ありふれぬ魔王が世界最強   作:合将鳥

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ソウゴの出番は少ない……かもしれない。




第二十二話 賽は投げられた

 最初に、その騒動に気がついたのはシアだった。

 

「あれ? ソウゴさん、あれって……何か襲われてません?」

 

 運転するソウゴが目を向ければ、その言葉通りどこかの隊商が襲われている様で、相対する二組の集団が激しい攻防を繰り返していた。近づくにつれ、シアのウサミミには人々の怒号と悲鳴が聞こえ、ソウゴの目にもはっきりと事態の詳細が見て取れた。

「相手は賊か。……小汚ない格好をした男が約四十人……対して隊商の護衛は十五人程度か。あの戦力差で拮抗しているのは評価すべきか」

「……ん、あの結界は中々」

「ふむ、宛ら城壁の役割じゃな。あれを崩さんと本丸の隊商に接近出来ん。結界越しに魔術を撃たれては、賊もたまらんじゃろう」

「でも、一向に引く気配がありませんよ?」

「それはそうだろう。この世界のレベルを鑑みれば、あの程度の結界すら碌に維持出来んだろうからな。多少時間は掛かるが、待っていれば勝手に解ける」

 

 最初に奇襲でもされたのだろう。重傷を負って蹲る者が数人、既に賊に殺された様で血の海に沈んでいる者も数人いる。ユエ達の言う強固な結界により何とか持ち堪えている様だが、ただでさえ人数差があるのに護衛側は更に数を減らしているのだ。結界が解ければ嬲り殺しにされるだろう。冒険者らしき女性などは、既に裸に剥かれて結界内にいる仲間の冒険者に見せつける様にして晒し者にされていた。

 

 そしてソウゴの推測通り、ソウゴ達の会話が途切れた直後、結界は効力を失い溶ける様に虚空へと消えていった。

 待ってましたと言わんばかりに、雄叫びを上げた賊達が隊商へとなだれ込んだ。賊達の頭の中は既に戦利品で一杯なのか、一様に下卑た笑みを浮かべている。護衛隊が必死に応戦するが、多勢に無勢だ。一人また一人と傷つき倒れていく。

 

 と、その時。何か酷く驚いた様な表情で固まっていた香織が、焦燥を滲ませた声音でソウゴに救援を求めた。

 

「ソウゴくんお願い! 彼等を助けて! もしかしたら、あそこに……」

「いいだろう」

 ソウゴは香織の言葉に短く返し、窓を開いてディエンドライバーを構える。

『ATTACK RIDE BLAST』

『ATTACK RIDE LUNA』

 同時に二枚カードを読み込ませ、即座に引き金を引く。

 

 ブラストのカードとルナメモリの能力により増殖した銃弾は、一瞬で賊まで到達してその頭部を吹き飛ばす。

 あまりに躊躇無き瞬殺に、香織が一瞬息を呑む。だが咄嗟にソウゴの言葉を思い出し、キッと目を開いてその虐殺を見届けた。

 

 

 トライドロンが隊商達の近くに止まると同時に香織は飛び出し、複数人用の光系回復魔術"回天"を連続使用して、一気に傷ついた冒険者達や隊商の人々を治癒していく。しかし残念ながら、ソウゴ達が来る前に倒れていた護衛の冒険者達は既に事切れていたらしく、そちらはソウゴが蘇生呪文"ザオリーマ"で生き返らせた。次いでユエとシアに指示を出し、嬲り者になっていた女性冒険者のケアを任せる。

 

 そんなお手軽に奇跡の様な事をやってのけるソウゴに苦笑いを浮かべる香織に、突如人影が猛然と駆け寄った。小柄で目深にフードを被っており、一見すると物凄く怪しい。

 だが実は先程の結界を張って必死に隊商を守っていたのがその人物であると魔力の流れと色で既に確認していたので、ソウゴは特に止める事もなく素通りさせた。

 

「香織!」

 

 フードの人物はそのままの勢いで香織に飛び付き、可憐な声で香織の名を呼びながらギュッと抱きついた。香織はまさかの推測が当たっていたと知り驚愕を隠せない様子で、その人物の名を呟く。

「リリィ! やっぱりリリィなのね? あの結界、見覚えが有ると思ったの。まさかこんな所にいるとは思わなかったから、半信半疑だったのだけど……」

 香織がリリィと呼んだフードの相手、それは、

 

 ────ハイリヒ王国王女リリアーナ・S・B・ハイリヒ、その人だった。

 

 

 

 リリアーナは心底ホッとした様子で、ずれたフードの奥から煌く金髪碧眼とその美貌を覗かせた。そして、感じ入る様に細めた目で香織を見つめながら呟く。

「私も、こんな所で香織に会えるとは思いませんでした。……僥倖です。私の運もまだまだ尽きてはいない様ですね」

「リリィ? それはどういう……」

 香織がリリアーナの言葉の意味を計りかねていると、リリアーナは今更ながらにハッと何かに気がついた様子でフードを目深に被り直した。そして香織の口元に人差し指を当てて、自分の名前を呼ばせない様にした。

 どうやら、本当にお供も付けず、隊商に紛れ込んでここまでやって来たようだ。一国の王女がそうしなければならない何かがあったのだと察した香織の表情も険しくなった。

 

「香織、治療は終わったか?」

 

 香織とリリアーナが真剣な表情で見つめ合っていると、いつの間にか傍までやって来ていたソウゴがそう声をかけた。

 全く気配が無かったので「ひゃ!」と可愛らしい声を上げて驚くリリアーナ。そしてフードの中からソウゴを見上げて、途端ピコン! と頭に電球が灯った様な表情をしてソウゴに挨拶を始めた。

「……常磐さん……ですね? お久しぶりです。雫達から貴方の生存は聞いていました。貴方の生き抜く強さに心から敬意を。本当によかった。……貴方がいない間の香織は見ていられませんでしたよ?」

「もうっ、リリィ! 今は、そんな事いいでしょ!」

「ふふ、香織の一大告白の話も雫から聞いていますよ? 後で詳しく聞かせて下さいね?」

 どこか揶揄う様な口調で香織と戯れるリリアーナは、照れて真っ赤になる香織を横目にフードの奥からソウゴに笑いかけた。

 

 国民から絶大な人気を誇る王女の笑顔。一度それを向けられたなら、老若男女の区別なく陶然とする事間違い無いと思わせる可憐なものだ。しかしそれを見たソウゴは、特に何かを感じた様子も無く、ただつまらなさそうに視線を向ける。

 

「確か、リリアーナだったか。王国の姫殿下がこんな辺鄙な所で何をしている?」

「それは……」

 リリアーナが口を開こうとしたところ、ソウゴ達の下へ見覚えのある人物がユエ達と共に寄ってくる。

 

「お久しぶりですな、息災……どころか随分とご活躍の様で」

 

「……モットー、だったな。こんな所で会うとは」

「ええ、覚えていて下さって嬉しい限りです。ユンケル商会のモットーです。危ないところを助けて頂くのは、これで二度目ですな。貴方とは何かと縁がある」

 

 握手を求めながらにこやかに笑う男は、嘗て【ブルックの町】から【中立商業都市フューレン】までの護衛を務めた隊商のリーダー、ユンケル商会のモットー・ユンケルだった。

 

