前線に紡ぐ物語   作:鞍月しめじ

6 / 14
スマホ機種変更しました。
めっちゃ快適にX95堀りしてます(白目)


06.ホライゾン-K5-

 R93を救助しようとしたスパス、X95の二人を手伝ったK5だったが、迫撃砲の爆風により彼女たち諸とも崖下へ転落していた。

 味方のものとおぼしき飛行場が遠くに見えるものの、何処かに居るかもしれない仲間を置いていく訳にもいかない。

 K5は、奇跡的にもどちらかといえば軽傷な方であった。軽傷とはいえ、各駆動部の動きは鈍い。

 周囲は崖崩れの跡で後退は出来ないようにされていた。運命の導きがこのように残酷な結果であるなら、彼女もそれを受け入れるしかない。

 周囲には多数の鉄血の反応がある。通信モジュールはオフラインになっていて、R93たちを探すことも出来ない。無論、イリヤへの連絡も不通だ。

 

「……すぐにみんなで捜しに来るから」

 

 何処かに居る――生きている筈のスパスたちへ向け、囁く。

 とにかくまずは、一刻も早く飛行場に行くことにする。

 彼女の半身であるK5ピストルは無傷ではないが、こちらも無事。どのような作動不良(マルファンクション)が起こるかの予想はつかないが、鉄血の捜索網を突破して飛行場を目指すには充分だった。

 替えのマガジンは残り二本。彼女の半身、大宇(デーウー)K5ピストルのマガジンは13発入りのため、フルロードのマガジンだけで残り26発。装填済みマガジンを引き抜き、残弾を確かめるが残りは6発。加えて、薬室に1発の合計7発。無駄撃ちが出来る数ではない。

 まだ走るだけの余力は残っている。K5自身、あれほどの事態を生き延びた割りに随分軽傷だと思っている。だが、それもまた運命の導きなのだろう。

 K5は走り出した。不明の仲間たちを捜す手段を得るため、飛行場を目指して。

 

 □

 

 鉄血の反応がより近くなった。目的地まで残り5キロメートル。少し走る速度を緩め、ピストルを構えながら早足で先に進む。

 リッパーを見つけ、素早くその頭部へエイム。一発の弾丸で見事ヘッドショットだ。

 しかし同時に発せられた銃声により、敵の小隊に発見される。思った以上に反応が早い。K5も思わず舌を打つが、すかさず近くの樹木に隠れ、背中を預ける。見える敵は四体。確実に命中させれば、片付けて先に進める。

 一つ息を吐いて、左翼方面へ駆けながらトリガーを絞った。乾いた四発分の銃声、崩れ落ちる四体の鉄血人形。

 ――上手く行った。最後の一発は排莢不良を起こし、排莢孔(エジェクションポート)が空薬莢を噛んだものの、敵影は無しだ。

 

「ふう。まだ運命は私の生存を望んでいそうだね」

 

 エジェクションポートが噛んだ薬莢をつまんで取り除き、スライドを引き直す。

 雨は止みつつあった。運命は確かに、K5に味方している。そもそも、下が見えないほど高さの崖から落ちて軽傷で済んでいることがおかしい。R93ならば幸運に恵まれた、と騒いでいたかもしれない。

 

「ふふ。もしかしたら、一年分は幸運を使っちゃったかも」

 

 そんな風に呟きながら、K5は飛行場へ向けて歩く。着実に距離は近付いている。――あと少し。

 少し気が弛んだのかもしれない。木陰から飛び出してきた影への反応が、少し遅れた。青い髪を靡かせ、二振りのナイフを振るってK5の懐に飛び込んだのは、ブルートと呼ばれる鉄血の近接攻撃ユニットだ。近くに潜み、襲うタイミングを窺っていたのか。

 舌を打ち、ピストルはやむなく一度投棄する。ブルートの両手首を掴み押さえ込むと、一気に力比べとなった。鉄血はエリート以外、基本的に感情は無い。発声ユニットすらついているかもわからない、ダミーの集団だ。歯を食いしばり堪えるK5に対し、当然ブルートは無表情を貫いている。

 そもそも多少駆動部にダメージがある以上、無傷のブルートを正面から止めたのは無理があった。少しずつ、ナイフの切っ先が迫ってくる。必死に押さえても、逆に押され始めていた。

