ドラゴンメイドと行く、異世界遊戯王伝説。 作:気まぐれな富士山
「ハァ!?来ないって………ウソだろ!?」
「何でも、全員庶民からのし上がったご主人様が気に食わないご様子で…………全員が入寮を拒否されたようです。何分、名家のご子息が多いものですから。」
「この学園に通う生徒数千人の頂点だからどんなヤツらだと期待してたけど………残念だなぁ。」
「こんなに食料も調達したのに…………全く、貴族のプライドとやらは面倒くさいわね。」
買い出しから帰った時にハスキーに告げられた残念なお知らせ。
無理やり感のある今回の計画だったが、ここに来てその勢いが仇となってしまった。
「まぁー、いいや。この食料はみんなで食べよう。それでハスキー。自然とこの寮は生徒俺一人ということになるのか?」
「そうなりますね…………」
「マジか………………」
なんとなく落ち込むリューデン。
庶民呼ばわりされるのは慣れているが、この広い寮に男一人とはキツい。
「だ、大丈夫ですよ!私達だっていますし、それに…………」
「お友達を呼んでお茶会を開いてもいいですね。」
「そ、そうだよな!友達に話してみればきっと………!」
〜次の日〜
「ハァ〜…………」
学校から帰ってきたリューデンはさらにどんよりとしていた。
「どうしたんですかご主人様?浮かない顔で…………」
「あ、ナサリー。聞いてくれよ…………」
寮のリビングでソファに座りながら話を聞く。
彼の話だとこうだ。
友達だと思っていた連中が急に絡まなくなった。
理由を問いただすと、リューデンの寮に来る予定だった貴族の一人が嫌がらせをしようとしていたらしい。
しかしそこで、金も地位も無いのに、魔法の才能に恵まれ、更には容姿端麗なメイドに好かれているという彼のなんとも羨ましい状況に嫉妬。
リューデン・モービックと関わりを持った者を次々といじめの対象にしているのだ。
それは、個人の規模を遥かに超えており、名家の地位を乱用し、当人の家庭丸ごといじめの対象にするという悪質なものらしい。
「だからみんな、俺と絡むと家族に迷惑がかかるって離れてったんだよ。」
「それは………………」
「まぁ、結局それだけの仲だったってことだ。本気で仲がいいヤツも少なかったし。晴れてボッチの仲間入りだよ。」
「……………………」
実は、彼は前にもこんなことを体験している。
それは、転生する前のこと。
生まれ育った田舎町で、親友と呼べる友がいて、その友とよく遊戯王をやっていた。
しかし、中二の夏。父親の転勤で都市圏に引っ越し、地元ではなく都会の中学へ転校した。
『趣味は遊戯王です。』
開口一番そう言い放った。
都会は広いから、きっと遊戯王をやっているやつもクラスに一人くらい居るだろう、と思っていた。
そんな中、そのクラスから帰ってきた言葉は。
『子供かよ。』
そんなことがあって、きっと舐められたのだろう。
いじめの対象になり、その時お守りとしてカバンに入れていたのブルーアイズホワイトドラゴンは、目の前で引き裂かれた。
漫画遊戯王にて、海馬がブルーアイズを3枚だけにするため、主人公遊戯の祖父、双六のブルーアイズを目の前で破くシーンがあったが、あれは海馬のブルーアイズへの愛が生み出した悪行だ。
愛のない、全くの悪意とはベクトルが違う。
冷静にそんなことを思い出しながら、その場でバラバラになったブルーアイズをかき集めた、忌々しい記憶。
「俺のせい、らしい。ただ好きなことをしてただけなのに…………な。」
「ご主人様………………」
すると、ナサリーはスっと立ち上がり、カーペットに座り込み、正座した。
「な、ナサリー?何してんの?」
「こちらへ来てください。ほーら、こちらへ。」
「あ、ちょっ…………」
ナサリーに引き寄せられ、太ももの上に頭を置く。
「膝枕です。高さは大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫、だけど…………いきなり何?」
「ご主人様…………涙を我慢してませんか?」
「ッ!」
「我慢はよくありません。自分を押し殺して抑え込んでも、すぐに溢れ出てきちゃいます。」
「っ、そんなこと…………!」
立ち上がろうとすると、そっと手で抑えられ、頭を撫でられる。
「わかってます。きっとそこには、プライドとか怒りとか、色々あるんでしょう?」
「…………わかってるならなんでさ。」
「…………今くらいは、いいんじゃないですか。私たちの前でくらい、弱い自分を抑えないでください。」
「ッ………………」
弱い自分。
昔も、今も変わらずいる、泣き虫でビビりな自分。
そんな自分を抑えなくても良いと言われた。
その言葉は、今の彼には十分すぎるほど届いた。
「うっ…………うぅ…………俺、なんで…………俺ばっかり………………俺何も…………」
「はい。わかっています。ご主人様は何もしていない。悪いのは周りです。」
「みんな…………みんな俺の事を、敵みたいに…………見てくるんだ………………」
