実際の運転では交通ルールを守り、
安全運転を心掛けましょう。
『こりゃまたどえらいのが来たな。しかもかなり弄ってんじゃねぇか。』
『コイツは金かかってんな。かなり速そうだが、バトルする気はあるか?』
『まぁ雰囲気組が買うようなクルマじゃねぇしな、厳密には買えないって言った方が正しいか。』
ホンダNSXは発売当時のレートでも800万~1000万する高級スポーツカーであり、車体がオールアルミの量産車という貴重さから、殆ど価格を落とさずに現在に至っている。
(最近噂のC1のスープラか。後ろのバイクは仲間かな?)
並走しつつ、チラリとお互いを見る。
(今朝会った洋谷君じゃないか。まさか彼が乗っていたとは。)
(石嶋さんじゃねぇか。会うかもとは思ってたけど、マジで会うとはな。)
両車シフトダウンし速度を合わせ、ハザードを焚く。
『ハン。頼むわ。』
『ああ。了解。』
江助は親指で後ろを指して合図する。
(ん?…なるほど。バイクのハイビームでスタートの合図か。)
首都高向島線、箱崎よりバトルスタート。
スープラがターボの加速で少し先行し、箱崎料金所横から角度は浅いが長く右へ曲がるコーナーを抜けていく。
コーナーを抜けるとすぐに分岐があり、左側一車線を進み江戸橋JCTに入って行くため、さすがに三車ともスローダウン。1号線への合流で再び加速する。
『再開かな?』
『ああ。ちゃんと付いてこいよ?』
『言われなくても。せっかくのバトルを特等席から見逃すワケにはいかないぜ。』
ジャンクション出口。1号線、C1からの合流に気を付けながらバトル再開。
(スープラの音が違う?2Jはもっと重低音で揃う音だったはず。直4載せ換えか?)
(ターボ化はしてなさそうだけど、ギアチェンジ時のエンジン音の途切れが短い。シーケンシャルのドッグミッションか?)
(スープラの方がパワーは上だろうが、駆動系の繋がりはNSXの方が上だな。シフトがかなり早い。)
首都高の中で最も古く、そして狭いと言われる環状線。通称C1の中で数少ない三車線の高速区間の一つである宝町ストレートを3台は飛ばしていく。
(シフトアップ時にブローオフが聞こえるって事は、3Sターボか。)
(やっぱりNSXは空力が良いな。ぴったりスリップに入ってパワー不足を補ってる。)
(ターボ車を自然吸気が追いかける。まるでJGTCの再現だな。)
宝町を抜け京橋JCT。楓川宝橋公園の下をくぐる。ビル群の高層エリアから、旧河川を埋め立てた地下エリアへと滑り込んでいく。
(ここからはテクニカルゾーン。切り返しじゃスープラは負ける。どこで仕掛けてくる?)
(もう少し待って、銀座あたりで仕掛けるか。)
(仕掛けどころも覚えておかなきゃな。自分で走る時の参考にしよう。)
京橋JCTを抜けて銀座へ。この辺りの旧河川を埋め立てて作られた道は不規則に曲がり、当時から架かる橋の橋桁が突然の障害物として現れる。首都高を題材にしたレースゲームでこの橋桁に激突した者は多いだろう。
亀井橋地下トンネル。分離帯で左右に分かれるところでスリップストリームから抜け石嶋が抜く。
(ここで来ましたか。さすがに分かってますね。)
横風の影響が少ないトンネルで、尚且つ一般車の動きを見通せるポイントで抜く。
コースを熟知し、尚且つ一般車を巻き込まない事を頭に入れているからこそ出来る。
首都高を攻めるという、違法行為の上でのマナーである。
『見事だったな。スケっち。』
『ああ。だが今度はこっちの番だ。トルクが生きる所でやり返すぜ。』
祝橋、萬年橋とくぐり新橋演舞場横のS字を抜け、汐留トンネルに入る。
汐留トンネル出口から道は登り始める。勾配を利用してターボのトルクで差を詰め、汐留S字で勝負をかける。
(三車線で視界が開ける高速コーナー、2個目の立ち上がりでブチ抜く!)
