コバルトブルー   作:RPM

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月刊レーシングスポーツ・年末総集編

 

特別インタビュー、元・MotoGPライダー芥瀬流貴。

 

『我がRS誌は、6月にマン島レースへの参戦を発表。その直後に不慮の事故で引退したライダー、芥瀬流貴の回復を待って取材を行った。』

 

RS編「本日はよろしくお願いします。」

 

芥瀬「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

RS編「怪我の具合はどうですか?」

 

芥瀬「ようやくリハビリに入れました。」

 

RS編「それは良かったです。この半年間の生活はどうでしたか?」

 

芥瀬「秋頃までは物凄く退屈でして、スマホの動画と電子書籍で凌いでました。」

 

RS編「秋に何かの変化があったんですか?」

 

芥瀬「松葉杖で歩けるようになって、院内を散歩していたら天皇賞で骨折したスズカが入院してきたんです。」

 

RS編「なるほど、それは興味深いですね。」

 

芥瀬「それでスズカのチームメイトのウオッカが自分の事を知ってまして、彼女達と色々話をしたりしています。」

 

RS編「具体的にはどのようなお話を?」

 

芥瀬「二つのレースの違い等ですね。モータースポーツとトゥインクルシリーズ同じレースの形を取っていても周回数や、昇格の制度等色々違いがあります。」

 

RS編「他には?」

 

芥瀬「ウオッカには自分がこんな足なのでバイクを譲ったり、夏前のレース棄権の事やマン島レースのルール・歴史等ですね。」

 

RS編「確かに突然帰国したのは不思議でした。」

 

芥瀬「日本とイギリスは地球の裏側なのでデカ過ぎる寄り道なんですが(笑)」

 

RS編「確かに言われてみれば(笑)」

 

芥瀬「でも、どうしても終活というか。最悪の事態を考えて身の回りの整理はやっておく必要があったんです。今は無駄に終わりましたが。」

 

RS編「我々ファンはホッとしていますが、芥瀬さんはどのような思いでしょうか?」

 

芥瀬「色々な事を考えていました。生き残ればハク付けに出来るかもとか、もし死んでも後悔はなかったのかとか、今は肩の荷が降りたような感じです。なんか矛盾している気もしますが。」

 

RS編「達観しているというか何というか…死生観も我々とは違うような気がします。」

 

芥瀬「元々、色々と執着が無い方でして。あとはカートの頃から自分を俯瞰で見る感覚で走って来た影響ですかね。チャンピオンとして無冠だったのは、悔しい思いもありますが。」

 

RS編「なるほど。ではこれからはどのような道、活動を考えていますか?」

 

芥瀬「今はトレーナーを目指して、色々勉強しています。未知の世界ですが経験が役に立つ事もあるかもしれません。」

 

RS編「そういえばトレセン学園のジャージ泥棒騒ぎ。結局は勘違いだったようですが、芥瀬さんは何処で知ったんですか?」

 

芥瀬「知り合いに服飾関係者が居るので。次の職場になるかもしれない場所ですし。色々と安全面も気にしてはいます。」

 

RS編「確かにレースをする者の養成所。という意味では厳重さが足りないような?」

 

芥瀬「とはいえ、彼女達も色々と多感な年頃ですからね。窮屈にし過ぎるのも考え物ではあります。」

 

RS編「話が本誌の方向性から逸れましたが、その場に応じて臨機応変といった所ですね。では最後にまとめとファンへのメッセージを。」

 

芥瀬「終活が就活に!?人生赤旗リスタート。次はグリーンのサーキットで会おうぜ!」

 

RS編「本日は、ありがとうございました。」

 

 

読者プレゼント!

 

芥瀬流貴サイン色紙入り。タニヤ製1/12スケールプラモデル「ネイルスターYAMAHA YZR-M1#55」とモータースポーツホビー「プチ四駆」シリーズから「サイクロンバレット.ネイルスターversion」をセットにして応募者の中から抽選で555名様にプレゼントいたします。

 

奮ってご応募下さい。

 

 

____

 

 

(上手い事言うじゃねーか、ルッキー。)

 

トレセン学園の合宿所のある港町の一角。工業地帯にある自動車改造工場で記事を読む男。

 

彼の名は反幕尚三(そりまくなおみ)

 

流貴達と同時期にヨシムロ所属。

 

ヨシムロレーシングがサーキットでのレースとはまた別に、パーツの開発・研究に力を入れていたボンネビル最高速チャレンジに参加。

 

その後最高速やレース向けの車体作り、エンジンチューニング等を学ぶ。

 

現在では地元の町でチューナー兼ウマ娘の蹄鉄職人をしている。

 

(ルッキーがトレーナーにねぇ?受かるかどうかは分からんがなかなか面白くなりそうだ。派手に出迎えてやらねぇとな。)

 

そして今年の夏に開催された、バイクのゼロヨンの覇者でもある。

 

(プラモ、応募してみっかな?それと退院前に一回ツラ出しとくか。)

