安心安全生活を目指して   作:jejjsuususuwu

10 / 14
キングダム最新刊出ないかなあ〜。


狂気と遅刻

 コイツはなんと言った? 

 名無しの脳は務義(むぎ)の発言を聞き取れなかった。

 いや、聞き取れなかったのではない。聞こえていたが、脳が理解することを拒んだのだ。

 

 趙権と趙李はこの泊城を裏から仕切る犯罪組織の頭だ。

 賭博、護衛、危険品の密売、人攫い等幅広い分野に手を加えている。被害者本人とその家族、趙権たちの活動により割りを食った同業者といった様々な人が趙権や趙李に恨みを持っている。かくいう名無しもその一人である。

 

「暗殺ですか?」

 

 自然と自分の口から出たその言葉に名無しは違和感を覚えた。自分は争いが苦手のはず。にもかかわらず「暗殺」という平穏な生活から程遠い言葉が自分の口から出たことに名無しは違和感を覚えたのである。

 

「暗殺なんてしなイよ」

 

 名無しの言葉を否定する務義。

 

「ボクはね、趙李や趙権が心から懺悔し、無様に命乞いする光景が観たいんだ。暗殺じゃ、観れないでしょ?」

 

 名無しは「狂気」という言葉が脳裏に浮かぶ。

 

「そんな事できるんですか?」

 

 務義の計画は失敗すると名無しは思った。

 趙権や趙李の武力は知らないが、闇に生きる二人が弱いということは無いだろう。もし二人がそこまで強くなくとも武力を補って余りある切り札があるのかも知れない。歴史の裏側には凄腕の暗殺者や実行部隊が暗躍していたのだから。

 

「もしかして失敗する、なんて考えてる?」

 

 思考を完璧に読まれたため、名無しは狼狽する。

 精神がどこかにブっ飛んでる奴は些細な事で相手を殺してしまうからだ。

 

「そう思うのは当然だよね」

 

 名無しはその言葉に驚く。

 ナニカされるかもしれないと思っていたが、務義から出た言葉は名無しの意見を肯定するものだった。

 呆けている名無しを置き去りに務義は驚く発言をする。

 

「でもそれは、ボクしか見てないから。

()()()()を観ればその考え、きっと変わるよ」

 

 ボクたちということは少なくとも二人以上で殺害計画を企てるつもりなのか? それとも殺害するという事自体嘘なのか判断がつかなかった。

 

「趙権たちは強いけど、それは影響力や策略、武力を総合しての話。武力単体ならボクらの勝ちだよ」

 

 武力なら負けない。この発言に務義の強烈な自信と意思を感じる。名無しも一月(ひとつき)だが、教育係である如春(じょしゅん)からのツライ特訓に耐えて来たのだから、少しは強くなっているという自信があった。だが、強くなったからこそ格上の雰囲気が本能的に解るようになっていった。成長した本能により自分と務義の実力にどれだけの差があるのか理解してしまう。

 務義は少なくとも俺や如春では太刀打ちできない存在だとわかってしまったのだ。だが、不思議なことに趙李や趙権が務義に敗れる姿を名無しは想像できなかった。それは務義たちを名無しが見ておらず、趙李や趙権を僅かであるが見たからである。

 

「何故俺にそんな話を?」

 

 名無しは問う。

 何故自分なのか? 何故今計画を実行するのか? 

 己の身を破滅させかねない厄災だが、名無しは好奇心と本能で質問したのだ。

 

「ああ、それはキミが趙李のお気に入り(管外)お気に入り(如春)お気に入り(名無し)だからだよ」

 

 

 

 ……………………………………………………………………

 

 三時間ほど時は遡る。

 上階の窓から名無しと如春(じょしゅん)管外(かんがい)は見ていた。管外は護衛班の班長を長年務めており、数々の修羅場を経験した猛者の一人である。

 気配がする方に目を遣ると廊下を歩く音と共に一人の男が姿を表す。

 

「おはよう、管外。新人君は使えそう?」

 

 趙李である。ついさっき起きたのか眠そうに管外に話しかける。

 

「おはようございます趙李さん」

 

 管外は頭を下げ趙李に挨拶する。

 

「で、新人くんは役に立つの?」

 