(ここで来たか。見事だ洋谷君。)
ハザード2回点灯。バトル終了の合図。
峠の1本勝負ならともかく、ぐるぐると回る首都高にはゴールが無く、お互いの実力が分かった以上は不要な事故を減らすためにも、これ以上の深追いは意味がない。
『良いもん見せて貰ったよ。分岐でお別れかな?』
『さぁ、どーだろ。俺達と同じく府中戻りかもしれない。』
そのままC1を周り、4号新宿線を経由。代々木PAに停め、クルマから降りる。
「今朝ぶりですね。まさかC1のスープラが洋谷君だったとは。」
「こっちも驚きましたよ。石嶋さんがNSX乗りとは。」
「驚いたのはお互い様って事で。さて、勝負後の一服をしたい所ですが、先に中入りましょう。エアコン取っ払ってるもんで寒くて(笑)」
「俺も入りたい。この時期バイクで飛ばすのは、やっぱり寒い…。」
「ホットコーヒーで乾杯でもしようか。」
施設内に入る三人。この時間はカフェもレストランも閉店しているため缶コーヒーを買い、窓際のカウンター席に並んで座る。そこからは代々木公園、明治神宮の森を一望出来る景観スポットとしても知られている。
「まずはお疲れ様でした。」
「お疲れ様でした。」
「さて、バトルに付いてきたそこのバイクの彼。もしかしてアメリカのボンネビルに居た事がありますか?」
「はい。もしかして貴方も?」
「ええ。カー雑誌の取材で行きました。何年も前の事ですが、やはり異国の地で日本人というのは印象に残ります。現在はウマ娘雑誌を作っています。」
「なるほど。自分は当時ヨシムロレーシングのスタッフとして、データ集め等をしていました。」
名刺を交換する二人。
「おや。この住所はトレセンの合宿所のある町ですね。そこで鉄工所ですか。」
「はい。地元はあっちなんですよ。蹄鉄やクルマ弄りをしています。」
「あの辺りの埠頭は、チューニングカーも多く居ましたね。クルマ弄りはどの辺りをメインで?」
「ボディ・モノコック周りの溶接補強や、ロールバーを組んだりですね。」
「クルマの骨格じゃないですか。凄いですね。」
「ありがとうございます。ところで石嶋さん。」
「はい。なんでしょう?」
「チューナーの端くれとして、NSXというクルマの成り立ちに興味があります。どうしてF1全盛期のホンダが、横置きのミッドシップを作ったのか?雑誌屋さんなら知ってるかと思って。」
「そいつは俺も気になってました。あとエンジンがセダンのレジェンドから流用ってのも。」
「さすがに鋭い指摘ですね。自分も書籍やネットで得た知識しかありませんが。きっかけは80年代に起きたミッドシップブームだったようです。」
「ミッドシップブーム?」
「はい。フィアットがFFを前後逆転させた小型ミッドシップのX19を作ります。パワーは70~80馬力程度。価格は日本円にして100~200万辺り。これが16万台以上作られ、輸出された事でブームとなりました。」
「それをホンダは模倣した。と?」
「マーケティング・販売部はそのつもりでコンパクトなスポーツカー風の車。という狙いがあったようです。恐らくシティやシビック辺りをベースにする気だったのでしょうが、エンジニア・技術部はそれを良しとしなかった。」
「それなら、レイアウトがああなのも分かります。」
「しかしスポーツカーにとって理想。かつ難しいとされていたミッドシップを簡単に作れるとあり、ホンダが社内の乖離を起こしている間にトヨタがカローラの流用でMR2を出します。」
「こういう時のトヨタは仕事早いですね。したたかというか何というか(笑)」
「そしてホンダは二番煎じを避けるため車格を小排気量からミドルクラスに上げて、バブルの好景気に押された新しいスーパーカーブームに乗ります。そこでアルミボディや、F1直系のイメージを付加価値として取り入れていきます。」
「確かに、フェラーリF40とかもその辺りの時代でしたね。」
「はい。そんな中MR2がモデルチェンジしミドルクラスになり車格を上げます。そして当時のF1のドライバーを乗せテスト。ボディ剛性を上げて、NSXは同年代のR32GT-RやフェアレディZ。ポルシェ911をライバルとして世に出ました。」
「なるほど。しかし色々行き違いはあってもちゃんと速いクルマになってるんだから凄いですね。」
