本当はもっと長くなる予定だったのですが、あまりに時間がかかり過ぎるので削りました。やっつけクオリティ。
この間BLEACHを一巻から六十三巻まで中古で一気買いしました。ウマ娘では新衣装ウオッカが十連一回目で出ました。FGOでは村正が一発で出ました。最近事故ったので転職予定です。
話し合いが終わり解散した後、ソウゴとユエ、雫の姿は王都のメインストリートにあった。
ガヤガヤ、ザワザワと王都は普段に増して喧騒に満ちていた。
ソウゴの新国王就任から五日経った今も、人々の胸に去来する驚愕感や興奮は僅かな衰えもなく心に刺激を与えていた。ソウゴの齎した神の如き癒しは、それ程までに衝撃なのだ。
そんな興奮の喧騒に包まれる王都のメインストリートを歩くソウゴの手には、途中の露店で買ったホットドッグ擬き(ソーセージではない何かが挟まっている為)が収まっていた。
ソウゴ達が向かっているのは、王都を覆っていた大結界のアーティファクトである。雫が同行しているのは、その案内を彼女が買って出たのである。
シア達は王宮でお留守番だ。今の王都で他種族が堂々と歩くのは、無意味に人々を刺激する行為だと判断し自発的に居残ったのだ。
たとえ王都の人々が自分達を襲ったのは魔人族だと分かっていても、今は"人間族ではない"というだけで無駄な騒動になりかねないという訳だ。
聖教教会のお膝元である王都に於いては奴隷の亜人族すら忌避される位で、元々人間族以外は殆どいない。なので妥当な判断と言えるだろう。
今や香織も見た目からして唯の人間ではないし、愛子達は忙しいリリアーナのお手伝い、ティオはここ数日ぶっ通しで消費していた魔力充填の為に睡眠中である。
因みに徒歩で向かっているのは、情勢視察という名の暇潰しである。
雫に案内されてやって来たその場所は、かなりの数の兵士によって厳重に警備されていた。
警備員達は近づくソウゴに驚きの視線を向けた。しかし、傍らに雫がいるとわかると直ぐに目元を和らげる。
雫のお陰で殆ど顔パスで通った先には大理石の様な白い石で作られた空間があり、中央に紋様と魔法陣の描かれた円筒形のアーティファクトが安置されていた。そのアーティファクトは本来なら全長二メートル程度あったのだろうが、今は半ばからへし折られて残骸が散乱している。
その周りには頭を抱えてうんうんと唸る複数の男女の姿があった。恐らく、大結界修復にやって来た職人達なのだろう。
「おや、 雫殿ではありませんか。どうしてこちらに?」
その内の一人──口髭をたっぷりと生やした、見るからに職人気質な六十代位の男が雫を見つけるなり声をかけてきた。どうやら雫とは顔見知りらしい。
「こんにちは、ウォルペンさん。私はただの案内兼護衛です。大結界が修復できるかもしれない方をお連れしました」
「なんですと? もしや……やはり新王陛下!?」
雫にウォルペンと呼ばれた男は、ソウゴに視線を転じると途端に驚愕の眼差しを向けた。事前に来訪を伝えられてない要人が来たとなれば、その反応もさもありなんと言えるだろう。
実はこのウォルペン、【ハイリヒ王国】直属の筆頭錬成師なのだ。大結界のアーティファクトは当然神代のアーティファクトであり、現代ではたとえ王宮の筆頭錬成師といえどもその修復は極めて困難らしい。
しかしそんな事情など知った事ではないソウゴは、スタスタとウォルペン率いる職人達の間を通り抜けアーティファクトの残骸に手を当てる。
「成程……こんな貧弱な壁で、よく数百年保ったものだな」
「貧弱……? ふん、新王陛下は随分な目をお持ちで」
ソウゴからするとあまりに頼りないこの大結界が、何百年もの間王都を外敵から守り抜いてきた事に意外だと思うソウゴに、ウォルペンが不機嫌そうに鼻を鳴らした。
しかしソウゴは、そんなウォルペンを柳に風と受け流し修正を始めた。黄金のスパークがソウゴを中心に広がり、その手元にあるアーティファクトの残骸が次々と元の位置に融合されていく。
その錬成速度と精度に、ウォルペンのみならず彼の部下達が一斉に目を剥いた。ソウゴの攻撃以外の技能を初めて見た雫も、白い空間に舞い散る鮮やかな黄金に目を奪われている様で、「綺麗……」と呟いている。
「自然エネルギーを混ぜ込んで……よし。そこに六赤……否、"八金二重陽陣"の式に、"クリスタルウォール"……後は"オリハルコンエレメント"のエッセンスを取り入れれば……ふむ、まぁこんなものだろう」
僅か十数秒で神代のアーティファクトを改修し終えたソウゴは、序に魔力を注ぎ込み大結界を発動させてみた。
円筒形のアーティファクトは、その天辺から光の粒子を天へと登らせていく。直後、外で警備をしていた兵の一人が部屋に駆け込んできて、第三障壁が復活し、更に障壁が二つ増した事を告げた。
「……なんという事だ……神代のアーティファクトをこうもあっさりと……」
呆然とするウォルペンに雫が苦笑いしながら例の黒刀もソウゴの作品だと告げる。
瞬間、彼等の眼がギラリと獣の様に輝いた。そんな彼等を尻目に、ソウゴは作業終了と言わんばかりに身を翻そうと歩き出す。
しかし。職人魂の塊の様なウォルペン達が、自分達の遥か上をいく錬成師をそう簡単に行かせる訳がなかった。
「待って下されぇーー!! 弟子に! 是非、我等を弟子にして下されぇーー!!」
「断る」
足にしがみついてソウゴに弟子入りを懇願しようとするウォルペン。だが彼の情熱は、すげなく放たれた拒絶の言葉と共にソウゴの体をすり抜ける。更に、次々とウォルペンの部下の錬成師達が逃がしてなるものかとソウゴにしがみつこうとするが、結果は同じだ。誰一人ソウゴに触れられない。
「貴様等の寿命を考えれば、教えるだけ無駄だ」
「ですが、アーティファクトをあっさり修復し、雫殿の黒刀まで手がけたと。我等にはどうやったらそんな事が出来るのか皆目見当も付きませんぞ。それを教えていただければ……」
「なら神でも倒してこい。四、五柱程狩れば身に付くだろう」
「そんな……」
ソウゴの言葉にガクリと肩を落とすウォルペン達。実際大結界のアーティファクトには生成魔術により空間魔術が付与されており、王都の結界は特殊な空間遮断型の障壁だったのだ。普通の錬成師には修復出来ない筈である。
「用件は終わりだ、戻るぞ」
それだけ言い残し、ソウゴはユエと雫を伴ってその場を後にした。
王宮に戻ったソウゴは玉座の間にも執務室にも戻らず、王宮に関わる人員なら自由に出入り出来るテラスルームでユエ、雫と共にティータイムと洒落込んでいた。
ユエはソウゴのカップが空になった事を確認すると、即座に次のお茶を注ぐ。
ソウゴもそれを確認し、適当に捉まえたメイドに頼んだお茶請けを口に運ぶソウゴに、「私はそろそろお暇しようかしら?」と頬をヒクつかせながら、香織の所に逃亡しようかと雫が考え始めた時、突然ソウゴ達のいる部屋の扉がノックもされずにバンッ! と音を立てて開け放たれた。
何事かとそちらに視線を向けたソウゴ達の目に映ったのは、十歳程度の金髪碧眼の美少年がキッ! とソウゴを睨む姿だった。しかも、両隣にユエと雫がいる事が気に食わないのか、一瞬ユエを見た後更に目を吊り上げ、怒りを倍増しで滾らせた様だ。
「お前か! 香織をあんな目に遭わせた下衆はっ! し、しかも、香織というものがありながら、そ、その様な……許さん、絶対に許さんぞ!」
そんな言葉と共に登場した彼は、この国の"元"王子ランデル・S・B・ハイリヒである。
ランデルは、拳を握り締め「うぉおおおお!」と雄叫びをあげながら勢いよくソウゴに向かって駆け出した。殴る気満々である。
ソウゴは訳がわからなかったが、取り敢えず侵入者かと思いテーブルから紅茶用の角砂糖を一つ手に取り適当に投げつける。ありえない速度で放たれた角砂糖の弾丸は、狙い違わずランデルの額を正面から撃ち抜き、グチャッ!! という音を上げて潰れたトマトに変える。
「で、殿下ぁ~! 貴様ぁ~、よくも殿下ぉ~!」
「叩き斬ってやる!」
「覚悟しろぉ!」
ランデルが開け放った扉から、彼を追いかけて来たらしい老人や護衛と思われる男達がいきり立ってソウゴに飛びかかった。
恐らく旧王家の支持者……というより、ランデル個人を支持する者達なのだろう。つまり"不穏分子"と看做しても問題無い。
──ガオンッ!