 

 

____

 

 

 

同時刻。

 

東前(あずまえ)撮影スタジオ控え室。

 

(おいおい、芝だけがレースじゃないよ。まぁ、適正とか色々あるけどさ。)

 

記事を読みつつ、突っ込みを入れる男。

 

彼の名は鳩斑時英(はとむらじえい)

 

流貴達と共にバイクで峠を攻めていた走り屋仲間であるが途中からオフロードへ転向。

 

ダートトライアルやモトクロス、バイクスタント競技で鍛えて来た。

 

現在はキャロットマンにてスタントマンとスーツアクターを担当。

 

「もうすぐ本番で~す。

準備、よろしくお願いします。」

 

「了解です。」

 

(あっくんがトレーナーになるなら、感謝祭で再会出来るかなぁ。)

 

キャロットマンのスーツ、マスクを着用しつつ考える。

 

(今回もゲストに呼ばれるかは分からないけど、とりあえず記事見た感想でも送っとくか。)

 

 

____

 

 

流貴やスズカの居る病院。

 

リハビリをこなしつつ空いた時間に、トレーナー試験対策をしていく。

 

するとそこに、

 

(コンコンッ)

 

「はーい。どうぞー。」

 

「よう。調子はどうだ?」

 

江助がお見舞いに来た。

 

「まあまあかな。」

 

「頼まれてたモン持ってきたぜ。ちょっと早いがプレゼントだ。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

「全くよ。クリスマスにダンベルとボディブレード欲しがるとはな(笑)」

 

「足の筋肉はリハビリと自分の重さある程度で付くけど、上半身は鍛えないとだからね。」

 

「確かに。トレーナーも体力仕事だけどお前も自分を追い込むの好きだね。あの記事だってそうなんだろ?」

 

「もう発刊されたんだな。自分で言うことで改めて気付くというか。まあ、半分は確認のためにやってる。」

 

「なるほどね…ん?」

 

 

何やら病室前から話し声が聞こえる。

 

(ガラガラッ)

 

「騒がしいな病室前で、何か取り込み中?」

 

「久しぶりだね、洋谷君。」

 

「ええ、セトの葬式依頼ですかね。」

 

「ジャージ屋くん、このおじさまは?」

 

「この間話したヨシムロレーシングの今は二代目監督。俺らが居た頃はマネージャー。」

 

「この娘たちが見舞いの順番を譲ろうと気を使ってくれているんだが、僕は芥瀬君と話をしたいから後の方が良い。」

 

「あたし達もルキ君に聞きたい事があるの。」

 

「じゃあまとめて話した方が、効率良いんじゃないっすか?」

 

病室内から流貴に突っ込まれる。

 

「譲り合いは大事ですが、面会時間も限りがありますし。」

 

「まぁ、秘密にする事でもないか。」

 

 

病室内に入り、お互いに自己紹介をして本題に入る。

 

「芥瀬君が引退した情報はすぐに回って来たけどシーズン中で忙しく、お見舞いが遅れてしまって申し訳ない。」

 

「それは仕方ないでしょう。バイク以外にも色々やってますし。」

 

「ネイルスターの関係者は来たみたいだが。MotoGPもシーズン中だろうに。」

 

「元々マン島にも何人かのスタッフは同行予定でしたから、日本にも付いて来てくれました。」

 

「なるほど。しかしトレーナーとはね。四輪のレースに転向する気なら君に車両も用意する予定だったんだが。」

 

「まずは軽やコンパクトカーのアマチュアレースからですか?」

 

「さすがに詳しいね。」

 

「なぁマルゼン、右ハンは教習所以来乗ってない?」

 

「ええ、そうねぇ。」

 

「んじゃ、慣れるためにも乗ってみるか?」

 

「えっ!?ええっ!?」

 

「芥瀬君?まさか?」

 

「ライセンスのいらないレースでしょう?だったらモータースポーツに興味のある若い人材を使うのも手ですよ。」

 

「確かにな、マルゼンはセンスもある。まだ所々荒削りではあるけどな。」

 

「ちょっと。ジャージ屋くんまで?」

 

「どうせ俺とコンビ組まそうってんだろ。流貴?」

 

「だいたいのレースは二人で組むからね、よく二人は一緒に走ってるみたいだし。お互いのクセも分かってるでしょ。」

 

「あんまり勝手に話を進めないで欲しい。が、確かに利害は一致しているか。」

 

「ふむ。私も少し興味はある。マルゼンスキーもやぶさかではないようだ。」

 

「んもぅ。ルドルフまで?そこまで言われたら、走るしかないじゃない。」

 

「私の理想である“全てのウマ娘の幸福“には君も当然含まれているんだよ?」

 

「すぐにレースがある訳じゃないよ。今はオフシーズンで本格的な活動は春から。大急ぎで決めなくても大丈夫だ。」

 

「その辺は監督とコウちゃん、マルゼンで話し合って決めるんだな。」

 