 

『そのまま押さえて!』

 

 不意に声が森に響く。次いで轟いたのは一発の銃声。脚部に被弾したブルートはバランスを崩した。すかさず掴んでいた手首をひねり、ナイフを奪い取るとそれを逆手に持ち替え、力を振り絞りブルートを押し倒す。

 腹部を素早く数回突き刺し、すぐにブルートの目にめがけてナイフを振り下ろした。全体重を乗せた一撃は、寸前で止められる。まだまだ力は残っていた。しかし、体勢的に有利なのは馬乗りになったK5だ。

 何度も体重をかけ直し、ナイフの切っ先はいよいよブルートのゴーグルを突き抜け、頭部へ深々と突き立てられた。

 

「はぁ……。さっきの声は?」

 

 ナイフの刺さった眼孔からスパークを飛ばし、機能停止したブルートから立ち上がってゆらりと身体を揺らしながら周囲を見渡す。間違いなく、誰かがいる。

 声には聞き覚えがあった。基地でいつも聞いたその声の主は――

 

「G36!」

 

 ――イリヤの世話係でもある、G36だった。

 いつもと変わらぬメイド服だが、基地にいる時と異なり黒いオープンフィンガーグローブを装着している。

 その手に携える無骨なH&K G36ライフルも、K5は使われるのをあまり見たことがない。しかし、彼女はメンタルアップグレードという特別なプログラムを受けた、722基地の高練度人形の一体だった。

 

「全く。ようやく見つけましたよ。ご主人様はあなた方が連絡を絶った瞬間、この世の終わりを見たかのようなお顔をされていたのですよ?」

「ごめんごめん……。私は少なくとも、落下の衝撃で通信モジュールがやられちゃったみたいで……」

 

 K5の報告で、G36は少々呆れ気味に「だろうと思ったわ」と手で目を覆いながら呟いた。

 G36の話を聞くに、おそらく先の砲撃に巻き込まれて崖を落ちた皆が同様の状況なのだろうとK5は推測する。

 

「――戦えますか? 現状はAR-57さんがこの先の飛行場に向かっているそうです。援護をIWS2000さんが。K5さんも、私がそこまでお連れします」

 

 戦えるか。そう問われて、K5はG36と正対し、彼女の鋭い眼を見つめて答える。

 

「私も行く。まだスパスもX95もR93も見つかってない」

「残念ながら足手まといです。それに、私は単騎で乗り込んだ訳ではありません。私達の任務は、飛行場へあなた達を連れ帰り、()()()()()帰還すること。それ以外は任務失敗です」

 

 ――だから、大人しくついてきなさい。G36はそう言っているようだった。

 目的地は全員が同じに設定されるようだが、仲間の捜索に損傷軽微な自身が加われない。K5は歯がゆさを感じつつも、G36の任務を優先することにする。

 ピストルを拾い上げ、スライドを引く。

 G36たちに下された『損失ゼロでの帰還』はおそらく、イリヤの至上命令だろう。そうなれば、他のメンバーが見つからないのは有り得ない。

 K5を先導するG36も、絶えず戦況報告を聴いていた。その中で、戦闘の痕を見つけたらしいといったものもK5へ共有される。まだ皆生きている。

 あとは捜索救難チームに任せ、飛行場を目指す。K5は森を抜けてから、一度歩いてきた道を振り返る。

 

(みんな、絶対飛行場に来て。……必ず)

 

 鳥の群れが森から飛び去った。盛大な羽音は何かを告げるようにも思えた。

 今は運命の導きなど関係ない。また皆を待つだけ。

 

「行きますよ、K5さん」

 

 G36の呼びかけにK5は頷いて応えた。森を抜け、丘を下り、K5はG36と共にようやく文明を感じる建造物へ近付いていった。




第6話、お疲れさまです。とはいっても、そんなに字数無いですけどね。
救出話は冗長になりすぎないようにしてます。


スマホ機種変更して快適にはなったんですが、文字入力にまだ慣れない感じでして。

今回はG36の登場でした。任務前にも出てきている彼女ですが、MOD3だった事が今回で明らかになった形です。
あの立ち絵めっちゃ顔の良い女が過ぎて好き。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。