「まあ自分で乗っていてなんですが、経緯を知るとGT-Rの倍もする価格には疑問もあります。」
「効率が良いと見るか、ある種の横着と見るかですかね。もしもホンダが本気で作ってたらどうなったのかも気になります。」
「当時の景気とホンダの技術力があれば、エンジンを一から起こす事も出来たでしょう。V6レイアウトは変わらないかもしれませんが。」
「確かに。」
缶コーヒーを飲み干し、外へ出て一服する。
「さて、明日は編集部に帰って記事を作らないと。出来れば買って下さい。もしくはWebで読んで下さい。」
「はい。楽しみにしています。」
「あ。そういえば洋谷君。」
「はい?」
「ウチの誌面、もしくはWebに広告載せませんか?」
「なるほど。そういうのは広報部に掛け合ってみないとですが、頭に入れておきましょう。」
「よろしくお願いします。自分も編集長に話を通さないとですが。お互いに悪い話ではないと思います。」
「そうですね。動くのは年明けからになりますが。」
「ええ。よろしくお願いします。お先に失礼致します。良いお年を。」
「良いお年を。」
NSXを見送る。
「なかなか面白い人だね。仕事も出来そうだし。」
「ああ。年下の俺らにも紳士的で走りのウデも確かと来た。営業トークも見習わないとか。」
「まぁ、高いクルマ乗ってるからってのもあるんだろうけど。」
「だけどこっちも儲かりそうな提案だから頭が良いわ。カー雑誌時代の印税つぎ込んでんのかなぁ(笑)」
「かもな(笑)寒いし俺らも帰ろうか。」
「そうだな。」
____
数日後。
年末が差し迫る中。流貴の病室には退院後のクルマと下宿先の相談に仲間が集まっていた。
「退院は2月ぐらいだって?意外と早いんじゃねーの?」
「さっさと出たくて、リハビリ積極的にやってるからな。いい加減入院生活も飽きた。」
「なるほどね。」
「んで、クルマ探しを俺らで協力しようと思ってな。色々と書類とか場所とか必要だからな。」
「なるほど、ありがとう。車庫証明は盲点だったよ。」
「とりあえず車種とカラー、あとは年式や距離なんかも希望があれば言ってくれ。ロータリー車なのは予想がついてるけどな。」
「マツダRX-7 FD3Sの後期。年式は2000年以後で距離は5万キロ前後。ボディカラーはブルーで頼む。」
「やっぱりセブンか。エンジンはRX-8の方が回るんだけどな。」
「知ってるよ。エンジンの搭載位置と重心が良いのもね。」
「そう。後の時代になって気付いたセブンでのやり残しの改善。セダンという形ではあるが、中身はしっかりロータリースポーツだ。」
「まぁな。でも俺はセブン派だ。」
「了解。あと、どうせノーマルじゃ乗らないだろ?改造の注文は?」
「サイドポート加工とブーストアップ。ボディはサイドのウレタン注入とスポット溶接増しで補強してくれ。」
「割りと定番の注文だな。ロールケージと足周り、見た目はどうする?」
「屋根の潰れ防止バーは入れてくれ。サスは車高調付きのスポーツサス。ブレーキはBoremb。エアロはRF雨美のSuperGRD3でホイールはAVFの5本ツインスポーク。」
「了解した。あとはスケっち。下宿先の方はどうなってる?」
「一つ伝手が見つかったよ。流貴もよく知ってる相手だ。」
「へぇ。今日来るのか?」
「仕事納めでゆっくりしたい時期に、呼びつけるのも悪いとは思ったけど、本人達が良いって言うからさ。」
「ん?達?」
コンコンッ
「ちょうど来たみたいだな。どうぞー。」
入って来たのは三人組。坊主頭の男が先陣を切って挨拶する。
「ご無沙汰しております。芥瀬君。」
「久しぶりだな、ワラちゃん。相変わらず堅苦しいね。」
「これは私のクセみたいなものですから、お気になさらず。」
彼の名は
「今はオヤジさんから住職を継いだのか?」
「ええ。ついでにクルマも受け継ぎまして。変わらず走り続けております。」
「残りの二人は?」
「相変わらずチームでやってるよ。最近は埠頭より湾岸の方が増えたけどな。」
「俺は埠頭でドリフトもしてるけど、最近は新環状も時々走る。」
次いで話したメガネの男と茶髪の男。彼らは同級生達でチームを組み草鞋親子が資金を作り、埠頭で大排気量のバイクでのドラッグレースや曲乗り等をしていた面々である。
