実際の運転では交通ルールを守り、
安全運転を心掛けましょう。
正月。
(今日ぐらいはゆっくりしようかな。)
病院近くのコンビニ。雑煮代わりの餅入りカップうどんを買い、イートインで食べた後の一服。
その前の通りを見覚えのあるバイクが通っていく。
(あれ?あのバイクはもしかして。)
病院に戻り駐輪場へ向かうと、流貴が譲ったバイク。ヤマハFZR250から荷物を降ろすウオッカが居た。
「芥瀬さん。明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。」
「ああ。明けましておめでとう。」
「オレと母ちゃんで、芥瀬さんとスズカ先輩におせち作って来たんで食べて下さい。へへっ(^_^ゞ」
照れながらも嬉しそうなウオッカ。
「へぇ。料理得意なのか?」
「寮のみんなに迷惑かけないようにって、母ちゃんに仕込まれてんすよ。」
「なるほどね。んじゃスズカの分はウオッカが持っていってくれ。俺はここで受け取る。」
「はい。今度味の感想教えて欲しいです。」
「あれ?届けたら帰るのか?ゆっくりしていけば良いのに。」
「午後から父ちゃんとツーリングの約束してるんす。」
「新年早々忙しいね。」
ウオッカからおせちを受け取って病室へ戻り、食べつつ各方面へ新年の挨拶のLANEを送る。
『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。』
『こちらこそ、よろしくお願いいたします。』
『よろしく( ゚д゚)ノ』
『よう(  ̄ー ̄)ノ』
『は~いヽ(*´∀`)ノ♪』
『どもどもm(__)m』
その頃、駐輪場に戻りエンジンに火を入れるウオッカ。
(芥瀬さんに貰ったヤマハのレースレプリカFZR250。細かい説明は父ちゃんと店長から聞いたしオレもネットで調べたけど、ここから先は乗りながら知っていく。)
ヤマハFZR250 1988モデル
エンジン:水冷並列4気筒DOHC自然吸気
排気量:249cc
出力:45馬力
重量:160kg
ギア:6速
80年代半ばのバイクブーム。取り回しやすく維持もしやすい小排気量のバイクへの需要が高まる。そんな中ヤマハはFZ250
市販車としては初めて16000rpmを越える高回転。さらに250cc4サイクルとして初めて45馬力を達成して話題となる。
PHAZERの後継となるFZRは最大出力/トルクの発生回転はそれぞれ14500rpm/11500rpmとPHAZERから受け継ぎレッドゾーンは17000rpmである。
88年モデルでは排気系とバルブスプリングが改良され、低回転時のトルク低下を防ぎ常用時の乗りやすさが向上した。
当時の耐久レーサー、YZFのイメージを踏襲した流線形、丸目二灯のフルカウル。カラーは88年に追加されたシルキーホワイト/ダイナステイブルー。
そこに流貴からのLANE。
『そろそろ出る頃かな?ソイツはもうキミの相棒だ。かわいがってやってくれ。気を付けて行ってらっしゃい。』
『はい!ありがとうございます。行って来ます。』
(さぁ、行こうぜ相棒!)
____
その頃、マルゼンスキーと江助はカウンタックの整備をしている工場へ向かっていた。
空気の密度が変わる冬仕様へとキャブレターのセッティングを変えたため受け取りに行く。
マルゼンスキーは助手席ではクルマ酔いしやすいため、右ハンドルへの慣らしも兼ねてスープラを運転させている。
「ジャージ屋くん。この間はお楽しみだったみたいね?」
「何で分かるんだ?」
「ホイールが汚れてるのと、ちょっと焦げ臭さが残ってるのよ。相当攻め込まないとそうならないでしょ?」
「なるほど、さすがウマ娘。嗅覚が鋭いね。」
「どんな相手だったの?」
「年は俺たちより少し上ぐらいで、マシンはNSX。キミもいつか会ったら色々聞くと良い。ミッドシップのNA乗り同士、分かる事もあるだろう。」
「かなり速い人なのね。ジャージ屋くんが本気になるなんて。」
「そりゃあ。たまたまカチ合ってないだけで、首都高には速いヤツはまだ居るんじゃねーの?特に首都高全域を長く走ってる先輩達はな。」
「なるへそ。」
「まあ。みんな年を取っていつかは降りて行くだろうけど、まだまだ学ぶべき事もあるよ。」
「ジャージ屋くん。アナタって意外と謙虚よね。」
