コバルトブルー   作:RPM

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05:再会と奇策

 

 

深夜、流貴の病室。

 

(どれが良いんだろうな?)

 

昼寝し過ぎて眠れないためUmazonでトレーナー試験の過去問題集や、試験対策のドリル等を身繕っている。

 

(とりあえずレビューの評判が良いヤツを、まとめて何冊か買っとくか。)

 

受け取りを近くのコンビニに指定し購入する。

 

(あとはクルマも探さなきゃな。)

 

流貴はロータリーマシンが好きであり現役時代もゼッケンを55にしていた。

 

マツダ伝説のレーシングカー「787B」のオマージュである。

 

(とりあえず年式の新しい固体で後期型。あとは距離と修復歴か?)

 

(メーターは巻いてる可能性もあるか?最近の中古車ってどうなんだかねぇ。)

 

車種はマツダRX-7、FD3Sの後期。

 

年式を2000年以降、走行距離5万キロ以下、MT、カラーはブルーで検索する。

 

(だいたい400~700万が相場で他は応談か。)

 

FDもそろそろ旧車に属するクルマとなり、相場よりも価格が高騰していた。

 

(確か新車が500万ぐらいって考えたらまぁ、エンジンの価値込みで妥当な所かね。)

 

するとその時、2台のエキゾーストが聞こえて来る。

 

(走り屋か?昔に比べたら減ったよな。あれ?こっちに近づいて来る?)

 

エキゾーストが病院の近くで止まり、スマホにLANEが届く。

 

『よう、起きてるか?』

 

『起きてるけど、アンタかいなΣヽ(゚∀゚;)』

 

『夜中に失礼、出れるか?』

 

『しょうがねぇなぁ┐(´∀`)┌』

 

やりとりを終了して、外へ向かう。

 

(正面は開いてなさそうだから裏から出るか。)

 

裏口から出て駐車場に向かうとスープラとカウンタックが停まっていた。

 

「久しぶりだな、流貴。」

 

「何時だと思ってんのよ全く。」

 

言葉とは裏腹に嬉しそうな流貴。

 

「あら?アナタは確か?」

 

「ん?俺を知ってるのか?」

 

「えぇ。バブリーランドで何回か見てるわ。

スタッフさんだったのかしら?」

 

「そういやマルゼンは常連か。流貴はウェイターとDJやってたんだ。」

 

「そうだったのね。」

 

(バブリーランド?こっちの世界ではそういう名前なのか。)

 

流貴は下積み時代。時給の良さと音楽好きからディスコで働いていた。

 

それがウマ娘の世界では「バブリーランド」というらしい。

 

(ココはノリを合わせて…)「また懐かしい話だな。」

 

「また退院したらあのDJプレイが見たいな。ブース借りれんだろ?」

 

「そいつはどーも。体が覚えてりゃ良いがね。」

 

「マルゼンはお立ち台で踊って回りを沸かせるのが得意だけど、流貴のDJも負けてなかったよ。」

 

「あら、楽しみね。」

 

「流貴は何処でもギャラリーを沸かせるのが上手いんだ。ステージでもサーキットでもな。」

 

「え?サーキットってまさか?」

 

「流貴は本物のプロだ。2輪だったけどな。その前にはカートも経験してる。」

 

「初めまして、芥瀬流貴だ。よろしく。」

 

「ありがとう、私はマルゼンスキー。」

 

「ああ、雑誌の方で見させて貰った。

結構ヤンチャな運転してるって?」

 

「おいおい。お前も人の事言えないだろ。」

 

「まぁね(笑)」

 

「さて、二人を会わせた理由は色々あるけどまずは直近の問題を片付けなきゃな。」

 

「パパラッチの件だな。」

 

「ああ。」

 

そうして考えた作戦を話す江助。

 

「まずは学園に話を通すのが先だけど、上手く仕事を使って追い払うにはこんな方法しか思い付かなかった。」

 

「まぁ、とりあえずやってみようぜ。」

 

「流貴はウマッターで呟いてくれ。タイミングはこっちで合図する。」

 

「了解。」

 

「あら、彼も巻き込むのね?ルキくんって呼んでいいかしら?」

 

「好きに呼んでくれ。」

 

「ああ。一応外部の人間からも、発信があった方が良いと思う。」

 

「外部からの拡散役って訳ね。俺のフォロワー数で足りるかねぇ?」

 

「おいおい、お前も一応有名人だろうが。」

 

流貴もインフルエンサーとまではいかないまでも元国際レーシングライダー。一部では名の知れたアスリートでありファンのフォロワーはそれ相応に居る。

 