ソウゴはスタンド"ザ・ハンド"の能力を使い護衛達の体を抉る。後に残ったのは、見るも無残な下半身の残骸のみ。
ソウゴは静寂が戻った事を認識し、雫が何か言うよりも早く護衛達の死体を消してからランデルを"ザオリク"で蘇生する。床に飛び散った血飛沫や肉片が巻き戻る様に動き、再びランデルの頭部を形成していく。
それから数秒した後、室内にシクシクとすすり泣く声が聞こえ始めた。
ランデルはまるで暴漢に襲われた女の子の様に両足を揃えてしなだれながら、床に顔を埋めてシクシクと泣き声を上げていた。どうやら、ソウゴの容赦ない殺害を理解して心が折れてしまったらしい。ズボンが濡れ、床に水溜まりが出来始める。
と、そこへタイミングよくリリアーナがやって来た。
ソウゴに「信じられない……」という目を向ける雫と、その逆隣で平然と茶請けをもきゅもきゅと食べているユエ、それらを我関せずと紅茶に口をつけるソウゴ、泣き崩れるランデル。
リリアーナは、それらを見て状況を把握したのか片手で目元を覆うと天を仰いだ。
「遅かったみたいですね……」
「リリィか。よく知らんが貴様によく似た小僧が入り込んでいたぞ、警備兵に突き出しておいてくれないか?」
リリアーナは「私の弟です……」と説明しながら、それはもう深い溜息をつきながらランデルを助け起こした。
ランデルがソウゴに突撃してきたのは、勿論香織の事が原因だ。
変わり果てた香織に愕然としたランデルは、どうしてそんな事になったのかと理由を問い詰めた。
その結果、どうやら"ソウゴくん"とやらが原因らしいと理解し、更にその香織が正に恋する乙女の表情でソウゴの事を語る事から、彼は真の敵が誰なのかを漸く悟ったのである。
そして、「香織に元の体を捨てさせる様な奴は碌な奴じゃない!」と決めつけて突撃した先で、心から香織に想われておきながら他の女に囲まれているソウゴを目撃し、怒髪天を衝くという状態になったのである。
ランデルとしては、まさに魔王に囚われたお姫様を助け出す意気込みでソウゴに挑んだわけだが……その結果は現在の通り。
殴るどころか近づく事すら出来ずに片手間で殺され蘇生され、情けないやら悔しいやら、遂にポロリと涙が出てしまったのだ。
リリアーナに抱き起こされ、つい「姉上ぇ~」と抱きついたランデル。
その様を見て、何とソウゴは「弟? …………あぁ、そういえばいたか」と呟いた。雫から呆れの視線が突き刺さる。
だが、ランデルにとって不幸はまだ終わっていない様だった。彼がリリアーナの胸元に顔を埋めて泣きついた直後、香織が部屋にやって来たのである。
「あっ。ランデル殿下、それにリリィも。……って、殿下どうしたんですか!? そんなに泣いて!」
「か、香織!? いや、こ、これは……決して姉上に泣きついていた訳では……」
リリアーナからバッと離れて必死に弁解するランデル。好きな女の前で、姉に泣きついて慰めてもらっていたなど男の子として口が裂けても言えない。
しかし香織は、ランデルが泣いている状況とソウゴの存在、雫とリリアーナの表情で大体の事情を察し、久しぶりに爆弾を落としていく。
「もう……ソウゴくんでしょ? 殿下を泣かしたの。年下の子イジメちゃだめだよ」
「言いがかりにも程があるぞ。貴様とて、害が無いと分かっていても顔の周りで虫が飛び回ると流石に鬱陶しくなるだろう? それと同じだ」
自分は真剣だったのに、ソウゴからすれば撃退ですらなかった事にランデルがショックを受ける。しかし何よりダメージが深かったのは、自分が被害者側だと当然の様に判断された事だ。胸を抑えて「ぐっ!」と呻くランデル。
「もう! ……ちゃんと"手加減"してあげたの? 殿下はまだ"子供"なんだよ?」
好いた女から子供扱いされた挙句、手加減を前提にされる屈辱にランデルが「はぅ!」と更に強く胸を抑えた。
「少々角砂糖を投げただけだ。……まぁ、その程度で頭が弾け飛んでしまったが。一応蘇生したから問題あるまい?」
「でもリリィに"泣きついて"いるじゃない……それにほら、額が赤くなってる。折角"可愛らしい顔"なのに……殿下はちょっと"思い込みが激しくて"、"暴走しがち"だけど根は"いい子"だから、出来ればきちんと"相手をしてあげて"欲しいな……」
自分がリリィに泣きついていた事をばっちり認識され、男なのに可愛いと評価された挙句、姉からもよく注意される欠点を次々と指摘され、更に追加の子供扱い。ランデルは遂にガクッと両膝を折って四つん這い状態に崩れ落ちた。
リリィは「あらら」と困った笑みを浮かべているが、雫は「もう止めてあげてぇ、殿下の心のライフは既にゼロよっ!」と内心で悲痛そうな声を上げていた。
しかし、香織は追撃の手を緩めない。崩れ落ちたランデルを心配して駆け寄り身を案じる声をかけた。
「殿下、大丈夫ですか? やっぱり打ち所が悪かったんじゃ……」
「……いや、怪我は無い。それより、香織……香織は、余の事をどう思っているのだ……」
満身創痍のランデルは、思い切って香織の気持ちを聞く。
「殿下の事ですか? そうですね……時々、リリィが羨ましくなりますね。私も、殿下みたいなヤンチャな弟が欲しいなぁ~って」
「ぐふっ…お、弟……」
笑顔で落とされた爆弾によって、ランデルに追加ダメージ。雫が「何故自ら傷口に塩を塗るような真似をっ!」と泣きそうな顔になりながら、ランデルに視線でもう止めるように訴える。
しかし、小さくとも男ランデル、ここで立ち止まる訳にはいかない。
ここ数日、父の訃報に散々泣き、母や姉の助けで立ち直って、その墓前に強くなると誓ったばかりなのだ。「いずれ先頭に立たねばならない己が、この程度の痛みに蹲っている訳にはいかないのだ!」と意気込みながら、その気合を無駄遣いの方向に使っていく。
「では……あんな奴が良いというのか? あいつの何処が良いというのだ!」
ソウゴはランデルに睨まれているこの瞬間も、ティータイムを止めない。気に留める価値も無いからだ。ソウゴをキッ! と睨みながら、言外に「目を覚ませ香織! 余の方が良いに決まっている!」と訴える。その余裕綽々な態度が実に気に喰わない。
しかし、香織の反応は分かりきったもので……
「え? な、何ですか殿下、いきなり……もう~、恥ずかしいですね。でも……ふふ、そうですよ。あの人が私の大好きな人ですよ。何処がって言われたら全部、としか……ふふ」
と、ランデルに止めを刺した。
再び俯いたランデルは四つん這いのままプルプルと震えだす。それを心配して香織が手で背中をさすりながら声を掛けるが、ランデルはガバッ! と勢いよく起き上がると香織の手を跳ね除けて入口へと猛ダッシュした。
そして一度、扉のところで振り返ると、
「お前等なんか大っ嫌いだぁぁああああああ!!!」
と、大声で叫び走り去ってしまった。去り際に、彼の目尻がキラリと光ったのは気のせいではないだろう。遠くから「うぁああああああん!!」という泣き声か雄叫びかわからない絶叫が聞こえる。
「リリィ、アレが面倒なら虫除けのルーンでも張るか?」
「ひ、他人事みたいに……貴方が泣かしたんでしょうが」
「止めを刺したのは香織だが?」
「くっ、反論出来ない……」
ランデルが初恋を桜の花びらの如く散らせた後に駆けていったのを眺めながら、ソウゴが呟き雫がツッコミを入れる。香織は、一体ランデルはどうしたのかと追いかけようとしたが、それはリリアーナが止めた。
リリアーナは、遅かれ早かれランデルの初恋は散ると分かっていたので、今夜は一緒に寝て弟を慰めるつもりだ。ランデルはいずれ、この国の(ソウゴの代理統治という実質の傀儡政権とはいえ)代表になる人間なのだ。失恋の一つや二ついい経験だろうと肩を竦めた。
リリアーナは開けっ放しの扉をしっかり閉めると、香織を伴ってソウゴ達の方へ歩み寄って行く。どうやらランデルを追いかけて来ただけでなく、ソウゴ達に話もあった様だ。リリアーナは雫の隣の席に腰掛けようとして、ソウゴが雫と席を入れ替えて自分の隣に座らせた。
香織はユエを退けてソウゴの隣に座ろうとして……ユエとプロレスで言うところの"手四つ"状態でギリギリと組み合っていた。
前の体なら、たとえユエが後衛特化でも魔力の直接操作による身体強化が出来た為香織は拮抗する事すら出来なかったが、今は使徒の体(+ソウゴの心臓)なので本気を出さずとも十分に対抗出来る……どころか寧ろ押している様だ。
「香織……貴女、こんなに逞しくなって……」
「いえ、雫。感心していないで止めましょうよ」
どこか寂しげな表情でズレた発言をする雫に、リリアーナがツッコミを入れる。
香織が一度死ぬという衝撃の出来事があってから、少々香織に関しては残念な人になりつつある雫。召喚組一の良心で常識人を失っては面倒だと思い、ソウゴは香織の額にデコピンをしてユエの隣の席に座らせた。
「とっとと座れ。
「うぅ、ユエばかりずるいよ……」