「改めて、久しぶりだな。芥瀬。花束をどうぞ。」
「ああ。コンちゃん。いい花束じゃないか。」
「ウチの家業は花屋だからな。」
「走りは相変わらず曲乗り?」
「ああ。クルマに変わってからもドリフトがメインだ。時々新環状も走るけどな。」
茶髪の彼の名は
「トレーナー目指してんだって?もしサトノの令嬢が担当になったらよろしくな。」
「って事はタケちゃん、前々から言ってたセガ社員にマジでなったのか?」
「その通り。今度VRシミュレーターをトレセン学園に設置する予定だ。トレーニングにも息抜きのゲームにも、役立ててくれ。」
メガネの彼の名は
「そういや、ハンは初対面か?」
「いや、多分せっちゃんの葬式で会ってるかな?喋りはしなかったけど。」
「ご無沙汰しております。」
「ああ。一応自己紹介をしとく。コイツらと同じ時期にヨシムロに居た、反幕尚三だ。ハンって読んでくれ。」
「はて、何故ですか?」
「名前が女っぽいのと、略称で呼ばれるのに慣れてるからさ。アメリカに一時期居たもんでね。」
「ヨシムロがサーキットレースとは別に力を入れていた、ボンネビルの最高速チャレンジ。ですか?」
「ボンネビルは年一だけど、行き来するのも面倒だしアメリカ独自のモータースポーツを直に見てみたくてね。」
「なるほど。」
「おっと……今は俺の話は良いんだよ。用があるのはルッキーだろ?」
「そうだな。んで、俺は誰の所に居候するんだ?」
「私の寺で、どうでしょうか?車庫証明も一時的にウチで取ってください。」
「お寺か。なるほどね。」
「はい。トレーナー試験の勉強をするとの事ですので、静かで集中出来るかと。墓地もあるので夜は少々不気味ですが(笑)」
「まぁそりゃお寺だからな。セトちゃんの墓参りもしないとね。」
「因みに時々、トレセン学園の生徒の方々も訪れます。」
「へぇ。レース前に座禅でも組みに来るのか?」
「そういう方も居ますが、好奇心旺盛な方が怖い話を聞きに来たりします。」
「そういやホラー映画が好きだったり、トレセン学園の七不思議を解明しようとする子も居るって聞くな。ルキ、トレーナーになったらやってみたら?」
「どうかな?合法的に夜の学校うろつくのは面白そうだけど、霊感は無いと思うからなぁ。」
「霊感は零感ってか?」
「「「( ´,_ゝ`)wwwww」」」
「あとは、ゴールドシップさんが木魚を叩きに来ます。」
「「「…はぁ???」」」
「なんでも感謝祭で木魚ライブをやりたいのだとか。」
「あー、うん。突っ込むのも野暮か?」
「どういう訳か木魚の師匠認定をされております。」
「そりゃあ、良かったのか?」
「まぁ、ゴールドシップさんですし。さすがに私も理解が追い付きませんので。」
「ありゃあ宇宙人……いや宇宙ウマ娘だと思ってる。」
「おっと。話が逸れましたが、今日は挨拶だけの予定でしたのでそろそろお暇いたします。」
「んじゃ、見送るよ。」
____
顔合わせが終わり、病院の駐車場に向かう一行。
「荷物は年明けから運んで行きましょう。」
「了解。まぁ業者呼ぶほど大したモンもないしな。」
そして止まっているクルマ達に目を向ける。
「あれ?チームのステッカーが英語になってる?」
「はい。漢字だと読みにくいかと思いまして。」
「俺は漢字の方が好きなんだけどね。両方貼ったら?」
「なるほど、確かに。考えておきます。」
走り屋チーム
名前の由来のエングレーブとは様々な物に施される彫刻の総称だが、拳銃に施される装飾を指す言葉として使われる事も多い。
彼らが速さだけでなく曲乗りやドリフト等のパフォーマンスも行う事から付けられた名前である。現在はチームロゴを横文字の"TEAM ENGRAVE"に変更している。
草鞋結人、
Ab.banne 日産フェアレディZ GCZ32
エンジン:水冷V型6気筒DOHCターボ
排気量:3100cc
出力:550馬力
ギア:5速
最高速を得意とする静岡県御殿場市の老舗ショップ「Ab.banne」のZ32。3100cc化とタービン交換で550馬力。最高速マシンとしては大人しめの数値ながら300kmまでのレスポンスを重視している。エアロパーツも同社のワイドボディキットを装備する。
猛元光良、
FULLSCENE 日産スカイラインGT-R BCNR33
