ディーノの小冒険 作:むろふし
ディーノと剣を交える度にロン・ベルクの顔は険しくなっていった。
「もういい、十分だ…」
改めてディーノを見てロン・ベルクは溜息をつきながらこう言った。
「宝の持ち腐れだな」
「えっ?」
ロン・ベルクの言葉に困惑するディーノと納得して頷くバランだった。
「やはりか」
「あぁ、竜の騎士としての才能もあればアンタに立ち向かう度胸もある、だがこいつには相手に勝とうとする意欲がない。どうすれば相手に勝てるのかではなく、どうすればこの戦いを無事に終われるかという事ばかり考えている。今のコイツは使い手のいない真魔剛竜剣の様なもんだ…だが…」
「だが?」
僅かな時間だがディーノと剣を交えて彼の中に眠る闘志以上の何かよく分からない熱意の様なモノをロン・ベルクは感じ取っていた。
「このガキ、何かに異常な執着を見せていたりしないか?」
「むっ」
「どうやら心当たりがあるようだな」
「あぁ、実は…」
バランはディーノには夢というか目標というか、そういう性癖がある事を素直に話した。
それを聞いたロン・ベルクは目を点にした後、大笑いをし始めた。
「はっはっはっはっは!!コイツはガキの癖してもう女の事を考えているのか!?次代の竜の騎士はあっちの目覚めも早いのか?はははははは!!これは傑作だ!!」
「えへへ…」
涙が出る程大笑いしながら照れるディーノの背中をバンバン叩くロン・ベルクに、バランは嫌な顔をしていた。
「笑い事ではないぞ。我が子が誤った道へと進もうとしているのだ…ソアラは個性があって良いというが私はどうもな…」
ディーノが何処でハーレムなどという言葉を知ったのか謎だが。
ソアラと出会い、人を愛する事を知ったバランは我が子にも愛の素晴らしさを体験して欲しいと常日頃考えていた。
「まぁそう言うな、アンタは戦いばかりで娯楽というモノを知らんようだからな。暫くこのガキは俺が預かる、俺がコイツを一人前の男に鍛え上げてやるさ」
「ええっ!?そ、それはちょっと…」
ロン・ベルクの突然の提案にディーノは参った、ただでさえレオナ姫のフラグが消えかけているのにこんな所に暫くいるんじゃ原作の展開がおかしくなってしまうと汗をダラダラ流すのだった。
(…ここへ残れば大人のお店に連れて行ってやるぞ…)
「はいっ!よろしくお願いいたします!!」
が、悪い大人の言葉に惑わされディーノは暫くロン・ベルクの元で生活する事になった。
「しかしだな…」
「子はいずれ巣立つものだ、それに…アンタもたまには嫁さんを可愛がってやんな」
「む…そ、そうだな。ディーノ、ロン・ベルクのおじさんに迷惑をかけずいい子にしているんだぞ。ではな」
「はい!」
ルーラを唱えデルムリン島へと戻ったバランを見送り、ディーノはホクホク笑顔でロン・ベルクを見つめた。
「さて、ディーノ、と言ったか。俺に一太刀入れる事が出来れば大人のお店に連れて行ってやろう」
剣を構えるロン・ベルクは初めに剣を交えた時とは別人のように変わっていた。
(この人…本気だ…!!!)
ディーノも大人のお店に向かう為、真剣な表情で剣を構え…。
大人のお姉さんに可愛がられたい!!と、闘志を燃やしてロン・ベルクに挑むのだった。
その頃、デルムリン島では…。
「ソアラさん、ブラスさん。お世話になりました」
レオナ姫とその護衛たちが船に乗り込み、別れの挨拶を済ませているところだった。
「ええ、またいつでもいらっしゃってね」
「レオナ姫のいるパプニカは安泰じゃろうて、達者でな」
「……」
2人が見送る中、ラーハルトだけは無言でレオナを見ていた。
その姿にレオナは寂しそうな表情になった…。
「……あまり人間を信用し過ぎるな、例え家臣の者であってもだ」
「ッ…ええ、気を付けるわ。ありがとう、ラーハルト」
「……」
「さようなら!」
こうしてレオナ姫はパプニカへと帰っていった。
「ただいまソアラ、変わりなかったか」
「ええ、あなたとディーノがいない間にお客さんが来てたのよ」
「ほぅ、詳しく聞かせてくれ」
「うふふ、あのね…」
ソアラから留守中に何があったかを聞いたバランは、レオナ姫という人間の話を聞き、ラーハルトに春が来たのではないかと笑みを浮かべるのだった。
「あら?そう言えばディーノは?」
「うむ、しばし友人に預ける事になった…たまにはお前と二人きりで過ごしたかったからな…」
「まぁ、あなたったら…ポッ」
その日、ブラスとラーハルトは空気を読んレオナが儀式を行った大穴で寝た。