者をバシルーラで各地へ飛ばしてから3か月…。

バランの稽古によってディーノはその年齢からは考えられない程のレベルアップを果たしていた。流石に冥竜王や魔王相手では勝てないが今のディーノならばボスモンスタークラスに負けはしないだろうとバランは見ていた。

 

それ故に竜の騎士の全力に耐えられる武器が必要だった。

 

「ラーハルト」

「はっ、バラン様」

 

影の様に現れ首を垂れるラーハルト。

 

「ディーノをロン・ベルクに会わせる、留守は任せたぞ」

「おぉ、遂に…!!お任せください、奥方様とブラス殿は我が命を懸けてお守りします」

「うむ…というわけだ、さっさと起きんかディーノ」

「ぶへっ。ちょ、ちょっと待って、これから俺大事な用事が…」

「ルーラ!!」

「あ~~~~~~~!!!」

 

稽古でやられて浜辺に埋もれていたディーノを起こしたバランはそのままルーラを唱えてロン・ベルクの元へと行ってしまった。

 

「ぴー…」

 

ゴメちゃんは置いてかれて残念そうに鳴いていた。

 

 

 

次の日。

 

 

「む、あの船は…」

 

ラーハルトが浜辺で槍の鍛錬をやっていると。

デルムリン島へ再び一艘の船が向かってくるのを発見した。

 

「人間か」

 

ラーハルトはかつて母と共に人間に迫害された過去を持つハーフ魔族だった。

人間に対する嫌悪感は未だにとれず、バランたちと出会った事によりいくらか改善されたが彼にとって人間という存在は至極どうでもいい存在だった。

 

もしそれがバランたちへ悪意を向けるのならば相手になるが、そうでなければ極力関わらないというつもりだった。

 

 

何処かの国の軍艦がデルムリン島へ着き、そこから数人の人間が下りてきた。

愛用の魔槍を背にラーハルトは彼らを出迎えた。

 

「この島に何の様か」

 

「私はパプニカ王国の司教、テムジンと申します」

「私はパプニカの賢者バロン」

 

パプニカ王国。

かつて魔王ハドラーの居城である地底魔城があった国だ。

魔王の軍勢と戦い続け生き延びた気骨のある国だとラーハルトはバランから聞いていたが…。

 

ラーハルトはテムジンとバロンから嫌いな人間特有の悪意を感じ取っていた。

 

「失せよ、悪意ある人間をこれより先へ進ませるわけにはいかん」

 

そして槍を向けるのだった。

 

「なっ、なんと無礼な!! 我らはパプニカ王国の重臣!司教と賢者であるぞ!?」

 

司教のテムジンは鼻水を垂らしながら喚き始めた。

 

「お前らの都合など私には関係のない事だ、疾く失せよ」

 

ぐぬぬぬ…っと怒り心頭な司教と賢者だったが。

 

「落ち着きなさい、テムジン、バロン」

 

彼等の背後から少女が現れた。

 

「私はパプニカ王国よりやってきたレオナです。儀式を受ける間だけで良いのです、どうかこの島へ上陸する事をお許しください」

 

そう言ってラーハルトへと頭を下げるレオナだった。

 

「ひ、姫さま!何処の何者かも知れぬ相手に王族が頭を下げるなどパプニカ王家の恥ですぞ!!!」

 

「偉そうにふんぞり返ってるだけでは誰も付いてきませんよテムジン」

 

「む…むぅ…」

 

レオナの言葉に従い、他の者たちもラーハルトに向かって頭を下げるのだったが…。

 

「もう一度言う、お前たちの都合など私には関係ない。国へ帰れ」

 

「これだけお願いしても駄目ですか?」

 

「くどい、去れ」

 

「僅かな時間「去れ」……ッ!!!!」

 

融通の利かないラーハルトに、レオナはわなわなと震え始め。

 

遂にキレた。

 

「何なのよあなた!!これだけ人がお願いしても駄目だって言うの!?」

 

「駄目だ」

 

「どうして駄目なのよ!?」

 

「お前に話す気はない」

 

「あっそう!!じゃああなたは誰の許可があってこの島に住んでるの!?」

 

「もう一度言う、お前に話す気はない」

 

「きぃいいいいい!!!」

 

先程までの凛々しく毅然とした姫の姿は何処へ行ったのだろうか。

今のレオナは年齢相応の少女で腹を立てて地団駄踏んでいた。

 

その騒ぎは島の主たちにも聞こえていたようだ。

 

「どうしたのラーハルト」

「奥方様…!! ブラス殿…!!」

 

ソアラとブラスがやってきてしまった。

 

「あなたより話の分かる人がいたようね?」

「………」

 

 

レオナはソアラとブラスに儀式を行う為に暫く島に滞在させて欲しいと伝えると、2人は快諾した。その儀式は地底に深い場所で行う必要があるそうで島で最も深い大穴へと向かう事になるのだが…。

 

「ラーハルト、レオナさんを案内してあげて」

「しかし、私はバラン様に誓ったのです、命を懸けてソアラ様をお守りすると」

「あの人には私から言っておくから、お願い」

「………」

 

ソアラの願いを渋々承諾したラーハルトはレオナたちを大穴へと案内する事になった。

 

「……」

「……」

 

その道のりは終始無言で、誰も口を開く事はなかった。

そんな状況にレオナが再び声を上げた。

 

「もぉ!!道案内なら道案内らしくなんか喋りなさいよ!息が詰まっちゃうでしょ!?」

 

ぷんぷんに怒ったレオナだったがラーハルトは相変わらずだった。

 

「俺の役目はお前たちを大穴へと案内する事だ」

 

「だから余計なお話はしない、って事?」

 

「………」

 

こちらの方を見向きもしない案内役にレオナは呆れていた。

そして案内役のラーハルトに話すつもりがないのならこちらから色々聞いてやろうじゃないかと悪い笑みを浮かべた。

 

「ねぇ、貴方たちってどうしてこの島に住んでいるの?」

 

「………」

 

「ソアラさんってこの島で唯一の人間、それも女性じゃない?同性の喋れる女の子がいたら退屈しのぎになるんじゃないかなー」

 

「………」

 

「さっき貴方バラン様って言ってたけど、その人はソアラさんの旦那様?親?兄弟?」

 

「………」

 

「それにしてもソアラさん本当に美人よねー」

 

「………」

 

「あ、虫モンスターが眠ってるー」

 

「………」

 

「むぅ…」

 

 

この男、分かっていたけど手ごわい。

レオナは腕を組みながら、全くの無関心を貫くラーハルトにどうすればこちらへ関心を持ってくれるか考えていた。

 

 

その時。

レオナたちを守る様にラーハルトが腕を伸ばした。

 

「どうしたの?」

「黙っていろ」

「あ、あれはっ!!」

 

護衛の魔法戦士たちも気づいた。

森の中から一体の大きなサソリのモンスターが現れたのだ。

この島に住む他のモンスターと違ってそのモンスターはレオナたちに向けて敵意を剥き出しにしていた。

 

「魔のサソリか」

「何だか様子がおかしいみたいだけど…」

「下がっていろ」

 

レオナの心配をよそにラーハルトの身体が振れた。

一瞬の出来事だった、音もなく額から血を噴き出してサソリモンスターは倒れ伏せた。

 

「どういう事、この島のモンスターは皆大人しいはずじゃ…」

「アレはこの島のモンスターではないという事だ」

「え、それって…」

 

モンスターを始末した後、ラーハルトは何もない木の影へと槍を向けた。

 

「お前の仕業だな、人間」

 

そこから現れたのはパプニカの賢者、バロンだった。

 

 

 

 

 

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