「才能は多少はあるようです。その証拠に一月で如春といい勝負しています」

 

 趙李は驚きだ、と言わんばかりに大袈裟に驚く。

 

「えぇ〜あの新人くん、如春くんに()()()()()()!()?()信じられないなあ」

 

「いえ、勝ったのではなくいい勝負しただけです。

 それに真剣勝負ではなく、木刀を使った模擬戦です」

 

 趙李の間違いを管外は指摘し補足する。

 

「ふーん。でも、十年以上護衛班で生き残っているは、キミと如春クンだけのはずだよね? 素人のガキと如春クンがいい勝負するのっておかしくない?」

 

 趙李の発言は正しい。十年以上護衛班で生き残ってきた如春が素人、それも子供と互角なのだから趙李意外であっても不審に思うだろう。

 

「わたしも模擬戦をすべて見ていないので詳しくはわかりませんが、新入りは早熟(そうじゅく)なだけだと思います」

 

「『早熟なだけ』ね」

 

 管外の言葉は当たっている。

 名無しは武の極みに到達できる才能があるのではない。

 ただ、誰かによって才能が開花する速度がありえないほどに早いだけなのである。才能で表せば名無しより如春の方が才能豊かだろう。しかし、最近巷で流行っている噂が趙李を過敏にしているのである。

 

「俺と管外は結構長く一緒にいるよね」

 

「はい。もう十五年程になります」

 

「管外こんな噂知ってるか? 『秦国がこの泊城を滅ぼさんと大軍率いてやってくる』なんて噂が巷で流れている」

 

「ただの噂ではないのですか」

 

 普通ならそう思うだろう。この泊城は城壁は高く数年は籠城できるだけの備蓄と兵力がある。何よりこの泊城は趙国の重要な拠点だ。交易行路の中心に位置し、年間国に納めている税は他の城の数十倍以上だ。そんな重要拠点を失うのは趙国にとって大打撃だ。泊城が包囲されれば必ず中央は援軍を出す。この泊城を陥落せしめるのは並大抵の数と武将では決してできない。

 直近でも魏国と秦国が連続して攻めたが陥落させることはなかった。その泊城を秦国が攻めるという噂を趙李は信じているようだ。

 

「趙李さん。秦国が泊城を()()()なんてありえないでしょう。最近でも秦と魏が連続して攻めましたがこの泊城を攻め落とすことはできませんでした。両国が負った被害は将兵だけで合わせて数万を超えると言われています。にもかかわらず軍を興す(おこす)とは考えられません」

 

 この泊城は攻められない、確信を持って伝える管外を趙李は睨み付ける。その様は、大蛇が獲物を視る目のようだ。蛇に睨まれた蛙になった管外は恐怖で身体が動かない。

 

「管外、俺は『秦国が泊城を()()()』といったんだ。()()()なんて一言も発してはいないぞ」

 

 趙李の指摘に管外は無理矢理に頭を下げる。本来の趙李なら笑って許す間違いだが、今は違う。いつものような『ユルイ』感じではない。管外は恐怖に支配されながらも言葉を絞り出す。

 

「も、申し訳ございません趙李副店主。どうか私の謝罪を受け入れてください」

 

 管外の謝罪を趙李は受け入れて殺気を引っ込める。

 

「管外、俺がこんなにもピリピリしてる理由は二つだ。一つ目は泊城を攻める秦軍の指揮官が()()|()()()()()()()》だからだ」

 

 趙李の言葉に管外は衝撃を受ける。なぜなら、白起は秦国内でいや、中華最強と名高い。八年ほど前は超大国である楚国の王都(えい)を陥落させ武安君(ぶあんくん)(しょう)賜っている(たまわ)

 白起が今日までに落とした城は大小合わせて七十近い。さらに、城を落とすだけが上手いだけでなく、陣を構えた野戦にも強く、多くの敵将兵を殲滅している。

 これ程の名将が精強で知られる秦兵の大軍を率いてやってくるのだから趙李でなくても心配するのは当然だろう。いつもとは違う趙李の様子に管外は噂は事実である可能性が高いと思った。

 

「もし、白起が攻めてきたのならこの泊城から脱出するということで宜しいでしょうか」

 

「ああ。脱出する。金や財宝はあらかた邯鄲の蔵に移動させてある。護衛班はバレたらマズイ資料を護れ」

 

