コバルトブルー   作:RPM

6 / 43
06:集結、繋ぐ思い

 

 

流貴が病院に戻ると送迎バスやタクシーの駐停車するロータリーに、見慣れないトラックが停車している。

 

(こんな所に4トン車?)

 

近付きながら見ていると江助が降りて来てカンノンを開け、ウマ娘達がぞろぞろと出てきた。

 

(ああ、なるほど。そういう事ね。)

 

そして、既に面識のある娘達に呼ばれる。

 

「ルキちゃーん!」「ルキくーん!」

 

「芥瀬さーん!!」

 

「よう。いらっしゃい。随分と大所帯で来たな。」

 

スピカとリギルの両チーム、全員がやって来たようだ。

 

面識のないウマ娘達が困惑しているが、とりあえず話を進める。

 

「スズカのためとはいえ随分と危ない橋を渡ったな。コウちゃん?」

 

本来、荷台に人が乗るのは違法であり乗る事が出来るのは荷物の監視員など、特別に許可を受けた者だけである。

 

「お前に言われなくねぇ(笑)会社にトラック返して乗り換えて来るから、適当に話をしながら待っててな。」

 

「ついでにコレをお願い出来るか?」

 

先ほどコピーした書類を渡す。

 

「ん。バイクの名変のアレか。先輩から話は聞いてる。」

 

「待たせたな、ウオッカ。」

 

「芥瀬さん。ありがとうございます。基本はとーちゃんに預かって貰いますけど。」

 

「まぁ、帰省した時の楽しみに取っときな。」

 

「そっすね。」

 

「んじゃコウちゃん、また後で。」

 

「ああ。」

 

____

 

 

トラックを見送り、院内に入りつつお互いに自己紹介をする。

 

まずは流貴から話をする。

 

「初めまして、芥瀬流貴と言います。元バイクレーサーで今はスズカの患者仲間とでも言いますか。」

 

「私はチームリギルのトレーナー、東条ハナ。沖野から話は聞いてるわ。トレーナーになりたいそうね。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「人手不足なのは確かだけれど、カンニングになるような事は出来ないわよ。わかっているとは思うけどね。」

 

「了解です。」

 

「初めまして、トレセン学園生徒会長。シンボリルドルフだ。よろしく。」

 

その後も続々と、リギルメンバーから自己紹介される。

 

アメリカ出身のウマ娘達が流貴の事を知っていた。

 

「ヒシアマゾンだ。アンタのタイマンはアメリカに居た頃、何回か見さして貰ったよ。よろしくな!」

 

「ハァイ、タイキシャトルデース。」

 

「エルコンドルパサー!よろしくお願いしますデェス!」

 

「グラスワンダーと申します。お初にお目にかかります。芥瀬流貴さん。」

 

「初めまして。これからよろしく。こんな状態じゃなきゃもっと良かったけど。」

 

「そういえば夏前にレースを棄権してたのって、どうしてだったんすか?」

 

「中で話そう。スズカも一緒にな。」

 

スズカの病室前に着き、ノックをする。

 

「はい、どうぞ。」

 

病室に入りいくつか買っておいたいちご大福の一つを渡し、残りは冷蔵庫に仕舞う。

 

「みんな来ると分かってりゃもっと色々買っておいたんだけどな。とりあえず話の続きをしようか。スズカには一部話したけど、改めて。」

 

「はい。お願いします。」

 

「ウオッカはマン島レースを知ってるか?」

 

「名前は知ってるんすけど、どんなレースなんすか?」

 

「イギリスにあるマン島を走るレースで、バイクとレース用サイドカーが走る。」

 

「ゲーセンのバイクゲームでそれっぽいの遊んだ事はあるんすけど、そんなにヤベぇレースなんすか?」

 

「そうだな、ほぼ毎年死人が出てる。」

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

(コンコンッ)

 

「確か今年も出てなかったっけ?しかも結構なベテラン選手がな。」

 

ノックをしながら江助が入って来る。

 

「随分早かったな。お帰り。」

 

「空荷だと気を使わなくて良いし、平日の昼はすいてるからな。飛ばしては来たが。話を続けてくれ。」

 

「ああ、確かにマン島はレースだけど競技よりは冒険に近いのかもしれない。山で言えばエベレスト登頂みたいな。ベテランだろうと油断は出来ないんだ。」

 

「危険と呼ぶか、冒険と呼ぶか。か。」

 

「カイチョー?」

 