「……フフ、ソウゴ様の隣は譲らない」
「……はぁ。すまんなリリィ、始めてくれ」
溜息を吐きつつソウゴが促し、リリアーナは「コホン」と咳払いして口を開いた。
「話と言うのはですね、お父様に言われていたエヒト神の真実についての国民の認識把握調査の事なのですが……存外、正確に伝わっている様です。やはり教皇イシュタル、本山を始めとした主要都市の司教以上の者達の一斉拘束及び粛清が、事の重大さを知らしめる要因になっているのでしょう」
「そうか。自ら出頭してきた教会関係者の対応と、褒賞金に釣られて無実の者に濡れ衣を着せて突き出してくる様な愚者は?」
「出頭した方達には、踏み絵とエヒト神への信仰を捨てる旨を"真実の戒禁"の下で宣誓させた後に隔離を、濡れ衣を着せる様な方は今のところゼロです。……見事な手際で御座います。これならば以前言われた通り、万が一エヒト神が現れた時の対策にもなりそうです」
リリアーナは澄ました表情をしながらソウゴに報告する。雫が「対策って何の事?」と首を傾げて説明を求める。
「基本的に神の強さとは、"古さ"と"信仰"の二つの要素に左右される。早い話が、神というのはより歳を重ね、より多くの人々に信じられて強くなる。典型的な年功序列だ」
「あぁ、成程。この世界はエヒトの一神教だから……」
「そういう事だ。特にこのハイリヒは、最も信者が多い。この世界最多の信者を抱える国が丸ごと離れれば、軽く見積もっても二割以上は力を削げるだろう」
「……再会した時からずっとそうだけど、本当に私達じゃ手の届かない所まで考えているのね」
「先々を見越して動くのは為政者の基本だぞ? まぁ確かに大体は思いつきで動いてばかりで脳筋と呼ばれる事は多々あるが……」
「ふふ、別に脳筋だなんて思ってないわよ。頼りになるって言ってるの、褒め言葉として受け取っておいて」
雫の言葉に肩を竦めるソウゴ。そんなソウゴを頼もしげに見つめる雫。
何だか気心の知れたやりとりに、ユエと香織の視線が雫に突き刺さる。それに気がついた雫がビクッと体を震わせて「えっ、何? 何なの?」とユエ達に問いかける。
「ユエ、どう思う?」
「……ん、まだ大丈夫。あくまで友人レベル」
「そう。"まだ"なんだね……」
「……ん。要注意」
ユエと香織がヒソヒソと何かを相談している。雫が物凄く居心地を悪そうにしていた。そんなユエ達に、ソウゴは呆れた表情を見せるのだった。
「あの、お父様。まだもう一つ伝えたい事がありまして……」
するとリリアーナがソウゴの袖を引き、まだ話があると注意を自分に向ける。
「ほう、内容は?」
「実はお父様に会いたいという方々が来ていまして」
「客だと? ……本国の者達か?」
リリアーナが告げた自分への客人が来ているという言葉に、ソウゴは不可思議な表情を浮かべつつ逢魔国の者ではないかと推測する。
理由は単純、この世界で王都の伝令兵からの伝達無しに自分に会いに来れる人物に心当たりが無いからだ。
ただ単純に会いに来るのならば、【ブルック】のキャサリンやクリスタベル、【フューレン】のイルワ、【ホルアド】のモア、【アンカジ】のゼンゲン親子に商団長のモットー等思いつく人物はいる。
だがそのいずれも、王都の警備兵の目に引っ掛からずに直接王宮に来れる様な移動手段を持っていない為、兵士からの伝令が無い以上その可能性は無い。
ならば、消去法で自分の世界の者だと考えるのが自然だろう。
ソウゴがそう考えながら「通せ」と伝えると、程なくして二人の少女と付き添いのメイド達が現れる。その率いる二人の顔を見て、ソウゴは珍しいと言いたげな表情になる。
一人目はユエと同程度の身長の少女。ピョンっと跳ねた薄い金髪のアホ毛、黒のブレザーと赤のチェックスカートに、真っ白のマント。そして片手に持った、頭部より少し大きいサイズの水晶玉。
二人目はそれより少し大きい程度の身長の、車椅子に乗った少女。装飾か自前か分からない小さな金の角に、黒白半々のパッツン髪。
「魔導元帥夫人に蜘蛛の魔王……、珍しい取り合わせだな」
微笑と共に告げられる、ソウゴの素直な感想。
水晶を用いた反射系の術を主とした"
神の領域たる不老不死を目指したとある科学者に造られ、
何れもソウゴの臣下、またはその関係者という繋がりしか無く、ソウゴの言葉通り纏まりも無く共同で動いた事も無い面々。
「事前に示し合わせた訳ではありません。目的地が一致していた為に同道しただけです」
ミラがすまし顔で告げながら、アリエルに目配せして膝を折る。アリエルは車椅子から降りられない為、首を垂れるに留める。
するとミラはその表情と同じく怜悧な声音でソウゴに告げる。
「いと高く深き悠久の玉座におわす、偉大なるオーマジオウ陛下。新たなる地の併合、我等一同謹んでお祝い申し上げます」
『魔王様、おめでとう御座います!』
空かさずメイド達が続き、声を合わせて賛辞と拍手を送る。どうやら彼女等の突然の訪問は、ソウゴが【ハイリヒ王国】を平定した事への祝辞が目的らしい。
ソウゴは二人の底知れない気配に背筋を凍らせるユエ達、その実力を測れず只々困惑するリリアーナを尻目に、一言二言言葉を交わして急な謁見を終えた。
夕方。
茜色の空が広がり人影が大きく薄く伸びる頃、王宮の西北側にある山脈の岸壁を利用して作られた巨大な石碑の前に人影が佇んでいた。
「ごめんなさい……」
そう呟く人影の正体は愛子だ。
忠霊塔前には、今回の騒動で亡くなった多くの人々──主に恵里の暗躍によって殺害された貴族達等の遺品や献花が置かれている。
未だ確認中で石碑に名は刻まれていないが、エリヒド前国王もここに名を連ねる事になる。
そんな遺品の中には、愛子にとって見覚えのある武具がそっと置かれていた。
西洋剣と槍、短杖だ。それは、逝ってしまった愛子の生徒達──檜山大介、近藤礼一、中村恵里のアーティファクトである。
本来彼等は国逆の大罪人としてイシュタルや司祭達と共に、ソウゴが王都の外れに作った無縁仏の捨て穴に埋葬される予定だった。実際、彼等の首と死体はそこに葬られている。
だが彼等が使っていた武具に関しては、元々国庫で保管されていたアーティファクト──つまり国宝に等しい物であった為、リリアーナの嘆願により修復され特例として忠霊塔に置く事を許されたのだ。
愛子がポツリとこぼした懺悔の言葉は、一体何に対するものなのか。
檜山達を日本に連れて帰る事が出来なかった事か、それとも自分の生徒達が起こした事で(蘇ったとはいえ)多くの人々が亡くなった事に対してか、或いは……。
愛子が悄然とした雰囲気で俯きながら何かを堪える様に立ち尽くしていると、「ザッ、ザッ」と足音が響いた。やけに響くそれは、恐らく自分の存在を知らせる為に態と鳴らしたものだろう。普段の彼は、そんな雑音を立てたりはしないのだから。
愛子がハッとした様に俯いていた顔を上げ、視線をそちらへ向けた。
「常磐さん……」
「奇遇……でもないか」
愛子の視線の先にいたのはソウゴだ。夕日に照らされながらも、それを上回る様に輝く瞳を真っ直ぐ愛子に向けている。その手には花が一輪、見るからに献花しに来たと分かる。その事に愛子は少し意外そうな表情をした。
ソウゴは愛子の表情から何を考えているのか察し、「失敬な……」と呟きながら献花台にパサリと花を置いた。
「私とて、死者を悼む気持ちはあるぞ?」
「え? あっ、いや、そんな、私は別に……」
如何にも心外そうな声音で愛子に話しかけたソウゴに、愛子は動揺した様に手をワタワタと動かして誤魔化す。ソウゴは冗談だとでも言う様に肩を竦めると、無言で愛子の傍らに佇んだ。
愛子はチラチラとソウゴを見るが、巨大な石碑を見上げるソウゴは愛子の事を特に気にした様子も無く、話をする気配も無い。無言の空間に何となく焦りを覚えて、愛子は仕方なく自分から話しかけた。
「え~と、そのお花は……やっぱり檜山君達に……ですか?」
「明らかに違うと分かっている事を訊くな。臣下達にだ」
見当違いの言葉に、ソウゴは眉を片方だけ上げてあっさり返す。
「と言うと、亡くなった宮廷に勤める人達……」
「ああ。面識は無かったが、この国の臣民として死んだ以上は私には弔う責務があるだろう。まぁ、生きていても私に従ったかは知らんが」
「……そうですね……」
ソウゴの言葉に、愛子はどこか優しげな表情になった。敵とあらば容赦無く殺意を向ける印象のソウゴだが、それでも人の死を悼む気持ちがちゃんとある事に愛子は嬉しくなったのだ。態々お供えまで持参して来た事に自然と頬が緩む。
「責めんのか?」
「え?」
突然のソウゴの言葉に、愛子は首を傾げる。
「今回の事全てだ。就任時にも言ったが、私はあの時、あの場で
「……」
愛子は微笑みを消して、再び俯いてしまった。ソウゴは無言だ。返答を促す事はしない。どれ位無言の時間が続いたのか……やがて、愛子がポツリポツリと言葉を溢す様に話し出した。