「私たちは味方です。世界の全てがご主人様の敵になっても、私たちはずっとずっとご主人様の味方です。」
「ナサリー…………ナサリぃ〜…………!」
「はい。ナサリーはここにいますよ。」
ダムが決壊したように涙が溢れ出した。
声を出して泣いた。
普段の彼からは想像もできないような姿を晒していた。
ナサリーの膝に頭を擦りながら、ただただ泣いていた。
「ナサリー。持ち場を離れてどこへ…………」
「シー。静かにしててください。起きちゃいますから。」
しばらくして、ハスキーがリビングに行くと、目を腫らしたままナサリーの膝の上で眠るリューデンの姿があった。
「心身ともに、かなり疲れていたみたいです。私に悩みを打ち明けてくれました。」
「ご主人様もまだ15歳ですものね…………私の配慮も足りませんでした。」
「でも、明日から大丈夫だと思いますよ。きっと、本人の中で色々整理出来たと思います。」
「そうですか…………。それにしても、本当に可愛らしい寝顔ですね…………」
「…………ハスキーさん、大分侵されてますね。」
「ええ。初めて出会ったその時から、私はこのお方に釘付けですよ。」
優しく微笑む2人と、目を腫らして赤ん坊のように眠るリューデン。
優しく見守りながら、夕焼けが沈んでいく。
その夜の食卓。
「いや恥ずすぎる…………女の子に愚痴吐くのも大分キツいけど!膝枕されて泣き疲れて寝ちゃうとか!恥ずかしすぎるって!」
「フフフ♪とっても可愛かったですよ〜?」
「え!?そんなことがあったの!?」
「うぅ〜!リビングの掃除をしておけばよかったですぅ〜!」
ジタバタと悔しがるラドリーとパルラ。
「もう、そんなこと言ってもしょうがないでしょう。はい、ご主人様。あーん。」
「あーむ…………ムグ、ん!美味しい!」
「やった!今日のは自信あったのよね〜!」
「全く、今考えるとこの光景も不思議ですわね。メイドと主人が食卓を共にするなんて………………」
「チェイムはこういうの嫌い?」
「いえ。とてもいいと思いますわ!ほら、あ〜ん。」
「あーん…………これも美味しい。てか、あーんも流石に恥ずかしいって。」
「恥ずかしがるご主人様も可愛いですわよ?」
「可愛いって…………うぅー、なんかムズムズするな。でも、ナサリーのお陰でスッキリしたのも事実だよ。」
前は、頼れる者など何処にもいなかった。
今は、弱みを見せれる女性が6人もいる。
「悩んでもしょうがない!明日からまた頑張るけど、みんなにも支えて欲しい。俺は、まだまだ弱くて未熟だから、みんなに迷惑をかけるかもしれない…………でも、どうか支えて欲しい。よろしく…………頼めるかな。」
聞くまでも無い、と彼女たちは息を合わせる。
「「「「「「ご主人様の、お望みとあらば。」」」」」」
「みんな…………ありがとう!」
「もう!照れくさいわよご主人様!」
「ドラゴンメイド一同、ここに来た時すでに貴方様へ忠誠を誓っております。何時でも、何処でも頼ってください。それが、従者にとって最上の喜びですから。」
「よくわからないけど、ラドリーはご主人様といっしょならなんでもいいのー!」
「へへっ。悪いな、こんなこと…………さ!食事の続きといこう!」
今日の食卓は、いつも以上に楽しかった。
楽しく、優しく、そして愛が詰まっていた。
夜。世界は闇に包まれ、もう部屋の明かりもこのロウソク一本のみとなった時。
コンコン「ん…………こんな時間に誰だ?」
課題の確認と日記を書いていたリューデンは、ドアがノックされていることに気づく。
ガチャ「はい…………ってラドリーか。どうしたの、こんな夜更けに。」
「よかった、ご主人様まだ起きてたの………………あのねあのね、この前の約束のことなのだけど……………」
「この前の…………あぁ、お留守番した時のやつね。」
「それなの!その…………お願い、聞いてくれるって………………」
「いいよ。何でも言ってごらん。あ、でも明日の方がいいかな。もう夜だし。」
「その…………眠れないの………………ご主人様と一緒に寝たいの…………それが、お願い………………」
「oh…………」
かなり衝撃的なことを言われる。
やっとこさこの女性だらけの空間に慣れてきた頃だが、心根は相変わらず童貞のままだった。
「でも、大丈夫なのか?汗かいちゃうし、臭うかも…………しれないし?」
「ご主人様の臭いなら、洗う時に毎日嗅いでるの!だから、そんなに嫌じゃないの!」
「…………なんか、そう言われるとキツいな。でも、ラドリーがいいならいいよ。ほら、入って。」
ラドリーを中に入れ、ベッドに座らせる。
「とりあえず、日記を書きあげちゃうから待ってて。」
「わかったの。」
ベッドに座りながら、ロウソクで照らされた主の背中を眺める。
自分よりも大きく、広い背中。
最近は成長期ということもあり、筋肉もついてきて、よりガッシリとした体格になっている。
「………………よし、これでOKと。待たせたね、ラドリー。さ、寝ようか。」
「うん!」