 

 それからソウゴが訊いたところによると、彼等は【宿場町ホルアド】を経由して【アンカジ公国】に向かうつもりだった様だ。アンカジの窮状は既に商人間にも知れ渡っており、今が稼ぎ時だと挙って商人が集まっているらしい。モットーも既に一度商売を終えており、王都で仕入れをして今回が二度目らしい。ホクホク顔を見れば、かなりの儲けを出せた様だ。

 

 ソウゴ達はホルアドを経由してフューレンに行き、ミュウ送還の報告をイルワにしてから、【ハルツィナ樹海】に向かう予定だったので、その事をモットーに話すと彼はホルアドまでの護衛を頼み込んできた。

 

 しかし、それに待ったを掛けた者がいた。リリアーナだ。

 

「申し訳ありません、商人様。彼等の時間は、私が頂きたいのです。ホルアドまでの同乗を許して頂いたにも拘らず身勝手とは分かっているのですが……」

「おや、もうホルアドまで行かなくてもよろしいので?」

「はい、ここまでで結構です。勿論、ホルアドまでの料金を支払わせて頂きます」

 

 どうやらリリアーナは、モットーの隊商に便乗してホルアドまで行く予定だったらしい。しかし、途中でソウゴ達に会えた事でその必要が無くなった様だ。

 

「そうですか……いえ、お役に立てたなら何より。お金は結構ですよ」

「えっ? いえ、そういう訳には……」

 お金を受け取る事を固辞するモットーに、リリアーナは困惑する。隊商では寝床や料理まで全面的に世話になっていたので、後払いでいくら請求されるのだろうと少し不安に思っていた位なので、モットーの言葉は完全に予想外だった。

 

 そんなリリアーナに対し、モットーは困った様な笑みを向けた。

 

「二度とこういう事をなさるとは思いませんが……一応、忠告を。普通、乗合馬車にしろ同乗にしろ、料金は先払いです。それを出発前に請求されないというのは、相手は何か良からぬ事を企んでいるか、またはお金を受け取れない相手という事です。今回は後者ですな」

「それは、まさか……」

「どの様な事情かは存じませんが、貴女様ともあろうお方が、お一人で忍ばなければならない程の重大事なのでしょう。そんな危急の時に役の一つにも立てないなら、今後は商人どころか、胸を張ってこの国の人間を名乗れますまい」

 モットーの口振りから、リリアーナは彼が最初から自分の正体に気がついていたと悟る。そして気が付いていながら、敢えて知らないふりをしてリリアーナの力になろうとしてくれていたのだ。

 

「ならば尚更、感謝の印にお受け取り下さい。貴方方のお陰で、私は王都を出る事が出来たのです」

「ふむ。……突然ですが、商人にとって最も仕入れ難く、同時に喉から手が出る程欲しいものが何かご存知ですか?」

「え? ……いいえ、わかりません」

「それはですな、"信頼"です」

「信頼?」

「ええ、商売は信頼が無くては始まりませんし、続きません。そして、儲かりません。逆にそれさえあれば、大抵の状況は何とかなるものです。さてさて、果たして貴女様にとって、我がユンケル商会は信頼に値するものでしたかな? もしそうだというのなら、既にこれ以上ない報酬を受け取っている事になりますが……」

 

 リリアーナは上手い言い方だと内心で苦笑いした。これでは無理に金銭を渡せば、貴方を信頼していないというのと同義だ。お礼をしたい気持ちと反してしまう。リリアーナは諦めた様にその場でフードを取ると、真っ直ぐモットーに向き合った。

 

「貴方方は真に信頼に値する商会です。ハイリヒ王国王女リリアーナは、貴方方の厚意と献身を決して忘れません。ありがとう……」

「勿体無いお言葉です」

 リリアーナに王女としての言葉を賜ったモットーは、部下共々その場に傅き深々と頭を垂れた。

 

「なら、駄賃は私が出そう。それ、受け取れ」

 

 するとソウゴがそう言いながらモットーに向かって何かを放る。それをキャッチしたモットーは自分の掌に乗る物を確認し、驚愕に目を剥く。

「これは宝物庫の指輪! 何故……」

「以前言ったろう。私にとっては端品故、それなりの働きをすればくれてやると」

「ですが、今回の件は貴方とは関係が無いのでは……」

「別に"私の為に"とは指定してなかろう。ここで会ったのも縁には違いあるまい、大人しく受け取っておけ」

 そう言いながら、ソウゴは人差し指を立てて続ける。

 

「それと、先程の貴様に倣って一つ教えてやろう。雇う立場の人間からすればな、単純に金や名誉で動かん様な輩の方が俗物より余程信用し難いのだ。……まぁ、貴様には今更な説教ではあろうがな」

 

 

 その後、リリアーナとソウゴ達をその場に残し、モットー達は予定通りホルアドへと続く街道を進んでいった。去り際にソウゴが異端者認定を受けている事を知っている口振りで、何やら王都の雰囲気が悪いと忠告までしてくれたモットーに、ソウゴも【アンカジ公国】が完全に回復したという情報を提供しておいた。それだけでソウゴが異端者認定を受けた理由やら何やらを色々推測した様で、その上で「今後も縁があれば是非ご贔屓に」と言ってのけるモットーは本当に生粋の商人である。

 

 その背を見つめ面白そうに笑みを浮かべたソウゴが、ライド・オブ・レジェンズの"アマータ"、"アーシャ"、"アヌシャーサン"を密かに護衛に付けたのは本人達には知らぬ話。

 

 

 モットー達が去った後、ソウゴ達はトライドロンの中でリリアーナの話を聞く事になった。焦燥感と緊張感が入り混じったリリアーナの表情が、ソウゴの感じている面倒な予感に拍車をかける。そして、遂に語りだしたリリアーナの第一声は……

 

「愛子さんが……攫われました」

 

 ソウゴの予想通りのものだった。

 

 

 

 

 リリアーナの話を要約するとこうだ。

 

 最近、王宮内の空気がどこかおかしく、リリアーナはずっと違和感を覚えていたらしい。

 

 父親であるエリヒド国王は今まで以上に聖教教会に傾倒し、時折熱に浮かされた様に“エヒト様”を崇め、それに感化されたのか宰相や他の重鎮達も巻き込まれる様に信仰心を強めていった。

 

 それだけなら、各地で暗躍している魔人族の事が相次いで報告されている事から聖教教会との連携を強化する上での副作用の様なものだと、リリアーナは半ば自分に言い聞かせていたのだが……

 

 違和感はそれだけに留まらなかった。

 

 妙に覇気が無い、もっと言えば生気の無い騎士や兵士達が増えていったのだ。顔なじみの騎士に具合でも悪いのかと尋ねても、受け答えはきちんとするものの、どこか機械的というか、以前の様な快活さが感じられず、まるで病気でも患っているかの様だった。

 

 その事を騎士の中で最も信頼を寄せるメルドに相談しようにも少し前から姿が見えず、時折光輝達の訓練に顔を見せては忙しそうにして直ぐに何処かへ行ってしまう。結局、リリアーナは一度もメルドを捕まえる事が出来なかった。

 

 

 そうこうしている内に愛子が王都に帰還し、【湖畔の町ウル】での詳細が報告された。その席にはリリアーナも同席したらしい。そして、普段からは考えられない強行採決がなされた。

