コバルトブルー   作:RPM

12 / 43
11:蒼い弾丸①

 

 

有馬記念当日。

 

朝、中山レース場近くのホテル。喫煙所で一服する江助。

 

(まずはレース場に入って挨拶回り……あとは発走までは暇か。)

 

スマホで仲間達より先にレース場入りする事をLANEで伝え、今日のメインレース有馬記念の情報を確認する。

 

『月刊トゥインクルWeb』

 

『年末総決算。クラシック黄金世代の三人と上の世代の激突に注目!』

 

12/27・中山9R 有馬記念

 

天候:曇 バ場:良

 

発走時刻15:20

 

枠:番:名称

 

1:1:マチカネフクキタル

1:2:グラスワンダー

2:3:エアグルーヴ

2:4:ダイワオーシュウ

3:5:ステイゴールド

3:6:オフサイドワナ

4:7:ダイスミタイクーン

4:8:キヌノジャスティス

5:9:タイヨーズフラッグ

5:10:メジロブライト

6:11:セイウンスカイ

6:12:アサヒトップラン

7:13:スペシャルウィーク

7:14:メジロドーベル

8:15:ヒュージサンデー

8:16:エネギシオン

 

(知ってる娘はスピカから一人、リギルから二人か。チームメイト同士で星を分け合うのを嫌うトレーナーも居るらしいけど、そんな事はモータースポーツじゃよくある事だ。)

 

現在トゥインクルシリーズを盛り上げている黄金世代のように、かつてF1にも四天王と呼ばれたドライバー達が居た。

 

(彼らは激しい喧嘩にまで発展してしまったけど、あの娘達はレース以外では仲良くしているのが凄い。切り替えっつーか、割り切りの上手さは俺達大人よりも上かもしれねぇな。)

 

すると、喫煙所にもう一人。

 

「おはようございます。火を貸して頂けませんか?」

 

「良いですよ、どうぞ。」

 

「ありがとうございます。…確かジャージ屋の方ですよね?」

 

「そうです。どうも。」

 

何度か学園の裏で会った事があったため名刺を交換し、お互いの仕事の話をする。

 

名刺、

『月刊ターフジャーナル、カメラマン・ライター、石嶋義平(いわしまよしひら)

 

「ジャージ屋さんがここに居らっしゃるって事は、レース場での仕事ですか?いつも控え室を回ってらっしゃいますよね?」

 

「そうですね。毎回ウチの社員が体操着などに不備がないかチェックしますが、今回は俺が行きます。」

 

「うーん…?体操着の不具合って言われても、いまいちピンと来ませんが?」

 

「どっちかって言うと、体操着よりもゼッケンの方ですかね。もし、レース中に落ちたりしたら事故に繋がります。」

 

「ゼッケンがですか?」

 

「ええ。もしあのスピードで踏んでしまったら、どうなると思いますか?」

 

「…なるほど。確かに彼女達のスピードでは、ああいった布も危険物になり得る。ある意味オイルを踏むような物ですかね。」

 

「それに近い事が起こり得ます。外的要因による事故は極力減らしていきたい。勿論自分のメーカーの素材に自信が無い訳ではありませんが。」

 

「ふむ。素材は専門外ですが、目指すものとしてはどんな感じでしょうか?」

 

「まあ、自分も製造部門の人間じゃないから詳しくは分かりませんが、ケブラー並みの強度とシルクのような肌触りの両立。きっとウチに限らずウマ娘の服飾に携わる者達は同じ気持ちだと思います。」

 

「ケブラーですか、確か防弾チョッキ等に使われる高硬度の繊維で、車のボディにカーボンと混ぜて使われていた時代もありましたね。」

 

「確かにそうですが、随分とお詳しいですね?」

 

「ウマ娘界隈に来る前は、カー雑誌に携わっていたもので、色々と素材の事も勉強しました。」

 

「なるほど。そうでしたか。」

 

「ええ。そろそろ向かいましょうか。自分はカメラの場所取りがありますので。」

 

「そうですね。行きましょう。」

 

そして中山レース場へ着き。石嶋は客席、

江助は関係者への挨拶まわりへと向かうのだった。

 

(カー雑誌出身であのタバコの銘柄…もしかしたらそのうち会うかもな、首都高あたりで。)

 

石嶋の吸っていた銘柄は赤と白の三角ツートンのパッケージ。音速の貴公子の全盛期を彩ったスポンサーにもなっていたタバコだったのだ。

 

____

 

 

そして迎える第9レース。

 

本日のメインイベント、有馬記念のスタートが迫る。

 

スズカの病室で一緒に中継を見る流貴。

 

「さて、スズカ。」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

「チームメイトや友達としての贔屓目を抜きにして考えてくれ。今回のレースは、誰が勝つと思う?」

 

「うーん……難しいですね。」

 

「やっぱりか。キミの場合最初から最後まで、先陣切ってぶっちぎるレースをやってるから、相手を細かく見てないところもあるだろう。」

 

「言われてみれば、そうですね。」

 

「そういう天然素材なところがキミの良さでもあるんだけど、もう少し考えて走る必要も出てくるかもしれない。」

 

「考えて走る、ですか?」

 

「怪我から復帰して今までの走りを取り戻すのには時間がかかるだろうし、周りに新しい勢力も出てくるだろうからな。まぁそこは沖野さんの領分になるけど。」

 

「そうですね。トレーナーさんと色々話してみます。」

 

「まぁゆっくりで良い。さて、そろそろパドックで御披露目かな。」

 

____

 

 

レース場パドック。

 

石嶋はシャッターを切りながら、注目の黄金世代の戦績を思い出していた。

 

(まずは元々出走予定だったキングヘイロー。菊の後に回避を宣言し、秋から冬にかけ適正をトレーナーと見極め高松宮記念への出走を発表。しかしこれまでに掲示板を外したのはダービーだけ。)

 

(車なら表彰台の常連ってとこだが、ココでは一着のみが勝者。そのシビアさがまた彼女たちを引き立てるんだろうな。)

 

パドックのウマ娘が入れ替わる。

 

(スペシャルウィーク、今年のダービーウマ娘。キングヘイローの枠に人気投票で推される形で出走。中山での勝ちは弥生賞があるが、今回は周りのメンバーも強く彼女にとっては初めての2500m。半端な距離で上手くペースを配分出来るか?)

 

スペシャルウィークからセイウンスカイに入れ替わる。

 

(今回の1番人気、セイウンスカイ。クラシック二冠。特に菊を勝っている事から期待が高い。デビュー戦とジュニアカップが中山だった事から慣れもあるだろう。しかし前にペースメーカーを作れない逃げで初めての距離。どうなる?)

 

そして今回出走するもう一人の黄金世代。

 

(4番人気、グラスワンダー。ジュニア級はデビューから朝日杯FSまで無敗を記録するも、年明けに軽度の骨折が発覚。)

 

(およそ9ヶ月の療養を経て毎日王冠で復帰。続けてアルゼンチン共和国杯に出走。5着・6着と走りを取り戻せていない感じを受けるが、同期のエルコンドルパサーが久しぶりにNHKマイル→日本ダービーのローテで成功したウマ娘であり、彼女にも同じアメリカ系のタフさがあるとしたら可能性はあるか?)

 

パドックでのお披露目が終わり、あとはレース開始を待つのみ。

 

 




レースは1998年の有馬記念を元に、アプリ版のストーリー等を加味し、キングの枠にスペを入れたオリジナル展開。

サブタイトルは1998年に発売されたB'zの、さまよえる蒼い弾丸から。

グラスワンダーの勝負服カラーと掛けている。
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