トップギア〜紅き風の名はマルゼンスキー 作:ゆっくりカワウソ
私かわうそ、昼と夜の温度差やストレス、疲労などなどで体調を崩しておりましたw
春は過ごしやすい温度になる反面、体調を崩しやすかったり新年度のため人事異動や配置転換と環境の適応に苦労する季節でもあります。ご自愛くださいませ(*´ー`*)
さて今作は3部に分けてお送りします^o^
鬼滅の料理人は今週か来週あたりに投稿予定でございます。お時間がございましたら、是非読んでいただけたらと思います。
「おうおう、櫻弥!オメェのベースの執務室の方は完成したぞ!」
「ほんとか、さすがひろちゃん!」
カフェテリアで書類の作成やマルゼンスキーのデーターを俺が管理する評価管理システムに落とし込んでいたところに、工務店のひろちゃんから執務室の完成を告げられた。
「まずはオメェが見てから水回りやネット回線、他の部屋の工事もするぜ!やっぱり使うやつがみないと始まらねぇからな!」
「それはありがたい。」
〜元神童、移動中〜
外観はまだ塗装中であるが、中に入ると広々としたトレーナー室が出迎える。
「中は光を取り込む為に大きめの窓と木そのものの良さを活かした部屋だ。冬でも大丈夫な床暖房付き、エアコンも完備。どちらかと言うと白い家具を置くイメージをした執務室だが…。」
「問題ないどころか最高だよ!あとはお願いした調理室、更衣室、合宿ができるような宿泊室、トレーニング室にスタジオとかも依頼書通りに頼むよ!」
「おうっ!任せとけ!…ところでヨォ、なんかここ最近、更にトレセン学内が浮き足立つような雰囲気を出してんだが…一体何があったんだ?」
「あぁ、それなら俺主催で模擬レースを開催するからだよ。実はー。」
〜現在より2週間ほど前〜
「……参ったな。」
俺が創業したスポーツメーカー、E-Motionsから日本のウマ娘のデーターが欲しいとの要望メールが届いた。
「あら?トレーナー君、どったの?そんなしょぼくれた顔して…まるでバブルが弾けた顔しているわよ?」
「え、何その例えはっ…?…実は俺がいた会社からメールが届いてな。どうやら日本のウマ娘たちの運動データーが欲しいって内容なんだ。」
「…ちょっと待っち、トレーナー君って21よね?ルドルフからそう聞いていたけど…。」
「ん?あぁ、そのことな。俺、カナダで飛び級して大学入ってから仲間たちと企業を作ったんだよ。名前はE-Motionsってー。」
「E-Motions!?あの超大手の?!冗談はよしこちゃんにー。」
無言で社員証(役員)と名刺、更には日本法人のホームページを見せる。一応俺の役職は本社商品開発部門統率リーダー(役員職)兼日本支部副支部長と大それたものだ。……マジでこんな仰々しいのは勘弁…。まぁ、頑張ったからね。
「電話もしてみるわね。」
電話で俺の名前を出すと…「うちの役員になにか?」と言われ、挙げ句の果てには俺の携帯にオペレーターから連絡が来る始末。その様子に目を点にさせてオペレーターとの会話に勤しむ。
「後で急な調査依頼はやめろってクリスに怒っておいて。…え、できない?わかったよ、ただ文句は言わせてもらうことは伝えといてよ。こっちだって色々と許可を取らんといかんからな。」
電話を切り、一息つけるとマルゼンスキーが信じられないと言った顔をしながらこちらを見つめる。
「…どうしたんだマルゼンスキー?そんな信じられないって顔をして。」
「いや、トレーナー君。…もう一度聞くね、…トレーナー君は中央トレセンのトレーナー資格最年少記録を持っていて、大卒で新興大企業の開発チーフで役員…、それで私のトレーナー…なんだよね?」
「そうだな…、正確にいうとトレーナー、会社役員兼株主、准教授、商品開発チーフだ。あと俺は大学院卒になるな。」
「OH…、マイッチング!」
「…恐らくここまではルドルフも知らない情報だ。…とまぁ、俺の話はどうでもいい。許可は理事長達に取るとして…問題はこの実証に付き合ってもらうウマ娘がいるかだ。…なぁマルゼンスキー、何かいいアイディアはないか?経費は向こうでの落せりるからいいけど…。」
「んー、そうねー。…この時期って模擬レースをするのが一般的よ。私も中等部の頃、リギルって言うチームに入った時もこのレースをしてスカウトしてもらったの。」
「リギル…なるほどあの東条トレーナーのチームか。…よく移籍できたな。」
