コバルトブルー   作:RPM

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32:ゆこま温泉へ①

 

 

ウマ娘達を見送り、サーキット側も帰り支度を始める。

 

「公道用に戻さねぇとな。」

 

スープラとNSXを公道用に戻す江助と石嶋。

 

「何か手伝う事あるか?」

 

「いや。流貴、お前は休んどけ。」

 

「そうですよ。貴方は今、気を張っているから起きてるだけです。」

 

「すいませんね。」

 

各々準備が終わり、私服に着替え帰り始める。

 

(そういや、レーシングウェアの事は忘れてたな。講習で言う予定だったけど。まぁ、実際に着なきゃ分からないしな。)

 

「芥瀬君のYZFはウチで運んでおくよ。」

 

流貴の乗って来たバイクはヨシムロ側で運ぶ事になり、本人は助手席で運ばれる事になった。

 

「随分気を使われてるな。眠気は抜けたんだけど?」

 

「それは、ランナーズ・ハイのような物です。」

 

「疲れているのは、みんなもだと思いますが?」

 

「芥瀬君。今日貴方はバイクと車、両方で攻めましたからね。まだアドレナリンが抜けてないんでしょうが、その状態で運転させるのは危険と判断します。」

 

「じゃあ、あたしが運んで良いかしら?石嶋さん。」

 

「そうですね。マルゼン君にお願いします。」

 

「石嶋さんと、色々話したい事もあるけどね。」

 

「それはまた今度にしましょう。今日は自分も疲れましたし、とりあえずLANEの連絡先だけ交換しましょうか。」

 

「そうですね。ではまた。」

 

____

 

 

帰り道。

 

マルゼンスキーのカウンタックの助手席に、半ば押し込まれた流貴。

 

「お疲れ様。ルキくん。」

 

「悪いな。運んでもらっちゃって。飛ばすか?」

 

「今日はゆっくり流したいわね…ルキくん。貴方は人間の中ではタフな方だと思うけれど、この間まで病院に居たんだから、無茶しちゃダメよ?」

 

「キミは、俺のお袋か?」

 

「んもぅ。そこはせめてお姉さんって言って欲しいわねぇ。」

 

「ははっ。」

 

「今は休んで。トレーナーになったら、よろしくね。」

 

「気が早いな。まだ試験も受けてないのに。」

 

「でも、理事長さんも今日の貴方の功績は考えるはずよ。」 

 

「どうなんだかねぇ。」

 

「…ちょっと、寄り道していいかしら?夕焼けがキレイだもの。」

 

「ああ。そうだな。」

 

途中のサービスエリアに停め、缶コーヒーを買い、夕日を望む。

 

(…。)

 

缶コーヒー片手の夕日色。

 

____

 

 

夜。

 

流貴が下宿先の寺に帰る頃。

 

トレセン学園の栗東・美浦寮合同にて、理事長がヘリから空撮した走行会の映像や、クロノジェネシスが撮った写真を鑑賞するウマ娘達。

 

「やっぱりラインがバラバラなのに、タイムを揃えるのは簡単じゃねぇな。」

 

流貴の現役時代からのファンだったウオッカだが、今日は改めて懐の深さを思い知った。

 

「しかも、あの車初めて乗ったんでしょ?センスってレベルじゃないわね。」

 

するとそこに、メールの着信音。

 

「LANEじゃなくてメールって事は、マルゼンさん?」

 

スマホを見るライスシャワー。

 

「ひゃ!あわわわわ。ルキさん!?」

 

尻尾がピンと立ち、顔を真っ赤にするライス。

 

「どうした?」

 

「えっ。なになに?」

 

「見せて見せて!」

 

そこには、

『From:マルゼンスキー、

本文:ルキくんの寝顔ゲット♪』

 

カウンタックの助手席で眠る、流貴の写真が貼られていた。

 

「ホントに同じ人?」

 

「オフだとかわいいのね?」

 

「結構カッコいいじゃ~ん。」

 

「アタシにも送ってくれよ!」

 

画面の中で見せる超人的な走りと、寝顔のギャップを面白がるウマ娘達。

 

____

 

 

その頃、そんな事を知る由も無い流貴本人は。

 

「へっくし!」

 

寝る前の一服を吸いながら、くしゃみをしていた。

 

「…今日は色々大きく動いたからか、誰か噂してんのかねぇ?風邪引く前に寝よ。」

 

 

数日後。

 

流貴が筑波1分切りの目標を達成した事で、FDが完成するまでの間借りるRF雨美のデモカーが運ばれてくる。

 

RF雨美 GRD9ストリートバージョン

 

エンジン:水冷直列2ローターターボ

排気量:654×2cc

出力:430馬力

車両重量:1230kg

 

FD3Sブーストアップ仕様。サーキット専用のパーツを使わず、市販しているパーツのみで構成された乗りやすさ重視のストリートバージョン。

 

