時透くんと煉獄さん家の杏子さん   作:★kinaco★

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「夢の中の涙の君」の最終話。
無一郎とまだ赤ちゃんの杏子さんのお話。




0話 時透くんと赤ちゃん

「伊黒さん!見て見て〜 とっても、とっても可愛いわぁ〜!

手もこ〜んなにちっちゃくって… 

それに、本当に赤ちゃんって甘い香りがするのね。

ふわふわで、柔らかくて…

小さい頃の弟達を思い出すわ〜」

 

「あぁ、そうだな。

しかし、微塵も竈門の遺伝子を感じないな…

煉獄、お前の家系の遺伝子は一体どうなっているんだ…全く。」

 

そう言いながら、甘露路さんから絶対離れない伊黒さん。

 

「ならば次は俺がド派手な抱っこを見せてやろう!」

 

「駄目だ… 宇随はさっき天井まで赤子を投げて煉獄に怒られたばかりだろう!」

 

「何言ってんだ、普通に抱っこして何が面白い!それに俺が落とす訳ないだろうが!」

 

「そういう問題じゃないだろう… そもそも赤子を投げては駄目だ…」

 

「悲鳴嶼さんの言うとおりですよ〜 そんな場面、煉獄さんのお父様に見られたら最後、この世から消されますよ。

ところで… 冨岡さ〜ん、そんな離れた所に居ないで、、もっと近くで赤ちゃんを見たら良いじゃないですか〜」

 

「俺は…  もういい、さっき泣かれたし…」

 

「まさか、そんな事気にしてるんですか?」

 

「……。」

 

「不死川さんが泣き止ませてくれたんだから良いじゃないですか〜」

 

「…俺だけ…」

 

「拗ねてるんですか?

悲鳴嶼さんも、宇随さんも、不死川さんもみんな兄弟や子供の世話で扱いに慣れてるだけですよ。

末っ子長男の富岡さんは仕方のないことですよ。」

 

しのぶさんも今日はとても楽しそうだ。

冨岡さんもよく喋っている!

 

「しかし、さっきの親父さんの反応と言ったら… 

孫の威力とは恐れ入ったな。」

 

「あぁ…しかし、、酒浸りじゃなくなったのは喜ばしいことだ…」

 

宇随さんも悲鳴嶼さんも、忙しいのに任務の合間をぬってきてくれた。

 

 

今日は産まれて1ヶ月になる我が子に会いに、柱の方々が家に来てくれたのだ!

 

まさか不死川さんも来てくれるとは思わず…

でも、顔を出してくれて何だか胸がほっこりした。

赤ちゃんも無言であやしてくれてたし、その時とても優しい匂いがした。

良い人、、、なんだろうな。(炭次郎の頃の殺気だった記憶しか無かったけど)

 

 

そんな本日主人公の我が子は煉獄家では珍しい女の子でありました。

 

あの妊娠騒動の後、煉獄さんはすぐに妊娠している事を槇寿郎さんに伝えたのだ。

「ちゃんと話せば父上は必ず分かって下さる!」と言っていたけれど、、、

私は内心、血を見るのではないかとヒヤヒヤした訳で…

ところが、驚きはするものの…今までの酒浸り生活に負い目もあるようで、思いのほか煉獄さんにお咎めは無く。

逆に今にも切腹しそうな程の気迫で私に謝られたのだ。

 

そして… 只でさえ心配性の煉獄さんが更にもう一人増えるという事になる!!

 

えぇ、それはもう!煉獄さんが任務に行ってる間、常に…常に!

背後に槇寿郎さんが付いてくるのだ!

守護霊の如く!

呼吸を使ってるのか音もなく背後から急に現れるので…(槇寿郎さんなりにこちらに気を遣ってるらしいけど…)

逆に胎教に悪い気しかしなかったのは内緒だ。

しかも杏寿郎さんとはまた違った眼力!圧力!

