時透くんと煉獄さん家の杏子さん   作:★kinaco★

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3話 時透くん、お弁当!

15年の歳月はこんなにも人を変えるのか。

 

花を見に行ったあの日だった。

普段他人にそこまで興味の無い自分が道すがら、それに気づいたのは。

本当はその前から向けられていたのかもしれない。

すれ違う男達が彼女に向ける視線を…

その様子に、あぁ、この子もそういう年頃を迎えてるのか。と…改めて経った月日の長さを感じた。

 

 

そのくせ泣き顔や笑顔は幼いころのままだったけど。

 

そして、それは突然に訪れる。

その彼女に「友達になって!」と迫られた。

煉獄家の血筋なのか… こちらに有無を言わせないほどの眼力で…。

娘があれだけグイグイ行くのだから、煉獄さんはもっと炭子に迫ってそう…と、ぼんやり考える。

 

なぜいきなり友達なのか、自分はもう三十路も間近な29歳。

しかも、あんなにギャーギャー怒ってたし、、、

 

女心はよく分からない。さして興味も無い。

 

忘れていた、古い記憶が蘇る。

 

なぜか生まれた時から自分が抱っこすると泣き止むからと、、任務の合間よく子守に呼ばれていた。

こんな冷めた自分のどこが良いのか分からなかったけど。

自分だけに… というのに悪い気はしなかった。

むしろ、、、

 

 

でも、それも昔の話。

 

今では彼女に会うこともほとんど無い。

たまに会うことがあっても、もうこちらに駆け寄って来る事もない。

 

それでいい。それで…

 

そう思っていたんだけど、、、

 

そんな僕は、今煉獄さん家の居間でお茶を頂いている。

少し話がしたいという事だ。

 

そして、なぜだろうか。

 

目の前に宇随さんが座っている…

 

ここ、煉獄さん家だよね?

 

なんでこの人いるの?

 

おかしいよね。

 

 

「炭子、お茶を」

 

「は〜い!お持ちしますね!」

 

「宇随さん、、、お茶くらい自分で入れなよ。」

 

「良いんだよ!炭子は俺の4人目の妻みたいなもんだから。」

 

「煉獄さん、日輪刀取りに行っちゃ駄目。」

 

 

この家は相変わらず居心地が良い。

煉獄さんの太陽のような明るさと、炭子の優しい空気感が混ざり合って家中を暖かく包み込む。

そんな雰囲気。

この二人の存在は大きい。

 

だからといって、宇随さんのように頻繁に訪れるのはどうかと思う。

 

本人達は楽しそうだけど。

 

暫くして。

 

「ところで時透。」

 

煉獄さんがいつの間にか向かい側に座っていた。

 

「先週、花を見に行った時、、、杏子に何か言ったのか?」

 

先週…?あぁ、この間の… 彼女が自分の容姿を

 

思い出す。

 

普段あれほどはきはき喋るのに、今にも消え入りそうな震えた声で、背中で泣いてた事を。

 

煉獄さんがじっとこちらを見る。

 

何を話したか言うべきなのか、これは…

いや、、本人は知られたくないと言ってたし、軽々しく話すのは…

 

暫く考えていた。

 

すると、

「まぁ、そう警戒するな!杏子の、あの子の見た目の事だろ?」

 

少し驚いた。

 

「知ってたんですか?」

 

「まぁな!これでも一応父親だ!」

 

そう言って煉獄さんは笑って見せるけど何やら浮かない。

いつも明るいこの人にしては珍しい。

 

「僕は大した事言ってませんよ。」

 

「そうか、、しかし、あの子の表情を見ていれば分かるさ!ありがとう!」

 

「別に、お礼を言われるような事はなにも。」

 

「杏子がどうかしたのか?」

 

宇随さんが話に入ってきた。

 

煉獄さんにしては珍しく神妙な顔をしている。

 

この人もこんな顔するんだな。

 

すると

「この事は、他言無用で頼む。」

 

そして、、

 

煉獄さんの話はこうだ。

 

早い話がいじめだということ。

 