「URAが考えたキャッチコピーに、こんな文言があってね。我々も思う所はある。」

 

「冒険心がくすぐられるから、死者が出ようと希望者が居続ける。」

 

「なるほど…。」

 

「で、さっきの話。俺が帰国したのはもしものための終活。身辺整理って所だな。」

 

「俺に渡しに来るはずだったのが、途中で跳ねられて今に至るって訳だ。」

 

「マン島に出る選手は遺言を残す。遺書と色々保管してた倉庫の鍵だな。」

 

「ん?芥瀬の家族はどうしたんだ?」

 

「ガキの頃から祖父母の所で育ったんですが、レーサーは命を粗末にするって言われて、途中から関係が悪くなりました。」

 

「両親は?」

 

「早くに亡くなったみたいですね。なので育ててくれた事には勿論感謝していますが、レースで食っていきたい気持ちは譲れませんでした。」

 

「夢だけは譲れない。か。私達ウマ娘と同じだな。気持ちはわかるよ。」

 

「ウオッカの質問、答えはこれで良いかな?」

 

「そっすね。ありがとうございます。」

 

「さて、これからどうします?」

 

「ん?どうとは?」

 

「モータースポーツの話はマルゼンやウオッカには面白いかもしれませんが、他の娘達は退屈になりませんか?」

 

「ふむ……どうかな、みんな?」

 

「いや、ボクはもう少し聞きたいかな。キミの冒険の、続きを聞かせてくれたまえ。」

 

「なかなか面白い事を言うな。俺のレース人生を冒険と称するか。歌劇のように面白いかは保証しないぞ。」

 

「私も同意する。モータースポーツへは興味は無い者も居るが形は違えど競走者同士。近い視座を持っているかもしれない。」

 

他のウマ娘達も頷いているのを確認し、続きを話す事を決める。

 

「了解だ。まずウオッカは驚くだろうけど、俺はバイクを専門でやってた訳じゃない。」

 

「え?そうなんすか?」

 

「元は四輪でカートからフォーミュラへ、ステップアップするはずだったんだけどね。」

 

「実家を頼れなくて金が無かった。か。」

 

「その辺りの制度というか……どうやってプロになるのかも教えて欲しい。」

 

「ん?マルゼンか?」

 

「ええ。まだ決めた訳じゃないけど、知識として知っておきたいわね。」

 

「やり方としてはいくつかある。まず一つは、カートからF4に上がりレーシングスクールを受けてメーカーと契約、GTやスーパーフォーミュラに行く方法。」

 

「他には?」

 

「自分で車両の用意やチューニングをして、アマチュアレースに出る。そのルートで本気で来るなら、俺の伝手でチームを紹介する事も出来るぜ。」

 

「俺達も紹介して貰った身だもんな。」

 

「ああ、実はそうなんだ。」

 

「全日本時代のチームはその時っすか?」

 

「ああ。ある日パドックで話しかけて来たヤツが居てね。」

 

「そいつが俺達の同級生で、吉室レーシング監督の孫。吉室聖人(よしむろせと)だ。」

 

「ヨシムロレーシングにはそうやって入ったんすね。」

 

「俺達バイクで峠を走っていた何人かは運良くそこで走れる事になったんだ。俺はすぐに抜けたけどな(笑)」

 

「どうしてなんすか?」

 

「体重移動で曲げる感覚に馴染めなくてな。俺はバイク向きじゃなかったって事だ。本気でモータースポーツをやるならそういう適正も考えていく必要がある。」

 

「ヨシムロはバイクのイメージが強いけど昔ホンダのS600でレースをしてたし今でも、パーツメーカーとして色々やってる。」

 

「さっきみんなが乗って来たトラックのパリダカ仕様も吸排気系のパーツはヨシムロが提供してるんだぜ。」

 

「どの競技でもメーカーとの関係。特に色々手広くやってる所と仲良くなると、モータースポーツをやる上で助かる。」

 

「なるへそ。色々ありがとうね。」

 

「俺のここからの活動については、ウオッカも知ってると思うけど。」

 

「そうっすね。でもクルマに行きたいって言ってるのに、MotoGPの期間が長くねぇっすか?」

 

「俺も最初は、ある程度戦績を残したら四輪に移る気だったんだけどな…。こっからはちょいと重い話も混ざるぞ?」

 

「もしかして、あのお話ですか?」

 

「スズカ?」

 