ある意味心臓に悪い。

 

一方の千寿郎君は「弟か妹が欲しかったから嬉しいです!」と満面の笑顔で返してくれた。

相変わらず心優しい千寿郎くんにも救われたりと、何やかんやで今日に至った訳である。

 

そしてお父さんになった煉獄さん。

杏寿郎さんはというと、、

予想外の女の子という事もあるのだろう。

産まれたその日から嫁に行く心配をし始める。

重症だ。

お祖父様の槇寿郎さんも同じく、それはそれは蝶よ花よの如くの可愛がりようなのだ。

これには先が少し思いやられる。

想像してみて欲しい… このまま、この顔面偏差値100点満点の父、叔父、お祖父様にでろでろに溺愛され育ったら…

この子はどんな子になるのだろうかと心配になる。(確かに!確かに!めちゃくちゃ可愛いのだけども!!)

それこそ理想が高くなり過ぎて普通の男性の元には嫁げなくなりそうな…

考え過ぎだろうか?

 

でも、杏寿郎さんがこの子に向ける愛おしげな眼差しを見ていると、、本当にこの子を授かって良かったと思う。

本当に…。

彼のその表情がたまらなく私は大好きなのだ。

その後すぐに「炭子も変わらず愛らしいぞ。」と微笑みかける煉獄さんに、日々心を鷲掴みにされている。

 

結局、家の事も赤子のお世話もほとんどこの煉獄家の男性陣がしてくれるという至れりつくせり生活だった訳なのだ。

こんなに大切にしてもらえるとは… 何だかバチが当たりそうな気も…。

 

 

そして、今も隣で、、

 

「我が子は世界一可愛いな。」

 

「あっという間にでかくなって、嫁に行っちまうんだろうな。」

 

「宇随はさっきからそればかり… 嫌がらせか?」

 

「今から言っとかねぇとお前も一緒に娘とくっついて行っちまう気がしてな。」

 

 

そして、そんな私は…

 

実は産後の肥立ちがあまりよく無い。

 

若くして産んだ事に加え、とにかく… とにかくよく泣く赤ちゃんなので、夜は睡眠が殆ど取れておらず…

ふらふらな訳だ…

 

そう思うと、自分の母はあんなに沢山子を成して、尚かつあれだけ動き回っていたと思うと、母は偉大だ…と改めて思う。

 

 

「甘露路… そろそろ任務の時間だろう?

俺達もそろそろお暇を…」

 

「もうそんな時間… もっとこの子を愛でたかったのに、、、残念だわ〜」

 

「じゃあ、俺達もぼちぼち行くか」

 

「では、そこまで見送ろう!」

 

他の柱達も多忙な為、赤ちゃんを見て暫くしたら各々の任務へ赴いて行く。

貴重な時間に会いに来てくれてありがたい。

 

 

伊黒さん達を見送ってきた煉獄さんが戻ってきた。

 

「さて、そろそろ医者も来る頃だ。この子は俺が見ておくから、炭子は寝室に戻って医者を待ちなさい。」

 

今日はお医者様に往診して貰う日なのだ。

お医者様… 高いのにすいません。

 

 

 

すると、要が向こうから飛んでくるのが見えた。

 

はっ!やっと寝静まったのに!

要が喋るとこの子が起きてしまう!

他の鴉に比べれば静かだけど、それでも鴉なので任務の伝達時はそれなりに声は大きい。

 

「時透!すまないが、この子を少しの間見ててくれるか!?すぐ戻る!」

 

と、時透くんに!?

 

ぼーっと縁側に座っている透明君…

だ、大丈夫だろうか?

でも、確かに今は彼しかこの家にいない…

千寿郎君も槇寿郎さんも出掛けてしまっているのだ。

 

 

「なに、この子も今は寝ているし、心配は無いだろう!

彼になら任せて大丈夫だ!俺もすぐ戻る!

では!頼んだぞ!」

 

 

そう言って、私と煉獄さんはその部屋を後にした。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

いつの間にか、皆帰ったのか。

 

 

とりあえず、赤子の側に腰を下ろす。

 

 

いつも自分が一番年下だから、更に下の子を見る事なんてほとんど無いけど。

 

 

 

寝てる…

 

 

 

炭子、痩せてたな。

 

さっきも寝れてないと話してるのを聞いたけど…

 

自分の母親も、こんな感じだったんだろうか、双子だったし、もっと大変だったのかもな。

 

 

そんな事をぼーっと考えいると…

 

「ふ、ふぎゃっ……」

 

あっ、起きた…

 

「ふぎゃーっ!」

 

一瞬、大きくなった声にビクッとなる。

 

とりあえず… 抱っこ、、、すれば良いのかな。

 

まだ、首が座ってないのか、グニャグニャしてて抱きにくい…

 

 

こうかな?