「趙李さんや趙権さんはどうなさるのですか?」

 

「……俺等はやることがある。資料を持って先に邯鄲に向え」

 

「はっ。承知しました」

 

 趙李は身を翻し去る。

 離れていく趙李の背が見えなくなるまで管外は頭を垂れていた。管外は趙李が居なくなって少しすると立ち上がり何処かに向かう。

 

 

 ……………………………………………………………………

 

 名無しは走る。いつも寝泊まりする建物の場所は務義から聞いた。(聞かれた務義は名無しを、あっこの子バカ だ。と思った)

 務義から解放されたのは日が傾き出してからなので門限にギリギリで間に合う。破れば罰が怖いので、なりふり構わず名無しは走る。

 走り続けようやく目的の建物が見える。心配してか如春が店の前にいる。走っている名無しを見つけた如春は手を振って居場所を叫ぶ。

 

「こっちだ! 早くしろ名無し!」

 

 手を振る如春に気が付いた名無しはさらに加速して如春に突っ込む。

 

「バ、バカ! 突っ込んでくるな! 少しは時間があっ」

 

 如春が言い終わる前に名無しが如春の腹に突っ込む。

 其れだけでは勢いを殺せず扉を破り砂煙を上げ店の中に吹き飛ばされる。激しい音がして他の従業員たちは何事かと集まる。

 砂煙の中から二つの人影が見える。一つは如春でもう一つは名無しだ。二人は起き上がると互いに罵倒する。

 

「テメェ名無し!! 突っ込むなって言たろうが! 扉壊れたじゃねぇか!!」

 

「そんなもん知るか!! 急いでたんだしょうがねぇだろう!!」

 

「しょうがなくねえ!! 大体、いつまで遊んでんだ! 時間ギリギリだぞ!」

 

「うるせえ!! 間に合ったからいいだろ!」

 

「よくねえ!! ギリギリできたから扉壊れたろうが!!」

 

 二人の口論する様を見て従業員たちは自分たちの部屋に急いで帰る。あれだけ激しい音がしたのだ、この店の店主が来ないわけがない。

 左手に筆を持ち右手に竹簡(ちくかん)を持って口汚く相手を罵る馬鹿二人(名無しと如春)の前に赤鬼が現れる。鬼に気付かず口喧嘩を続ける二人に赤鬼は咆哮(ほうこう)する。

 

「このバカどもが!!!!!!!」

 

しばらくの間、泊城で丸刈りの青年と少年の姿が見られたらしい。

 

 

 

 

 




名無しが将軍に成るまでが難しく遠すぎる。
信が将軍に昇進する方が(名無しと比べて)簡単すぎる。

名無しの場合

敵:クッソ強い。 

魏:魏火龍七師や信陵君

趙:三大天(廉頗、藺相如、趙奢)

韓:攻めれば上記のどちらか、もしくは全員が援軍としてくる。

楚国:論外(現役バリバリの項燕、青年時代の汗明)

こいつらを討ち取り武功を挙げるなんてほぼ不可能。しかも味方に現役バリバリの六大将軍。
六大将軍に匹敵、上回る王翦や麃公。それに近い実力者である蒙驁、張唐。暫くすると蒙武や昌平君が戦場を荒らしにやって来る。
しかも、本編は紀元前270年なので名無しが戦場に出て少し経つとマジクソ外道である桓騎、王騎から独立した戦の天才、摎が参戦するのでもっと武功が挙げにくくなる。
こいつらから武功を奪い取るとかマジ無理ゲー。チート使ってなんとか勝負になるレベル。

李信の場合 

敵:そこまで

魏:呉鳳明、半壊状態の魏火龍七師。亡命した廉頗

趙:李牧、慶舎、龐煖、司馬尚、万極 等

韓:成恢 (文官として韓非子)

楚:項燕、媧燐、項翼、白麗

王賁、蒙恬が同世代でライバルと言える人物。
幹部に羌瘣、河了貂、楚水、岳雷、我呂という有能に加え、才能豊かな人材が集まってくる。
敵も本調子ではない(趙峩龍や堯雲)といった名がある武将や油断しているバカが多い。

どちらのほうが簡単なのか誰でも分かるんだよなあ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。