「……正直、そう簡単には割り切れません。檜山君が白崎さんを殺めた事は許される事ではないけれど、出来る事なら生きて罪を償って欲しかったという想いがあります。常磐さんも、事前に分かっていたなら未然に止めてほしかったと思っています。近藤君も、出来れば生き返らせてほしかったです。……でも私には、常磐さんを責める資格はありませんから」
愛子は、両腕を組む様にして肩を震わせる。
「それは、自分に止める力が無かったからか?」
「……」
無言の肯定。よく見れば目の下には化粧で隠しているが隈が出来ており、ここ数日眠れていない事が明らかだった。もしかすると、悪夢でも見ているのかもしれない。
再び降りる静寂。ソウゴは何を言うでもなく無言のままだ。場の空気に居た堪れなくなったのか、愛子が覇気のない声音でソウゴに尋ねる。
「……常磐さんは……辛くないですか?」
「人を殺した事か? 特段何とも思わんな。何千、何万、何億……幾つもの命を奪い、国を奪い、世界を、星を、宇宙を、次元を滅ぼした。いずれ私が召されるならば、その時は永遠の虚無に飲まれるだろうな。だが今更後悔など覚えんし、寧ろ罪悪感を抱くなど、それこそ私が殺した者への冒涜だ。それが私の一生背負うと決めた、
「……」
ソウゴの言葉に、愛子が辛そうに顔を歪める。凡そ常人には理解出来る領域に無いであろう自罰と不屈の両極を突き詰めた精神性は、愛子を更に締め上げる要因となった。
「……誰も……責めないんです」
愛子が、堪りかねた様に言葉を漏らした。
「誰も、私を責めないんです。クラスの子達の私を見る目は変わらないし、王国の人々からは、称賛じみた眼差しさえ向けられます」
それは事実だった。クラスメイト達はソウゴの凄惨な政策の印象が強すぎて、愛子がそれを許容したという事に気づかず、寧ろ愛子は自分達の為に矢面に立って戦ってくれたという印象を抱いているし、王国の貴族や役人達は洗脳を解いてくれたと感謝している位だ。
「デビッドさん達にも全て話しましたが、彼等でさえ『少し考えさせて欲しい』とその場を離れるだけで直ぐに責める様な事はしませんでした。私は、彼等の大切なものを見殺しにしたというのにっ!」
噛み締めた唇から血が滴り落ちた。
愛子は、責めて欲しかったのだろう。
人を殺すという行為は……重い。狂人や性根の腐った者、或いは覚悟を決めたり割り切ったりした者でもない限り、普通は罪悪感や倫理観という名の刃によって己の精神をも傷つけるものだ。
そういう者にとって、責められる、罰を与えられるというのは、ある意味救いでもある。
愛子自身も、無意識にそれを求めたのだろう。しかし、それは与えられなかった。
「随分と傲慢だな」
「傲慢……?」
そんな愛子を見て、ソウゴは些か不思議な返答をした。疑問符の浮かぶ愛子にソウゴはそのまま続ける。
「私は罪を背負う事に覚悟や責任がある様に、同じく権利があると思っている。今回直接手を下したのは全て私だ。その
「罪を背負う、権利……」
「まぁ、"
多少気障ったらしく締めたその言葉は、ソウゴ流の気遣いなのだろうか。少なくとも、愛子は先程までの様な苦痛に喘ぐ罪人のそれではなく、啓示を噛み締めようとする仔羊の様な不思議な表情だ。
「……まぁそうさな、泣き言を垂れて甘えられるのは子供の特権よな。だから……好きなだけ泣けばいい」
「……え?」
静寂のルーンを描きながら、ソウゴは顔を逸らす。
「私から見れば貴様も、ユエやティオだって等しく赤子の様なものよ。つまりこの場には、格好つけたい大人が一人、泣くのを我慢している子供が一人いるだけだ。子供が泣くのを咎める大人はここにはいない、故に……心のままに動け」
「っ……本当に……貴方という人は……」
愛子は泣き笑いをしながら近寄ると、ポスっとその背中に顔を埋めた。
「では……少しだけ、貸して貰いますね」
「……」
無言で頷くソウゴに愛子は頬を緩めつつ、その身を預ける。そして、溜め込んだものを吐き出す様に涙を流した。
二人の影が大きく東に伸びる。暫らくの間、日暮れの中ですすり泣く声が響いていた。
「まったくもう、ホントにもうっ! ですよっ!」
「ソウゴくん……少し自重しようね?」
「ふふふ、流石ご主人様よ。ほんの少し目を離した隙に止めを刺すとは……」
王宮内の食堂にて、夕食をつつきながらシア達のどこか責める様な声が響く。それを向けられているソウゴは、如何にも他人事といった様子で目の前の王宮料理を口に運ぶ。
ソウゴの右隣に座るユエは何も言わないが、どこか困った人を見る様な目を向けている。事情は聞いたので「まぁ仕方ないか」と思うのだが、明らかに愛子の中のソウゴに対する気持ちが自分達に近しい雰囲気だったので複雑といえば複雑だった。
しかも、ソウゴからは愛子に対する扱いについて"放置"の方針を聞いているので、多少愛子に対して同情心も湧き上がってしまう。
「……ソウゴ様、愛子は耐えられそう?」
ユエは少し心配そうにそんな質問をした。それに対し、ソウゴは食事の手を止めずに淡々と答える。
「気にする必要はあるまい。それに周りが放っておかん故、時間さえあれば解決するだろう」
「……そう、よかった」
僅かに目元を緩ませるユエに、他のメンバーは冷や汗を掻く。
「ユエさん……流石ですね。一歩も二歩も先をゆく」
「これが……私とユエの差? くっ、負けない! 負けないよ!」
「うむ、天然というか何というか……素直に称賛させて貰うのじゃ」
「……不本意な評価」
戦慄の表情をするシアに、悔しそうな香織、そして感心するティオ。思わぬ評価にユエが渋い表情になった。ソウゴは放置して食事を続行する。
ソウゴ達が仲間内である意味仲良く盛り上がっていると、不意に食堂へ集団がやってきた。勿論光輝達を含むクラスメイトだ。どうやら、愛子も含めて全員いるらしい。予め彼等が食事をする時間は聞いていたので、無駄な衝突を避ける為時間をズラしたのだが……その目論見は外れてしまった様である。
一瞬だけ視線を向け、しかし気にする必要も無いと判断しそのまま食事を続けるソウゴ。ユエ達も特に気にしてはいない様だ。
だがクラスメイト達はそうもいかない様で、ある者は興味津々な様子で、ある者はどこか気まずそうに、またある者はどういう態度をとればいいのか分からないと戸惑った様にそわそわしている。
チラチラと視線は向けるのだが、先の謁見でソウゴが明らかに自分達を仲間と思っていないどころか興味すら持っていない事を思い知らされていたので、声を掛ける事が躊躇われる様だ。
因みに、愛子は別の意味でソウゴをチラ見している。
「あっ、雫ちゃん! こっちだよ!」
「香織。隣いいかしら?」
「勿論だよ」
ニコニコと使徒のクールフェイスで人懐っこい笑みを浮かべる香織に、雫も自然と頬を緩めて隣の座席に座った。
香織が体を変えたという信じ難い事実に最初は戸惑っていたクラスメイトも、その笑顔に香織の面影を見たのか僅かに場の雰囲気が和む。体は変わっても、香織の持つ和やかな雰囲気はクラスメイト達の心を穏やかにする様だ。寧ろ、ソウゴが姿を消してピリピリとしていた頃に比べれば、以前の香織が戻ってきた様で嬉しそうにしているクラスメイトも多い。
雫が座席に座ると、その隣に光輝が、向かい側に愛子が、その隣に鈴が座った。愛子は丁度ユエの隣だ。
続いてクラスメイト達が他の座席に座っていく。鈴がユエを見て座る際、「お姉様のお側……し、失礼します!」と言いながら妙に緊張している姿が見られた。ユエが、「……何故お姉様?」と首を傾げる。
光輝達が席に着くと、王宮の侍女達が一斉に動き出し配膳を行っていった。ソウゴ達と同様のメニューだ。
その時、ユエの頭越しに愛子の視線がソウゴに向けられた。チラリと視線をやれば、途端に愛子の頬が薄く染まり、恥ずかしげに目が逸らされる。それでもチラチラとソウゴを見た後、内緒話でもする様に声を潜めて声をかけた。
「あ、あの、常磐さん……、さっきのは……その、出来れば……」
ユエは自分越しに話をされて若干居心地悪そうに身動きするが、恐らく教師でありながらソウゴに泣きついた事が恥ずかしくて口止めしたいのだろうと察し、何も言わなかった。
その愛子の様子に、雫達がソウゴへジト目を向けている。幸い、他の生徒には位置的に死角となってバレていない様だが、比較的近くにいる前線組は訝しそうな眼差しを向けていた。
淳史達愛ちゃん護衛隊の男子メンバーは「あの人、とうとう愛ちゃんまで……」と畏敬と諦めの籠った視線を向けていた。奈々や妙子は苦笑い、優花は如何にも「興味ありません!」といった様子だが、その視線はもの凄い頻度でチラチラとソウゴに飛んでいる。
「一体何の事だ?」
「ふぇ?」
ソウゴは知らぬ存ぜぬの姿勢で目もくれず、極々自然にとぼける。愛子はその態度に一瞬呆けるものの、秘密にしてくれるのだろうと察し苦笑いしながら「いいえ、なんでもありません」と答えた。