「余計なお世話だ(笑)」
「うふふ。あ、もうすぐ着くわよ。」
そして工場からカウンタックを受け取り、父の頃から付き合いのあるメカニックから説明を受ける。
「明けましておめでとう。いつもお世話になるわね。おじさま。」
「おう。明けましておめでとう。今日は整備は休みで受け渡しだけだがな。」
「初めまして。明けましておめでとうございます。」
「今までメカには無頓着だったマルゼンが、キャブのセッティングを以来してくるとは成長したと思ったんだが、そこのあんちゃんの入れ知恵かい?」
「まぁ、そんなとこです。カウンタックはノーマルでも速いクルマなんですが。一緒にC1を走る上で色々気になる点もありまして。」
「セッティングで味付けをキメてくのはどんなクルマでも大事な事からな。んじゃ、整備内容の説明をするぞ。」
「お願いします。」
「エンジンはキャブレターのメインジェット調整。ついでにC1を走るってんで、ブレーキ関係の油脂類を新しくしといた。あとコレを新品にしときな。」
「ん?消火器ですか?」
「ええ。タッちゃんのキャブレターとかブレーキって燃えるらしいのよね。実感沸かないけど。」
「コラコラ、燃えてからじゃ遅いだろうが。キャブレターの燃料漏れも可能性があるし、ブレーキの油脂類は耐熱性の高いヤツに変えてあるが古いクルマだからな。グリスなんかが溶け出して熱くなったブレーキパッドに付着したら発火の可能性がある。」
「なるほどです。」
「あとはブレーキへの負担を考えたら軽量化も良い提案だな。それもそこのあんちゃんか。名前教えてくれ。」
「はい。洋谷です。」
「
「分かったわ。」
「了解しました。」
「んじゃ、気を付けてな。またよろしく。」
2台を見送る。
(付き合ってるワケじゃなさそうだが、良い走り屋仲間に出会えたな。マルゼン。)
そして夜。お馴染みの集合場所となった代々木PA。江助は尚三を助手席に乗せ時英のS2000の橫に付ける。
「とりあえず、ハンとジェイは初めて会うよな?」
「うん。そうだね。初めまして、よろしくお願いします。鳩斑時英です。」
「反幕尚三だ、ハンで良い。俺はヨシムロでスケっち達と知り合った仲だ。そっちは?」
「なるほどね。こっちは同じ峠を走ってたんだ。」
「って事は、あの事故の件も知ってるのか。」
「そうだね。ただ、俺はヨシムロとは関係ないし学校も違ったから、葬式には行かなかったんだ。」
「確かにあの時はバタバタしてたからな。空気を読んでくれたって訳か。」
「あとは遺影とか色々周りの状況を見て、事実を認識するのが怖いのもあったと思うんだよね。」
「確かに、10代の時分じゃそうもなるよな。」
「それにガキだったから、人前で泣きたくねぇって変なプライドもあったんだよなあの頃は。」
「確かにね。それで、ハンくんは何の仕事をしてるの?」
「トレセンの合宿所の近くで、自営業の鉄工所をやってて、蹄鉄作りとクルマ弄りで食ってる。何かあれば相談乗るぜ。」
「なるほど、プライベートチューナーなんだね。地元があっちって事は、正月休みであっくんの見舞いに来た感じ?」
「ツラ出しとこうと思ってな。4日ぐらいには戻ろうと思ってる。」
「俺はスタントマン、あとスーツアクターって分かるかな?」
「確か、特撮でスーツ着てアクションすんだっけ?」
「そうそう。よく知ってるね。」
「せっかくツラ構えが良いのに勿体ないな。」
「そうは言われてもね。俺たちの趣味はもしもの事があった時、役者は色々面倒な事になるでしょ。」
「まぁ、確かにな。」
江助は、彼らをまとめて呼んでしまったため顔合わせには不安もあったが、思ったよりも友好的な雰囲気にホッとする。
「さて。顔合わせが済んだところで走ろうか?今日は正月で一般車がすくのを狙った走り初めだ。」
「了解。タイムアタックするのかい?」
「全員がコースを熟知してりゃそれもアリだが、マルゼンとハンはまだ完全に覚え切れていないから、少し速いペースで案内しながら走ろうかと思ってる。」
「あら、悪いわね。」
「俺も一応バイクで何回か走ってはいるけど、こんなに狭くて複雑なハイウェイはなかなか無いからな。」
「建設事情がアメリカとは色々違うからな。」
「え?アメリカ?」
「ああ。俺はヨシムロの仕事の関係でアメリカに一時期住んでたんだ。」