槇寿郎さんの知り合いの勧めで通い出した女学校。

お嬢様ばかりのその学校に彼女は馴染むのも時間がかかった。

そして、少し慣れ始めた頃、なぜかそこの女子達から色々言われるようになる。

 

「初めは見た目を言われる程度だったけれど。

それ位なら杏子も慣れている。」

 

ところが、どんどん言われる内容は過激になって行く。

 

そして…

「最終的には男に媚びてるだの、色目を使ってるだのと言われるようになったみたいでな…」

 

そう言いながら煉獄さんは視線を下に落とした。

 

自分の愛娘がそんなこと言われてたら、まぁ、いい気はしないだろう。

 

「ド派手な見た目にあの整った顔だからな、やっかみもあるんだろうよ。」

 

宇随さんの言ってる事は多分、間違っていない。

彼女の日本人離れしたその煉獄家特有の整った顔立ちはとにかく人目を引く。

 

そして、不運にもその女学校は男子校が隣接している。

 

「杏子はそこの男子達からもよく声を掛けられていたそうだ。

男ばかりの家で育っているのもあり、話も弾んでいたのをクラスの女子はあまり心良く思っていなかったんだろう。」

 

花を見に行った時を思い出した。

多感な時期。相手の男も何かしらの思いが有りそうだ。

 

すると宇随さんが

 

「少し前に一緒に出掛けたが、確かに周りの視線は凄かったぜ。

そのうち、その辺の男が放っておかないだろうよ。」

 

そういえば、、、初めて会ったときも男に絡まれていた。

あれもそういう事だったのだろうと今なら分かる。

 

久しぶりに会う彼女はどこか不安で切なそうな表情が見え隠れしていた。

その憂いを帯びた表情が余計と異性を引きつけるのだろう。

 

 

初めは彼女もあの性格なので、はっきり言っていたそうだ。

自分はそんなつもりで男子と話してはいないと、見た目の事もこれは我が家に伝わる容姿だから仕方ないのだと。

ところがそのうち、無視をされるようになったらしい。

なのに、彼女が喋ると笑うそうだ。彼女を見ながら仲間内で…

 

「おっかないねぇ、女は… 無視するくせにチラチラ見ながら陰口とは」

 

だから見た目を…

 

 

そして、その後、その話が煉獄さんと炭子の元に届くまで1年以上かかった。

彼女はその間ずっと、そのことを親に言わず。

そんな素振りも一切見せず、ずっと一人でその状況に耐え続けていた。

ところが、それも限界が訪れる。

去年極度のストレスで学校で倒れた事がきっかけで事が発覚。

いくら自分達親が理由を聞いても教えてくれず。

気を揉んでいたそうだが…

その後、千寿郎さんにだけは相談していた事が分かり、本人には内緒で知る事となった。

 

「相談に乗ろうにも、うちは男ばかりでそういう話はお手上げだ!

炭子も、そういう女性特有のゴタゴタをあまり経験した事が無いというし、、

どうしたものかと悩んでいたんだが…」

 

煉獄さんがこちらに顔向けた。

 

「ところがこの前、花を見て帰ってきた日から杏子の表情が明るくてな!

周りの目も気にせず歩いていたし…

だから、時透、君が何か杏子に言葉を掛けてくれたんだろうと思ってな。」

 

そんなつもりで言った訳じゃなかったけど、、

 

「やっぱり、君に杏子を任せて良かった!」

 

そう言って、笑顔をこちらに向ける煉獄さんはすっかり父親の顔をしていた。

余程、心配していたんだろう。

 

 

ここで気になることがひとつ。

 

「今もその学校に?」

 

「いや、元々行く予定だった近所の学校に行かせている。

初めからそうすれば良かったと心底後悔しているよ…」

 

そうか、、、少しホッとした…。

 

 

すると、台所から

 

「し、しまった!!杏子にお弁当持たせるのを忘れてた!!

宇随さん!持って行ってくれますか!?」

 

 

「あぁ、かまわんよ。」

 

すると煉獄さんが

 

「駄目だ!この前、頼んだら君の所に女子が殺到したと先生方から苦情が来たぞ!