「色々と話したい事もあるけど時間も時間だからな。」

 

「今度はマトモな時間に来てくれよ。」

 

「ああ、またな。」

 

「バイビー♪ルキくん。」

 

 

____

 

 

週明け、トレセン学園生徒会室。

 

午前の授業が終わりマルゼンスキーからシンボリルドルフに江助の提案が知らされ、生徒会室には生徒会メンバーと寮長が集まる。

 

「偽の情報を流すというのは気が引けるが…嘘も方便というヤツかな。」

 

「あまり私情を持ち込みたくはありませんが、スズカとは個人的に親しくしていますし早く会いに行きたいのも確かですが…。」

 

「ワタシはどっちでも良いが、ロードワークの出入りに気を遣うのがな。」

 

「ウマ娘同士ならタイマンで決着を付ける所だけど、人間相手には出来ないからねぇ。」

 

「イタズラが過ぎる気もするけど、ポニーちゃん達のために一肌脱ぐよ。」

 

「わかったわ。そろそろジャージ屋くんも来るかしら?」

 

するとちょうど、マルゼンスキーのガラケーに着信。

 

『ハァイ♪ジャージ屋くん。』

 

『話の方は進んでいるか?』

 

『だいたいみんな賛成みたいよ。』

 

『そうか、今どこに居るんだ?』

 

『生徒会室よ。メンバーも揃ってるわ。』

 

「マルゼンスキー。ちょっと良いかな?」

 

『ルドルフが話したいみたいよ。』

 

『了解。』

 

マルゼンスキーから、ルドルフに電話が変わる。

 

『実際に話すのは初めてかな?生徒会長。シンボリルドルフだ。いつも世話になっている。』

 

『こちらこそ、お話出来て光栄だ。トレセンは大事なお客さんだ。』

 

『今は学園全体がピリついていて、あまり一般の方を入れるべきではないが、直接話を聞かせて貰いたい。』

 

『了解だ。だけど、道案内を頼めるか?中に入るのは初めてなモンでね。』

 

『ああ、わかった。』

 

江助はマルゼンスキーの道案内で入校許可を取り、生徒会室に向かう。

 

道中出会ったウマ娘達に不思議がられるが名刺を渡し、会長と仕事の話をしに来たという事で納得して貰う。

 

 

名刺、

『WINNING MUSUME

営業・販売部 洋谷江助』

 

「俺はこういうモンだ。ウチのジャージ使ってくれてありがとね。これからもご贔屓に。よろしく(*ゝω・*)」

 

「「「はーい!!!」」」

 

「あら、営業トークも出来るのね?」

 

「おいこらバカにしてんのか(笑)これでも一応大人なんだから。」

 

 

そして生徒会室に到着。名刺を配り、お互いに自己紹介と挨拶をする。

 

「初めまして。マルゼンスキーから色々話は聞いている。クルマのレース仲間でもあるそうだな。」

 

「ああ、よく一緒に走ってる。寮長以外は会うのは初めてかな?洋谷だ。よろしく頼む。」

 

「よろしく。」

 

「ああ。」

 

「そうだな。」

 

「さて、洋谷君。まず私達がおかれている状況だが。」

 

「もちろん把握してる。搬入の仕事の邪魔にもなってるからな。」

 

「ふむ。そうか…学園内にスズカ本人が居るならまだしも、何故こんな状況になっているのだろうか?」

 

「他にやり方を知らないから。かな。大方チームメンバーやトレーナー、あとは個人的に親交の深い娘から何か情報を引き出したいんだろう。あくまで推測だけどな。」

 

「病院の方には行かないのかな?」

 

「行ったところで本人には会えないだろうし、基本面会出来るのは、身内や親しい者だけだ。」

 

「なるほど。確かに。」

 

「医者も守秘義務があるだろうし。まだ秋天から半月ぐらいだ。骨の経過には個人差も大きいだろうしリハビリや復帰どうこうなんてのは、もっと先の話になるからな。」

 

「「「………」」」

 

「今は本来、お互い待つべき時なんだけど。あのテの連中は功を急ぎ過ぎる。何かしら記事を作る必要があるんだろう。そしてこういう混乱時はデマも飛び交う。」

 

「それで例の提案、か。」

 

「別にそれじゃなくても話題がジャパンカップや有馬に移るまで、パパラッチを引き剥がせれば良いんだ。」

 

「しかし、騒動の納め方はどうするんだ?警備に迷惑をかけ続ける訳にもいくまい。」

 

