コバルトブルー   作:RPM

14 / 43
13:余韻

 

 

ウイニングライブも終わり、帰り支度をはじめる各々。

 

スピカメンバーは、重い雰囲気ながら駐車場へと向かって行く。

 

流れで付いてきた尚三と沖野がレース中の出来事について話している。

 

「あんちゃんが言ってたリアクションタイムってのは、ゲートが開いてから走り出すまでの時間。って事で合ってるかい?」

 

「その通りです。元々はゼロヨンでシグナルが変わってからアクセルを踏むまでの時間ですが、それを転じてウマ娘に当てはめるなら、ゲートの開くタイミングを読んで駆け出すあの時間でしょう。」

 

「ベストなタイミングはどのぐらいだ?」

 

「ゼロヨンでは0.4秒以下はフライングで負け判定になります。トゥインクルシリーズでも、速すぎたらゲートにぶつかってケガをしますから、そこに合わせるのが良いと思います。」

 

「なるほど、確かに。」

 

「さらに言うなら0.4秒とは人間の反射神経が反応出来る最も短い時間と言われています。これは科学的根拠に基づいているようです。」

 

「ゲートからの出足は揃えて…あとはラップタイムで詰めるのは変わらないか。」

 

そして駐車場へ着く。

 

「またな、あんちゃん。お前らも挨拶しろ。」

 

「またねー、ええっと?ルキちゃんの友達の?」

 

「ハンでいいぞ。テイオー。」

 

「じゃ、またねーハンちゃん。」

 

「ああ。」

 

「今度、バイクの話も聞きたいっす。」

 

「了解だ。ウオッカ。」

 

「なぁなぁ、オメェのバイクは宇宙に行けるか!?」

 

「おいおい、ETのチャリかよ(笑)」

 

「ゴールドシップさん?」(ゴゴゴゴゴ)

 

「はっ、ヤベェ!」

 

「失礼いたしましたわ。反幕さん。」

 

「別に良いぜ、こっちも面白いしな。」

 

「お世話になりますわ。」

 

「ああ。またなマックイーン。」

 

「アタシもよろしくお願いします。」

 

「こちらこそ。スカーレット。」

 

「えっと、その。」

 

「スペシャルウィーク。そんなに落ち込むな。ってのも無責任かもしれないけど、勝ちの保証されたレースなんて、面白いと思うか?」

 

「うーん…そう言われても、分かりません。」

 

「まぁ、これはみんなにも伝えたい事だけど、勝負を楽しんで、勝ちはもぎ取りにいけ。少なくとも、俺がアメリカで見てきた連中はみんなそうだった。」

 

「そこは俺も同意見だな。スペは今、スズカに良い走りを見せようと気負いすぎてる。今日は帰ってゆっくり休め。ありがとな、あんちゃん。」

 

「ええ。またよろしくお願いします。三が日まではこっちに居る予定ですので。」

 

「次は芥瀬の見舞いかな?またその時に色々聞かせてくれ。」

 

「分かりました。では。」

 

スピカの乗り込んだ、トヨタノアを見送る。

 

____

 

 

その頃リギルは、今回の有馬記念でトゥインクルシリーズからの引退を決めていたエアグルーヴの慰労会を元々行う予定であったため、ホテルに戻っていた。

 

そこにグラスワンダーの祝勝会も兼ねて行う事になり、間もなく乾杯といった所である。

 

「ごめんね、ジャージ屋くん。タッちゃんとスーちゃんでランデブーしたかったけど、もう帰っちゃうのね。私達はもう1泊していくから。」

 

「まぁ。ツルんで走るのはいつでも出来るさ、今日は先輩役をしっかりとな。んじゃ、またな。」

 

「ええ。またね。」

 

 

江助はホテルから出て、尚三へとLANEをする。

 

『今何処よ(゜Д゜≡゜Д゜)?』

 

『中山の駐車場。ちょうど沖野さん達が帰った所。』

 

『了解。とりあえず晩メシ食おうぜ。ガスコ中山店集合な。』

 

『りょーかい(`・ω・´)ゞ』

 

そしてファミレスに集まる二人。

 

「ハン、こっちだ。」

 

「待ったか?」

 

「俺もちょうど着いた所だ。ちょっと一服するぜ。」

 

「了解。」

 

タバコを1本吸い終え。食事の注文を取り、話を始める。

 

「なんか前より、食う量増えたんじゃねーか?」

 

「ああ。タバコ辞めたら、食欲が増してな。」

 

「何だ?肺か気管支でも悪いのか?」

 

「いや。溶接とか鉄工作業って結構煙たいからさ。もちろん防塵マスクはしてるけど。」

 

「なるほどね。」

 

「相変わらずその銘柄なんだな。」

 

「貴公子の彼の乗ってたクルマのスポンサーのタバコは色々あるけど、最期のヤツはもう絶版だし、紅白の三角はユーザーが多いからなぁ。あんまり他人とダブるのは嫌いなんだ。」

 

「相変わらず天の邪鬼だな(笑)黄色いラクダは足回りのコンピューターがポンコツだし?」

 

「その通り。マシンデザインは格好良いし、アクティブサスの優位性は他のチームが後に証明したけどな。」

 

「あの時代は各メーカー、色々自由に開発出来る時代だったからな。今はマシンが統一化されて、技術競争が減ったのは、チューナーとしてはつまらなくなったと思う。」

 

「その分、純粋に腕で勝負出来るようになったという見方もあるぜ。っと、今日はその話じゃねーんだ。」

 

「ん?何だ?」

 

