コバルトブルー   作:RPM

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23:SPEED LOVER②

 

 

マイカー持ち込み組が各自テスト走行に入って行く。

 

今回の走者は全員が相応の経験値を持っているが念のために1台ずつ走行に入る。  

 

「かっ飛ばすわよ!」

 

まずはマルゼンスキーがカウンタックで先陣を切り、ランボルギーニサウンドを響かせてコースインしていく。

 

その頃ピットでは、ハンが持ち込んだクルマに注目が集まる。

 

シボレーコルベット C4

 

エンジン:水冷V型8気筒OHV自然吸気

排気量:5665cc

出力:335馬力

車両重量:1496kg

ギア:6速

 

1984年にモデルチェンジした4代目コルベット。1996年まで生産され、歴代コルベットの中では先代C3(1968~1982)に続くロングセラーとなる。

 

C4はそれまでのアメ車の"直線番長"的な性格を見直し世界に通用するスポーツカーを目指し、先代との空白期間2年を費やして研究・開発を重ね足回りに路面への追従性の高いダブルウィッシュボーンを採用。鋼筒パイプフレームとモノコックを組み合わせる車体構造等、各部に改善が見られる。

 

外装面では先代のロングノーズ・ショートデッキを踏襲。全体的にフラットで空気抵抗を減らすデザインになりつつもアメ車らしさも残している。

 

「良いねハンちゃん。俺もこのコルベット結構好きよ。」

 

「俺ら世代じゃレースゲームでよく乗ったしな。コイツはC4の末期モデルだ。」

 

「でも実際速さ的にはどうなんだ?アメ車は足回りが弱いイメージがあるが。」

 

「足回りを一新して路面に対してのしなやかさは得たと思うが、バネがコイルじゃなくてリーフ(板バネ)だからまだまだ手探りで作った感が強い。今日は足の踏ん張りの確認だな。」

 

「んじゃ、マルゼンの次に出るか。」

 

「ああ。」

 

____

 

 

筑波サーキットを周回するマルゼンスキーとカウンタック。

 

名目はテスト走行だがペースを上げて、カウンタック用のブレーキングポイントを詰めタイムアタック。

 

(さすがに重量がレッちゃんやロドちゃんの倍近くあるから、ブレーキを早めないといけないわよね。)

 

最終コーナーを立ち上がってくるエキゾーストの変化に、コルベットをピットレーンに出しているハン達も気づいていた。

 

「お。少し攻めるか。」

 

「さっき違うクルマに乗ったから、カウンタックとのフィーリングの違いを埋めるんだろうな。」

 

「一応時計回しとくか。ルッキーが押してくれ。」

 

ストップウォッチが手渡される。

 

「確かに。この中じゃ一番体内時計が正確なのはお前だろうな。」

 

「了解。」

 

『0:04:519』

 

第一コーナー左側の看板。50m手前を目印にブレーキングを開始。ヘアピンよりも緩いコーナーとはいえ、ギアを1速まで落とす低速コーナーである。

 

(相変わらず忙しいわね。)

 

筑波は忙しく休む暇のないサーキットとよく言われる。長いストレートをあまり持たず、1~4速を多用するためシフトチェンジが忙しい。

 

『0:18:219』

 

第一コーナーを立ち上がり加速。左・右と続く緩やかなS字コーナー二つめの頂点辺りからブレーキングしヘアピンにアプローチ。再びギアを1速へ。

 

『0:28:305』

 

ヘアピンを抜けほぼ直角に曲がる右コーナー。そしてタイヤブリッジをくぐる。

 

『0:33:321』

 

緩やかな左コーナーから第2ヘアピンに入る。インをかすめてバックストレッチへと立ち上がっていく。

 

『0:47:502』

 

最終コーナー入口手前。バックストレッチの終わりでこのコースにおけるトップスピード、190kmオーバーを記録しブレーキング。

 

回り込むほどにキツくなる筑波の最終コーナー。コースアウトに気を付けつつ、アクセルを立ち上がりに向けて少しずつ踏み足していく。

 

『1:03:314』

 

そしてコントロールラインを通過しスローダウン。そのまま1周してピットへと戻ってくる。

 

「タイムは測ってたのかしら?」

 

「ああ。一応な。」

 

ストップウォッチを渡す。

 

「さすがに1分切りは出来ないか。」

 

「惜しいわね。」

 

「まぁ、ラジアルタイヤにしては上出来だろ。路面も冷えてるし。」

 

____

 

 

ハンがコルベットのテスト走行を終え、ピットに戻るタイミングでヘリに乗った秋川理事長達が筑波に到着し挨拶をする。

 

「よろしくお願いします。」

 

「トセレン学園理事長の秋川やよいだ。感謝ッ!君が今日の会の発案者か?」

 

「俺というか、ここにいるみんなですかね?」

 

「最初に勉強会を提案したのはあたしよ。理事長さん。」

 

「ふむ。マルゼンスキーか。それに洋谷君もいるではないか。」

 

「ご無沙汰してます。理事長。」

 

流貴はここまでの経緯を説明する。

 

「ふむ。そうだったのか…その、足の方はもう大丈夫なのだろうか?」

 

「俺の今日の走りを見てもらえれば分かると思います。貴方達にとっても足の怪我が重大な出来事なのは分かりますが、あまり暗くならないで下さい。」

 

「うむ。失礼した。」

 

「ところで芥瀬さん。貴方は理事長の姿を見て驚かれないんですね。」

 

「貴方は?」

 

「理事長秘書の、駿川たづなです。よろしくお願いします。」

 