杏子も恥ずかしいと言っていたし、なので俺が行く!」

 

すると、炭子が走ってきた。

 

「杏寿郎さんも駄目ですよ!

行ったら帰って来ないで、ずっと杏子を遠くから眺めてるんですから!

この前不審者と間違われて警察に通報されたの忘れたんですか?」

 

「もちろん捕まらなかったがな!」

 

「何自慢してるんですか、もう!」

 

一体、僕は何を聞かされているのだろうか。

 

帰りたい。

 

「でも、私もこれから用事で出掛けないと行けないしなぁ…」

 

炭子も何かと忙しいらしい。

 

気づくと、みんなの視線が自然と僕に集まる。

 

 

「あぁ、時透なら問題ない!」

 

「地味だしな。お前」

 

「ってことで、お願いできるかな?時透くん」

 

 

「えっ?」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ない!ない!ない!

 

朝入れたと思ったのに!どこにも!

 

 

「どうしたの〜?杏ちゃん。」

 

仲良しの千鶴ちゃんが心配そうに見ている。

 

「お弁当を…… 忘れました……。」 

 

やってしまった。

 

お昼を食べずに午後の授業… 耐えれるだろうか…。

それよりお腹が鳴る音を人に聞かれる恥ずかしさに耐えねばならない事の方が苦痛である。

 

「もう〜仕方ないなぁ!このおにぎり1つあげるから、そんな顔しないでよ〜。」

 

「い、良いのですか?ほんとに!?」

 

「そんなの気にしなくて良いよ!初等部からの付き合いでしょ?はい!」

 

千鶴ちゃん!

初等部から仲良しの彼女にはいつも助けられているな。

中等部で一時期は別の学校に行っていた私の事も、またこうやって受け入れてくれるのだから…

ほんとに優しい…。

ほっこりするよ… 千鶴ちゃん!

そして、渡されたおにぎりをしっかり味わう。

 

すると、何やら廊下が騒がしい。

 

「なんか外が賑やかだね〜。また男子生徒がこっちまで来てるのかな?」

 

学校は男女別々で学んでいる。

女子はこの別館だが、男子は本館で授業を受けている。

基本的に男女が一緒に授業を受ける事はないが、朝礼とか、ちょこちょこした行事は一緒にすることも、ままある事。

ただ、たまに男子がこっちの女子棟まで来る事があり、その時ばかりは女子が色めき立つのだ。

私も千鶴ちゃんもちっとも興味は無いけれど。

 

「杏ちゃんも、ほんとに男の子に興味無いよね〜」

 

予想外の話に飲んでるお茶を吹き出した。

 

「ち、千鶴ちゃんは?」

 

「う〜ん、、あんまり無いけどさ。でも、杏ちゃんモテるからどうなのかと思って」

 

そう言ってこちらに笑顔を向けられる。

モテる?私が?

 

「う〜ん、男子に興味… 無いな!」

 

「だよね〜、まぁ杏ちゃん家はさ、あれだけお父さん達が格好良かったら無理もないよ。

うちのお父さんと杏ちゃんのお父さん並んだ時覚えてる?もう本当に悲惨だったもん!」

 

そう言って、隣で大笑いする彼女にホッとする。

 

以前の女学校では、家族の話をすれば自慢だの、鼻にかけてるだの…好き放題言われてたから…

 

なのでこうやって気さくに色々話せる友達は貴重だ。

本当に…。

すると、廊下の賑やかな声が教室の扉の前までやってきた。

 

嫌でも視線がそっちを向く。

 

教室の扉がガラッと開く。

 

そこには女生徒に囲まれた男子生徒が立っていた。

この人は、、、確か、同じ学年の… 誰だっけ?

 

以前、千鶴ちゃんが「あの人凄くモテるんだよ〜」と教えてくれた人だ!

ほお!世の女子達はああいう男子が好きなのか…

私にはよく分からないけど!

 

そんなことを考えていると、

 

「煉獄、いるか?」

 

えっ、今なんと?私?