「そうだな。頃合いを見てSNSで『業者に汚れ物を回収されていたのを体操着泥棒と勘違いしていた』とでも言うか。今はみんな疑心暗鬼になってる状態だし、通らなくはないんじゃないか?」

 

「ふむ、納得出来ない部分もあるが、私達には考え得ない事ではある。検討してみようと思う。」

 

「俺に出来るのは仕入れの量を増やすだけたがな。言い出しっぺが申し訳ないが。」

 

「それは仕方のない所ではある。生徒達を保護する意味合いもあるとはいえ、トレセン学園も閉鎖環境的な所はある。」

 

「ありがとう。やる時は連絡をくれ。話を聞いてもらったお礼と言っちゃなんだが、スズカの病院に連れて行ってやろう。トラックの荷台で良ければだけど。」

 

「良いのか?」

 

「行きの片道だけどな。

帰りまでは面倒見れないぜ。」

 

「夜なら記者達も居なくなっているはずだ、ロードワークがてらジョギングして帰るよ。」

 

「そうか。んじゃ裏に、お見舞い行きたいヤツを集めといてくれ。全員は乗れないかもしれないけどな。」

 

「私はタッちゃんで行きたいけど。どうしても目立っちゃうわよね?」

 

「そうだな。今は置いといてくれ。駐車場にカウンタックがあった方が外出してるとバレにくい。」

 

「カモフラージュって訳ね。」

 

「その通り。」

 

 

ルドルフが生徒達にLANEを送り、スズカの見舞いに行く者達が裏に集まる。

 

そして江助が搬入を終えて、空荷になったトラックに乗り込む。

 

「みんな乗ったかな?」

 

「「「はーい!」」」

 

「カンノン閉めるぞー。」

 

 

HINO RANGER FT

 

エンジン:直列4気筒SOHC直噴ディーゼルターボ

排気量:5123cc

出力:210ps

車両重量:7590kg

積載容量:4150kg

 

WINNING MUSUME社の運搬トラック。車両規格は俗に言う「4トントラック」。

 

元々は車種が統一されていなかったがトレセン学園との契約を機に「日野レンジャー」で統一された。

 

日野レンジャーは日本車で唯一パリダカールラリーのカミオン(大型トラック)クラスに長年参戦しておりレースのイメージが強い。

 

しっかりと戦績も残しており、97年にはカミオンクラスで優勝を飾っている。

 

 

____

 

 

レンジャーがトレセン学園を出発した頃、流貴は外出申請を出してコンビニに来ていた。

 

ウオッカにバイクを譲るための書類のコピーや、Umazonで買っていた物を受け取るためだ。

 

(ついでになんか、スズカにおやつ買ってくか。)

 

LANEで聞いてみる。

 

『今コンビニ来てるけど、いちご大福食べる?』

 

『良いんですか?』

 

『沖野さんから何か言われてる?』

 

『いえ、特には。』

 

『なら良いんじゃない?食欲が無いなら部屋の冷蔵庫に入れときな。あんまり日持ちしなそうだけど。』

 

『分かりました。ありがとうございます。』

 

買い物を終えて書類等も、大きめの袋にまとめて入れてもらう。

 

コンビニの外の灰皿で一服付ける。

 

(もうそろそろ時効だろ。)

 

現役時代は憧れていた先輩ライダー。ゼッケン46のライダーが嫌煙家だった事や体調管理の面から禁煙していた。

 

流貴がピアス等のアクセサリーを身に付けるようになったのも彼の影響である。

 

(物理的に死んだ向こうの俺。選手として死んだこっちの俺…お前達への線香代わりだ。)

 

久しぶりに吸う日の丸のような赤い丸のパッケージ。

 

(確か由来は、鉱石を掘り当てる。だったか?3回目は笑って死ねるといいよな。)

 

「さて、戻るか。」

 

 

運動がてら松葉杖で歩き、病院に戻りつつ考える。

 

(そろそろ入院から半年。だんだんと足の感覚も戻ってきてるし、年末までにはリハビリに入りたいな。)

 

松葉杖の金属音が響く。

 

(またウマ娘達来てないかなぁ。沖野さんに試験の事も聞きたいし。)

 

遠くからディーゼルサウンドが聞こえる。

 

(あとはマルゼンスキーに公道の走りを教える。か?)

 

流貴を抜いていくトラック。

 

(色々と忙しくなりそうだけど、これくらい刺激があった方が生きてて面白い)

 

笑みを浮かべつつ帰って行く流貴だった。

 

 

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