ノラハザ   作:はらだいこ

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ノラちゃんを久しぶりに気持ち悪く描けて楽しかったです。ノラ組も気持ちが悪いのがアイデンティティです。


第十話 DWUの月光

10月31日 午前1時半頃 深層洋館 1階 保管室

 

ヨ―ンの毒が回り虫の息となったノラとクッコロは血清を投与されたのち寧々丸に回収され保管庫に運び込まれた。体力の消耗が激しいクッコロは

貧乏神の中で絶対安静。ベッドの上で青ざめていたノラの顔は次第に血色の良さを取り戻し、うなされて乱れていた呼吸も規則正しいモノになる。

 

「ん、おけ。効いたみたいだね」

「ありがとうございます。寧々丸お嬢様。落ち着きました」

 

汗の浮いたノラの額に濡れタオルを置くとほつれた髪を整える。みるくがノラに粉から作ったポカリスエットを入れた吸い飲みを咥えさせるとちぅちぅと吸って失われた水分を補給する。

 

「みるくお嬢様もありがとうございます。ボクなんかのために危険を冒して……」

「よちよち。気にしない気にしない。ノラちゃんが助かってバブちゃんよかったぁ」

 

ちっちゃい手で頭をよしよしされるとへにゃっとノラの口角が緩みフヒヒとキモオタの様な粘ついた声を漏らしながらみるくに芋虫の様に蠢きながらすり寄っていく。

 

「もっとよちよちしてくださいよぉ♥みるくお嬢様ぁん♥」

 

調子に乗ったノラにみるくは顔をしかめてノラから距離を置く。

 

「ぶぇっ!ノラくん気持ち悪い!」

 

病み上がりにも関わらずノラの顔面を容赦なく足蹴にするみるくにいつものおぎゃノラが戻ってきたと煙草を一本灰にすると寧々丸が星と風、太陽が描かれたクレストを渡す。

 

「館探索してたらこんだけ集まった。上げる」

「そのクレスト!なんか寄宿舎に通じる扉を開けるのに必要っぽいです!」

 

難解な仕掛け故、断念していたエリアに進めるかもしれないと、赤子で精力を補給したノラはむくりと起き上がり、目を輝かせる。

 

「でも移動の度にこれいちいち集めるとか面倒くさすぎん?」

 

渋い顔を浮かべるみるくに二人は今までの不満を爆発させて同調する。

 

「それな!何考えてんだろこの洋館設計した奴。欠陥住宅じゃん」

「なんか天井落ちてくるし、ほんと訳わけわかんないですよー」

「毒ガス出る部屋とか額縁のスイッチ順番に幼いとカラスが襲いかかって来る部屋あったりさー」

「変な仕掛けもそうだけど、あのゾンビとかでっかい蛇ちゃん。どっからきたん?」

 

みるくの一言で寧々丸の顔色が強張る。しかし、それは一瞬のことで、すぐに元のアンニュイな雰囲気に戻り、二人に不自然さを感じさせないように話題を逸らす。

 

「実はどうしても解けない仕掛けがあってさー。その貧乏神の中にチョロ姉さんが入ってるんだよね」

 

最早見慣れたもので存在を半ば忘れかけていた貧乏神はあんぐりと大きく口を開けると、口腔から満身創痍のDWUが顔を出す。

 

「いたた、なんですの……」

 

貧乏神の体内に入っているVtuberは少しずつではあるが自然治癒される。瀕死の状態こそ脱してはいるが、まだ本調子とはとてもいえない。

 

「ピアノで月光?って曲弾けなきゃ、攻略できんのよ。チョロ姉さんにちょちょいっと弾いてもらいたいんよ」

「この体調じゃ難い……でも可愛い妹たちのためですもの。長女が一肌脱ぎますわね」

「さす姉せんきゅ!じゃ、ほいじゃピアノ部屋に行こっか。調べた感じ飲み物とか軽食もあるし一息つこ」

「本当ですかぁ!解毒したらめっちゃお腹減ってきました」

「バブちゃんもごはんたびる」

 

深層姉妹一同はすっかりランチタイムな気分で1Fピアノ部屋に場所を移した。

 

「これめっちゃ高いグランド・ピアノじゃん!ほしー!」

 

貧乏神から吐き出されたDWUは立派なグランドピアノを見た途端、感激からRPを忘れて、つい素の口調ではしゃいでしまう。

 

「DWUお嬢様。ハーブ・カクテルお待たせです」

「ありがとう。はぁ、いい香りー」

 

ピアノ部屋は小さいながらも簡易なバーカウンターもあり、執事見習いのノラはバーテンダーを務め各種カクテルを作っては深層姉妹たちの喉を潤していく。

 

「うま!おかわり」

 

カウンター席ではコチュジャンを梅ソーダで流し込みながら煙草を吹かす寧々丸にノンアルのカルーアミルクを哺乳瓶でちうちうと飲むみるく。

 

「ちゅぅちゅぅ!いっぱい運動したから喉渇いた」

 

つまみの裂けるチーズをちっちゃい手で割いては口に運んでいく。

 

「このカクテルめっちゃ良い!なんか元気出てきた」

「ちょろ姉さん気合入ってんね。これ楽譜」

 

回復効果の高いグリーン+レッドのハーブを掛け合わたジンベースのカクテルを飲み干したDWUは寧々丸から楽譜を受け取るとグランドピアノの鍵盤に指を伸ばす。

 

てれれん♪てれんてんてん♪てれれん♪てれてれん♪

 

どこか哀愁を感じさせる繊細な旋律に寧々丸、みるく、ノラは聞き入り、クリーチャーとの戦闘の連続で疲弊した精神が癒されていく。

 

「きゃきゃっ!お姉さま上手上手ー!」

「はふはふ!凛々しい横顔ですね。普段からああならみんなから尊敬されるのにぃ」

 

姉妹たちにカクテルや軽食を振る舞う片手間で作ったカプレーゼを頬張りながら執事にあるまじき不敬な物言いに隣の寧々丸が溜息。

 

「だからノラっち一言多いってー」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!

 

DWUが月光の一節を引き終えるとグランドピアノ左手側の壁がせり上がり隠し部屋が露わとなる。

 

「うわっ!ピアノ弾いたら隠し部屋が出るってなんなの!わけわかんない!」

「せんきゅ!これが欲しかったんよ!」

 

隠し部屋の奥にあったゴールドエムブレム。寧々丸は食堂にあったウッドエムブレムと交換してはめ込んで持ち出しに成功した。

 

(?ピアノが弾けないなら初見であの仕掛けのことも分からないはず?何故……)

 

まるで事前に洋館の内部構造を知っているかのような寧々丸の様子に言いようもない疑念がノラの胸に広がる。しかし、ここで仲間割れになるような事態は避けたく、その場での言及は控えた。

 

つづく

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