 

 それがソウゴの異端者認定だ。【ウルの町】や勇者一行を救った功績も、"豊穣の女神"として大変な知名度と人気を誇る愛子の異議・意見も、全てを無視して決定されてしまった。

 

 有り得ない決議に、当然リリアーナは父であるエリヒドに猛抗議をしたが、何を言ってもソウゴを神敵とする考えを変える気は無い様だった。まるで強迫観念に囚われているかの様に頑なだった。寧ろ抗議するリリアーナに対して、信仰心が足りない等と言い始め、次第に娘ではなく敵を見るような目で見始めたのだ。

 恐ろしくなったリリアーナは、咄嗟に理解した振りをして逃げ出した。そして王宮の異変について相談するべく、悄然と出て行った愛子を追いかけ自らの懸念を伝えた。すると愛子から、ソウゴが奈落の底で知った神の事を夕食時に生徒達に話すので、リリアーナも同席して欲しいと頼まれたのだそうだ。

 愛子の部屋を辞したリリアーナは、夕刻になり愛子達が食事をとる部屋に向かい、その途中廊下の曲がり角の向こうから愛子と何者かが言い争うのを耳にした。何事かと壁から覗き見た結果、目撃してしまったのだ。

 

 ──銀髪の修道服を着た女に、愛子が気絶させられ担がれているところを。

 

 リリアーナはその銀髪の女に底知れぬ恐怖を感じ、咄嗟にすぐ近くの客室に入り込むと、王族のみが知る隠し通路に入り込み息を潜めた。

 

 銀髪の女が探しに来たが、結局隠し通路自体に気配隠蔽のアーティファクトが使用されていた事もあり気がつかなかった様で、リリアーナを見つける事無く去っていった。リリアーナは銀髪の女が異変の黒幕か、少なくとも黒幕と繋がっていると考え、その事を誰かに伝えなければと立ち上がった。

 

 

 ただ、愛子を待ち伏せていた事からすれば、生徒達は見張られていると考えるのが妥当であり、頼りのメルドは行方知れずだ。

 悩んだ末リリアーナは、今唯一王都にいない頼りになる友人を思い出した。

 

 そう、香織だ。そして香織の傍には、話に聞いていたあの常磐ソウゴがいる。

 

 最早頼るべきは二人しかいないと、リリアーナは隠し通路から王都に出て、一路【アンカジ公国】を目指したのである。

 

 アンカジであれば、王都の異変が届かないゼンゲン公の助力を得られるかもしれないし、タイミング的にソウゴ達と会う事が出来る可能性が高いと踏んだからだ。

 

 

 

 

「後は知っての通り、ユンケル商会の隊商にお願いして便乗させてもらいました。まさか、最初から気づかれているとは思いもしませんでしたし、その途中で賊の襲撃に遭い、それを香織達に助けられるとは夢にも思いませんでしたが……少し前までなら"神のご加護だ"と思うところです。……しかし……私は……今は……教会が怖い……っ! 一体、何が起きているのでしょう……あの銀髪の修道女は……お父様達は……」

 自分の体を抱きしめて恐怖に震えるリリアーナは、才媛と言われる王女というより、ただの少女にしか見えなかった。だが無理も無い事だ。自分の親しい人達が、知らぬ内に変貌し、奪われていくのだから。

 香織は、リリアーナの心に巣食った恐怖を少しでも和らげようと彼女をギュッと抱きしめた。

 

 その様子を見ながら、ソウゴは自分の記憶を探る。リリアーナの語った状況は、まるで【メルジーネ海底遺跡】で散々見せられた"末期状態"によく似ていたからだ。神に魅入られた者の続出。非常に危うい状況だと言える。

 

(仕掛けてあった"天照"の発動と、端末が拾ってきたモノはそれ関連か……)

 

 ソウゴはウルで会った際に、愛子に仕掛けてあった"天照"が発動した事、勇者一行に会った時に仕掛けた端末が拾ってきたモノが、リリアーナの語った愛子誘拐に関係していると紐づけた。

 

 それと同時に獅子身中の虫(裏切り者)が動き出した事を察したソウゴは、ふと脳裏にとある考えが思い浮かび口に手を当てる。

 ソウゴは頭の中を整理する様に暫く考え込んだ後……

 

「……ならば、先ずは王国に向かわねばな」

 

 ソウゴははっきりとそう口にした。

 

 

 ソウゴの言葉に、リリアーナがパッと顔を上げる。その表情には、共に王都へ来てくれるという事への安堵と、意外だという気持ちが表れていた。それは雫達から、ソウゴはこの世界の事にも雫達クラスメイトの事にも無関心だと聞いていたからだ。説得は難儀しそうだと考えていたのに、あっさり手を貸してくれるとは予想外だった。

 

「よろしいのですか?」

 

 リリアーナの確認にソウゴは……

 

 

 

 ──突如詰め寄りその頭を両手で掴んだ。どこか恐怖を感じさせる笑みを浮かべて。

 

 

 

「一つ条件がある。それさえ果たしてくれれば、力を貸してやろう」

「条件……」

 呟く様に返すリリアーナに、ソウゴはその内容を伝える。

 

 リリアーナは、ソウゴの言葉に息を呑む。今までとは打って変わった異様な雰囲気、生まれてから感じた事の無い程の恐怖と……どこか甘美に思える危険な誘惑の様な笑み。

 その姿は、ユエ達でさえ背筋が凍る感触と同時に、ドキリと心が跳ねる様なトキメキを覚える程だった。

 

 

 それから数秒程経ってから、リリアーナはソウゴの条件に首を縦に振った。

「契約成立だな」

「……では、よろしくお願いします。常磐さん……」

 返事を受けたソウゴの顔は、それこそ魔王の様に恐ろしい笑顔だった。

 

 

「……ソウゴ様、素敵」

「はぅ! ソウゴさんが、またあの顔をしてますぅ~、何だかキュンキュンしますぅ」

「むぅ、ご主人様よ。そんな凶悪な表情を見せられたら……濡れてしまうじゃろ?」

「ソウゴくん、カッコいい……」

 

 

 

 

 

 時間は少し遡る。

 

 愛子が誘拐され、リリアーナが脱出した日より少し前。

 

 

 王宮の外れにある開けた場所に、人の姿があった。

 静かな場所だった。ゆるりと吹く夜風の囁きと、冴え冴えとした月明りだけが存在を許された様な、静謐で物悲しい雰囲気が漂う場所。

 

 それもその筈。ここはある意味、墓地なのだから。

 

 勿論王宮の敷地内であるから、不特定多数の死者を埋葬する様な場所ではない。あるのは、【神山】の岩壁を直接加工して造られた巨大な石碑だ。聳え立つ石碑は、所謂忠霊塔(国の為に忠義を尽くして戦死した者の霊に対して、称え続ける事を象徴として表す塔)の様なもので、王国に忠義を尽くした戦死者・殉教者は例外無くここに名を刻まれる。

 

 その忠霊塔の前に無言で佇んでいた人影の正体は、ハイリヒ王国騎士団長のメルド・ロギンスだった。

 無表情だが、その瞳には言葉には表せない強く重い感情が込められている様だった。

 