 

それとも… こう?

 

とりあえず、膝の上に置いてみた。

すると、思いのほかすぐ泣き止んだ。

 

暖かい… 

 

ほんのり優しい香りがする…

 

他人の温もりを感じるなんて、いつぶりだろうか。

もう、ほとんど記憶にないけど。

 

 

 

でも、この感じ… 嫌じゃない。

 

 

ジッ…とこちらを見てくる。

 

 

それにしても、煉獄さんにそっくりだな。

 

目の色まで同じなのか…

 

焔色、、自分には無い眩しい輝き…

 

 

「そんなに僕の事見たって、何も面白い事なんて無いだろ。

 

君の方が、僕なんかより色々持ってる。」

 

 

赤ちゃんに何言ってんだ。

 

分かるはずも無いのに…

 

 

「あ…うぅ〜」

 

笑った…。

 

「きゃっ」

 

 

ちょっと… 可愛い

 

 

暫くその表情をジッと眺める。

 

 

 

すると小さな手がこっちに伸びてきた。

 

 

何となく、指を差し出してみる。

 

ぎゅっ

 

 

 

こんなに小さいのに、結構な力で握ってくる。

 

そして離さない。

 

 

 

いつか、この小さな手も鬼を狩る為に刀を握るのかな。

 

煉獄家に産まれたんだから、きっとそうなるんだろう。

 

刀を握るのは、、もう、僕達だけで終わりになれば良いのに

この暖かい手は、何か違う… もっと優しい何かを…

 

なんとなく、、、そう思った。

 

自分には無い、明るい光を秘めてるこの子はどんな子になるんだろう。

 

 

 

 

 

すると、襖が開いた。

 

 

「時透くん!待たせてごめん!大丈夫だった?」

 

「診察は?」

 

「うん、もう終わったよ!とりあえず、お薬も貰ったし、暫くはそれで様子を見てくれって…

 

あれ? 

起きてる?

 

泣かなかったの?」

 

「一瞬泣いたけど、抱き上げたら泣き止んだよ。」

 

「す、凄いね!時透君!この子、起きたら最後、私か煉獄さんじゃないと泣き止まないんだよ!

しかも、物凄く笑ってる!」

 

そうなのか。

 

「とりあえず、僕はそろそろ行くよ。煉獄さんに宜しく言っといて」

 

 

そう言って、僕は玄関に向かった。

 

僕にだけ、笑ってくれたのかな。

 

もしそうだったら… 少し嬉しい。

 

そんな風に思える自分に少し胸の奥が暖かくなる気がした。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「待たせたな!時透!」

 

 

「時透君なら、ついさっき帰りましたよ!」

 

「そうか、今度礼を言わなければ…」

 

「それより!聞いてくださいよ!杏子が泣かなかったんですよ!」

 

「それはほんとか?」

 

「千寿郎君達ですら、特に寝起きは手こずるのに、時透君には何か隠れた才があるのかも」

 

そして、横で愛おしそうに我が子を抱く煉獄さんに、意地悪をしたくなった。

 

「将来、ああいう男性と結婚するのかもしれませんね。将来有望だし」

 

「なっ!!そんな事は、俺が許さない!」

 

「冗談ですよ!あまり真に受けないで下さい。」

 

そんな様子の煉獄さんが可笑しくて可笑しくて笑ってしまった。

 

でも

「案外… いい旦那さんになるかもしれませんよ。」

 

 

生まれたばかりの蕾は、、、何がきっかけで花開くかなんて誰にも分からない。

 

だって、こうして私と煉獄さんが夫婦になっているのだから… 

 

未来はそれだけ色んな可能性が秘められている。

 

願わくば、この子の笑顔がずっと続いてくれる未来を…

幸せな未来を…。

 

そう願いながら、目の前の愛すべき二人を抱きしめるのだ。

 

 

 

 

 

 

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