「マン島に出る理由を教えるのに、スズカにはちょっとだけ話しました。」

 

「なるほどね。」

 

「セトちゃんはガキの頃からポケバイで鍛えライダーとしてはエリート。俺とは真逆なのにどういう訳か仲が良くてね。」

 

「オヤッサンもう一人の孫みたいに、流貴の事可愛がってたよなぁ。」

 

「走りのスタイルも真逆だったけど、峠じゃツートップなんて言われてな。ある日セトちゃんと約束したんだよ。」

 

「それは初耳だな。」

 

「公道レースの頂点たるマン島レースで決着を着けようってな。」

 

「下手すりゃ死ぬような場所で、なんつー約束してんだお前らは。」

 

「ラップタイムは嘘を付かないからな。真逆のスタイルの俺達どっちが速いか。最高で最狂の舞台で確かめたかった。」

 

「順位じゃなくてタイムなんすか?」

 

「マン島はスタートも独特なんだ。予選順なのは他のレースと同じだけど10秒ごとに一台ずつスタートを切る。スタイルとしてはラリースタイルかな?」

 

「そういう事なんすね。」

 

「だからかなりラップタイムに差があるか温存のために前が抑えて走る。もしくは後ろが予選以上に飛ばすとか。条件が揃わないと追い抜きが発生しにくいレースなんだ。」

 

「完走するだけで“勇者“とか“英雄“って言われるレースだもんな。」

 

「まぁ、俺は器じゃなかったって事だな。」

 

「命があるだけ良かったじゃないか。」

 

「そうだな…セトちゃんの最期を話そうか。」

 

「言葉にしたら単純な事なんだけどな。」

 

「最後に卒業式のつもりで俺達で峠を走り、その途中でセトちゃんは対向車に突っ込んじまった。すぐに救助を呼んだけど、間に合わなかった。」

 

「「「「「………」」」」」

 

「それは、辛いわね…。」

 

「原因は分かってる。セトちゃんの走りは基本に忠実なグリップ走行。峠でも自分のラインを見つけるのが上手い。どのコーナーでもアウト・イン・アウト。一見理想的だがこの走りを公道でやると、対向車線に全開で飛び込む事になる。」

 

「俺達とオヤッサンも指摘してはいたけど、なかなかクセってのは抜けないモンだからな。」

 

「俺の夢も実現したかったけど、セトちゃんとの約束だけは消せなかった。まぁMotoGPは俺が勝手に行ったんだけどな。」

 

「しかし数年間、結構長い時間かけたな?」

 

「コースとマシンへの慣れやセッティング変更からマシンに馴染むまで、とにかく時短の訓練が必要だった。」

 

「マン島にはそれ用のバイクを用意するからか。しかしMotoGPすら習熟期間にするとはねぇ。」

 

「その通り。新しいマシンとコース。慣れるまでの時間を短くする必要があった。1周も長いし覚える事は山ほどあるからな。」

 

「どのくらいの距離なんすか?」

 

「60kmぐらいだ。コーナー数も200を越える。」

 

「うへぇ。とんでもない場所っすね。」

 

「それで他のクラスとの兼ね合いもあり練習に使える時間は意外と短い。効率良く覚える必要があった。」

 

「今は全部で何クラスだっけ?」

 

「えーと、紙に書いた方が早いか。沖野さん。メモ帳か何か持ってます?」

 

「ああ、どうぞ。」

 

沖野からノートを借り、クラスを書き出していく。

 

『スーパーバイクTT:1000cc、改造可』

 

『スーパースポーツTT:600cc、改造可』

 

『スーパーストックTT:1000cc、改造範囲小』

 

『ライトウェイトTT:2気筒、650cc上限』

 

『TT Zero:無公害車両、電動バイク』

 

『セニアTT:スーパーバイクTTの、

予選通過者のみが参加可能な最高クラス』

 

「あとはレース用のサイドカーもあるけどそっちはパイプを溶接したフレームの三輪車で、2人乗りのレース専用サイドカーだ。」

 

「電動バイクも走ってんすね。」

 

「これも時代の流れかな。エコで言うならウマ娘のレースの方が良いと思うけど(笑)」

 

「芥瀬さんはどのクラスに出る予定だったんすか?」

 

「スーパースポーツTT。車両はYZF-R6だ。」

 

「リッターじゃないんすね。」

 

「マン島はエントリーも独特で複数のクラスにエントリーも出来るけど、俺は最初なのもあって一つに絞ったんだ。」

 