 深夜を少し回ったこの時間、巡回の兵士を除けば王宮内で無闇に出歩く者はいない。まして、この様な寂しい場所に訪れるなど普通ではない。

 

 

 だがこの静かで人の寄り付かない場所は、死者に安息を与える以外にもう一つ有用な使い方があった。

 

 

「──団長」

 

 

 風に紛れて消えそうな程小さな男の声。メルドがチラリと視線を向ければ、足音を立てずに待ち人が姿を現した。

 男の名はホセ・ランカイド。王国騎士団副団長にして、メルドの腹心の部下だ。

 

「問題無かったか?」

「はい、誰にも見られていません。とは言え、長居は出来ないでしょうが……」

「深夜に騎士団のトップ二人が、こんな場所で密会だからな。今のお偉方からすれば、『一体何を企んでいる?』と目を血走らせるだろうな」

 僅かに口元を歪めて笑うメルドに、ホセは苦笑いを見せた。

 

「……それで、兵団の様子は?」

 

 表情を再び厳しいものに戻して、メルドは問う。

 ホセの表情は冴えない。それどころか、寧ろ蒼褪めてさえいる様に見えた。

「……兵団長を含め、隊長格の六割に“虚ろ”の症状が見られました」

 

 

 ホセの言う"虚ろ"とは、ここ最近王宮内に広がっている奇妙な現象の事だ。

 最初は下級の兵士や騎士等に表れた症状で、簡単に言えば無気力症候群と言うべきか。

 仕事はキチンと果たすし受け答えもするのだが、以前に比べると明らかに覇気に欠け笑う事が無くなり、人付き合いも最低限となり部屋に引き籠る事が多くなる。

 その症状は徐々に広がり、遂には発言力の強い貴族や騎士団でも分隊長クラスまで見られる様になった。

 

 流石にこれは何かがおかしいと、蔓延しだした不気味な現象に危機感を抱いたメルドは本格的な調査に乗り出したのだ。

 

 

「そこまでか。騎士団の一割強というのが幸いに思えてくるな。いや、大隊長クラスに症状が見られないだけ確かに幸いか」

「……しかし団長。その、何と言いますか……本当に、これは何者かの攻撃なのでしょうか? 単に気が抜けているだけなのでは?」

 ホセの報告を聞いて、増々厳しい表情になったメルドに、ホセは遠慮がちにそう尋ねた。

「勇者が敗北し、騎士団の精鋭を失い、数の有利という人間側の生命線を魔人族がひっくり返しつつあるこの状況でか? 気持ちは分からんでもないがなホセ、楽観視は止めろ。お前までやられるぞ」

「失礼しました」

 ホセとて心から楽観視している訳ではない。副団長として、団長の考えに対し別角度からの否定的意見を出すのは職務でもあるのだ。咳払いを一つ、ホセは改めて口を開いた。

「それで、団長の方は? 陛下に何か影響は?」

「陛下は今のところ大丈夫だ、"虚ろ"の症状は無い。寧ろ、覇気が増している位だ。『主の御名に於いて、魔人族の蛮行を許しはしない』とな。……ただ……」

「? どうされました?」

 普段に無い歯切れの悪さを見せたメルドに、ホセは首を傾げる。

 メルドはどう言うべきか迷いつつ、結局適当な言葉が見つからなかった様で「何でも無い」と頭を振った。

 

 ──まさか、些か神に傾倒し過ぎている様な、などと言える訳が無い。己の信仰的にも、部下に対しても。

 

「宰相殿も問題がある様には見えなかった。だが、中央の有力者方が無事かと問われれば、到底そうは言えん」

 そう言って挙げられた症状の見られる貴族達の名を聞いて、ホセは思わずクラリと意識がブレるのを感じた。本当の中枢を担う大貴族は無事だが、各派閥に属する有力貴族の内かなりの者達が発症しているのだ。

「陛下に具申し、騎士団から護衛を付けさせて貰っている。近衛も神殿騎士も微妙なところだ、異変があれば即座に報告する様命じてある」

「陛下は、"虚ろ"について何と?」

 

 

 当然エリヒド国王には、現在王国の中枢が正体不明の敵から精神攻撃を受けている可能性がある旨について報告がなされている。

 いくら無気力が目立つだけの症状とは言え、数が数だ。早急な対応が必要なのは確か。だが、報告したメルドの表情は優れない。

「……今、コソコソとお前と報告会なんぞしている時点で、分かるだろ?」

「調査具申を却下されたのですか?」

 

 

 そう。王宮の片隅で深夜に人目に付かない様に現状報告をしあっているのは、エリヒド国王が本格的な調査を却下した上、メルドに余計な事に感けていないで軍備増強に専念しろと命じられたからだ。

 

 表立って調査出来なくなったメルドは、それでも己の危機感を信じてこうして腹心の部下と出来る限りの事をしているのである。

 

 

「魔人族の脅威が高まっているこの状況だ、陛下も不明瞭な情報のみでは判断に困るのだろう」

「しかし、それでも普段の陛下であれば団長の言葉なら……」

 ホセの言葉をメルドは視線で止めた。確かに、今のエリヒド国王は些か強行な姿勢が目立つが、だからといってそう簡単に不服を口にするのは憚られる。

「だからこそ、俺達で陛下が判断するに足る情報を集めるのだろう? ホセ、闇属性の魔法に精通している者を集めろ。“虚ろ”の正体を探らせ、対抗策を用意させろ。そして、どうにか王宮の宝物庫を開けてもらう。精神攻撃に対抗出来るアーティファクトがあるかもしれん、管理部に言って目録を見せてもらえ」

「了解です。光輝君達には?」

「俺が対応する。……今、あいつらは不安定な時期だ。余計な不安を与えたくはないが……ままならんものだな。俺はとことん教育者には向いていないらしい」

 自嘲する様な溜息を吐いたメルドに、ホセは笑みを浮かべて言う。

「団長の心遣いなら、キチンと伝わっていますよ」

「俺の心を知ってもらってどうする。俺があいつらの心を知らねばならんのだ。そして、そこに一番悩んでいるんだよ俺は。剣の振り方やら戦い方なら、悩む事なんぞ何も無いんだがなぁ」

「それでも、団長から話をされる方が彼等は安心しますよ」

 騎士団の新人なら、元より全て覚悟の上での入団だ。故にメンタルケアの主たる方法は、取り敢えず倒れるまで走る・剣を振る・一緒に酒を飲むである。そして大体、それで解決する。

 

 

 が、意図せず故郷から連れ出され、戦わねば故郷に帰れないという状況のただの学生達にそれを強要するのは、色んな意味で駄目だろう。

 

 だからこそ、メルドは不得手な非体育会系の子供達のメンタルケアに四苦八苦している訳だが……

 

 

 子育てに悩む父親の様な様子で唸る珍しい団長の姿に、ホセは苦笑いせずにはいられなかった。

 

 

 

 その後二、三情報の共有と今後の方針を打ち合わせたメルドとホセは、互いに闇に紛れる様にして王宮内へと戻った。

 

 薄暗い廊下を巡回の兵士に見つからない様、気を配りつつ自室へと向かうメルド。騎士団長という身分である故、仮に見つかっても咎められたり職務質問を受ける事も無いだろうが、それでもこんな時間に何をしていたのだろうという疑問を抱くだろう目撃者を作りたくない。

