コバルトブルー   作:RPM

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40:招待と適正

 

 

ロケテスト前夜、お寺。

 

「いよいよ貴方が、トレセン学園にお邪魔する事になりましたか。」

 

「まぁ。ひょんな事からっていうか、色々動いた結果が返ってきたというか。」

 

「そうですね。進むべき道とまでは言いませんが、間違いではなかったのでしょう。」

 

「かもね。ところでワラちゃん、女神様へのお布施は5円で良いのかねぇ?」

 

「はて?お賽銭の事ですかな?」

 

「ああ。トレセン学園の三女神像がある噴水にコインを入れるって話を聞いたからさ。居場所を作る手間は出来たけど。まぁ、一応感謝はしてるんでね。」

 

「なるほど…そうですね、5円が一番無難でしょう。なお10円は読み方を変えると"とうえん"になり、縁が遠くなるとも言われております。」

 

「なんかダジャレみたいだけど(笑)俺も妙なゲン担ぎしてるし、似たようなモンか。」

 

「ええ。ちょうどもうすぐ受験シーズンですし、貴方もトレーナー試験が迫っている。神社へ行かれてお守りでも買われますか?」

 

「俺達の場合は、まず交通安全のを買った方が良い気がするけどねぇ。」

 

「返す言葉も御座いません(笑)」

 

「はっはっはっ。」

 

____

 

 

翌朝。

 

流貴がトレセン学園へ向かう準備をしている所に、宅配便が届く。

 

「お。届いたか。」

 

「おや?ゆこま温泉のお土産でしょうか?」 

 

「そう。一応スピカの子達用にね。温泉で色々気付きもあったしな。」

 

「なるほど。では茶葉も買い足しておきましょう。」

 

「俺はここに住んで1ヶ月ぐらいだけど、ロードワーク中のパーキングみたいになってるしな。」

 

「ええ。ウマ娘の皆さんも、来月からの新年度に向けて走り込みを増やすと思いますし。レース前に座禅を組みに来られる方もいますから。」

 

「なるほどね。んじゃ、そろそろ行こうか。」

 

「では、お気をつけて。」

 

 

トレセン学園へ到着。正門前で光良と合流し、たづなさんに出迎えられる。

 

「皆様、ようこそいらっしゃいました。」

 

たづなさんを助手席に乗せ、トレーナー達の住む寮に隣接した職員用の駐車場に案内してもらう。

 

「結構広い駐車場ですね。」

 

「はい。トレーナーだけでなくスタッフや教員等もいますので。」

 

「なるほど。結構立派な寮ですね。」

 

「後でお部屋も見られますか?」

 

「差し支えなければ、お願いします。」

 

車を降りて、駐車場の隅に停められたホワイトのSA22Cに気付く。

 

「ん?あれは…。」

 

「初代RX-7か。古い車だけど、眠らせてる感じじゃないな。」

 

「たづなさん。この車がもしかして、所納参トレーナーの車ですか?」

 

「はい、そうです。彼とお知り合いですか?」

 

「いえ。この間ゆこま温泉に行って、女将さんから色々聞いたので。」

 

「そうだったんですね。」

 

「この傷は…結構ガチで走ってるな。」

 

フロントバンパーには飛び石の傷、丸くなったタイヤの角、汚れたホイール。

 

「傷で分かるんですか?私はもう少しキレイにしても良いと思うのですが…。」

 

「うーん…そうですねぇ。ウマ娘の勝負服も走れば汚れますし、傷は走って来た者の勲章という考え方もあります。」

 

マルゼンスキーのカウンタックも見ていく。

 

「派手なカラーに目が行くが、こっちも中々よく見ると…。」

 

「ツヤはキレイに出てるけど、バンパーはやられてるな。」

 

レッド系の塗料は紫外線による色褪せが起きやすいため、保護のコーティングがされているようだが、フロント周りはやはり傷が見える。

 