「なるほど。」

 

「さて、オペラオーのいう冒険はこんな所かな。どうだった?」

 

「危険を省みない熱い約束。素晴らしい君達の友情に乾杯さ!」

 

「そいつはどうも。」

 

(((((ぐぅぅぅぅー)))))

 

「腹減っちまったか(笑)」

 

「そういやスズカは大福食べたけど、他のみんなはおやつまだか。コウちゃん。買い出し行こうぜ。」

 

「了解、ついでに一服付き合ってくれよ。」

 

「オーケー。」

 

「んじゃ、行って来ます。」

 

「はーい。」「行ってらっしゃい。」

 

____

 

 

買い出しに行く二人を見送り、

松葉杖の音が遠ざかるのを確認して話す。

 

「スズカの見舞いに来たのに、いつの間にか芥瀬の身の上話になったな。」

 

「でもマルゼンスキーの事もあるし、あの子達程詳しい人は学園に居ないもの。」

 

「確かにな、スズカはどうだ?」

 

「芥瀬さんには皆さんが居ない間話相手になっていただいてました。お陰で寂しくなかったんです。」

 

「まぁ、面倒見は良さそうだよな。」

 

「そうね。」

 

ルドルフが回りに流貴の印象を聞く。

 

「さて、彼は君達にはどう映ったかな?」

 

「タダ者じゃないとは思ってたけど、色々経験してるから、あたしに合ったレースを考えてくれそうね。」

 

「最初は何だコイツはと思ったが、ワタシと同じ走りに飢えた目をしている。なかなかに滾る。何かで勝負してみたい。」 

 

「私はまだ信用した訳ではありませんが、走りに対する熱い意志は感じました。」

 

「仲間との約束背負って熱いタイマンが出来る。なかなかに見所のあるヤツだね。」

 

「彼の話はアヤベさんと重なるけど、贖罪だけで終わらせないのは素晴らしい。」

 

「少しデスが寂しそうな顔をしてマシタね。ワタシとスズカのような関係デショウカ?」

 

「…確かに、何処かタブらせてんのかもな。」

 

「沖野?」「トレーナーさん?」

 

「例えば海外の凄いレースだとして、武者修行だとかボカして伝える事は出来たろ。それをつらい過去まで話してくれたのは、そういう事なんじゃないのかな?」

 

「同い年の同期でライバル、エル、スペちゃん。私達とも重なりますね。」

 

「そうだね。グラスちゃん。」

 

「ボクとマックイーンとか、ネイチャもだね。」

 

「そうですわね。」

 

「オレ達だとマーチャンもそうか。」

 

「確かにそうね。マーチャンも放っておくと何処かに消えてしまいそうな雰囲気あるけど、あの人にも少しそういう雰囲気があるわね。」

 

「終活の話聞いたからそう感じるのかもな。」

 

「アイツ、ナカヤマと同じ目をしてるな。」

 

「うむ。レースに出る者は形は違えど、皆勝負師なのだろうと思うよ。」

 

「そういやアイツのタイマンは、アタシらで言えば追い込みに近かったねぇ。」

 

「周回数の桁が違うから、脚質に例えるのは違う気もするんすけど。タイプで言えば確かにそうっすね。」

 

____

 

 

一方その頃、スープラの車内。

 

「済まないな。」

 

「ん?」

 

「いや、お前から言い出したとはいえ、辛い語り部をさせちまったと思ってな。」

 

「まぁ仕方ない。スズカの事とも、当たらずとも遠からずな話だし。」

 

「そりゃそうだけどさ。」

 

「ウマ娘は競走本能が強いって聞くし、今後もモータースポーツに興味を持つウマ娘が出てくるかもしれない。けど。」

 

「けど?」

 

「興味本位だけで世界に飛び込んで俺みたいにならないで欲しいんだ。勝ち負けは適正やセンス、運なんかも必要だが、ケガは気をつけてればある程度は防げる。」

 

「確かにな。」

 

流貴の事故はプライベートでの事故だが、ケガでキャリアを絶たれた事実は変わらない。

 

「トゥインクルシリーズの時点で厳しい戦いを乗り越えて来たのは分かる。でもスズカの件に対する反応を見ると、10代の脆さも残っていると思うんだよ。」

 

「だから、釘を刺したのか?」

 

「ああ、その通り。それでもこっちの世界に来たいと言うなら、教えられるテクニックは教え出来るだけ協力はする。」

 