 尤も、「こそこそと深夜の王宮内をうろつく自分は十分に不審者だな」と、思わず自嘲の笑みを浮かべたメルドは、しかし次の瞬間心臓を握り潰される様な戦慄を味わう事になった。

 

「メルド団ちょ──」

 

 周囲に誰もいなかった。気配は常に探っていた。にも拘わらず背後を取られた。それも、肩を叩かれる程近くで。取りも直さず、それは首を刈るのも自由な距離とう事で──

 

 

「ゼアッ!!」

 

 

 張り詰めていた緊張故に、メルドは自分でも驚く程の反応を見せた。

 肩に相手の手が触れた瞬間、反射で動いた右手は一瞬で騎士剣を抜剣。暗闇に銀の線を描きながら背後の何者かへ横薙ぎの一撃が振るわれた。

 

「ひぃっ!?」

 

 が、「たとえ首を裂かれても今の一撃で仕留めてやる!」という気概と共に振るわれた一撃は、これまた相手の素晴らしい反応で空を切った。

 というか、相手は尻餅をついていた。腰が抜けたとも言える。序に涙目だった。

 

「……こ、浩介?」

 

 高速でコクコクと頷く涙目の人物は、前線組・永山パーティの斥候役にしてクラスメイト一影の薄い男──遠藤浩介だった。

「だ、団長ぉ……お、おれ、なんか団長にしました……?」

 涙目でガクブルと震えながらそう言う浩介に、メルドは漸く事態を悟り慌てて騎士剣を仕舞い浩介を助け起こした。

 

 

 浩介の影が薄い事は周知の事実だ。皆で談笑していても、いつの間にか忘れられている様な男なのだ。自動ドアも三回中二回は反応しないし、点呼では大体名前を呼ばれない。そんな先天性の気配遮断能力を持った男なのだ。メルドの感覚をすり抜けても何の不思議でもない。

 

 

「い、いや……すまん。いきなり背後に立たれたもんでな、つい」

「……団長、いつから暗殺者になったんですか」

 "つい"で危うく首チョンパされそうになった浩介がジト目でツッコミを入れる。メルドは誤魔化す様に咳払いすると話題の転換を図った。

「それより浩介、お前こんな時間にどうした?」

「今日の訓練、ちょっと無茶し過ぎて夕方から部屋で休んでたんですよ。そしたら、うっかり寝ちゃったんですけど……」

 質問の答えにしては随分時間そ遡るなと思ったメルドだったが、続く浩介の言葉に思わず目頭が熱くなった。

「誰も起こしに来てくれなかったんですよね。晩飯の時間になっても」

「そ、そうか」

「時間が大分過ぎてから目が覚めて、慌てて食べに行ったんですけど、『あれ、なんか一食余ってんな。まぁ偶々だろ、賄いにしよ~っと』みたいなノリで食べてしまったそうで。皆、俺が晩飯の席に居ない事気が付いてなかったんすね」

「……そ、そうか」

「まぁ時間に遅れたのは俺だし、なのにまた作ってもらうのも悪いんで一食位抜いてもいいかなぁと思ったんですけど……腹減り過ぎて眠れなくて、何か食べれないか厨房に行ったんですよ。で、なんか野菜っぽい物の切れ端とかあったんで食べたんですけど」

「けど?」

「食って暫くしたら腹に激痛が……で、二時間程戦ってたんすよ。厨房近くのトイレで。壮絶でした」

「お前、夜中に何と戦ってるんだ……」

「で、戦い終わって気が付いたんです。新たな問題に」

「まだあるのか!? トイレで一体、何があった!?」

「寧ろ、無かったんす。紙が」

「………」

 

 そこから先、浩介がどうやって紙を手に入れたのかについては生憎と彼の口から語られる事は無かった。ただ、厨房近くのトイレとこの場所は結構距離がある事を考えれば、彼は戦後処理が出来ない状態で王宮内のトイレを彷徨っていたという事なのだろう。

 

 

「浩介……もう休め」

「うっす。お休みなさい、団長」

 

 忘れられ、食事を抜かれ、残飯漁りじみた事をして腹を壊し、夜中にトイレを彷徨い歩き、挙句騎士団長に首チョンパされかける。……王宮内なのに、何故こうもシビアな生き方をしているのだろう。

 トボトボと自室に戻っていく浩介の煤けた背中を見送りながら、メルドは無意識に敬礼をしていた。

 

 

 緊張感を微妙に削がれつつも自室に戻ったメルドは、大きく息を吐くと腰に下げた騎士剣を外して部屋の壁に立て掛けた。そしてドカッと身を投げ出す様にしてソファへ腰を落とし、指先を眉間に押し当て揉み解す。

 些細な休息の後、自然と頭が働きだす。

「……士気のみ落とす魔法、か。魔人族の仕業と考えるのが順当だが、王宮に直接? 有り得ん。仮にそれが出来るなら、何故もっと強力な魔法を使わない? 何故下級兵士や騎士からなんだ? 悟られずに魔法を行使出来るなら、何故俺を狙わない? 騎士団長の首を取れれば、それこそ士気などガタ落ちだろう。何故だ? 何が起きているんだ?」

 思考が口をついて流れ出る。危機を察知してからというもの、正体不明の敵・手段にメルドの気は張り詰め続けていた。まだまだ限界には遠いがそれでも考えるべき事は多く、何より国のトップに自分の危機意識を共有出来ない事が彼の精神力を削り取る。

 頭の奥に、重い疲労の塊が蓄積していく感覚。白のキャンバスに垂らした黒のインクが、ジワジワと染み込んでいくかの様な焦燥感。

 

 

 

「……あの御方は今頃、何をしておられるのか」

 

 

 

 ふと脳裏を過ったのは、【オルクス大迷宮】で奇跡の様な再会と圧倒的な力を見せつけた一人の王の姿。死に瀕した自分を、伝説級の秘薬を使ってまで救ってくれた恩人だ。

 

 暫く当時の事を思い出して何とも言えない表情を浮かべていたメルドは、徐に立ち上がるとデスクへと向かった。

 

 引き出しから取り出したのは、便箋と封筒を二セット。ペンを手に取り、メルドは難しい表情をしながら書き始めた。

 

 

 それは万が一に備えての布石だった。

 

 一つは【アンカジ公国】のゼンゲン公宛て。そしてもう一つは、彼の青年王宛て。

 

 もしかしたら、ゼンゲン公を通して彼に渡るかもしれない。そうすれば自分に何かあったとしても、或いは起死回生の一手になるかもしれない。

 

 月明りが差し込む静かな室内に、カリカリというペンの走る音だけが響く。

 

 

 

 ある程度書き終えたメルドが内容の見直しをしていると、不意に部屋の扉がコンコンッとノックされた。

 ハッとして思わず立て掛けた騎士剣を手に取ったメルドは、警戒心を押し込めて平然とした声で誰何する。

「誰だ?」

「……あの、メルド団長。俺です、檜山です」

「大介? ……どうしたこんな時間に」

「その、俺……どうしてもメルド団長に、相談したい事があって」

 どこか切羽詰まった様な──或いは弱り切った様な声音でそう言う訪問者に、メルドは以前彼の王から告げられた忠告を思い出し、訝しみつつも部屋の扉を開けた。

 