「…おっと。つい見ちまったが、そろそろ行こうか。」

 

「たづなさん。挨拶回りに行きたいんですが、今トレーナーさん達は?」

 

「トレーナーさん達は会議中で、理事長もまだ寝ています。まずはカフェテリアで朝食でも取られてはどうでしょう?」

 

「まぁ。確かに理事長といっても子供ですから、しっかり寝ないとですよね。じゃあ、三女神様にお参りして。朝メシ行きますか。」

 

「では、中央広場までご案内します。」

 

三女神像前に着き、たづなさんから入校許可証を受け取る。

 

「では、カフェテリアはあちらになります。また、校舎の一回に購買もあります。ごゆっくりどうぞ。」

 

「たづなさんは?」

 

「理事長を起こしてきます。」

 

「了解しました。」

 

たづなさんを見送り、三女神像に向き直る。

 

「こういうのも、二礼二拍一礼やるのかな?」

 

「神社じゃないからな…。しかし相変わらず変な所で礼儀正しいなアンタ。」

 

「そうか?まぁ、お布施してお参りしますか。」

 

「そうだな。」

 

(チャリーン。)

 

(…アンタらが何を求めて俺を呼んだのかは知らねぇが、勝手に居場所は作らしてもらう。とりあえず、ありがとうよ。)

 

「さて、メシ行くか。」

 

「ああ。」

 

____

 

 

流貴達がカフェテリアに入る頃、会議室。

 

「理事長は認めているようだが、芥瀬流貴君のトレーナー適正はどうなのだろうか?」

 

理事長から流貴がウマ娘トレーナーを目指している話が広まり、彼の適正について話し合いが行われていた。

 

ベテラントレーナーが音頭を取り、他のトレーナー達に質問していく。

 

「まずは沖野。彼とは担当のスズカが同じ病院だったらしいな?」

 

「ああ。芥瀬はスズカが骨折して、俺達がメディア対応に追われている間、話し相手になってくれていたんだ。メンタルケアの面は問題ないと思う。」

 

「なるほど。ではトレーニング面はどうだろう?彼は限界の手前で止めてケガを防ぐと言っていたが、肝心の彼自身が無茶をしているようにも見えた。」

 

「それに関しては俺が答えよう。」

 

「分かった、所納参トレーナー。彼とは知り合いなのか?」

 

「芥瀬君とは直接会ってはいないが…彼が所属し、この間筑波サーキットでのイベントを主催したヨシムロレーシングとは、昔から付き合いがある。」

 

「ほう。」

 

所納参は家族でレーシングチームを経営してきた、吉室家について話す。初代監督の孫である聖人の事故死、流貴が聖人の分まで走ると言いMotoGPで走って来た事…。

 

「あの若さでそこまで……。」

 

「確かに彼は、ある種の贖罪から無茶をしているようにも見えるが。筑波の後、ゆこま温泉へ沖野が行かせ、ある程度は落ち着いたと言う。保科女将からの伝言だ。」

 

「うーむ……。仲間の死と夢を背負い、限界を知っているからこそ、担当を大事に出来る。という見方も出来るか。」

 

「あとは今日、芥瀬君がゲーム、VRを通してどのような指導をするか。見てから決めてもいいんじゃないか?」

 

「…そうだな。」

 

____

 

 

朝食を終えた流貴達。

 

「挨拶回りに行こうかと思ったが。なんだかみんな忙しそうだし、体育館で待った方が良さそうだな。」

 

「ああ。一応半日時間はあるが、みんなが来るまでに色々しなきゃだからな。」

 

「何をどうするのかは分かんねぇけど、俺は何をすれば良いんだ?」

 

「まずはハーネスの接続・接触を確認して、通信対戦の電波状況を見る、あとはバグチェックもする。とりあえず接続確認の後は普通にゲーセン感覚で遊んでみてくれ。」

 

「了解。」

 

ロケテストが、始まる。

 

 

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