つくづくソウゴには気を遣わせていると自分を不甲斐なく思いつつも、気にかけてもらっている事に嬉しさを感じて頬が綻んでしまう。
そんな愛子の様子を見て、益々女性陣から白い目を向けられるソウゴ。唯一、ユエだけがソウゴの肩をポンポンと叩き、更に「あ~ん」をしてきた。
ソウゴが「しつこいな……」と内心ウンザリしていると、逆サイドに座るシアがソウゴの袖をクイクイと引っ張った。
「ソウゴさん。あ~ん、ですぅ」
どうやら恋敵が増えそうな事に憤るよりも、アピールに時間を費やすべきだと判断したらしい。頬を染め、上目遣いでそそとフォークを差し出す。その際、ウサミミをひっそりとソウゴに寄り添わせることも忘れない。素晴らしいあざとさだった。
そんな光景を見せられては、香織とティオも黙ってはいられない。二人も慌てて、料理にフォークを突き刺す。
「ソ、ソウゴくん、私も、あ~ん!」
「ご主人様よ。妾のも食べておくれ。あ~んじゃ」
「……チッ」
面倒さが前面に出た為遂に舌打ちしてしまったが、やらねば収まりがつかないのも理解している。なので溜息を一つ溢し、四人の「あ~ん」に応えるソウゴ。パクッパクッと食いつく。香織もティオもほわ~んとした表情になった。
「何、この空気……半端なく居心地が悪いのだけど……」
雫が、ソウゴを中心とした桃色結界に頬を引き攣らせた。その中心たるソウゴ自身が桃色とは真逆の噴火寸前の火山の様な、または極寒地帯の如き不機嫌さを隠していない為に猶更そうなるだろう。
隣の光輝や龍太郎、鈴も同じ様に居心地悪そうにしている。愛子だけ、自分もすべきかと一瞬考えてしまい、何を考えているんだと自分を叱りつけるという一人ノリツッコミをしていたが皆がスルーする。
他の女子生徒は突然の甘い空気に先程までのぎこちない空気を霧散させて、ソウゴ達をチラ見しながらキャッキャッと騒ぎ始めた。ソウゴに対する何処か畏怖している様な目が一瞬で恋バナのネタを見る様な目に変わった。
奈落に落ちたあの日から、何があれば"あの彼"がこんなハーレムの主になるというのか……事前の説明も忘れ、女子達の目が好奇心に輝きソウゴを見つめる。
一方男子達も、女子と同じ様に一時的であれど畏怖の宿る目を向けなくなっていた。
但しそこにあるのは、メラメラと燃え盛る嫉妬と羨望の眼差しだ。
何せソウゴを囲むのは、"絶世の"と称しても過言ではない美女・美少女達だ。
特にシアに多くの視線が集まっている。やはり、ウサミミ少女というのはオタク的な趣味を持っていなくても男心を的確に擽るのだろう。まして今のシアは、ソウゴの隣で実に可憐な微笑みを振りまいており、時折ピコピコと動くウサミミは破壊力抜群である。
だがいくら嫉妬と羨望に身を焦がそうと、どれだけ異世界の美少女達と仲良くなる秘訣を聞き出したかろうと、何を言えるわけでもない。嘗て、ソウゴを"無能"と呼んで蔑んだ負い目が口を噤ませ、その圧倒的な力と強者特有の雰囲気が気後れさせるのだ。
そんな中である種の慣れ・耐性でも出来たのか、愛子が苦笑いを消して真剣な表情でソウゴに質問を投げた。
「……あの、常磐さん。一つ訊きたい事があるんですが」
「何だ?」
「───神殺しの経緯について、お話頂けませんか?」
「神殺しを"成したか"ではなく、何故神殺しに"至ったか"の過程を聞きたいと。そういう事か?」
「はい」
「……この場にいる面々ではユエとシアしか話してなかった筈だが? 誰から聞いた?」
「えっと、その……八重樫さんから、です」
「あ、ごめんなさい。私は香織から聞いて……勝手に話していい事じゃないわよね」
「……まぁいいだろう。聞いたところで私の威厳が幾らか損なわれ、貴様等は教訓を得る。それだけの話だからな」
ソウゴの威厳が損なわれる、という発言に直に聞いていたユエとシア以外が疑問符を浮かべる。
「前置いておくと、だ。私が神殺しに至ったのはそれが目的だったとかではなく、ただの偶然だ。私の認識で言えば"若さ故の過ち"や"黒歴史"に該当する、決して真似はしない方がいい」
そう呟きながら、ソウゴは事の顛末を話し始めた。
時は十数万年前、私が三百歳前後ユエと同じ年頃の時の事だ。
私はその頃に、最も古く付き合いのあった忠臣を失った。戦いや事故ではなく、単なる老衰の様なものだ。
奴は私が王になる前から付き従ってくれた最初の臣下であり、最初の
そんな男が死ねば、私も流石に堪える。私は悲しみに暮れ、国も民も放って酒に溺れた。極々普通な庶民的な安酒から神代の秘宝酒まで、一日中酒に逃げた。
そしてそれが二、三日と続けば自ずと鬱憤も溜まっていく。
そんな日が二週間程続いた頃には、私は怒りに身を任せた八つ当たりで数十の世界を滅ぼした。焼け野原になった世界、海の底に沈んだ世界、不治の毒に侵された世界、嵐の収まらぬ世界、永久凍土に閉ざされた世界、恐怖で自滅した世界。どんな世界を幾つ滅ぼしたか、私は朧気にしか覚えていない。今振り返ってみれば、暴君どころか暗君もいいところだ。
それから更に一ヶ月程経った頃、私は天使を見た。
比喩ではなく、正真正銘そのままの意味でな。天使という種族と解釈すればいい。
私は神の使いである天使を見つけ、ふとした考えが過りその後を追った。
そうして大した苦も無く神域に辿り着いた私は、そこで虐殺の限りを尽くした。
神とその眷属とは、不滅の存在である。だからこそ、私は考えたのだ。
───何度壊しても使える、理想的なサンドバッグになるのではないかとな。
それから私は、何度でも再生するのをいい事に破壊と殺戮を繰り返した。隠れているなら丸ごと焼き払い、逃げ惑う神を片っ端から殺して回る。老いも若いも男も女も関係無く、見つければ滅ぼした。
斬り殺し、突き殺し、刺し殺し、裂き殺し、殴り殺し、蹴り殺し、絞め殺し、焼き殺し、食い殺し……多種多様な殺し方で気晴らしをしていた。
それを当時の統治下だった全ての世界で行い、一ヶ月。一人一人の殺害回数が百万を超えた頃、不滅が不滅ではなくなった。その神性の全てが私に移ったのだ。
「とまぁ、こんな風に。要は私が神を殺したのは"悪酔いから来る八つ当たり"だったという事だ。軽率に後先考えずに殺してしまったせいで、世界の全ての事象を一人で管理する羽目になってしまったからな。人間の生死のタイミングから一日の天気、作物の出来やらまで全部自分で考えるとなると、中々面倒だぞ? お陰で下手に眠る事も出来なくなった。分かったら気軽に神殺しをする等と口にするのは止めておけ」
そこまで言い終えると、ソウゴはクラスメイトの視線を無視しながら変わらず食事を進めていく。その視線に「そんな理由で神様って殺せるのか……?」という戦慄と呆然がたっぷり乗っている事を理解した上で、ソウゴはやはり無視を貫く。
するとそんなソウゴの側で、何故か頬を染めたままジッとフォークを見つめる香織の姿があった。香織は少し目を泳がせると、何か決意した様に申し訳程度に料理を乗せてパクッとフォークを口にした。そして再び頬を染める。
途端、ユエの痛烈なツッコミが入った。自分をジッと見つめるユエに気がついた香織が、目を合わせたと同時に解き放たれる言葉の矢。
「……変態」
「!? ち、違うよ! 何て事言うの! わ、私は普通に食事しているだけだし!」
「……と言いつつ、ソウゴ様の味を堪能」
「し、してないってば! だ、大体、そんな事言ったら、ティオこそ変態でしょ! ほら、こんなに堂々とフォークを舐めてるんだよ!」
「レロレロレロ、んむ?」
顔を真っ赤にしてユエに反論する香織は、ビシッ! とティオを指差した。その先では、普通にフォークを口に含んでモゴモゴレロレロしているティオがキョトンとしている姿があった。如何にも「何か問題でも?」といった表情だが、ティオが咥えているフォークには何も乗っていなかったりする。明らかに他の何かを堪能していた。何かの内容はスルーだ。ドMの変態は、いつの間にか何でもありの変態に進化していたらしい。
「ティオ、今すぐそれを止めろ。流石に下品が過ぎる」
ソウゴは手を止める事無く、無感情にティオへ一応の注意をする。
「むぅ、仕方なかろう。ユエ達もまだじゃが、ご主人様は未だに妾と口づけをしてくれんし。こういう時に堪能しておかねば、欲求不満になるのじゃ」
何故か非難する様な眼差しを返されて、ソウゴは胡乱気な眼差しを向ける。するとその時、ティオが何かを思い出した様に突然その瞳を輝かせた。
「そうじゃ! ご主人様よ、ご褒美を未だもらっていないのじゃ! 妾は約束のご褒美を所望するぞ!」
「あぁ、そういえばまだだったか」
ティオの言葉に、ソウゴも思い出した様に呟く。何の話かわからない者達が首を傾げる中、シアが代表して尋ねる。
「ご褒美って……何の話ですか?」
「うむ。総本山でな、先生殿を預けられた時に『最後まで無事ならご褒美をくれる』という約束を取り付けたのじゃ。ぬふふふ……ご主人様よ、よもや約定を違えるような真似せんじゃろうな?」