エンジン:水冷直列6気筒DOHCターボ
排気量:2800cc
出力:700馬力
ギア:6速
大阪市羽曳野市のショップ「FULLSCENE」がR33をチューン。排気量を2800ccにするRB28化とタービン交換で700馬力を超える。また「タイムも重要だけどカッコ良く」としてシャコタン仕様の足周りを煮詰めサーキットから最高速までこなせる。エアロはフロントリップスポイラーと大型GTウイング、R34のディフューザーを装備する。
「なかなか強烈な絵面だな。Z32がワラちゃん?」
「はい。父の代から付き合いのあるショップでして。」
「とんだ暴走住職だなこりゃ。隣のR33は?」
「俺だ。」
「タケちゃんか。速そうだねこりゃまた。」
「ウチで出してるレースゲームの元になった豆腐屋走り屋マンガで色々言われてたから、逆に興味が湧いてな。気が付いたらこうなった(笑)」
「行き過ぎだよ(笑)で、実際はどうなの?」
「速いよ。ただローレルと共通のセダンベースのボディが峠に向かなかっただけの事さ。」
「なるほど。えーと…サンバー?」
「ん。俺。」
「コンちゃんこれでドリフト出来るのかい?」
「縦ドリフトかな?ケツが重いからウィリーで。ってコラコラ(笑)実は乗り換えて納車待ちなのよ。コイツは仕入れとか仕事用だ。」
「なるほど、しかし限定カラーのWRブルーとはね。」
「どうせなら仕事もカッコ良くしたいだろ。結構ミーハーなのよ。」
「さて、解散の前にグループLANEを組んでおきましょうか。」
そしてグループLANEを組む面々。
「では、良いお年を。」
「ああ。良いお年を。」
____
夜。流貴にLANEが届く。昼に組んだグループLANEではなく結人から個人で来ていた。
「何だ?下宿先の事で忘れた話でもあったか?」
『夜分に失礼いたします。』
『何だ?改まって、どうした?』
『昼に会った時には言わなかったのですが、少し貴方から違和感を感じまして。』
『何だそりゃ?』
『上手く言えないのですが、貴方が二人居るような、不思議な感覚でした。』
『ワラちゃん、もしかして霊感あるの?』
『ええ。これでも多少の霊話等も可能です。』
結人が流貴に感じた違和感。それは恐らく、彼が転生者であるが故なのかもしれない。流貴は全てを話す事にした。
『なるほど。そうでしたか。貴方の居たのはこちらとよく似た少しだけ違う別世界で、馬というシマウマを単色にしたような、ウマ娘の代わりとなる動物が居たと。』
『ああ。そしてトゥインクルシリーズは、競う馬と書いて競馬と呼ばれていた。』
『ふむ。どうしてこっちの世界に来られたのでしょうね?』
『さぁな。神様の気まぐれかも知れないけど、坊さん的に何か仮説でも立ててみるかい?』
『そうですね。自分の命日は、分かりますか?』
『多分だけど、6月の3日か4日辺りだと思う。イギリスとの時差もあるから、日本現地じゃどうだったかは分からないけど。』
『なるほど。では、別世界で馬だったウマ娘の方達。その中のどなたかが、貴方と同じ命日だったのかもしれません。』
『その子が、俺と同じ末路を辿らないように、助けろってのか?』
『ええ。しかしレースを防ぐのは難しいかもしれません。ウマ娘の方は競走本能故か、出走取消を嫌がると聞きます。ですから、サイレンススズカさんのように緊急時に素早く救出する等の必要があるかと。貴方がトレーナーを目指しているのも、恐らく偶然ではないのかもしれません。』
『レース馬鹿が高じただけだと思ってたんだけど。これも神様の思し召しってヤツなのかねぇ?』
『とにかく、まずはトレーナーの資格を取る事です。私も出来るだけの協力はしますから。』
『色々とありがとう。そろそろ寝るよ。おやすみ。』
『はい。おやすみなさい。』
スマホを置いて考える。
(あと1ヶ月でニュートラル期間は終わり。退院して人生のギアを入れる時が近付いてきたか。さて、どうなることやら。)
NSXの話は湾岸ミッドナイト34刊を参考に。
シマウマについては、セガのソニックの曲をzebraheadがカバーしている事やサーキットの縁石をゼブラゾーンと呼ぶ事等から居る扱いにしておく。
読み返して展開が少々遅かった気がしたので、主人公周りの出来事を進展させた。