トップギア〜紅き風の名はマルゼンスキー 作:ゆっくりカワウソ
今週からまた30度を超える天候が続くとのことで、皆様お気をつけてお過ごしください^o^
さて、今回は説明会andレース直前回( ^∀^)
あの黄金不沈艦も登場します!うまく彼女を表現できたか心配ですが、カワウソなりにできたと思います(゚o゚;;
生暖かい目で読んでいただければ幸いです^o^
〜トレセンベース、トレーナー室〜
「なるほどな!…それで着々と進んでいるんだな?」
「まぁね。近々ひろちゃんとこにイベント設営とかのお手伝いを頼みたい。もちろん費用はこっち持ち、職人さんたちのボーナスにも色つけるよ。」
「おいおい、そこまではやりすぎだぞ?」
「いや、それぐらい重要なんだよ。…ウマ娘のデータはスポーツ医療に科学、それに商品化…全てにおいて必要なんだ。ウマ娘に耐えられる構造でないとダメだからね。」
「なるほどな。」
「それにこのデータは人間のスポーツにも応用できる。製品を作る上で彼女たちのデータはお金にもなるし、独占すれば…考えればわかるよな?」
悪い笑顔をひろちゃんに向けると
「そりゃあ、おめぇ…。…お前もワルよのぉ。」
「そっちこそ。」
「へへへっ、そう考えりゃおもろしれぇ!…乗ったぜ、そのシノギ!」
「お、おう。じゃあ、頼んだぜ。」
悪い大人たちがやる模擬レース、嵐の予感が満載だ(二チャ顔)
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〜たずなさん一斉メール送信後、レース説明会〜
「ふぅ……。」
資料をまとめるのをひと段落し、説明会の会場である会議室を覗くと…予想以上に人数がいることにびっくりした。
皇帝シンボリルドルフを始め、エアグルーヴ、ナリタブライアン、サイレンススズカやシリウスシンボリとビッグネームも混じっている。その中にはマルゼンスキーもルドルフたちと共に待っているようだ。
俺の視線に気づいたのかマルゼンスキーはこちらにウィンクを送る。......知ってるか?彼女、高校生なんだぜ?こんな大人な女のウィンクをする10代の女の子なんて見たことないよ(^◇^;)。
おっと始まるな。さて…SHOW TIMEだ!!
「では今回の模擬レースの責任者である仙水寺櫻弥トレーナーからご説明させていただきます。仙水寺トレーナー、お願いします。」
慣れた口調で俺に説明をバトンタッチする。
「お集まりの皆さん、お久しぶりです。今回の模擬レース責任者の仙水寺です。みなさんにもメールを送付させていただきましたが、今回のレースはE-Motionsが主催となっての模擬レースとなります。それにつきまして、主催者側は皆さんの走りのデータを計測と採取を3日間に分けておこないたいと思っております。」
皆はザワザワとなりだすが次の一言で静かになった。
「ですが、このデータを元に皆さんの走りの癖やタイム、そしてそれによって算出される皆さんの今現在の走りの評価や弱点などのフィードバックを皆さんにもお渡しします。。いわばこのレースはみなさんにとっての実力試し、模試と言ったようなものです。これからのレースの前哨戦、本番に向けての自分の立ち位置にも役立てると思います。」
驚いたように息を飲む音がする。
「もちろんそれだけではございません。このレースに出た生徒全員にはE-Motionsの発表前の新製品のスポーツウェアと「素の味」*1とE-Motions Japanがトレセン学園限定で販売するミックスにんじんドリンク「キャロベジフルα」2Lを参加賞としてお贈りします。また各距離と芝、ダートの部門ごとで最優秀タイムを残した生徒にはE-Motionsのオリジナルブランド「Craft Voyagers」*2のシューズ2足分の無料受注チケットを贈呈します。」
「「「「「!!?」」」」」
皆目の色が変わる。先ほどもびっくりしたような顔をしていたがCraft Voyagerの無料受注チケットに食いついてきた。
「…これは当然の対価です。色々とレースの予定のある生徒たちへの協力という形で走って頂くので 我々E-MotionsおよびE-Motions Japanが全力でバックアップさせていただきます!さらに!」
スクリーンを変えてみんなに見せたのはE-Motions直営のアンテナショップがトレセンにできるという告知だ。
「今回から我々がレースと同時に一部区間にE-Motios Students Store 略してESS*3を開店することになりました。購買部とも連携しており、購買部で買い物をするとESSのクーポンがもらえます!」
「「「「「え、えぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」」」」
