コバルトブルー   作:RPM

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38:補完とロケテスト①

 

 

ゆこま温泉からの帰り道。峠を降りて街に戻り出した辺り。

 

スマホの通知が鳴る。

 

「この音は確か、ウマッターの通知か。やけに鳴るな?」

 

一回なら気にしないが、連続して鳴ったため適当なコンビニに車を止めて確認する。

 

「お。ラヴズオンリーユーから、フォローとリプライか。」

 

筑波走行回のアーカイブ動画を、走っていた本人がウマいね。した事に気が付いたようだ。

 

『芥瀬さん。ウマいね、ありがとう。まさか本人から頂けるとは思わなかったわ♡』

『いえいえ、こちらこそ。自分の運転見返すのにちょうど良い。』

『でも、なかなか難しいわね。タイムを揃えるヒントはなんとなく分かるけど。』

『簡単に真似されたら、レーサーの商売上がったりだよ(笑)あと、いきなりラインずらしからやろうとするなよ?』

『分かってるわ。でも何人か勘違いしてる子もいるみたいね。』

 

少し考える流貴。

 

『あの時は、疲れててちょっと言葉足らずなところもあった。また説明出来る機会があれば良いんだが…。』

『それなら、見学者として来ればいいんじゃない?理事長さんも貴方の事は評価してたし、申請もすぐ通ると思うわ。』

『なるほどね。じゃあ近いうちに。』

 

ウマいね。が返ってくるのを確認し、スマホを閉じる。

 

「また用事が出来たか…まぁ。とりあえず、帰ろうか。」

 

____

 

 

ゆっくり流しつつ、お寺へ帰る。

 

「ん?あの車は確か。」

 

すると、駐車場に演愚麗舞メンバーが勢揃いしていた。

 

「よう。久しぶり。」

 

「おう。お帰り。」

 

「お帰りなさい。」

 

「お帰りー。」

 

「ただいま。今日は何の集会?」

 

「ちょっと芥瀬に頼みたい事があってな。中で話したい。」

 

「了解。ちょうど温泉のお土産あるから、おやつ食いながら聞こうか。」

 

中へ入り結人が緑茶を淹れ、温泉饅頭を食べながら話を聞く。

 

「あのFDの音を撮らせてくれないか?」

 

「音?」

 

光良が予想外の事を言う。

 

「ああ。トレセン学園へのVR設置だが、とりあえず数日後にロケテストって形でまずは仮設置をしたい。」

 

「なるほど。実車からちゃんと音を撮りたいって訳ね。でもどこでやるの?車も借り物だし。」

 

「その辺はもう交渉済みだ。シャーシダイナモを使わせて貰うショップと、雨さんにも許可を取ってある。」

 

「仕事早いな。まぁ根回し出来てんなら、俺は踏むだけだ。で、コンちゃんは?」

 

「俺もそのショップに用があるのよ。車が出来上がったんで、取りに行くんだ。」

 

「なるほどね。もしかして予約は今日?」

 

「よく分かるな。筑波での件も聞いたし、お疲れのところ悪いが頼むよ。」

 

「まぁ、温泉で充分休めたよ。んじゃおやつ食べたら行こうか。」

 

____

 

 

光良のR33に先導されながら付いていく。助手席には晴一。

 

「そういやコンちゃん、車は何買ったの?」

 

「そりゃー着いてからのお楽しみだよ。まぁ、FDと雰囲気は近いかな?」

 

「楽しみにしとくよ(笑)」

 

そして着いたのは、JUMオートメカニクス。

 

「俺は機材の準備するから、ちょっと待っててくれ。」

 

光良は録音の準備に行き、JUMのスタッフ達に挨拶する流貴。すると…。

 

「やぁ、芥瀬君。温泉は楽しめたかい?」

 

「雨さん、どうしてここに!?」

 

「どうしてって。そりゃ、ウチのクルマのテストだからね。」

 

「あと、何で温泉行ったの知ってるんですか?」

 

「アンタねぇ…最近は年寄りもインターネットやるんだから。その年で遅れてるのは、ちょっとマズいんじゃないの?」

 

「うぐ…。」

 

「まぁいいや。あとブルーのFD見つけたから、明日取りに行ってウチと反幕君で作り始めるよ。」

 

「なんか急ですね?」

 

「もうすぐ年度末だから、工具を校正に出さなきゃなのよ。その間は作業が出来ないから、今溜まってる依頼はどんどんやってくよ。」

 

「ありがとうございます。じゃあ見積りは作業後で?」

 

「普通逆なんだけど、反幕君も仕事溜まってるみたいだし。俺も収録見たら帰んないとね。」

 

「わかりました。」

 

録音機材の準備が終わり、FDをシャーシダイナモに運ぶ。

 

「車内にもマイクを1個置かせてくれ。」

 

「あ。そっか、VRだと内装視点がメインになるからか。」

 

「そうだ。あとこれ台本な。」

 

「台本?」

 

渡されたバインダーを見ると、 

 

・イグニッション音

 

・シフトアップ/ダウン音

 

・ヒール&トゥ音

 

・エンジンブレーキ音

 

「なるほどね。場面ごとに撮って編集するのか。」

 

「そうそう。とりあえず回りの作業が止まってからじゃないと雑音入るから、メカニックが昼休憩入ったら撮ろうぜ。」

 

「んじゃ、その間にコンちゃんの車見せて貰おうかな。」

 

「あっちの作業場みたいだな。」

 

「よう。来たか。」

 

そこには、JUMオートのショップカラーであるイエローとブラックのツートンにペイントされた車両。

 

「これは86…いやBRZか?」

 

「BRZの方だな。」

 

「しかしなんじゃこりゃ?8気筒?」

 

エンジン上部に8つ吸気エアファンネルが並び、普通のエンジンではない事が分かる。

 

「音を聞けば分かるかな?」

 

(キャルルルルル…ウォン!)

 

JUMオートメカニクス スバルBRZ ZC6

 

エンジン:水冷V型8気筒DOHC自然吸気

排気量:2397cc

出力:370馬力

車両重量:1200kg

ギア:6速

 

「まさかこれは…バイクの音?」

 

「ああ。カワサキニンジャのエンジンを2基合体させたV8エンジンだ。」

 

「マジかよ…って事は結構回りそうなエンジンだな。」

 

「レッドゾーンは11000rpmだけど、10000ぐらいでシフトアップした方が良さそうかな。」

 

「これは首都高?それともドリフト用か?」

 

「ある程度どっちにも対応出来ると思う。少しフロントが重い方がドリフトには向いてるんだ。前を軸に車体を回すからな。」

 

「なるほどね。」

 

「まぁ。それ以上にコイツは音で選んでるけどな。音もパフォーマンスの一つだと俺は思ってる。」

 

「確かに音も大事だよねぇ。で、パワーはどれぐらい?」

 

「370馬力ぐらいかな。元がバイク用のNAって考えたら十分な数値だろう。」

 

「楽しそうな車だなぁ。」

 

そうこうしている内に、

 

『キーンコーンカーンコーン。』

 

「お。昼休憩のチャイムだな。」

 

「よし。じゃあ収録を始めようか。」

 

 

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