「流貴がクルマ探してるって言ってたから、本人に話を通して、そっちのチューナー達の伝手を借りようかと思ってな。イジるのが得意なヤツらならボディの状態とかも分かるだろ?」

 

「なるほど、了解。今度その話もしよう。クルマ探しに車検・整備・改造。任せてくれるならウチの伝手でやる。でも車庫証明はどうやって取るんだ?」

 

「あ、そういえば流貴は今、家が無いんだった。」

 

「やっぱりな。急な帰国だったからそうだろうと思った。以外と盲点だけど、駐車場が無いとクルマは買えないからな。もしかしてルッキー、クルマ買うの初めて?」

 

「ああ。実は初めてなんだ。バイクも車検の無い250ccしか乗ってなかったから、車検とか車庫関係には疎い。」

 

「そういえば今まで乗ってたFZRはどうしたんだ?事故の後廃車になったか?」

 

「いや。事故の割に軽傷だったから、修復してウオッカに譲った。名義はオヤジさんで実家に保管してるみたいだな。」

 

「なるほどね。相変わらず気前が良いというか、淡白というか。執着が薄いのかね。」

 

「まぁな。レースでも負けを必要以上に引きずらないし、勝っても自分を見失わない所もあるし。」

 

「それならある意味、トレーナーへの適性も高いといえるのかな?」

 

「あんまり俺たち外野が判断するモンじゃねーとは思うが、トレーナーは担当ウマ娘への共感も大事だけど、切り替えて次に繋げなきゃだろうからな。レースのローテーションなんかもな。」

 

「ルッキーはクルマとバイクでも、色んな路線を考えてたよな。」

 

「ああ。だが元々バイクは国内路線のみで、MotoGPへ進む気はなかった。セトの後を継ぐ事を優先したんだ。」

 

「ルッキーなりに、せっちゃんならどうするか?を考えたのかな?」

 

「そうだな。チームメイトとして、学友として、一番近くに居たのはアイツだったからな。」

 

「ホントもったいないよな。二人とも。」

 

「流貴はクルマとバイクの両刀。ドライダーになり、セトはMotoGPでワールドチャンピオン。そうなって欲しかったよな。」

 

「それだけの実力はあったと思う。ホントに巡り合わせというかなんというか、せっちゃんの事故の件は、本人にも原因はあったんだろうけど。」

 

「公道を走る以上、常に一般のクルマの事を考えて走る必要がある。封鎖した公道を走るラリーでも、障害物の事は頭に入れて走るっていうからな。」

 

「ラリーはイマイチ専門外だな。」

 

「俺も受け売りだけど、前に関西から首都高に遠征して来たラリー好きが言っていた事がある。」

 

「へぇ。何て?」

 

「ブラインドコーナーを抜けた先に落石や倒木。さらに海外のラリーじゃ動物の飛び出しもあるから、端から見れば限界に見えても、多少の安全マージンは残しているって話だ。」

 

「せっちゃんはその、マージンを削り過ぎたって訳か。」

 

「そうだ。公道にサーキットの走りを応用するのは近道のようでいて、必ずしも正解じゃねぇからな。」

 

「それに、近道は裏切るって言うしな。」

 

「湾岸の漫画にも書いてあったっけな。近道は一見良い事のようでいて、見ようによっては横着ともとれるしな。」

 

「……暗くなっちゃったな。話を戻そう。」

 

「ああ。そうだな。クルマの話は今度の見舞いでするとして、下宿先は学生時代の知り合いでも当たってみる。」

 

「ん?賃貸を探すんじゃなくて?」

 

「トレーナー試験までのちょっとした期間だからな。賃貸は場所にもよるけど、あんまり早く退去すると違約金とか面倒な事もあるし、家具家電を揃えるならトレーナー寮に入ってからだ。」

 

「なるほど。じゃあ、そっちは頼んだ。」

 

「了解だ。」

 

____

 

 

中山レース場の最寄駅である、JR船橋法典駅前。

 

石嶋は駅前のコインパーキングに停めた愛車の横で一服しつつ、人の流れを見ている。

 

(車組と電車組が半々ぐらいか。まぁ、どうせすぐには出ないし、ネットカフェで写真データの整理と編集でもして、夜まで時間を潰すか。ついでに仮眠も取ろう。)

 

 

PM10:00

 

「閉店までまだ1時間ぐらいあるけど、そろそろ行こうか。」

 

「そうだな。帰宅ラッシュも落ち着いた頃だろうしな。」

 

「ルートは?」

 

「原木ICから京葉道路経由で乗って7号小松川線、両国JCTから6号向島線、江戸橋からC1を回って、4号新宿線経由で府中に戻る。どうだ?」

 

「良いねぇ。バトルするか?」

 

「異種格闘も嫌いじゃねぇが、やっぱりやるならクルマ同士が良いな。」

 

「んじゃ、高速クルージングだな。」

 

「もしバトルを仕掛けて来るクルマが居たら、スターターを頼む。」

 

「並走の後ろに付いて、パッシングで合図?」

 

「ああ。」

 

「了解。特等席で見せてもらうぜ。」

 

 

ちょうどその頃石嶋もネットカフェの個室で仮眠から目覚め、ドリンクバーのコーヒーで頭を切り替えていた。

 

(元々帰りがてら首都高を走るつもりだったけど、並走相手が欲しくなってきた。速そうなクルマが居たらバトルを仕掛けてしまいそうだ……レースの余韻かな。)

 

ウマ娘の走りに触発された男達の夜が、始まる。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。