 部屋の前には項垂れた檜山大介が、ポツンと一人で突っ立っていた。

 

 

「……相談と言ったが、こんな時間にか?」

「……すみません。迷惑だと思ったんすけど……クラスの連中には、あまり聞かれたくなくて」

「そうか……いや、迷惑なんて事は無いぞ? さぁ入れ」

 メルドは檜山の沈んだ様子から何となく相談の内容を察した様で、彼を部屋の中に招き入れた。

 

 

 檜山のクラスでの立ち位置は、微妙なところだった。

 不用意な行動で仲間を窮地に追いやり、挙句その最中に悪巧みでクラスメイトの一人を奈落へ落としたと落ちた本人(・・・・・)から告発された。それ以来、少し雰囲気も変わった様に感じる。

 

 メルド自身も気にしていた事ではあるし、自ら仲間との関係について相談してくれるなら応えない訳にはいかない。メルドはそう思った。

 俯いている為、檜山の表情は分からない。暗い雰囲気はどこか危うさを感じさせ、まるで崖っぷちにでも立っているかの様だ。

 

 ソファに座る様勧めたメルドの言葉に、素直に従う檜山。だが中々話だそうとはしない。背を丸め、両手を揉み解す様に絡めながら貧乏揺すりを繰り返す。

「大介、お前の話したい事は何となく察している。だから上手く話そうとしなくていい、思った事を言ってくれればいいんだ。何が問題なのか、どうすべきなのか、それは一緒に考えよう」

 慰める様にそう言うメルドだったが、檜山の貧乏揺すりは一向に収まらない。顔を上げる事も無く、随分と落ち着かない様子だ。

 知らぬ間に余程追い詰められていたのかと、メルドはもう一度声を掛けようとした。

 

 その寸前、再びノック音が響いた。「今晩は随分と客が多いな」と苦笑いしつつ、メルドが再び誰何する。

 すると返って来たのは、先程別れたばかりのホセの声だった。何やら緊急で報告したい事があるという。

 「何ともタイミングの悪い……」メルドはそう思った。ここには檜山がいるのだ。報告の内容によっては、聞かせる訳にはいかないものかもしれない。

 そんなメルドの逡巡を察したのか、

「……メルド団長、いいっすよ。話終わるまで、俺廊下で待ってますから」

「そうか。すまんな大介」

 申し訳なさそうに眉を八の字に歪めるメルドに、檜山は「いえ……」と言葉少なに返事をして立ち上がった。

 メルドは扉に手を掛け檜山を送り出すと同時に、ホセを迎え入れようとノブを回した。カチャッと音が鳴って扉が開かれる。

 扉の前には、確かにホセがいた。

 

 

 ──"虚ろ"な表情をしたホセが。

 

 

 ゾワリッ、と。メルドが総毛立つ。本能がけたたましく警鐘を鳴らした。

 刹那、

 

「ッ!?」

 

 メルドが声にならない悲鳴を上げて身を逸らす。その眼前を、騎士剣による凄まじい突きが通り過ぎた。

「ホセッ! どういうつもりだ!?」

 メルドが怒声を上げる。しかしそれに対する返事は、袈裟斬りの一撃だった。それを転がる様に回避したメルドは流れる様な動きで自分の騎士剣を手に取り、無言のまま追撃してきたホセの斬撃を受け止める。ギンッ! という硬質な音が室内に響き渡った。

「クソッ、やはり洗脳か!?」

 間近に見るホセの瞳に生気は無い。"虚ろ"の症状そのものだ。自分と別れた後に発症したとして、しかしその後直ぐに自分を襲撃してくるなど行動が違い過ぎる。何者かの指示が無ければ有り得ない。やはり"虚ろ"は洗脳系の精神攻撃だったのかと、戦慄と焦燥を浮かべるメルド。

 兎に角今は、ホセに掛けられた洗脳を解く為にも無力化するしかない。メルドは裂帛の気合と共にホセの騎士剣を弾いた。

「多少の怪我は許せよ!」

 メルドがホセへ突進する。騎士剣を弾かれて僅かに姿勢の崩れた今なら、体当たりで組み伏せる事が可能だろうと判断したのだ。

 

 しかしそこで、ホセが予想外の動きに出る。

 

 一貫してメルドを狙っていたが為にすっかり標的は騎士団長の身だと思っていたが、突進するメルドから視線を外したホセは呆然と突っ立ったままの檜山へと急迫した。

 不意の動きに一瞬、メルドの動きが遅れる。視線を檜山に移せば、檜山は腰を抜かして尻餅をついているところだった。

 

 仮にも前線組、それも前衛の転職持ちだ。それがこの土壇場で、まさか戦意喪失とは予想外。否、これこそが檜山の相談したい事だったのだろうかと、メルドは内心舌打ちしつつ急速転進。

 

 無理な姿勢からの減速しない方向転換に軸足が悲鳴を上げるのを意識しつつ、尚強く踏み込む。ベキャッ! と床板が踏み割られた音を置き去りにして、メルドは檜山とホセの間に割り込んだ。

「ぐっ! この……力はっ!?」

 再び剣同士が衝突し合う硬質な音が響き渡った。ギリギリのタイミングであったが為に、図らずしてメルドの姿勢は万全ではない。だが、それにしてもホセの一撃は記憶のそれより重かった。受けた瞬間に腕が痺れ、咄嗟に受け流す事が出来ない程に。

 

 

 ホセの剣の腕は熟知している。どちらかと言えば細めの体格であるホセの剣は、剛剣というより柔剣。卓越した技巧こそが最大の武器。にも拘わらず、今のホセの剣撃はメルドに匹敵する破壊力があった。

 

 

 回避は出来ない、後ろに守るべき者がいる。押し返すには体勢が悪い。十全に膂力を発揮出来ない。ならば止む無し。魔術でホセを吹き飛ばす。

「耐えてみせろよ、副長!」

 多少の怪我では済まないかもしれないが、王国騎士団No.2のタフさを信じてメルドは至近距離から風の砲弾を食らわせようとした。

 

「鳴け、遍く風よ "風──ッ!?」

 

 術は発動しなかった。詠唱が途中で止まってしまった為に。

 

 ──メルドの脇腹に短剣が突き刺さったが為に。

 

 

 

「……だい、すけ?」

 

 

 

 

「チィッ! このタイミングで急所を避けるのかよっ!?」

 信じられないといった様子で肩越しに振り返ったメルドの目に、血走った目で短剣を突き刺す檜山の姿があった。

 

 

 そう。──“血走った目”でだ。

 

 

「っ! 大介、お前っ!」

 

 詳しい事は分からない。だが察した。檜山が"虚ろ"現象の原因と密接に関係しているという事を。

(どうやら、あの方の懸念は当たっていたらしい……!)