「よろしくお願いします。俺達の世界は、年齢だけで決まる世界じゃないもので。多くのドライバーは理事長さんぐらいか、場合によっては小学生の頃からカートでレースを始めます。」

 

「ふむ、なるほど。ウマ娘も子供の頃からクラブでレースをする者が多いな。それと同じような物か。」

 

「そうですね。ついでに言えばここ、サーキットは免許がなくても運転出来る場所です。」

 

「驚愕ッ!」

 

____

 

 

各メンバーの顔合わせと紹介が終わり、テスト走行を再開。アイルトンシンボリのフェラーリがコースイン。

 

ピットではシュガーライツからの相談にハンと吉室監督が対応し、バイクにカメラを取り付けていた。

 

「なるほど。バイクに小型のカメラを取り付け足回りとサスペンションの動きを見て、メカウマ娘の走りに生かしたいと。」

 

「ああ。頼めるだろうか?」

 

「了解しました。」

 

フロントのカウリングとリアのシートカウルそれぞれに、フロントフォークとスイングアームの動きが見えるようにカメラを設置する。

 

____

 

 

その頃、トレセン学園のバスは茨城県に入っていた。

 

(県境を越えて茨城県か。まさかな?)

 

石嶋はかつてよく行っていた筑波サーキットを思い出す。

 

(このNSXならどのぐらいのタイムが出るか?もし筑波に行くなら、交渉して走らせてもらいたいな。)

 

 

バスの車内では、

 

(ウマぺディア、芥瀬流貴。)

 

『中学生の頃からカートを始め、F4へのステップアップに挑むが資金難により断念。友人達の助けを借りてヨシムロレーシングに所属し2輪へと移る。』

 

(変わったヤツだな。まァ、そンだけ引き出しが多いって事かァ?)

 

エアシャカールが流貴の経歴をPCで調べていた。

 

『ライティングスタイルは後輪をスライドさせて車体の向きを変え、コーナーから素早く立ち上がるスタイルを得意とし予選でのタイムアタック等には強い。しかし吸水性が高いものの柔らかく減りの早いレインタイヤとは相性が悪く、雨のレースは苦手である。』

 

(どんなモンか見せて貰おうじゃねェか。)

 

____

 

 

各自走行テスト走行を終え自由時間。喫煙所で一服する流貴、江助、雨美。

 

「チューニングの確認だけど、ポート加工にノーマルタービンでいいのね?」

 

「はい。それで400~450馬力ぐらい出したいなと。」

 

「了解。内装色とかの注文はある?」

 

「メーター盤を後期型のホワイトにしてもらえますか?」

 

「マニアックなとこ突くねぇ。シートは?」

 

「ROCAREのフルバケを両脚。カラーはブラックで。」

 

「了解。」

 

細かいオーダー後、話題は過吸器へ。

 

「そういや、FDのタービンってどのメーカーでしたっけ?」

 

「確か日立だったと思うぞ。家電メーカーと名前が被ってるけど、実は違うというな(笑)」

 

「うん。今は日立アステモって社名になってるよ。」

 

「アステモ?確かスーパーGTにもホンダのスポンサーで出てますね。って事は母体はホンダ系の会社なんですか?」

 

「いや、実は母体はニッサン系なんだよね。」

 

「え?」「マジすか?」

 

「ユニシアジェックスって聞いた事ない?」

 

「確か全日本GT選手権時代にR33GT-Rのスポンサーに付いてましたね。あそこだったんですか。」

 

「そう。度々社名が変わったり市販車にパーツがあまり降りて来ないけど、レースで実績のあるメーカーだから、タービンをオーバホールしてブーストアップするだけでも結構速くなるよ。」

 

「オーバホールって、ツルシでもやった方が良いんですか?」

 

「そりゃあね。いくら実績のあるメーカーでも機械である以上は、どうしても個体差ってのはあるからさ。」

 

「なるほど。」

 

____

 

 

パドックでは、

 

「ルキくんの印象はどうかしら?理事長さん。」

 

「不思議な青年だな。人間でありながら、キミのように速いウマ娘と同じ雰囲気を感じる。」

 

「そうそう。物腰は柔らかいのに、奥に妙な迫力を感じるわよね。」

 

「確かに。ところで、彼がトレーナーを目指しているという噂を聞いたが本当か?」

 

「本当よ。色々とお勉強中みたいね。」

 

ちょうどそこに、一服から流貴達が戻って来る。

 

「芥瀬君、キミがトレーナーを目指しているという噂を聞いたが?」

 

「はい。ですが、今日は混乱を防ぐためにも伏せておいて下さい。」

 

「ふむ。了解ッ!」

 

「ちょうど色々勉強して頭へのインプットが増えた分、何処かでアウトプットして共有・反芻する機会が欲しかったんです。そこにマルゼンが講習会を提案してくれたので、それに乗りました。」

 

「流貴の口癖だったよな。情報は共有する事で復習も出来るってな。」

 

「そう。教える事でまた自分も教えられ、確認出来る。そうしないと古い情報から抜けて、忘れていくんだ。」

 

(ピコン♪)

 

「!。ルドルフさんからLANEが来ました。」

 

「よし。じゃあ準備だ。」

 

にわかにピットが騒がしくなる。

 

「理事長。まずは俺とアイルトンでレースをします。少し早めに出るのはタイヤを温めるためです。」

 

「なるほど。では私達も行こう。」

 

理事長達はヘリに乗り、空撮の準備に入る。

 

「芥瀬君。お客さんの入った合図はどうする?」

 

「グリーンフラッグでお願いします。」

 

「了解。」

 

コースインする2台。バトルが始まる。

 

 

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