「なるほど。あっちはアメコミヒーローとかもあるし、それでスーツアクターを知ってるんだね。」
「まあな。」
「よし。とりあえず走りながらインカムで色々と教えるか。」
「先行は?」
「この中で一番軽量なエスに頼みたいが、良いか?」
「了解。」
「で、ある程度コースに慣れてるマルゼンが真ん中。」
「分かったわ。」
「俺は助手席にハンを乗せて、案内しながら付いていく。」
時英はインカムを付けず先導走行に集中し、江助とマルゼンスキーがインカムで通信し、助手席の尚三とインカム越しのマルゼンスキーに案内する事となった。
4号新宿線を経由しC1千代田トンネル内の三宅坂JCTからペースを上げ、トンネルを抜けて代官町出口を左に見ながら北の丸トンネルへとブレーキングしながら下っていく。
「アップダウンが激しい道だよな。」
「どうしてこんな道になったのかって言うと、急ぎで作られた道だからなんだよな。」
『それは前にも聞いたわね。』
「ああ。60年代、東京オリンピックに間に合わせるために空港から都心部へ抜ける道として作られたのも理由の一つだ。」
「一つ?」
『他にも理由があるのね。』
「もう少し進んだら教える。」
トンネルを抜けて5号池袋線分岐を右に進み、神田橋連続S字区間。
『前にあたしが抜かれたのもこの辺りよね。』
「ここのS字に限った話じゃないがC1のコーナーは曲率が途中で変わる複合コーナーが多いから、サーキットで付いたハンドルの切れ角を一定にするクセを1度抜く必要がある。」
『ちょっとずつ切り足していくのね。』
「なるほど。」
そして神田橋連続S字の先、江戸橋JCT入り口の右コーナー。先導するS2000のテールランプが小刻みに光る。
『左足ブレーキかしら?』
「ああ。ここは長く回り込むからトラクションはかけたまま、左足ブレーキとハンドルで微調整だ、アクセル全閉は内側に巻き込むスピンの原因になる。」
『難しいわね。』
「それから、無理にエスのラインをなぞろうとするなよ。バトルじゃねぇんだからジェイも待つ。」
C1の難所の一つである江戸橋コーナーを抜け、数日前NSXとバトルした宝町ストレートへと下って行く。
『ここってジェットコースターみたいよね。』
「さっきまでのビル群からすれば地下に潜るような高低差だからな。ここは首都高の建設前は河川だったらしい。」
『川だったの?』
「ああ。ついでにさっきの続きを話す。首都高環状線、C1が作られたのは東京オリンピックとクルマの台数が増えた事による都心部の交通麻痺を懸念しての事だった。」
「ふむ。」
『なるへそ。』
「しかし土地を買収して整地する時間が無かったからビルの合間を抜け、川を埋め立てて道を作った。結果がこの不規則なレイアウトだ。」
『銀座の橋桁もその名残りなのね。』
「そういう事だ。」
京橋、銀座、新橋と抜けて汐留へ。道は再び登り川の底からビル群へと戻る。
「汐留S字から3車線でスピードが乗った状態からの浜崎橋JCTコーナー。ココは出口で1号羽田線の合流に塞がれるから大回りして立ち上がりでインにつく。」
『了解よ。』
浜崎橋を抜けて芝公園から一ノ橋までは特殊なコーナーはなくセオリー通りアウトインアウトの走りで抜けていく。
「一ノ橋JCTで2号目黒線から合流してくる一般車は、内回りとの立体交差で見通しが悪いせいか特に遅い。これが飯倉トンネルまで続くが焦るなよ。」
『あたし達のレースのスパート前のタメみたいね。』
「まぁそんな所だ。ココでもペース配分は大事なのヨ。」
飯倉の立体交差を抜けて谷町JCT。
「3車渋谷線からの合流は一般車も速いから、早めに右車線に避け、立ち上がって霞ストレートからトンネル入口まで全開で行ける。」
『了解、いくわよ。』
霞ヶ関トンネル入口。
「ここは横Gがかかりながらのブレーキング、スピンしないように気を付けろ。」
『わかったわ。』
霞ヶ関トンネルを抜けて、4号新宿線へ戻る。
「冬だけどそこそこ回して走ったから、代々木までクーリング走行だな。」
『ふぅ。案内お疲れ様。』
「どうも。」
そして再び代々木PA。施設内に入り自販機の飲み物で休憩する。
「ここはナタデココ売ってないのね。」
「さすがに冬だしな。おしるこにでもしたらどうだ?」
「俺はコーヒーで良いかな。」
各々飲み物を買い、缶をぶつけて乾杯する。
「お疲れ様でした。楽しかったよ。」