 本能の成せる業か、感じ取った危機感が無意識に体を動かさなければ致命傷をもらっていただろう。檜山は確実に、メルドを殺しにかかっている。

 檜山はメルドの怒声を無視して、力任せに短剣を引き抜いた。そして再度、その凶刃を振るおうとした。

 

「ッ、──"風槌"!」

 

 刺されて尚"中止"ではなく"中断"で留めていたメルドが、魔術発動のトリガーを引いた。放つのは真下。圧縮された風の砲弾が凄まじい衝撃音と共に床を撃ち、破片と暴風をメルドとホセ、檜山の三人に撒き散らす。当然、三人は存分の衝撃を食らって吹き飛んだ。

 

 床に叩きつけられたメルドの脇腹から血が噴き出す。しかし普通なら悶絶するだろうその状態で、まるで負傷を感じさせない表情のまま機敏に立ち上がったメルドは漸く四つん這いになった檜山に向かって突進した。

 

 ホセよりも、前線組として自分より遥かに深くまで【オルクス大迷宮】に潜れる檜山の方が危険と判断したのだ。

 

 しかし、そこで更なる敵の参戦。"虚ろ"な目をした兵士達が雪崩れ込んでくる。

 

「チッ、こちらの動きは筒抜けだったかっ!」

 三人の兵士が振るう剣を、横薙ぎの一撃のみで跳ね返す。起き上がったホセが乾竹割りに剣を振るうのを半身になる事で避けて、脇から凄まじい踏み込みと共に繰り出される檜山の連撃を剣の腹で軌道を逸らす事で辛うじて回避する。

 背後に回り込んだ兵士に術名だけの詠唱省略で発動した風の礫で牽制し、接近するホセには倒れていた椅子を蹴り飛ばして躓かせる。

 

 苛立った様子の檜山が術を使おうと、僅かに意識を分散させる。

 

 それを待っていたかの様に、メルドは剣の切っ先で宙に円を描いた。そうすれば、まるで手品の様に檜山の短剣はその円運動に巻き込まれ大きく弾かれていく。

「はぁっ!!」

「ぁっ!?」

 次の瞬間、メルドはホセが振るった横薙ぎの一撃を避けると同時に、檜山に対し身を低くしながら肩を突き出して体当たりを行った。

 見事に鳩尾へ食らった檜山は息を詰めた様な小さな悲鳴を上げて吹き飛び、ソファをひっくり返しながら倒れこんだ。

 

 

 兵士二人が体当たり直後のメルドを挟撃する。それを身を投げ出して転がりながら回避したメルドは追撃で振るわれたホセの一撃を剣で受けつつ、踏ん張らずに衝撃に身を任せて自ら吹き飛び勢いを利用して体勢を立て直した。

「吹き散らせ──"風壁"」

 僅かに出来た時間で、風圧により敵の攻撃を防御ないし妨害する魔術を発動する。剣を振りかぶった状態のホセは、不意に発生した強烈な風圧に押されてバランスを崩した。

 メルドはホセを無視して踏み込んできた兵士の剣を防ぎつつ、もう一人に強烈な拳を叩き込んだ。膂力は上がっていても攻撃の方法に雑さを感じていたメルドは、既に兵士二人の動きを読める様になっていた。それ故に、振るわれた剣を掻い潜っての拳は見事なカウンターとなって兵士の顎を捉える。

 更にもう一人の兵士にも足払いをかけながら、体勢を崩した隙に脳天へ剣の腹を叩き込んだ。痛そうな音が響き、兵士が崩れ落ちる。

「副長の名が泣くぞ?」

 その戦闘技巧こそ本領であるホセだが、今は己の膂力に振り回されている感が否めない。ホセの動きに慣れたメルドはそう苦言を呈しながら、相手の剣を捌くと同時に襟首を掴みそのまま鮮やかな背負い投げを決めた。

 背中から床に叩きつけられたホセが肺の空気を吐き出す。

「少し眠っていろ」

 ホセの鳩尾にメルドの砲弾の様な拳が突き刺さった。ビクンッと痙攣した後脱力して倒れるホセを尻目に、メルドは身を起こしながら背後へ裏拳を放った。最後の兵士が体を一回転させながら吹き飛ぶ。

 

「クソがっ! 副長まで用意したのに、この様かよ! この世界の人間のくせに、テメェ化け物かっ!?」

 

 咳き込みながらもどうにか立ち上がった檜山が悪態を吐く。そんな檜山を、メルドはどこか悲しそうな眼差しで見やった。

「俺程度には過分な評価だな。ただ経験が違うんだ、対人戦闘の経験がな。これでも一国の騎士団長だ……対魔戦闘なら兎も角、対人戦闘ならまだまだ負けてはやれんよ」

 

 ──だから、降伏しろ。

 

 言外に込められたメッセージを、しかし頭を掻き毟り血走った目をギョロギョロと動かす檜山には届いてなかった。

「何勝ち誇ってんだ?」

 尋常でない様子の檜山から、狂気を孕んだ視線が飛ぶ。暗く澱んだヘドロの様な目に、メルドは息を呑んだ。その目をメルドは知っている。

 

 

 それは、既に引き返せない所まで堕ちた者の目だ。

 

 

「大介、お前は……」

 何かを言おうと口を開いたメルドだったが、直後信じられない事が起きて口を噤んだ。

 

 

 ゆらりと、起き上がったのだ。兵士達が、そしてホセが。

 まるで痛痒も感じていないかの様に。痛みに表情を歪める事も体を強張らせる事も無く、無表情なまま。

 

 ──"虚ろ"な瞳のまま、起き上がってきたのだ。

 

 

「無駄だっつうの。ひ、ひひっ、そいつら、死んでも(・・・・)止まらないからさぁ!!」

「何? それはどういう──」

 嘲笑を浮かべる檜山にメルドは問い掛けようとするが、その前に二人の騎士が部屋へと入って来た。扉の向こう側には更に何人もの騎士や兵士が見える。誰も彼も"虚ろ"な目をしている。

 無力化出来ず凄まじい膂力を誇り、技の衰えも洗脳されているにしては異常レベル。

 そしてふと気が付く。

 

 これだけ騒音を撒き散らして、何故誰も駆けつけてこない?

 

 メルドは察した。自分が完全に袋の鼠と化している事に。恐らく何らかの結界で音や振動を抑えているのだろう。今この王宮内でメルドが襲撃されている事を察知している者は、恐らく誰もいない。

(やられたな、王宮の防衛態勢を過信したツケか)

 これ程の工作を、よもや王国の中枢で仕掛けられるなど思いもしなかった。幾重にも敷かれた防衛態勢は、人間側と魔人族側が数百年拮抗している証拠に未だ破られた事は無かったのだ。

 

 

 突破された原因は一つ。メルドの視線が檜山を捉える。それと同時に思う。小悪党にも及ばぬ小心者の檜山如きが、これ程の工作を一人で成せるなど考え難い。十中八九、協力者ないし黒幕がいるだろうと。

 

 

(……ならば、必要なのは決死の覚悟ではないな。生き残り、何としてもこの事態を伝えなければ)

 出入口を完全に塞がれたメルドが、ジリジリと部屋の奥へ後退する。それを追い詰める様に、ホセや騎士達が詰め寄る。

「もう諦めて死ねよ、メルドだんちょぉお!」

 檜山が歪んだ表情でそう言った直後、

 

「いや、ここは恥を忍んで逃げさせてもらおう!」

「なっ、テメェ!」

 

 メルドは猛然と踵を返した──窓に向かって。

 

 