ベッドに入り、掛け布団を掛ける。
「狭くない?」
「ご主人様も、もっと被ってほしいの。」
「ラドリーはちっちゃいから、大丈夫だよ。」
「むー!ちっちゃいって言われると、なんか嫌なの!」
「ハハハ。ごめんごめん。明かり消すよ。」
ロウソクの火を消し、部屋は暗闇に包まれる。
「…………ご主人様。」
「なんだい、ラドリー。」
「ご主人様は、ラドリーの事、迷惑だと思ってない?」
「………………それは、どういう?」
「ラドリー、いっぱいいっぱいドジするし、洗濯物汚しちゃうし、ご主人様を、困らせちゃうし………………」
「困ってなんか無いさ。俺は君のこと、大切なメイドだと思ってるよ。」
「ホント……?ホントにホント?」
「うん。本当だとも。そうじゃなきゃ、こんな風に一緒に寝たりしないよ。」
「うん………………わかったの。」
そう言うとラドリーは、リューデンの方に身を寄せる。
「ら、ラドリー?」
「こうしてたいの…………ご主人様に、ずっと触ってたいの………………ダメ……?」
向き合いながら、リューデンの胸に顔を埋めるようにして丸くなるラドリー。
「………………いいよ。今日はこのまま寝よう。おやすみラドリー。」
「おやすみ、ご主人様………………」
こうして、夜は更けていく……………………
チュンチュン「…………………………」
「Zzzz…………Zzzz………………」
目が覚めると、蒼い毛並みの竜がベッドを破壊し、リューデンを抱き締めたまま眠っていた。
ラドリーの人の形状を解いた本来の姿、ドラゴンメイド・フルスである。
「おはようございま…………ご、ご主人様!?大丈夫ですか!?」
「…………これが、朝チュンってやつか。ハスキー。」
「きっと違います。ほら、フルス!早く起きなさい!」
「ごめんなさいなの………………」
「大丈夫大丈夫。気にしてないよ。」
「でも…………また迷惑かけちゃったの………………」
ラドリーは気を落としたままだ。
どうにかラドリーの機嫌を直したい。
「うーん、困ったな………………」
「ご主人様。ここは素直に罰を与えてはどうですか?」
「罰って…………流石に酷じゃないか?」
「戒めを受けて、初めて心に刻むものです。本人が罰を与えられたと思えば、何でもいいと思いますよ。」
「そっかぁ…………よし!いいかいラドリー。君に罰を与えます。」
「う…………はい。」
落ち込みながらも、堪えるように受けようと目を瞑るラドリー。
「………………よいしょっ。」
「ひゃわっ!?」
「ッ!」
素早くラドリーの後ろに回り、尻尾の先端のフワフワとした部分に顔を埋める。
「お〜、モフモフ………………」
「ご主人様っ、そこはっ…………んにゃあっ!」
「くっ…………羨ましい………………」
ほんのり温もりがあるが、靭やかな毛並みが顔を包む。
綺麗にトリートメントがかけられているのか、いい匂いがする。
「ここのケアもちゃんとしてるんだな…………はい、お終い。」
「び、びっくりしたのぉ!」
「ハハハ、ごめんごめん。はい、お仕置きは終了。ハスキー、俺が帰ってくるまでにチェイムと新しいベッドの注文をお願い。」
「かしこまりました。ほら、ラドリー。行きますよ。」
「わ、わかったの!」
心機一転の朝。
心を入れ替えて今日に挑むリューデンであった。
〜その後〜
「ご、ご主人様のお仕置きがそんなものだとは…………」
「何か、ね………………」
パルラとティルルは顔を見合わせ、頷く。
「「羨ましい………………」」
「ラドリーちゃんにそんなことしてたとは………………」
「ご主人様も大胆なんですわね…………♡」
チェイムとナサリーも顔を見合わせた。
「なあ、みんな。なんかここんところミスが多くないか?」
「い、いやぁ〜?そんな事ないですよ?」パリーン
「パルラ!お皿割れてる!むしろ割ってる!」
「はい、ご主人様。召し上がれ。」
「…………ティルル、虫が入ってるんだけど…………」
「あ、あらごめんなさい!私ったら確認不足で…………このスープは私が貰うわ!本当にごめんなさいご主人様!」
「あ、いや、うん………………」
「ご主人様。紅茶の用意が出来ましたよ〜。あっ、足が滑った〜(棒)」
「え?」ガチャーン!
「ごめんなさーい、足が紅茶でビチャビチャに……!すぐに新しいのを用意します!」
「それなら、いいんだけど………………」
「ご主人様〜。ベッドメイクを失敗してしまいましたわ〜。よよよ〜…………」
「おう………………」
「このチェイム、どんな罰でも受ける覚悟ですわ。どうかお慈悲をお願いしますわ………………」
「いや、そんなことはしないけど………………」
「なんかさ、みんながやけにミスが多いんだけど…………ハスキー、心当たりある?」
「ご主人様…………こういう所は鈍感なのですね。」
「へ?何が?」
「いえ、なんでもありません。ミスは誰にでもある物ですよ。」
「そっかぁ………………」
勘はいいのにこういう所は経験が無いらしく、メイドたちの期待を自然と裏切ることになったのだった。