 

教室がザワつく。

 

そして、彼を取り囲む女生徒からの敵意ある視線…。

無言の圧力…。

とりあえず、返事をする。

 

「わ、私ですけど… 何かご用ですか?」

 

入り口に立つその男子生徒と目が合った。

 

すると、何やら少し恥ずかしそうに…

 

「ちょっと、こっち来てくれる?」 

 

なぜ?

 

「用件なら、ここで聞きますが。」

 

「いや、ここじゃちょっと… すまないけど」

 

何だと言うのだろうか。はっきりしない男子は苦手だ。

 

それより彼の取り巻きの視線が怖い……。

その視線、去年の女学校を思い出す。

怖い、、、この目…。

思い出すと、少し足が竦む…。

 

なぜ、こんな派手な登場をしたのだろうか、この人は…

取り巻きまで連れて… 

放課後とか、もっとやりようもあったろうに…

 

とりあえず、その人の前まで進む。

 

すると、急に腕を捕まれ「こっちにきて。」

 

「ちょっ!ちょっと!どこへ?わ、私まだおにぎりを…!」

今、おにぎり食べないと授業中にお腹が鳴ってしまうじゃないか!

て、手を離して…ほしい…!

ど、どうしよう!

さすがの私も同じ学校の人を投げ飛ばしたり手荒な事は出来ない!

 

その間も男子生徒はグイグイ手を引っ張る。

 

こ、困った!

 

だ、誰か…!

 

教室の入口でゴタゴタしていると。

 

「ねぇ、その子嫌がってるけど」

 

聞き覚えのある声が頭の上からした。

 

見上げると、

 

と、時透さん!?

 

いつの間にか、私を掴む男子生徒の腕を掴んでいた。

 

またもザワつく教室。

 

「あ、あなた誰ですか!?部外者は校舎に立ち入り禁止のはずですが!」

 

はっきり喋れるじゃないか!この男子生徒は!

 

「僕は部外者じゃない。この子の親に頼まれてお弁当を届けに来ただけだよ。はい」 

 

そう言ってお弁当を渡された。今渡す?

 

「お、俺は、この子に言いたい事があって… その…」

 

「だからって相手の気持ちも考えずに、連れてくのはどうかと思うけど」

 

「あっ!あなたに言われたく無い!これは僕と彼女の問題だ!

俺達に構わないで下さい!」

 

いやいや!二人の問題と言われても!その内容が分からないのだけれど!?

 

あっ…

 

いつの間にか凍てつくほどの視線をその男子生徒に向ける時透さん… こわっ!!!

もうそれはそれは… 初めて会った頃の冷たい視線を通り越し…

もう、相手を凍て殺すかの様な氷点下の視線で相手を睨むのだ。

 

綺麗な顔立ちだから余計と怖い。

雪女も真っ青だろう。

 

「それなら目の前の彼女のこともっとちゃんと見てあげなよ。

こんな公衆の面前で、しかも取り巻き連れてきてさ。何様なの?

もっと場所と時間考えなよ。馬鹿なの?」

 

今日の時透さんはよく喋る。

 

この前の花の時もだけど…

 

でも、私の言いたい事は全て代弁してくれた…

ありがとう、時透さん!さすがお友達!

 

すると、騒ぎを聞きつけた先生達がやってきて二人を連れて行ってしまった。

 

 

すると、、

 

「ちょ!ちょっとちょっと!煉獄さん!あの美青年はどなたなの!?」

「お兄さま?それとも従兄弟の方?」

「お名前は!?何ておっしゃるの?洋装姿がとても似合っていて素敵だったわ〜!是非紹介して頂きたい!」

「この前の白髪のおじ様も格好良かったけど、今回の方も素敵!羨ましい〜!」

「煉獄さんはお父上も美形ですもんね!今度お家にお邪魔させ欲しいわ〜」 

 

 

おっおぉ…こんなに女子に殺到された事は無いので、圧倒されてしまう。

年頃の女子恐るべし。

でも、嫌な気はしない、、、この学校の子達はみんな優しい。

以前の学校だったら、男に色目を使うのだけは得意だの何だのと言われるだろう。

誰かを貶めたり、身下したり、そんな悪意はもう嫌というほど経験した。

だから、このクラスの素直な反応に度々癒やされる。

 

でも、やはり時透さんは格好いいらしい。

今日も花を見に行った時と同じ服装だった。

洋装が気に入ったのだろうか?