カーステレオやエアコン等の快適装備を残しつつも、ノーマルよりも40kgほど軽量化されている。

 

グリーンのボディカラー。カーボンボンネット、フォグランプ付きのフロントバンパー、フェンダーミラー等が特徴的。

 

乗りやすさ重視の車であるが「ドリフトキング」の愛称を持つベテランにより筑波59秒台を記録。

 

「まずはこの仕様でロータリーターボを覚えてちょうだい。好きでも実際に乗るのは違うだろうし、ターボ車は初めてでしょ?」

 

「ありがとうございます。」

 

「同じ430馬力でも、だいぶ乗りやすいと思うよ。」

 

するとそこに、

 

「「「「「エッホ、エッホ。」」」」」

 

ロードワークをしているチームスピカが来る。

 

「おっと。じゃあ届けたし、俺は帰るね。」

 

「はい。ではまた。」

 

トレーラーに乗り、帰る雨美を見送る。

 

「よう。芥瀬、疲れは抜けたか?」

 

「ルキちゃん。調子はどう?」

 

まず話しかけてきたのは沖野とテイオー。

 

「まあまあですかね。」

 

「んじゃ1つ提案だ。スズカの湯治に行こうと思ってた温泉があってな。ゆこま温泉ってんだが、行ってみたらどうだ?」

 

「温泉ですか?」

 

「お前も骨折明けだし、良いと思うんだがな。」

 

そこに住職の結人が来る。

 

「行かれてみては、いかがでしょうか?芥瀬君。」

 

「どうしようかなぁ。」

 

「トレーナー試験に向けて色々詰め込み中だとは思うが、一回リセットすんのも手だぞ。」

 

「そうですね。人間高みを見ている時も、意外と視野が狭くなる物ですから。」

 

「…そうだな。坊さんが言うと説得力あるわぁ。」

 

そこでゴルシが、

 

「なぁなぁ住職!木魚叩かせてくれよ!」

 

「分かりました。皆さんも上がっていかれては?」

 

「そうだね~。」

 

「失礼いたしますわ。」

 

テイオーとマックイーンが同意し、お寺で休憩する事になった。

 

「さて、芥瀬君。少し手伝っていただけますか?」

 

「は?」

 

言われるまま付いていくと、そこには山盛りの饅頭と和菓子があった。

 

「こちらを運ぶのを、お願いいたします。」

 

「えぇ…りょ、了解。」(アイツらどんだけ食うんだよ?)

 

お菓子とリットル単位のお茶を運び終え、ウマ娘達が囲むテーブルの隅に座る。

 

(ポクポクポクポク…。)

 

(バクバクバクバク…。)

 

ゴルシの叩く木魚と、スペとマックイーンが和菓子を平らげる音の中。

 

「ふう。」

 

「ルキちゃんありがとね。あ、そうだ。」

 

「ん?」

 

「寝顔かわいいね~。」

 

「は?」

 

「これっすよ。」

 

ウオッカがマルゼンスキーからライスに送られ、さらに送られてきた写真を見せる。

 

「撮られてたのかよ…。」

 

「お陰で芥瀬さん学園で大人気っすよ。」

 

「意外と俗っぽいなキミら?」

 

結人が補足する。

 

「ウマ娘の皆さんも、レースを離れれば年頃の女の子ですからねぇ。」

 

「ふて寝したろか。」

 

「で、温泉はどうすんだ?」

 

「行きましょう。みんなも来るのか?」

 

「アタシ達は行きません。芥瀬さんに休んでもらうのが目的ですから。ただし、ちゃんと休んで下さいね?」

 

ダイワスカーレットから顔に指を突き付けられ、ちゃんと休むように釘を刺される。

 

「ホントはお目付け役に誰か一緒に行こうかと思ってたんだが、ゆこま温泉の女将は元トレーナーでな。お前の疲れも見抜くだろうよ。」

 

「ルキちゃん結構無茶するからね~。」

 

「まぁ。レーサー上がりだから常人よりはタフなんだろうが、退院して半月でサーキット攻めるのは普通じゃねぇよ。」

 

「了解しました。まぁ、頭ほぐしに行ってきますよ。」

 

 

夜。

 

スピカメンバーも帰り静かになったお寺。温泉への旅行に向けて着替え等を準備しながら話す。

 

「最近大きく動きましたが、こちらへの世界へ転生した理由は、見つかりましたか?」

 

「まだ分かんないな。いっそのこと見つけるんじゃなくて、作った方が良いのかね?」

 

「トレーナーになる事で、居場所を作ると?」

 

「ああ。こっちの世界の三女神とやらが何を考えてるか分からんが。レース馬鹿の俺に出来るのは、レーサーに戻るかトレーナーに進むか。結局は行くか戻るかの2択だろうな。」

 

「貴方がどのような道を選んでも、私は見守りますよ。」

 

「ああ。まぁ、な。」

 

 

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