「ええ。あたしも。」
「俺もコースを覚えさせてもらったぜ。」
「そりゃあ良かった。お近づきのしるしにグループLANEにジェイを入れる。」
「どうも。よろしくね。」
これで流貴、江助、尚三、時英がグループとなった。
「他にも学生の頃からの付き合いの湾岸勢のヤツらも居るが、とりあえずココの4人はC1勢のホットラインとして繋げておく。」
「ん?マルゼンは?」
「あたしはガラケーなの。スマホのタッチ操作が苦手でね。」
「ヒトとウマ娘じゃ体内に流れる電圧が違うのかな?たまに機械を壊す娘も居るって聞くが。」
「多分ブルボンちゃんかしら?でもそれはごく希な例よ。」
「おっと。話が逸れたが、C1にパトカーが出てるかもしれない。飲んだらズラかろうぜ。」
「了解。」
「了解したわ。」
そしてそのままパトカーに気を付けつつ、解散となった。
____
走り初めを終え、貸しガレージに帰ったきたところ見慣れないクルマが停まっている。そこから降りてきたのは…。
「こんばんは、お帰りなさい。鳩斑くん。」
「明けましておめでとう、鳩村くん。」
「フルスとメグ?何でこんな時間にこんな所に?」
キャロットマンの変身前の姿を演じるウマ娘女優、ハーベストフルスとスタントマン仲間の女性、
TV版のキャロットマンは時英がスーツアクターで、地方のヒーローショーやデパート等の営業では恵実がスーツアクター(女性の場合はスーツアクトレスとも言う)をしている。
「私、クルマを買ったのよ。それで鳩斑くんが詳しいってスタッフさんに聞いてたから。」
「何でまた?」
「私はレースの道に進まなくて女優を選んだけれど、やっぱりウマ娘なの。時々走りたいって欲求が疼くのよ。」
「なるほどね。でも、危険は承知かい?メグにも止めて欲しかったね。」
「そう言われても、私達の仕事だって危険よ?」
「俺が顔出しの仕事をしないのは、興味がないってのもあるけど、もしもの時に替えが効くからなんだよ。毎週ニチアサでお茶の間に顔を出してるキミには、この道に来て欲しくなかったんだけどね。」
「説得力がないわよ。」
「まぁ、散々走って来た俺が言ってもダメか。しかしそれならクルマを買う前に相談して欲しかったね。」
「どうして?」
「スポーツ系のクルマを中古で買うって事は、激しい走行でくたびれている物を買う可能性もあるって事なんだよ。」
「そ、そうなのね(汗)」
「しかし、どうしてまた古いのを買ったの?」
「強いて言うなら、一目惚れかしら?」
「まぁ買っちゃった物はしょうがない。とりあえず車検証と記録簿を見せて。」
「分かったわ。」
助手席に乗り込みダッシュボードを開けて書類を取り出す。
車名:ニッサン
型式:E-BNR32
原動機の型式:RB26
総排気量又は定格出力:2.56L
車両重量:1430kg
初度登録年月:平成6年4月
(車検証から分かる事は、R32GT-Rの最終年度型。Vスペックじゃないベースグレードか。他の書類は?)
続いて整備や記録簿等をチェック。
(改造は特にされずオイル交換やメンテナンスもマメにしてるか。結構大事に乗られていた個体みたいだね。距離はどうかな?)
「ちょっと失礼。」
運転席に移動してトリップメーターを見る。
(4万キロか。思ったより悪くなさそうだね。)
「うん。これなら大丈夫かな?俺を追って首都高を走る気なら整備以外に改造も必要だけど、元がヤレてるとダメだからね。」
「そう。良かったわ。」
「とりあえず今日は遅いし帰りなよ。ショップはこっちで探すから。」
「分かったわ。ありがとう、おやすみなさい。」
「ああ。おやすみ。」
二人を見送り、クルマをガレージに入れる。
(早速になりそうだけど、ハンくんに色々聞いてみるか。)
____
数日後。
冬休み明けのトレセン学園、生徒会室。
海外からの編入生がやってくる。
「久しぶりだな。ようこそトレセン学園へ、歓迎しよう。アイルトンシンボリ。」
新キャラの詳細はPITIN①に数日以内に追記予定です。
C1の走行描写は、楠みちはる「湾岸ミッドナイト C1ランナー」2巻、7巻を参考にしています。
ちょい役のアイルトンは、公式がアイルトンシンボリをウマ娘化する前、尚且つセナ没後30年の今年になんとか間に合わせたかったので、一応の顔見せになりました。
彼女の詳細は次回。