シアや香織が「そんなのズルイ!」と騒ぐ中、ティオが妖しげに笑いながら約束の履行を迫る。何となく皆の注目が集まる中、ソウゴがここにきて初めて食事の手を止めティオに視線を向けた。
「何を望む。言っておくが、あくまで私の"出来る範囲"だぞ?」
言外に"抱け"等という要望は聞かんぞ? と告げる。ティオもその意図を察している様で、心得ているとでもという様に大仰に頷いた。そして、ほんのり頬を染めてもじもじしながら要望を伝える。
「安心せよ、無茶な事は言わんよ。な~に、ちょっと初めて会った時の様に……妾をボコボコにいじめて欲しいだけじゃ」
両頬を手で挟んで、「きゃ! 言っちゃった!」とでも言うようにイヤンイヤンするティオ。既に一度している事なのだから無茶ではなかろう? と、とんでもない要望を伝える。
案の定、その発言はユエ達以外の全ての人間を激しく動揺させた。ソウゴに向けられる眼差しが、どこか犯罪者を見る様な目になっている。
しかしソウゴだけは、ティオの提案に思案顔になる。指を立て一定のリズムで机を叩き、目を伏せながら「ふむ……」と何度か呟きを溢す。そのまま三十秒程考えた後……
「いいかもしれんな」
まさかの肯定を口にしながらソウゴは立ち上がった。
目を輝かせるティオとギョッとする一同に対し、ソウゴは皿の上の料理をどういう手段か一瞬で腹に収めて「全員修練場に来い」と言い残して、フッと姿を消した。恐らく先に移動したのだろう。
何が何やら分からず目を見合わせる一同は混乱しつつも、手早く残りの料理を食べ終えて食堂を後にした。
そうして一同が修練場に向かってみれば、その中心でまるでそこにあるのが当然の様な自然体で立つソウゴの姿があった。ソウゴは静かに目を伏せ、掌の上でキラキラと輝く水晶を弄んでいる。
そしてユエ達の姿を視界に収めると、「来たか」と呟きながら空いている手で手招きする。途端、ユエ達はソウゴの側まで一瞬で移動していた。
「では始めるか」
驚く面々を他所に、ソウゴはユエ達と生徒が全員いる事を確認すると掌の水晶を握り潰す。
すると虹の様な光の波動が淡い煌めきとなって大気に溶けていく。
「あれ? 何ですか、これ……」
「何、今の……」
「何だか凄く……」
それと共に全員がほんの一瞬、突発的な浮遊感と強烈な眠気に襲われた。五感を外側から強制的に切り替えられる様な、とても不思議な感覚だった。
「……ソウゴ様、今のは?」
「"
『ほへ~……』
ソウゴの説明に、シアと生徒一同が理解した様なそうでない様な、曖昧な返事を返す。それを見てソウゴは、更に別の説明──というより、今回この結界を張った理由を口にする。
「早い話が、この結界にいる間はたとえ死んでも大丈夫という事だ」
「え~っと、それってつまり……」
野生の感、或いは獣性の第六感というべきか、ソウゴの言葉から何となく嫌な予感を察知したシアが恐る恐る問い掛ける。そして同じく察したティオは笑顔を浮かべる。
「そういう事だ。……ティオへの褒美を兼ねて、今から貴様等には私と摸擬戦をしてもらう。手加減はするが、それでも殺すつもりで行く」
ソウゴの言葉にギョッとしたのは優花達愛ちゃん護衛隊と前線組の光輝以外のメンバー、疑問符を浮かべたのはユエ達三人と居残り組。
「何、そう不思議がる事は無い。ただ単に私と戦えばいいだけだ。全員が集っているこのタイミングが実力を見るのに丁度いいと思っただけだ。特にそこの四人は、無理に我々に同行しようと言うのだからな」
そう言いながらソウゴが試す様な視線を光輝達に向ければ、他の面々もそちらに目を向ける。
視線を向けられた勇者パーティの内、鈴と龍太郎は一瞬ビクッとしながらも向き直る。雫は言わずもがな、頼んだ本人である為既に覚悟をしている目だ。光輝に至ってはここまで来ると最早流石と言うべきか、未だソウゴとの実力差を実感出来ていないのか睨み返している。ソウゴは視線だけで「やれるものならやってみろ」と言外に伝え、続けてユエ達に目を向ける。
「貴様等もだ。私が課した点をどれだけ改善出来ているか、この場で試させてもらう。勿論ティオもな」
「……ん、頑張る」
「ソウゴさんとじゃなくて勇者さん達と一緒なのは癪ですけど、精一杯やりますよぉ!」
「楽しみじゃのう、どれ位ボコボコにされるんじゃろか……!」
「え、ちょ、私この体まだ慣れてないんだけど!? ……あっ、その試しも兼ねてか」
一方、困惑や緊張が濃い生徒達と比べてユエ達は堂々としたものだ。ソウゴと行動を共にしている事で、その辺りの度胸や実力はついているのだろう。
「それで、対戦形式は?」
「簡単だ。私対貴様等全員、一対約四十。分かりやすかろう?」
ソウゴがそう言った途端、主に居残り組の面々から騒めきが広がる。
彼等彼女等は、前衛組やユエ達と違ってソウゴの実力を見たのは侵攻の時が初である。それ故に、あの実力を見ても尚自分達の延長線上の存在だと思っているのだ。だから数にものを言わせれば、ましてや光輝達も一緒なら恐ろしく思えるソウゴ相手にも勝ち目があると考えるのだろう。
そんな面々を置き去りに、ティオ提案ソウゴ主導の急な摸擬戦の準備が進み始めた。
「さて……ハンデとして、私は今までより分かりやすい攻撃をしてやろう。その上で先攻は譲ってやる、かかってこい」
「っ……、後悔するなよ!」
「ちょ、光輝!?」
特に合図も無く始まった戦いは、
驚きながらも制止する雫の声を振り切り、光輝は即座に距離を詰めにかかる。
「万翔 羽搏き 天へと至れ──"天翔閃"!」
開幕と同時に放たれたのは、光輝が得意とする光の斬撃。
何だかんだとご都合主義な"無自覚頭オーロラ少年"な光輝であるが、それでも全く強化もされていない攻撃でソウゴを害せる訳が無いという事は理解している。故に既に"限界突破"を発動した状態で技を使う。
そんな全身全霊ではないが本気という言葉では足りない程の気迫の一撃に対しソウゴは……
「一応の強化を乗せたのは悪くないが……」
『クウガ!』
宣言通り、分かりやすくライドウォッチを使って能力を発動するというあからさまな手加減接待縛りプレイ。
即座に足下に"封印の紋章"が浮かび、フィールド全体まで広がったソレは吸い込まれる様にソウゴの右脚を輝かせる。それと同時に、白熱化したかの様に燃え上がった足が振り上げられる。
「先ず一手。未だ遅く、脆い。隙だらけだ」
「ぐおっ……!?」
聖剣目掛けて放たれた"
「だぁもうっ! 俺も人の事言えねぇけど、一人で突っ込んでんじゃねぇよ!」
「受け止めるぞ! 少しでもダメージを減らす……!」
咄嗟に前に出た龍太郎と永山が"剛力"、"金剛"を発動しながら受け止めるが、その勢いを殺し切る事は出来ずにほぼほぼ変わらぬ速さで壁に叩きつけられた。
「ぐふっ!!」
「がは……!?」
「───ッ!!」
轟音と共に倒れ伏す三人。光輝は聖剣への間接的な蹴りにも関わらず鎧が砕け、貫通はしていないながらも腹部が抉れて所々内臓や骨が潰れている。
受け止めた二人も背部が削り取られたかの様に肉が千切れており、腕も装甲も原型が無くなる程拉げている。両足もどうにか形を成してはいるが、膝は逆側に曲がり内側から破裂した様に出血している。
それでもまだ絶命していない辺り、ソウゴが絶妙にコントロールしたのだろうか。
『ヒィッ───!?!!?』
だが一方、特に構える暇も無くその光景を見せられた居残り組は戦慄した。揃って悲鳴も溢している。
真面な戦闘を熟す前に戦線から逃げた彼等は、十秒と経たずに起こった列車に撥ねられたかの様な重症を負った三人を見て、ソウゴが奈落に落ちた時より一層リアルな死を幻視した。
「ほれ、どうした小童共。私はまだ待ってやるぞ?」
そこへ冷や水を浴びせられる様に投げられる、ソウゴの言葉。すると……
「……うぉぉぉおおおおッ!!」
何処かヤケクソというか開き直ったというか、そんな雰囲気を纏った優花の雄叫びが響く。
「こうなったら、とことんまでやってから死んでやるわよ!」
優花は捨て鉢の覚悟を叫びながら魔術で炎を纏わせた武器のナイフを投げつける。するとそれを追う様に、ユエとティオ、香織が術を放つ。
「"緋槍"!」
「"風刃"!」
「"分解"っ!」
ティオは威力より速度と連射性を重視した下級魔術を、ユエと香織は威力を重視した一撃をソウゴに向ける。それに乗っかる様に、後衛職の面々も様々な術を放つ。
「開き直った決死の勢い任せか、若い頃の私の様だ」
『キバ!』
迫る刃と魔術の壁を前に、ソウゴは何処からか現れたバイオリンを弾き鳴らす。ダメージが無いとはいえ、目前に攻撃が迫っているとは思えない行動だ。
しかしその攻撃が後数センチでソウゴに触れるまで迫った途端、その全てが赤黒い光に包まれる。バイオリンの音色に乗せて放たれる"支配権の横取り"である。
「「「「なっ……!?」」」」
「二手目。"攻撃が乗っ取られる"、という経験は初めてか?」