「まぁね!ちょうど新しい環境に挑戦したかったし、おハナさんも良いって言ってたからまさにグッドタイミングだったわ!」
「…なるほど、これは東条トレーナーに沖野トレーナーあたりに弄られそうだ。…模擬レースか。…なら参加賞やご褒美が必要だな。」
「…ちょ待って、ご褒美?参加賞?」
「そうだ。データーを取らせてもらうんだ、それなりに報酬は必要だ。」
「そ、そうだけど。」
「というより、日本はなんでも無償でやらせすぎだ。きっちり払うべき所を払わない、報酬を与えないのはモチベーションにも関わる。……無償の奉仕なんてまっぴらごめんだ。」
「…。」
少し困った顔をするマルゼンスキー。…少し居心地が悪くなった。
「すまない、空気を悪くした。これから許可を取りに行く。今日はこれで解散だ。…明日の放課後、またここで。」
男としては落第点だが、その場を離れるしかなかった。……こんな意気地なしですまないな…、マルゼンスキー。
ー理事長室ー
「了承!君の所属する企業からも資金を流してくれるなんて思っても見なかったぞ!」
「データーをくれって言ったのはあいつらですよ。それくらい出さないようで有れば俺の方が切り捨てますよ。」
「うむ…。君はかなりドライな性格だな。アマノリュウセイから聞いていた話とは違うようだが…。」
「…あいつは勘違いしています。あのトレーナー同様、人を見る目がない。…俺は…縁が切れたらそれまでって思ってますから。…だからこうして理事長やたづなさんが俺を覚えていてくれたことやトレーナーとして採用してくれたのに感謝しています。」
「悪い気はしない…が、君は人を信頼してみるべきだ。…君より幼い私が言うのはどうかと思うが…。」
「…理事長、俺は人よりも自分を信頼してないんですよ。……これも全て夢で実は何もない、トレーナーでもない社畜なんじゃないかってね。……人よりも…自分が信じられないのですよ。…あの頃から。」
「……私は信じるぞ。君が、祖父が君に抱いたURAの未来を。そして担当のウマ娘とこの業界を盛り上げることを!」
「……ありがとうございます。」
その熱意と想いのこもった言葉は……深く心に突き刺さったのであった。
理事長室を後にした俺はこの模擬レースの準備を始めた。まず最初に電話したのは知り合いの食品会社だった。
「もしもし、うん。俺だよ俺。…オレオレ詐欺っていつの時代だよ。…うん、そうそう。今度模擬レースをやるんだけどさ、その参加賞に俺がブレンドしたにんじんドリンクを生産と卸して欲しいんだ。…味?もちろんあのグルメ野郎お墨付き。…わかった、明日の夜にそっちに行くよ。…じゃ。」
先ほどのグルメ野郎は知り合いの料理人で知る人ぞ知る料理評論家である。次に連絡をかけたのは俺が役員をしているE-Motions本社社長室。
「もしもし。…データの件は大丈夫だがいくら出すんだ?……それだけ?ふざけんじゃねーよ!今すぐE-Motionsを潰すぞ!…何?悪かった?なら最初から言うなよ。…うん。…なんでその予算なんだ?……役員会だと?まさかお前も…違う?ならよかった。……理由は?……アジアだからか?…今すぐ役員会議を準備しろ。ちょうどあの無能たちを追い出したいところだったんだ。…今日は随分と物分かりがいいなジョン。……なるほど、君もその意見には賛成なんだな。…あのジジイども、俺たちに取り繕った割には仕事しねぇし現場を蔑ろにするからダメなんだよ。…何、日本支部のデーター作成や保管事業を提唱したのがあいつらだと?んなもん新しい人事のやつに任せろ、丁度良い人材が本社にいるし。…あいつらには会社の経費で日本の土地すら踏ませるな、…そのつもり?ならいい。……もちろんだ、君と俺たちの夢は変わらない。人間とウマ娘たちのより良いスポーツと余暇を、忘れるはずないさ。んじゃ、会議の内容のメールもよろしくな。後試作品の件も日本支部に通達しとけよ。」
どうにか長い連絡を終えて、カフェテリアでウダウダしているといかにも女帝といったような雰囲気のウマ娘に声を掛けられる。
「…先ほどから商談みたいなことをしているが…、ここはそう言うところではないのだが。」
眉間に皺を寄せて、こちらを威嚇しながら問いかける。
「……そのアイシャドウにその雰囲気、女帝エアグルーヴだな?なるほど、それが君の目指す女帝か。…失礼、俺は先日トレーナーになったー。」
「知っている、仙水寺トレーナーだな。たわ…私のトレーナーがよく話題にしていた。異端児だとな。」