「ルキくんは?」

 

「リハビリとトレーニングに試験勉強。それと、車と住処も探さなきゃだし。地味に色々忙しい。」

 

「え?」「ん?」「(笑)」

 

「貴様、ホームレスだったのか?」

 

「今は住所不定無職なんだわ(笑)家族はレース活動に反対してたから、高校の時からアパートで一人暮らし。」

 

「で、世界を転戦するのに引き払ったんだよな。」

 

「そう。今まで帰国した時はホテル暮らし。受かってトレーナー寮に入れれば良いけど、試験まではホテル暮らしを続けるかな。」

 

「ルキくんも結構変わってるわねぇ。」

 

「いやホント。結構稼いでんのに、乗り物以外に金かけないんだもんなぁ。」

 

「トレーナーになったら食費になるかな(笑)」

 

「そこは相変わらずだね。さて、僕の話は終わりだ。君達の話も、差し支えなければ聞かせて欲しい。」

 

「スズカの骨折の原因についてだ。色々な憶測が飛び交っているが、違うレースの世界からの意見が欲しい。」

 

「色々年末業務で忙しいだろうに、生徒会がここに集まったのはそのためか?」

 

「ああ。スズカとは個人的にも親しいし、今回の件は世間に衝撃を与えている。」

 

「股関節炎とは違うだろうが、ワタシも走れない苦しみは分かる。」

 

「あくまで一つの考え方としてだけど容量不足というか、スズカが速すぎたのか骨がスピードに耐えきれなかったんだろう。」

 

「容量が足りない…とは?骨折とどう繋がるのだろうか?」

 

「心肺機能や筋肉はトレーニングで負荷をかける事で量を増やせるが、骨や関節はそれが出来ないんだ。」

 

「なるほど。言われてみれば確かに。」

 

「心肺機能をエンジンとするなら、骨格は駆動・伝達。ギアボックスやドライブシャフトに当たるか。」

 

「僕も芥瀬君と同じ意見かな。耐久レースで故障が起きやすいのもミッション回りが一番多いからね。」

 

「それはあたしも知ってるわ。タッちゃんのクラッチも慣れるの大変だったわねぇ。」

 

「クルマ談義はまた今度にしようぜ。生徒会のみんなは分からないだろう。」

 

「そうね。面白い話も出来たし。また遊びに来るわ♪」

 

 

____

 

 

夜。

 

トレセン学園生徒会室。

 

寮長達と冬休みの帰省組と学園に残る生徒達の情報を整理しつつ病院で話した内容を話す。

 

「なるほどねぇ。骨にはトレーニングが効かないってんなら、うんと栄養付けなくちゃだねぇ。」

 

「私の屈腱炎もそうだったのかな?元々弱い部分ではあったみたいだけど。」

 

「怪我は走る以上付いて回る事だからね。今日は一つ有意義な意見を聞けた。体と機械では違うが彼の話は色々と参考になる部分もありそうだ。」

 

「しかしワタシの時もだったが世間はバ場やローテーションばかり注目していて、体の方に原因があるとは言わなかったな。」

 

「やはり職業でレースをしている者と、まだ学生である私達の違いもあるのだろう。」

 

「確かにあっちのタイマンだとコースの方に原因があっても、事故るヤツは下手みたいな風潮があるねぇ。」

 

「なるほど。彼の居た世界の話は、もっと色々知る必要がありそうだ。」

 

____

 

 

首都高。

 

流貴とインカムで通話しながらカウンタックで走るマルゼンスキー、江助のスープラも追走している。

 

サーキットでの実戦を考え、マルゼンスキーにグリップ走法を覚えさせ、走りの引き出しを増やしていく。

 

『さて、一応実戦を想定した、アクセルワークの訓練だ。』

 

『具体的にはどうすれば良いのかしら?』

 

『そうだな。元々カウンタックはトラクションコントロールが無いから、立ち上がりでアクセルを小刻みに踏んでたろ?』

 

『そうね。』

 

『それをゆっくり踏むようにしてみてくれ、タイヤを鳴らさずに立ち上がるイメージだ。』

 

『効果はどうなのかしら?』

 

『コンパクトカーはパワーが無いから、無駄なく路面に伝えて行く必要がある。』

 

『なるへそ。』

 

『あとはコウちゃんに見て貰ってくれ。一応説明はしてある。こっちはもうすぐ消灯時間なもんでな。』

 

『了解したわ。おやすみ。良い夢見てね~。』

 

通話を終了して病室へと戻り、布団に入りながら考える。

 

(こっちの世界に来た意味はまだ分からない。もしかしたらただの神の気まぐれか。けど何もしないのは面白くねぇ。今までの経験と人脈を活用する事にする。)

 

学生時代からの友人である江助はスポーツウェアメーカーの社員という所は変わらないが、ウマ娘達に深く関わっていた。

 

自分もそれをなぞって行くことで、何かが見えて来るのだろうと思う。

 

 

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