「習うより慣れろって言葉もあるけどな。」

 

「そこは彼女達各々って所かな。まずはリハビリと試験勉強頑張んないとな。とりあえずの繋がりは出来たけど。なるべく近くにいた方が何かと便利だ。」

 

「そうだな。」

 

「で、何処に向かってるんだ?」

 

「業務スーパー。あの娘達の食欲考えると、お徳用をいっぱい買っとく必要があるからな。」

 

「確かにな。駄菓子屋じゃ潰れちまう。」

 

「スズカは割と少食だけど、ああいう娘は少数派だからな。」

 

「食費がかかるとは聞いてたけど、あの娘達見てたら良く分かるわ。」

 

そう言って流貴は車内を見渡す。

 

「意外と内装は普通だな。」

 

「多点式のロールケージ入れたいけどその分全体に歪みが出やすくなるからな。ウレタン注入と屋根の潰れ防止バーだ。」

 

「あとはタワーバー?」

 

「そうだ。ツボは抑えつつある程度快適性を残してる。」

 

「なるほどね。それと気になったんだけど。」

 

「何が?」

 

「ウオッカがマン島のゲームって言ってたけど、それってセガのマンクスTTだよな?」

 

「ああ、多分そうだろうな。」

 

「確か稼働開始は1995年。俺達の産まれるより前だよな?まだ現役で動いてんだな。」

 

「ああ、ルキはサトノの事を知らないか。」

 

「一応名前は知ってるけど。確かセガのアミューズメント部門だっけ?」

 

「ああ。ご令嬢のウマ娘達がトレセンの生徒でな。あの辺のゲーセンは遊び場になる事も考えて古い筐体をレストアしたり綺麗に維持してるんだ。」

 

「そいつは良い。90年代のセガはレースやシューティングを多く出してるから、空間認知能力や反射神経の訓練に使える。」

 

「確かにな。きっちり荷重移動しないと、コーナーひとつ曲がれないのもあるしな。」

 

「セガツーリングカーチャンピオンシップか?」

 

「ああ。セガは色々幅広く出してるから。レースの適正を見るのにも使えるかもな。」

 

 

色々と話をしながらお菓子を買って病院に戻り、日が暮れて帰りの時間。

 

「トレーナーのお二方は俺が送って行きます。」

 

「よろしく頼む。ええっと?」

 

「洋谷です。ジャージ屋でも良いですよ。」

 

「んじゃ、またなーみんな。」

 

「まったねールキちゃん。」

 

「あ、そうだ。ロードワーク中の注意を一つ。」

 

「何すか?」

 

「サーキットに無くて公道にあるモノの一つが対向車。もう一つは?」

 

「「「「「?????」」」」」

 

「…傾斜か?」

 

「そう。ほとんど気が付かないけど実は一般道はセンターラインから路肩に向けて、僅かに水はけのための傾斜が付いているんだ。」

 

「みんなはロードワークから帰った時に、蹄鉄やシューズが片減りしてた事はないか?」

 

「そういえば。」「あった……かも。」

 

「片減りが見え出したら反対車線のウマ娘レーンを走るようにすると良い。左右に段差が付かないようにするんだ。」

 

「そいつを放っておくとフォームの乱れや斜行の原因になるってワケか?」

 

「まだ試験前ですが、応用出来る事はどんどん使っていきますよ。」

 

「流貴はフィードバック機能男かよ(笑)」

 

帰りの車内にて。

 

「彼、色々経験してるのね。元レーサーって聞いた時は不安だったのよ。」

 

「まぁ。世間的には命知らずとか色々言われてますし、否定も出来ません。」

 

「トレーニングも過激そうと思ってたけど、過負荷をかけるような事はなさそうね。」

 

「だと思います。」

 

____

 

 

それから半月ほど。

 

江助の提案は学園から目を逸らし、話題は有馬記念でぶつかる同期の二人。スペシャルウィークとグラスワンダーへと移る。

 

流貴がリハビリと、トレーナー試験勉強をしている所に一本の電話がかかって来る。

 

「はいはい、えーっと?」

 

『着信 RS編集部』

 

それは月間レーシングスポーツ。通称RSと呼ばれる雑誌の編集部からだった。

 

「引退して半年、今更何だ?」

 

 




マン島参戦計21戦。

ベテランスペイン人ライダー、
ラウル・トラス・マルティネス選手の、
ご冥福をお祈りいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。