「ほう、異端児か。…面白い表現だな。…先程の電話とかで不快な思いさせたのは申し訳ないが流石に敵意を持たれる覚えはないぞ。」
「いや怪しいからだ。」
その一言でなんとなく合点してしまった。オレオレ詐欺みたいな語りにいきなり英語で怒ったりとしていた俺を怪しむのは無理もない。
「それは悪い。……トレーナー業務以外にも副業をしているからな。…それに君らにとっても面白い催しをするからその準備をしていたんだ。もちろん、理事長お墨付きでな。」
「…!」
エアグルーヴのケータイに着信が入る。
「多分、君の予想通りの内容だ。確認してみな。」
彼女がケータイを見るとそこには理事長秘書から全生徒に向けた一斉メールだ。
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TO:トレセン学園全生徒
FROM:トレセン学園事務局
本日より3週間後の水曜日から金曜日にE-Motions主催でトレセン学園模擬レース杯を開催いたします。参加者には主催者より豪華参加賞や商品を贈呈いたします。加えてレースのデータから評価なども送られる予定です。
詳しい内容につきましては今週中に説明会の開催や文書、ポスターなどを配布いたします。ご不明な点がございましたら、仙水寺トレーナーにお聞きください。
またレースに出場する生徒は予定や出走予定のレースを担当トレーナーと相談の上、ご参加をお願いします。
仙水寺トレーナーの連絡先
・sensuiji-sakura@c_toresen.com
早川たづな
・umausumejanai-tm@c_toresen.com
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この内容を見て、エアグルーヴは驚いた様子で俺を見る。それと俺のメールボックスにはたずなさんから説明会やポスターの作成、人員などについての確認や作成要請が送られてきた。
「ゆっくりはしてられんな。…じゃあな、エアグルーヴ。担当トレーナーにもよろしくな。」
「!待て!仙水寺トレーナー!」
「待たないよ〜。少し忙しくなるし何かあればメールしてくれ。」
止める女帝を振り切り、静かに資料を作成できる図書館へと向かうのであった。
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「トレーナー君、すごいことするのね!」
マルゼンスキーは昨日のことを気にしていない様子で俺に声を掛ける。
「…まぁな。…昨日はすまない、ロクに練習も見れんかった。」
「別にいいわよ!…今日からスタートするんでしょ?コンディションはバッチグーよ!」
「お、おう。…とりあえず君の得意な距離、脚質を見せてもらおう。…今の全力でやってほしいが大丈夫か?」
「もちのろんよ!」
〜タイム計測中〜
彼女の得意な距離適性はマイル、脚質は逃げ。その速さは都会の華やかな道を駆け抜け、桜の花びらを散らしながら行きたいところへと自由に走り抜けてゆくスーパーカーが如し。美しくも速く、ターフを駆け抜けてゆく様に…見惚れていた。
「ふぅ!どう?私のタイムは?」
「あ、あぁ。」
タイムを見せると上々と言わんばかりの笑顔でこちらを見る。
「どう?私の走り、お眼鏡にかかったかしら?」
煌めく髪をかき上げて、少しバブリーではあるが腰に手をあてながら俺に問いかける。
「…最高だよ!…それに君に惚れたよ。君の魅力を最大限、それどころかダイヤの輝きなんて霞むほどの魅力を君に感じたよ!」
かなり臭いこと言ったのになぜかその言葉に目を大きく見開き、すごく嬉しそうな顔をしながらこちらを見つめる。
「ふふっ、私に釘付けってことね!なら目を離さないでね、いつの間にか走り去って行くから。」
そう言った彼女の表情は今まで見た景色や物、人の中で1番輝いて見えたのであった。
〜中編に続く〜
今日のトレーナー行動録
・トレセンベース進捗報告1〜トレーナー室
・浮き足立つトレセン学園〜大工も気になるその内容
・21歳、会社役員です(准教授兼研究員etc…)〜マルゼンスキーもおったまげ!
・仙水寺トレーナー、イエローカード
・コネクションは使う物
・お電話レ○プ!?不審者と化したトレーナー!〜怪しむ女帝
・開催決定!〜模擬レース、トレセンE-Motions杯
・華やぐ都会のスーパーカー〜マルゼンスキーの本気の走り
・口説き文句は億千万の輝き〜君に惚れた!