「そういえば、雨さんってその東名レースの頃は何乗ってましたか?」
「FCだね。真っ赤でフェラーリテスタロッサみたいなワイドボディの。」
「何回かカー雑誌にも載ってましたね。ポルシェ928みたいな丸いリトラのヤツですよね。」
「そう、その個体だ。エンジンは20Bにターボを組んで500馬力だとか。東名レースで300km越えを記録した数少ない内の1人だよ。今でも時々湾岸線に現れるらしいね。」
「ひえぇ。相変わらず、あの爺さん何考えてるんだか(笑)」
「いやいや。芥瀬君も将来ああなりそうだから、人の事言えないよ?」
「否定出来ませんね(笑)」
笑い合いながら移動し、体育館へ着く。
「ウマ娘のみんなはお昼かな?とりあえず電源入れて準備しようか。」
筐体の電源を入れる光良。
「そういえば、プレイデータの記録はどうするんだ?」
「良い所に気が付いたな。今回はカード以外の方法で考えてる。」
「ん?何で?」
「車の性能は固定だからな。記録するのはラップタイムと隠し車両の解放。あとはセッティングデータか。」
「そう考えると、改造を進めるゲームよりはデータが少ないか。」
「そうだな。あとはカードは紛失のリスクもあるし、何かしら個人を認証する装置を入れたい。」
「確かに、その方が確実だな。」
話していると、理事長とたづなさんが体育館へ来る。
「うむ。改めて歓迎しよう!芥瀬君と猛元君!」
「どうも、ありがとうございます。」
「よろしくお願いします。」
そうこうしていると、生徒達が体育館へやって来る。
「こんにちはー。」
「こんにちは。よろしく。」
数分後。
「うむ。だいぶ集まったようだな。」
するとそこに。
「アクタセサーーーン!!!」(ドドドドド)
「……来たか、タイキ。」
ウオッカに予告されていた事もあり、腰を少し落とし受け止める構えをする。
(ドーーーン!……ズルズル)
なんとか受け止めるが、少し後ろに引き摺られる。
「おおー。がっぷり四つだね☆。」
「素晴らしいです。ナイスマッスル!」
ヒシアケボノとメジロライアンが流貴の丈夫さに感心していると…。
「た わ け が!!!」
エアグルーヴがタイキに注意し、流貴からタイキを剥がす。
「全く。いつも不用意なハグは控えろと言っているだろうが!」
「Oh。申し訳ないデース。」
「大丈夫か?」
「まぁ、事故の衝撃よりはマシだ。急に衝突実験になったがな(笑)」
コキコキと関節を鳴らしつつ応じる流貴。
「しかし、驚かないのか?」
「ハグは海外じゃ普通だし慣れたよ。あと、警告は事前にウオッカからされてたからな。」
話を振られて困惑するウオッカ。
「いやぁ…はは。吹っ飛ばされると思ったんすけど、やっぱり芥瀬さん頑丈っすねぇ。」
「おいおいウオッカ。これぐらい頑丈じゃないとバイクは振り回せねぇぞ?それに体幹はウマ娘のレースでも大事だろ。」
「体幹っすか…。」
「インナーマッスルとも言うかな?見た目じゃ分かりにくいけど、寝る前の暇なちょっとした時間に片足立ちするとか。簡単な事でも変わってくるモンだぜ。」
「芥瀬さんが退院してすぐにハヤブサを振り回せたのも、そういうトレーニングをしてたからなんすか?」
「ああ。リハビリと一緒に半分は暇潰しも兼ねてな。」
(ざわ…ざわ…)
(真面目な人ね)
(面倒臭いわね)
流貴の地道な話にざわつく周囲。
\…パンッ/
それを流貴は手を叩いて締める。
「さて、色々聞きてぇ事もあるだろうけどよ。後で質疑応答と講習会をやる。筑波で言いそびれた事もあるし。まずは先にひとっ走りして、俺の目標を回収させてもらうぜ。」
「え?あの時でも充分速かったんすけど、まだ何かあるんすか?」
「ああ。Super NA-7のショップ側の記録は55秒台だからな。今日はそこに入れる。」
「マジっすか…。」
「あと、ラインずらしから真似してる子が居るみたいだけど順序が逆だ。先にタイムを揃える走りが出来た上でのラインずらしだからな。」
そして流貴は筐体に座りシートポジションを合わせ、スタートボタンを押しゲームを始める。
「んじゃいくぜ、タケちゃん。」
「OK…ん?誰も隣来ないのか?ドライバー視点を共有出来るぞ。」
光良がモニターを共有モードへ設定しながら聞く。
「そうねぇ。あたしは元々助手席が苦手なんだけど、ルキくんの隣は特にご遠慮したいわねぇ。」
「へぇ。自分で操作出来ないと気持ち悪くなっちゃう感じか?」
「そうだけど、どうして分かるの?」
「自分で操作してリズムを作るのは好きだけど、勝手に動くのは嫌いってのは結構居るからな。運転は好きだけど、絶叫マシンが苦手なのと同じ理屈だな。」
「なるへそ。って事はルキくんもジェットコースター嫌いかしら?」
「ご想像にお任せします(笑)」
((((おっと?意外な弱点発見?))))