「っ! バカオリ、一緒に天絶っ!」
「分かってるっ、鈴ちゃん一番強いのお願い! "天絶"!」
「わ、分かった! ここは聖域なりて、神敵を通さず ──"聖絶"!」
その言葉と共に、ソウゴの体と影が無数の光る蝙蝠に分裂して奪われた術と共に飛び掛かった。キバの蝙蝠召喚と"
その脅威を一早く感じ取ったユエが香織、鈴と共に"天絶"と"聖絶"の障壁を張ったが、それはゲリラ豪雨をティッシュで防ごうとでもするかの様な無駄な抵抗に終わった。
「ぎゃあああああっ!!」
「痛ええぇぇぇっ!」
「痛い痛い痛い!!」
「嫌だ、死にたくないぃ!!」
「ソウゴさん……本当に容赦無いっ!」
「妾が頼んだとはいえ、一体ご主人様の引き出しは幾つあるのやら……!」
無数の蝙蝠と自分達の術によって体を貫かれたり手足が千切れたりと、生徒達は経験した事の無い激痛に絶叫を上げる。シアとティオも耐えてはいるが、脇腹が削れたり腕や脚の骨が露出する等決して無視出来ないダメージを負う。
「ん、くぅっ!」
「防げるとは思ってなかったけど! これはちょっと予想外だよっ!?」
「そんな、何で……!?」
一方でユエ、香織、鈴は自分達の張った障壁がまるで障子紙の如くあっさり破られた事に驚く。ユエと香織は元々ソウゴの攻撃を完全に防げるとは思っていなかった為に咄嗟に迎撃用の術を発動したが、"結界師"の天職持ちである鈴はその光景にプライドも粉々に破壊されたのか棒立ち状態で格好の的になっていた。
「おいおい、まだ二手だぞ? もう少しは粘ってもらわねば張り合いが無いぞ。貴様等もそう思わんか?」
「「───ッ!!」」
ソウゴは挑発する様な言葉を倒れ伏すユエや生徒達に投げつつも、その視線は今の今まで動かずに、確実に機会を伺って気配を殺しながら背後に回っていた雫と遠藤に向けられる。そしてその手には既に、別のウォッチが握られている。
『龍騎!』
「ぐふっ!?」
「遠藤く──きゃあっ!?」
途端、背後から飛び掛かろうとしていた遠藤に地面を割って現れたドラグレッダーが噛みつき、遠藤を咥えたまま雫を体当たりで弾き飛ばす。
「雫ちゃん!」
「浩介!」
そのまま地面を転がる雫にぶつける様に、遠藤から牙を抜き刃と一体化している尾で叩きつけるドラグレッダー。続けて放たれる約五千度の火炎に、二人共悲鳴を上げる間も無く火達磨になる。
「三手。……情けないぞ貴様等」
ソウゴはその光景に溜息を溢し、回復魔術を掛けようとする。しかし……
「よくも、雫を……! 許、さない……!」
ザッ、という砂を踏む音と共に、一人の少年が立ち塞がる。
勿論、光輝であった。
治癒師の手が回らない為にその傷は塞がっておらず、臓物を撒き散らしながら立つその姿は勇者というより復讐者のそれだ。
"封印の紋章"による継続ダメージを受けながらも、光輝は聖剣の欠けた刀身を魔力光で形成しつつソウゴに向かって斬りかかった。
「──"天翔裂破"ッ!」
血反吐を吐きながら放たれる光の刃の群体に、ソウゴは憐れむ様な目を向けて対処する。
「実力に伴わない気概とは難儀なモノよな」
『ブレイド!』
ウォッチの起動と共に紺碧の障壁"オリハルコンエレメント"がドーム状に展開され、光輝の"天翔裂破"は一つたりともソウゴに届かず弾かれる。
愕然とする光輝の表情を他所に、青いエネルギーはソウゴの体から柱の様に立ち上がり頭上でインクを垂らす様に広がっていく。青光は無数の剣を形作り、戦場全体を覆う様に刃を向ける。
「四手、"蒼雷天鬼雨"。精々凌いでみせろ」
指揮棒を振るう様に、ソウゴの指が振り下ろされた。
文字通り雨の如く降り注いだ無数の光剣と稲妻は、僅かに立つ気力を残していた光輝とユエ達諸共倒れ伏す生徒達にも襲い掛かる。
「うっ、ぐはっ……」
「ッ──、 "波城"! "緋槍"! "雷龍"!」
「ぐぬぬっ、ですぅ!!」
「くっ、"砲皇"!」
「──"天絶"! からの"分解"!」
「追いつかない───ッ!!」
元々内臓の大半を失った状態に継続ダメージを受けたまま気合だけで立っていた様な光輝は一瞬で針山の如く全身を貫かれて倒れ伏す。龍太郎と永山もどうにか立ち上がって他の生徒達を守る様に立っていたが、その防御力は剣と雷の雨には紙屑に等しく易々と貫かれていった。
ユエと香織は防御を交えつつの範囲魔術、ティオは防御をステータスと技能に任せて反撃に全振り、シアと全身火傷状態の雫は"無拍子"を駆使した手数で対処していくが、何れも無傷で対処出来たのは五撃目までが限界。ユエは自前の"自動再生"、シアと香織はソウゴから習った"生命帰還"や"波紋"で傷を塞いでいくが、迫る“天鬼雨”の威力も数も速度も彼女等の遥か先を行く。他の生徒達は既に虫の息だ。
『ファイズ!』
そこへ更に、ソウゴ自身の追撃も加わる。
「五手、"光血水鉄砲の術"」
ソウゴは手で銃の形を作り、ユエ達に向ける。その指先から鬼灯一族の秘伝"水化の術"の一つである"水鉄砲の術"に乗せて、光る血の雫"フォトンブラッド"を撃ち込む。次の瞬間にはユエ達にポインティングマーカーが浮かび、その動きを拘束する。
『アギト!』
続けて三対の角を持つ龍の様な紋章が浮かび上がり、ソウゴの輝く拳に吸い込まれる。それと共にソウゴの背には猛々しい獅子座の幻覚が浮かびあがり、その矛先をユエ達へと定めた。
「六手、"
「「「「「──────ッ!!?!?」」」」」
アギトの力を乗せた秒間一億発の光速拳が、放たれたと認識するより前にユエ達の体を撃ち抜いた。一発一発が肌を裂き、筋を断ち、神経を斬り、血管を破り、骨を砕く。そうして反撃する意識が刈られた者から剣と雷に飲み込まれていく。
そして雨が止めば……
「ここまで六手。残ったのは貴様だけか……」
「はぁ、はぁ、はぁ……どうや、ら、……その様、じゃのぅ」
立っていたのはティオ一人だけだった。持ち前の耐性の高さと"痛覚変換"でどうにか耐え切った様だ。
「これでも手加減しているのだが……。ユエや体の慣れていない香織は兎も角、シアは問題だな。"覇気"の鍛錬を怠っていると見える、全く纏えていない」
「手厳しいのぉ……、───ッ!」
「七手」
『電王!』
ボロボロになりながらも、どうにか反撃しようと"竜化"を図る。だがそれを見過ごす程今のソウゴは手を抜かない。
ソウゴが脚を振り抜いた途端、空中で線路が形成されティオに向かって伸びていく。それらは断ち切れない鎖となって、ティオの体を縛っていった。
「ぐうっ!」
『カブト!』
「八手」
『CLOCK UP』
ソウゴは時間が止まったと錯覚する程の時間流の中でティオに駆け寄り、空中へと蹴り上げる。
『CLOCK OVER』
「───ぐほぉぁッ!!?」
『響鬼!』
「九手。"火遁・豪火滅却"」
間髪入れず、ソウゴの放った紫の大炎が無抵抗で宙を舞うティオを飲み込んだ。それでもティオはまだ息があり、最後っ屁の様にブレスを放った。そこへ……
「───"蒼龍"!」
ほんの僅かに魔力を残していたのか、どうにか息を吹き返したユエが渾身の"蒼龍"を放つ。
挟み撃ちの様に迫る二つの光、それでもソウゴは驚かない。
「十手、自分で喰らうがいい」
『ディ・ディ・ディ・ディケイド!』
ソウゴを挟む様に光の膜──"オーロラカーテン"が出現し、ブレスと"蒼龍"を飲み込んだ。その出口は、二人の頭上に開かれる。
そうして二人は、自分自身の攻撃に焼かれた。
そうして立つ者がいなくなっても、ソウゴは追撃を止めない。
『ダブル!』
「十一手。そうら、起きろ小僧共。"神砂嵐"」
そう言って発破をかける様に放たれた二色の竜巻は、地面に倒れる面々の体を肉片に変えながら宙に舞い上げる。
「う……、くっ……」
「けほっ」
その螺旋の衝撃波によって体を千々に刻まれながらもその鈍くなった感覚でそれを感じたのか、シアやティオ等は呻き声を上げて目を開く。
「まだ終わらんぞ、十二手目だ」
『ビルド!』
次のウォッチを起動すると同時に、ソウゴは両掌を空中に巻き上げられたユエ達に向ける。
するとその掌の腹が吊り橋が下がる様に開き、その中から極小の砲台の様な物が現れる。その砲口から青光を漏らしながら、無数の豆粒サイズの砲弾を発射する。"タンクフルボトル"と"シロシロの実"の能力を合わせたそれは着弾と同時に爆炎を起こし、そのサイズから想像もつかない程の風と衝撃を撒き散らした。
数秒経って、その黒煙が晴れる頃。ソウゴは次のウォッチを取り出し、徐に微笑を浮かべる。何故なら───
「───"絶象"ッ!!」
黒煙の中から、神代と称される治癒の奇跡の名が響く。香織の現在の体である使徒の肉体の動力として組み込まれた"ソウゴの心臓"から供給されるエネルギーによって輝く銀翼の光を背負う香織から放たれる"絶象"の癒しは、瞬く間に全員の体を包み込み傷を癒していく。
「まだまだ行けるよソウゴくんっ!」