 パリンッ! と音が鳴って窓が砕け散る。体当たりで窓をぶち破ったメルドが、外へ身を躍らせたのだ。

 メルドの私室は王宮の四階にある。普通なら大怪我では済まないだろう。

「──"風壁"!」

 風圧の魔術で落下速度を減速させたメルドは、見事に着地を決めた。

 恐らく、檜山達も直ぐに飛び降りて迫って来るだろう。これで逃げ切れるとはメルドも思っていない。

 だが、少なくとも上級魔術の詠唱時間程度なら稼げた筈だ。盛大な閃光と爆音を撒き散らす攻撃魔術の。

 そうすれば後は時間稼ぎをするだけで、まだ無事な騎士や兵士達が駆けつけてくれる筈だ。それでメルドの目的は達成される。

「天地染める紅蓮の──」

 

 

 しかし、詠唱は止まった。否、止められた。

 

 

 特に何かがある訳ではない。檜山達はまだ飛び降りてすらおらず、飛び降りた先である王宮の庭には人一人いない。

 詠唱を妨害する魔術を使われた訳でも、何らかの攻撃を受けた訳でもない。

 

「────」

 

 それでも、本能が動く事を拒否したのだ。息を潜めろと命じたのだ。

 まるで、心臓を鷲掴みにされたかの様。冷や汗が噴き出て顎先へと伝う。体は硬直し、己の息遣いや心音すら煩く感じられる。

 

 例えるなら、それは小動物が最強の肉食動物の前に放り出される様なものか。息を潜めて、厄災が通り過ぎるのを待つ以外に生き残る道は無い。そう本能が理解している。

 

 

「国王の事といい、騎士団長の事といい、詰めが甘いと言わざるをえません。やはり所詮は人間のする事、手を貸さねばなりませんか……」

 

 

 怖気を震う程に綺麗な声だった。但し、何の感情も伝わってこなかったが。

 

 声を聴いて、漸くメルドの体は動き出した。油を注し忘れた機械の様にぎこちなく、メルドは声のした方向──空を見上げる。

 

 

 月光を背負うシルエットが見えた。驚くべきは、その人影から伸びる一対の翼。銀に輝くそれは、あまりに非現実的で幻想的だった。

 

 だが、感動する心の余裕など無い。肌で、頭で、魂で理解する……

 

 

 ──圧倒的な格の違い。

 

 

 銀の光が増えた。それは小さな月に見えた。美しい輝きを纏った月に。但し、恐ろしい程に力を込められた、凶悪で無慈悲な月だ。

 何かをされるという事は分かった。恐ろしい何かを。同時に悟った。逃げ道など、無かったのだと。

 

「……神よ」

 

 王国最強の騎士をして、無意識に縋ったのは生まれてより信じてきた偉大な存在。

 だが、

 

「はい。これが、主の望まれた事です」

 

 銀の月が降ってきた。子供が遊ぶボールの様な大きさの満月。命を滅する死の光。

 

 メルドの視界を銀の光が塗り潰す。死が、メルドを塗り潰す。

 

 信じて来た神が望んだのだという。自分の死を。部下や仲間を襲う悪意を。そして、きっとこれから先に起こるだろう、より恐ろしい何かを。

 だから死の間際、引き延ばされた時間を実感したメルドは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、目の前で起こった事を信じられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"無次元の執行(バニシングシフト)"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声が響くと同時、突如死の光が消え去った。

 

 メルドが、空のシルエットが、檜山が、その後ろの黒幕が。突然の死の中断に目を疑った。

 

 

 気付けば、今まで存在しなかった新たな人影が三つ。

 まるでメルドを守る様に立つ、闇黒の如き濃紫の翼を持つ鎧姿。いずれも目の前の空のシルエットを見ている様で、その実檜山や黒幕が身動き出来ない様に気配を放っている。

 

 

 すると真ん中の人物が振り返り、宙に文字を描きながらメルドを指差す。

 

「アンタには、暫く眠っててもらうぜ」

 

 若い男の声だ。前髪だけが白く染まった濃紫の髪の青年。その声を最後に、メルドは奇妙な安心感と共に意識が急激に薄れていくのを感じた。

 そして、深い眠りについたメルドの体を、青年の左隣に立っていた人物が受け止める。

 

「まったく……。分身越しに呼び出した挙句、まさか御守りとはな。何故俺達なんだ……」

 

 その人物はメルドを受け止めると同時、ウンザリした様な腹立たし気な声が響く。"俺"と言っているが、その声は明らかに少女の声だ。

 薄い金髪を三つ編みに纏めたその少女は、三角帽子の様な兜の奥で周囲全てを睨む。

 

 すると、今まで微動だにしなかった"虚ろ"の者達が動き出した。無論、少女に担がれた眠るメルドを目指して。

 

 それに対して、少女は鬱陶し気に片腕を振るった。

 

 

 ただそれだけで、"虚ろ"の者達はサイコロステーキの様に切り刻まれた。

 

 

 その光景に、檜山が「ヒィッ!?」と短くも確かな悲鳴を上げる。

 

 

 

「フン、俺達の"同類"かと思えば……粗末な術だな」

 

 少女はそう吐き捨て、いつの間にか握っていた赤い小瓶の蓋をへし折り地面に叩きつける。瞬間、足下に赤く輝く化学式の様な陣が浮かぶ。

「"ワイバーン"、"ガルーダ"。俺は先に戻るぞ」

 それだけ言って、少女は影も形も無く消えてしまった。残ったのは、先程メルドを眠らせた"ワイバーン"と呼ばれた青年と、先程死の光を無力化した"ガルーダ"と呼ばれた青年。

 "ワイバーン"も無数の浅い傷痕が目立つ"ガルーダ"も、その顔は先程消えた少女も含めて召喚組とそう変わらない歳に見える。

 二人は顔を見合わせ、しょうがないとばかりに苦笑を浮かべて空のシルエットに向き直る。

 

「……貴方方が何者かは知りませんが、先程の様には──」

 

 シルエットはそう言いながら、もう一度死の光を生成しようとして……最後まで続かなかった。

 

 

 

 "ワイバーン"が握った細身の剣を振り抜いた瞬間、その体が真っ二つに断たれたからだ。

 

 それに続けて"ガルーダ"が剣を薙げば、そこにはまるで何も存在しなかったかの様にシルエットの形跡が消失した。

 

 

 

 王国の騎士団長に死を覚悟させた存在は、ものの数瞬で形跡すら残さず抹消されたのだった。

 

 

 

 

「で、この手紙と"アレ"……どうする?」

 

 "ガルーダ"がその手にメルドの手紙を握り、檜山達がいる方向を向きながら"ワイバーン"に問う。それに対し"ワイバーン"は、

「あー、いいんじゃないか? 俺達を派遣したって事は把握してるって事だし、あいつらの利用方法も考えてるらしいし。……っていうか、多分"視てる"だろ」

「……それもそうか」

 "ワイバーン"の言葉に納得した様子の"ガルーダ"は、手紙をどこかに仕舞う。

 

 そして二人は、まるで何事も無かった様に飛び去っていった。

 

 

 

 後に残されたのは、得体の知れない邪魔者に震える檜山と、癇癪を起した様に周囲に当たる黒幕。

 

 

 

 

 そして、それらを見つめる"黄金の影"だった。

 

 

 

 




アマータ=不死
アーシャ=希望
アヌシャーサン=規律

という意味です。



さて、メルドを助けた三人は誰でしょう?

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