まぁ、確かに、、、悪くは無い。

 

 

その様子を千鶴ちゃんがニヤニヤ見てる。

あの目は、今度ちゃんと話してよ。って、目だな…

 

 

今回、先生達も色々事情を聞いてくれた。

とりあえず時透さんにはお咎めは無かった。

男子生徒は騒ぎを起こしたとして、反省文の処分が下った。

 

そして帰り道、一緒に家路につく。

 

その人はいつもの涼しげな顔で隣を歩く。

すると、、

「ああいう事、良くあるの?」

 

この人からそんな事聞いてくるの珍しいな。

 

ああいう事、か。

 

今までに遭遇した出来事を思い出す。

 

「まぁ、、無くは無いですよ。」

 

そして

 

「今までも、急に腕を掴まれたり、ついて来られたり。

まぁ、そういう男性はこちらもそれなりの対応をしてきたので問題無いのですが…」

 

そう、学校とは関係ない所ではそれができていたのだ。

 

「今日みたいに同じ学校の人には初めてです。

さすがに学校の人を… 投げ飛ばす訳にも行かなかったので、非常に助かりました!」

 

「別に助けた訳じゃない。」

 

だ、そうだ。

 

「腕は?」

 

「あぁ、思ったより強く握られたので、少し痕が」

 

「見せて。」

 

「えっ?あ、はい…」

 

そういって、私の手を優しく自分の方に引き寄せる。

 

な、何やら緊張するな…。

 

今日の時透さんは何だか優しい。

 

何かあったのだろうか?不思議だ!

 

すると、ハンカチを出して器用に私の痣の有る腕に巻いていく。

 

「目立つ場所だから、巻いときなよ。」

 

水色の綺麗なハンカチ

 

「あ、ありがとうございます!今度、洗濯して返しますので!」

 

「いいよ、あげるから。」

 

そう言って、優しい顔で私を見てくれた気がした。

 

なにやら、、胸の鼓動が、、少し、ほんの少し早まったような…

別に走った訳でもないのに、謎だ。

 

「時透さんはやっぱり良い人ですね!

貴方の事が私は大好きですよ。友達として!」

 

時透さんが急に咳き込む。

 

「普通、友達にもそういう事軽々しく言わない」

 

「そういう事とは?」

 

「大好き…とか」

 

「友達としても駄目ですか?」

 

時透さんの前へ回り込み、見上げる。

 

その顔をジッと。

 

「そういうのも駄目…」

 

むっ!顔を逸らされた…

 

夕日のせいか少し顔が赤く見える。

 

「何でこっち向いてくれないんですか?」

 

が、、、また、ふいっと逸らされた!

 

一体、、何だと言うのだろうか…。

ならば…! と、こちらも意地になる!

 

「ねぇ?ねぇってば」

 

「時透さん、何が駄目なんですか?こっち向いて…あっ!」

 

彼が顔を背けるたび、それに合わせて私も覗き込む。

 

しかし、相手も流石は元柱!

早いっ!

ますますどんな顔してるか気になる!みたい!

 

 

このやり取りがどれくらい続いただろうか…

 

 

疲れた…。

 

まるでいたちごっこ。

 

そして、ボソッと。

 

「…男が勘違いするから」

 

勘違い?

こんなやり取りが?

 

「では、時透さんも勘違いするのですか?」

 

素朴な疑問を投げかける。

 

「そ、そういう事を言ってるんじゃないよ!もう」

 

「こんな事を言うのは、時透さんにだけですよ!」

 

そう言って、満面の笑顔をその人に向けた。

 

時透さんは、それから家に着くまで黙ってしまった。

 

何か気に触ることを言ってしまったのだろうか。

 

それでも、一緒に帰れるこの時間が嬉しくて、私は終始ご機嫌だったのは、この人には秘密だ。

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