「そう来なくてはな。では、この十三手目はどう耐え凌ぐ?」
『フォーゼ!』
途端、宙に躍り出たソウゴの全身が開き、そこから無数の重火器が現れる。"ロケット"、"ランチャー"、"ドリル"、"ガトリング"のモジュール能力に、"修羅道"も同時発動した銃撃、砲撃、焼却、光線の入り混じった超絨毯爆撃。
「……ん、くぅ、キリが無いっ」
「密度が! 凄すぎて! 避けられないですぅ!」
「"竜化"する暇が無いっ! これで手加減しておる方とは、恐れ入るのぉ……!」
ユエとティオは攻撃と防御の両方に術を、シアは空力ブーツで宙を蹴りながらドリュッケンや拳から"魔衝波"を放って対処するが、撃ち漏らしが体の要所要所を捉え無視出来ないダメージを与える。
「"回天"! "天絶"!」
「くそッ! "天翔……ぐは!?」
「光輝! きゃあっ!?」
香織は鈴や綾子と共に障壁を張ったり回復に回るのに付きっきりで、ユエ達と共に反撃に回る余裕は無い。光輝や雫、優花や淳史等は十回に一回程度の確率でミサイルや砲弾を撃ち落とす事は出来るものの、銃弾やレーザーには対処出来ずに徐々に体に穴が増えていく。
「上手くいってくれよ……! ──"落牢"!」
そんな中、「一か八かの手がある」と持ち掛けて永山に守ってもらいながら必死に詠唱を終えた野村が、渾身の魔力を乗せて嘗て自分達を窮地に追い詰めた土属性上級魔術"落牢"をソウゴに向けて放つ。
それを補助する様に、遠藤が再度ソウゴの背後から今度はナイフや小刀を投げつける形で攻撃する。
「工夫する姿勢は悪くないが、まだ私には届かない」
『鎧武!』
「土は石であり、砂の集まりでもある。地面──大地は森、海に並ぶ命の源であるが、その関係は対等ではないと知るがいい。……十四手、意思を持った森の侵食だ」
"落牢"の玉と遠藤の投擲物に挟まれる様に立っていたソウゴとの間に、突如人間大の大きなジッパー──"クラック"が出現し、無数の蔦植物が術もナイフも幾重に搦め取っていく。ナイフは勢いを殺されて投げ返され、"落牢"は破裂する前にクラックの中に収納され不発に終わる。
そして閉じた次の瞬間には新たなクラックが出現し、そこから異形の怪物"インベス"が溢れ出る。
ミサイル攻撃をどうにか耐え切ったユエ達や光輝達に、今度は異形の軍勢が襲い掛かる。
「何だ今度は!?」
「魔物っ!?」
「──"五天龍"!」
「"劫火浪"!」
その爪牙が光輝や龍太郎の防御を容易く破り、雫の斬撃やシアの殴打が呆気無く弾かれるのを見て、ユエと香織が即座に高火力の魔術を撃つ。その攻撃は即撃破とは行かなかったものの、他の生徒の術や物理攻撃よりはダメージを与えていく。
それによって初級インベスが概ね撃破された頃、ソウゴが次のウォッチを使用する。
「目には目を、歯には歯を。十五手目は術対術で行くとしよう」
『ウィザード!』
空中に無数の赤い魔法陣が現れ、そこから伸びる鎖がインベス諸共全員を縛り上げる。骨が軋む程の強さで縛り上げるその鎖は、術の行使も止める様に猿轡の要領で口にも巻かれていく。
同時に生徒達を囲う様にソウゴの分身達が現れ、手を翳して術を放つ。
『ボルケーノ!』
『ハイドロ!』
『テンペスト!』
『ホライズン!』
『ブリザード!』
『サンダー!』
『エクスプロージョン!』
『ホーリー!』
『ブラスト!』
同時に放たれるウィザードリングマジック。そこに"メラゾーマ"、"マヒャド"、"イオナズン"、"バギラミア"、"ベギラゴン"、"ギガデイン"、"ドルモーア"、"ベタドロン"を乗せれば、高々人間に向けるには超過剰と言っても足りない程の極彩色の殺戮の嵐となって迫る。
「 ──"壊劫"!!」
「───"絶象"!!」
空かさずユエと香織が神代魔術で対応しようとするが、その集中と詠唱の間をソウゴは見逃さない。
『オーズ!』
「十六手」
視認出来ない程の跳躍力で飛び掛かり、肉眼では捉えられない魔力器官の核を鉤爪の如く鋭い指で切り裂く。
「ぐ、ぁっ!」
「魔力がっ!?」
その一撃は核を破壊する事は無かったものの、才あるユエや香織ですら緻密な作業を要する神代魔術の行使は失敗に終わる。しかも魔力を全身に通す為の"精霊の通り道"という回路にも傷が付き、そのせいで魔力が外に漏れ出てしまい下級魔術分の魔力すら編む事が出来ない。魔力を維持出来なくなった事により、空中に留まれなくなった二人は重力に引かれる様に墜落していく。
そうなればソウゴの魔術攻撃を遮る壁は鈴の"聖絶"のみ。光のバリアドームは着弾の寸前に放たれた"凍てつく波動"に消し去られ、中にいた面々はミキサーに放り込まれた様にグチャグチャに潰れていく。
「やはりユエは鍛錬を怠っている様だな、あれでは狙ってくれと言っている様なものだ。───ほう?」
その様を落胆の色で見下ろすソウゴに、二色の光が襲い掛かる。
「"神威"!!」
「──ッ!!」
光輝の必殺技"神威"とティオのブレスだ。どちらも散々叩きのめされ──特に光輝は一度"限界突破"を発動して解除された後だというのに、大変しつこ……根性のある事である。
しかしタイミングとしては悪くない。先程までと違い、ソウゴは一人宙に浮いている。誰も巻き込む危険性が無い上、ユエと香織という重大戦力を落とした直後というのも狙うにはバッチリと言える。
「ふむ……悪くないか。ならば──」
『エグゼイド!』
「──ここまで来れば、私も剣を抜かねば礼を失するというものか」
そう言って逢魔剣を抜くソウゴの周囲には、瞬きの間に現れた多種多様なコイン──エナジーアイテム。
その中から四つを引き寄せ、ソウゴはその効力を得る。
『剛力化!』
『金剛化!』
『鳴神!』
『雷霆!』
効果が発揮されると共に剣を構え、その刀身は黒く染まり赫々とした獄炎を纏っていく。そこへエナジーアイテムの雷光が乗り、二つの極光と相対する。
「十七手──"神避・紅蓮爆龍剣"」
その一振りは極光を染め上げ、放った張本人である二人も飲み込んで爆炎と黒煙と共に壁際まで叩きつける。
炎と煙が晴れれば、そこには身に着けた物はおろかその体すら半ば炭化した光輝とティオの姿。
「……少しやり過ぎた、これでも過剰だったか」
少し反省する様に頭を掻くソウゴ。
──その耳に、空気を裂く様な鋭い音が届く。
その背後には、光輝がやられた事に気を取られる事無く、確実にソウゴへ一太刀浴びせるという鬼気迫る勢いで鞘走らせる雫と、その後を追う優花達六人。
そして"無拍子"で放たれる、ソウゴの首を狙った一閃。八重樫流斬術奥義"断空"。果たしてその凶刃は……
『ゴースト!』
「八重樫雫。気配遮断は浩介の方が上の様だな」
「っ──!?」
断ち切る感覚も、固く弾かれる感覚も、軽く逸らされる感覚も無く、ソウゴの首をすり抜ける。
「十八手。これが貴様等の限界だ」
そのまま勢いを殺す事無く雫の体ごと自分をすり抜けさせ、ソウゴは雫と優花達の間に立つ形で再び実体化する。
"
そして既に、ソウゴの視線は雫の方を向いていない。
ソウゴの霊体化による透過の衝撃で一瞬足が止まった優花達の目前で、ソウゴは自身の背で眼魔界の紋章を光らせる。その光を乗せて振り向きながら回し蹴りを放ち、優花達を爆発四散させる。
そうして他の面々を見てみれば、魔力路を断ち切られて地べたを這い蹲るユエと香織に、肉体も戦意も折れた生徒達。立ち上がる気概があるのはシアのみだが、そのシアも先程の呪文の嵐に対処しきれなかったのか、相棒のドリュッケンは既に砕け、左腕は根元から無くなり、両足もズタズタになって原型を留めずに捻じ曲がっている。"波紋"や"内活通"の輝きも見えるが、肺も丹田も深く傷が入っているのか微々たる効果も表れない。
「……ここまでだな。これ以上は冗長になる、後二手で終わりにする」
『ドライブ!』
そう宣言したソウゴの体から赤い波動が広がり、突如他の面々は肉体と意識のズレを感じ取った。今迄に感じた事の無い不思議な感覚、"意識に肉体が追いつかない"とでも表現すべきか。重いや怠いとは違う、頭は正常に働くのに肉体も景色も遅れている様に見える。
「これが十九手目の"重加速"。そして──」
その著しく遅滞した光景の中で、唯一人通常通りに動くソウゴはとても速く見えた。
『アマゾンオメガ!』
『アマゾンネオ!』
二つのウォッチの起動と共に、ソウゴの手足や背から伸びる幾つもの触手。
その正体は、一本一本が数億度の熱を持った伸縮自在の血管──"怪焔王"。先の侵攻時に近藤礼一の死体を破壊した熱を操る流派モード。
そうして迫った血管の触手は、一瞬触れただけでユエや生徒達の四肢を溶かして無防備に変える。
「これで
次の瞬間には、ソウゴの腕から生えた刃が振り下ろされた。
その一刀の下に、全員の首が斬り落とされる事で摸擬戦の幕は閉められた。
後書きは思いつかない。
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