皆、目を飛び出しながら驚く。…美少女らしからぬ表情をする中、エアグルーヴとマルゼンスキー、シンボリルドルフだけは涼しげな顔をしていた。正確にはマルゼンスキーとシンボリルドルフは知っているためか驚かず、エアグルーヴは不信感からか苦い顔をしている。そのためかエアグルーヴは手を上げてこちらに問う。
「はい、エアグルーヴさん。何でしょうか?」
「…質問が何点かあります。まず仙水寺トレーナー、あなたは何者ですか?…先ほどから我々と言っていますが…。」
「ふむ、…そこからですか…ちょうどいい。たづなさん、もう少しお時間いただけませんか?」
「構いません。皆さんは大丈夫ですか?」
皆口々に大丈夫と同意したので自分のプロフィールを出す。
「改めて皆さん、私の名前は仙水寺櫻弥。トレーナー資格を持っていますが、同時に私はE-Motions創業者メンバーであり商品開発の役員です。またアメリカ・カナダのトレセン学園やフリーランスでトレーナー業もしていました。証拠にー。」
スライドでカナダ・アメリカのトレセンやフリーランス時代の集合写真、指導風景が映される。
「これはバロンルージュとその友達が俺の元に遠征に来た時のもの。これは私の住んでいたトロントにあったカナダ中央トレセン契約時のものです。」
皆、豆鉄砲に当たった鳩のように驚いた顔をしている。
「おや?皆さん反応がないですね…、エアグルーヴさんも。」
「…なるほど、噂に聞く異端児ぶり…納得の経歴です。」
「それはどうも…。さて、参加フォームは今配った用紙のQRコードを読み込んでから必要事項を入力して下さい。また、この模擬レースは必ず担当トレーナーに一声かけてください。」
「「「はい!!」」」
「では今回の説明はここまで。個別に質問がある場合はその用紙に書いてある連絡先かカフェテリアとかで声をかけてくれれば対応するのでその時にお願いします。それでは以上、解散。」
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「トレーナー君!」
「どうした、マルゼンスキー。」
「すごかったわよ!まるで社長みたいでカッコよかったわよ!」
「そ、そうか。…マルゼンスキーも参加するだろ?」
「もちのろんよ!だから声をかけようとしたの。」
「あぁ、なるほど。一応君もこの応募用紙のQRコードを読み込んでから申し込みをー。」
「それと…そのことなんだけどね…。実はー。」
彼女から言われたのは……スマホがうまく使えないとのことだった。加えてパソコン類もからきしとのこと。
「ま、まじか。ちなみに連絡手段は?」
「えーっと、ポケベルとぉ…固定電話?あ、あとすまほの通話なら大丈夫よ!(^◇^;)」
「…だめだこりゃ(・ω・`)」
これはトレーニングの他にスマホやPC操作の時間も入れないとな。
「とりあえず一緒に操作しような?」
「…オーキードーキー。」
↓
↓少女、元神童応募中
↓
「ふう…。さて、応募も終わったしトレーニング行くぞ!」
「イエイ^o^。」
その後はトレーニングをして終了。本番までは彼女の現在の走りの調整、スキルの確認をする。
「君の本気の走りの傾向はスタート時よりもスタートしてから約¼の距離らへんから加速している。さらにコーナリング時や加速の踏み込む時のパワーにスタミナは同年代、それこそシンボリルドルフにも引けを取らない。そして今回はメイクデビュー前の前哨戦、さらには君の本格化した体の調整という意味合いもある。」
「…どゆこと?」
「つまりだ、本格化したばかりの体を使うことに慣らすことと君はコーナリングの時と加速する時のパワーがすごいってことだ。今回のレースはこれをメインに鍛えようぜって意味だ。」
「わぉ、すごくわかりやすい。」
「まぁな、これでも経験はあるからな。…けど、専任で担当するってのは初めてかも。なんせサブだったり短期…そのウマ娘の能力改善がメインだったからな〜。」
「…弱点改善って、そっちの方がすごいんじゃ?」
「…いや、長期での経験は本当にないからな。……俺はあくまでもサブやセカンドオピニオン、つまり第三者の専門家という立ち位置でしかウマ娘たちのトレーニングを見ていないんだ。…それに関しては下手なトレーナーよりも自信はあるよ。」
「そうなのね。…でも無問題!だってあの夢を言ってる人だもの!問題ナッシング!それにー。」
「それに?」
「…なんでもないわ!」
一瞬懐かしそうな顔をしたが、いつもの輝くような笑顔で言い切った。
「…そうか。じゃあ、行こう。…君の走りを見せつけに行こうぜ?」
「アイアイサー!^o^」
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〜中央トレセンE-Motion杯、模擬レース当日〜
「うひぃ、まさかここまで集まるとは…。」
当日現れたウマ娘たちの数は…怪我やレース出場前、遠征中の生徒を除くほぼ全員…つまり…1500名超えの生徒が集まったのだ。工場、営業、日本支社に関係各社が総動員のこのイベントはトレーナーなのならず、ウマ娘ファンも参加しているイベントだ。つまりだ、……ビジネスチャンスもできるというわけだが…。