「まぁ、適当に見ててくれ。」
「なんかユルいわねぇ?」
「そりゃ、ゲームはやらかしても死なないからな(笑)」
「アッサリと怖い事言うんじゃないよアンタは。」
光良が突っ込みを入れつつ、ゲームはカーセレクトへ。
「ルキくんが筑波で乗ったセブンちゃんの性能って、どうだったのかしら?」
「アレは普通のFDじゃないからなぁ。タイムアタック用に仕立て直したGT車両なんだ。」
「なるへそ。どうりで速いと思ったわ。」
「このゲームだったらGT2クラスに相当するか。」
そしてGT2クラスからトムススープラを選び、セッティングに入る。
「あら、ルキくんがスーちゃんに乗るのね。」
「まぁ。乗ってみたかったのもあるし、ターボ車のフィーリングに慣れたいからな。」
「それにしてもGT選手権の車って軽いわよねぇ。スーちゃんが1100kgってどうなってるのかしら?」
表示されたスペックを見てマルゼンが驚く。
「ボディの素材が違うからなぁ。形は市販車に似せてるけど…そういう話も後でしようか。」
「了解したわ。セッティングはどうするの?」
「筑波は意外と高低差あるからな。足周りは柔らかめで、ギアは加速重視か。スピードで合わせられるのは便利だな。」
トップスピードを230kmに合わせ、ファイナルギアをセッティングする流貴。
「よし。これで行ってみようか。」
「少し高めのスピードにセットしたわね?」
「最高速はギア比だけじゃ決まらないからな。ダウンフォースとエアロの抵抗も加味するとこれぐらいが良いと思う。」
「なるへそ。」
ダウンフォースと外装のセッティングに移る。
「エアロセット完了、カラーリングは3パターンか?」
そこには、オイルメーカーの白地に赤と緑のペイントが入ったお馴染みのカラーや電装メーカーの紅白カラー、そしてBPR選手権にスポット参戦した紅白三角のタバコカラーが入っていた。
(さすがにタバコのロゴはバーコードだよな。)
マニアックなカラーリングにニヤリとしつつ、タバコカラーを選択。
「さて、走る前にタケちゃん。開発者目線でコイツはどんな感じよ?」
「そうだな。レースカーは乗って確かめられないから、メーカーへの取材で出た開発者やドライバーのコメントを基に挙動を作ってる。」
「なるほど。で?やっぱりスープラはアンダーな感じ?」
「基本的には弱アンダーな特性までは変わらないが、ここまで大改造と軽量化をされた車では、攻め込んでいくと今度はホイールベースの短さからオーバーステアが出る。気を付けろ。」
「何ミリだったっけ?」
「2550mm。NSXとほぼ同じなんだ。」
「なるほど……つまり、ちゃんときっかけ作って曲げていければ、メリハリのある走りが出来るってワケか。」
「まぁ。能書きはこのぐらいにして、そろそろ見せてくれよ。ギャラリーもお待ちだぜ?」
「了解。んじゃ、行くぜ。」