「へいらっしゃい!トレセン名物のゴールドシップ様の焼きそばはこちらだぜい!」
中央トレセンで有名な問題児、ゴールドシップが焼きそばの屋台で焼きそばを焼いていた。
「なんでお前がそこにいるんだよ…。」
「おっ、説明会の兄ちゃん。私の焼きそば食べるだろぉん?」
「いただこう。…じゃなくて、ゴールドシップ。君も選手だろ?なんで屋台なんてやってんだよ!」
「そりゃあ、おめぇ。稼ぎ時だからだぜ!こんな祭りをやるんだ、儲からないわけねぇだろ?!」
「そりゃそうだが、許可はー。」
「出したぞ。」
出店リストには「ゴルシちゃんの焼きそば屋」がちゃんと載っている。
「嘘だろ…。……いくらだ?」
「おう!ゴルシちゃんの屋台だからなぁ、564円だ!」
「語呂合わせもいいが端数もかよ…。端数のないカナダが懐かしいぜ…*4はいっ、564円ちょうどな。」
濃ゆいソースの香り、半熟の目玉焼きは食欲を沸かせるには十分であった。…てかこいつ、見た目の割に料理うまいのかよ…。
「毎度ありぃ!…なぁ、兄ちゃん。ゴルシちゃんはどんなんだい?」
「…君の実力のことかい?」
「あったりまえだろ!…で、どうだい?」
「……ほぉ、なるほど。…君の体のコンディションは完璧だな。筋力もしなやかで恵まれた体、鋭いピッチ走法ではなく、足のバネと体のしなやかさがパワーを生むストライド走法。…そして君の体格からして、スタミナとパワー勝負の中長距離が適正距離。多分走りの適性は追い込みだな。」
「…正確すぎてきもっ。(・ω・)」
まだ高等部?*5ではないはずの彼女は俺の言っていることを簡単に理解しているようだ。真顔ではあるものの、そんな雰囲気を醸し出している。
「お前が聞きたいって言ったから言ったのに!?Σ(゚д゚lll)」
「……なんでわかんだよ。兄ちゃんに走りを見せたわけでも、コーチしてもらったわけでもねぇのに。」
「初歩的なことだ。…ゴルシと呼ばせてもらうぞ。まずは走り方の適性。お前の噂はかねがね聞いていた。色々と問題行動は起こしているが、一方で後輩や近隣の小学生には人気者。それに先程の会話から察するに、気分が上がらないことはやりたくない主義。ただし、燃えるようなシチュエーションは楽しむお祭り男気質。なら考えられるのは差しか追込み。スロースターターぽくてこう言った性格、さらにフラストレーションを一気に爆発させるなら間違いなく後者の追い込みって推測できる。次に距離適性。マルゼンスキーのように短距離やマイルも考えたが……それだとお前のフラストレーションはたまらない、そうだろ?」
「お、おう…。けどそのフラストレーションはー。」
「そう、レース前からその気持ちがないといけない。そしてレース中も求めるとなると駆け引きや追い抜く走り方が可能な中長距離が適性だと思う。最もゴルシの気分次第でパフォーマンスは変わるだろうし、お前はかなり気分屋なところがあると俺は思う。」
「…兄ちゃん、超能力者かなんかか?それかか悪魔の実とか。」
「まさか。俺はカナヅチじゃねぇよ。…お前はこの学園じゃ有名人だからな。…それにゴルシを見ればどんな能力かは想像しやすい。それが当たったまでの話だ。」
「ほーん。」
「ま、頭のいいお前ならそれを生かしたトレーニングとかするだろうな。」
「なるほどな。…兄ちゃん、トレーナーをトレーナーに育てるようなことしてただろ?大方ウマ娘の指導法を含めてのな。」
先ほどまでのおちゃらけた雰囲気から真剣な表情へと変えてこちらに問いかける。
「まぁな。……職業柄トレーニング法の開発にも携わっていた。だからこうしてウマ娘だけを見るのは初めてと言っていい。」
「ふーん。…ま、ゴルシちゃんには関係ねぇーけどよー。……大変だぜ、ウマ娘は。」
「百も承知だ。ゴルシのように気性難な学生も相手にしないといけないから。」
「手厳しいなっ!」
「…そろそろ時間だ。じゃあな、ゴルシ。また会おう。」
「おうっ!またなー!」
「マルゼンスキー。」
「あっ、トレーナーくん!」
「レース前だが調子はどうだ?どこか痛みとかないか?」
「全然!むしろ絶好調のバッチグーよ!( ^∀^)」
「そうか。…それはよかったよ。…なぁ、マルゼンスキー。」
「なぁに、トレーナーくん。」
「…。君が他の娘たちを圧倒する輝きを俺に見せてくれ。」
これは遠回しに勝てと言っている。他の追随を許さないスーパーカーと呼ばれる彼女の走りを…俺は見たいのだ。
「Wow!大胆なのは嫌いじゃないわ^o^。…ねぇ、トレーナーくん…私、誰よりも早く走るからだから…見逃さないでね。」
彼女は俺の手を握り、ダイヤモンドすら霞むような輝く笑顔でこう言った。
「…なら、私から目を離さないでね。あっという間にターフを駆け抜けるから!」
「もちろんだ。」
初の担当ウマ娘が走るレース、この時…マルゼンスキーの凄さを改めて思い知ることになったのであった。