10月31日 午前3時頃 寄宿舎 002号室
バスタブからカギを発見したノラは寧々丸が触手が飛び出てきて首を絞める床穴を石造で塞いで安全
に通行できるようになった002号室を訪れた。
「寧々丸お嬢様もある程度探索しただろうけど、一人じゃ気付けない仕掛けもありますよね」
奥にある棚の仕掛けを発見。みるくの発案で動かしてみると、梯子が出現した。
「おぉ!みるくお嬢様!地下に通じてますよ!」
「だう!この先にるるるちゃんがいるんだよね」
途切れ途切れのるるるとの短い通信で寄宿舎の大水槽で孤立していると、聞いているのでようやく救出に向か
うのことになる。
「そうですね!必ず救出しましょう!」
決意も新たに階段を下りると、またしても通路の一部が浸水していたため、水中に木製の箱を落として道を作るという余計な手間で気勢を削がれながらも大水槽に到着した。
「うわっ!めっちゃ浸水してる!首の近くまで浸かる!」
円形の水槽は壁側の通路まで完全に浸水して、身長150cm足らずのノラには足がつくかもおぼつかしい。
「だう!だうっ!」
「あぁ、みるくお嬢様これじゃ溺れちゃいますね!」
ノラの背中のみるくは顔の半分近くまで水に浸かり、半ば溺れかけている。おんぶ紐を緩めるとノラの頭に昇り、両足を肩に乗せて肩車の体勢となり、犬耳(癖毛)を掴む。
「すいません。みるくお嬢様。しばらくそのスタイルでお願いします」
身体が今、クリーチャーに襲われたらひとたまりもない。
「ノラちゃん!あれ!あれっ!」
みるくが小さい指で指さした方角を見ると、犬かきで泳いでくるビキニ姿のるるるの姿が見えた。
「るるるお嬢様!待っていてください!今、ノラが向かいます!」
頭に赤子を乗せたノラの姿を見つけてゴーグルの中に涙が溜まる。嬉しさで尻尾をちぎれんばかりに振って水の飛沫が上がる。
「ノラちゃん、オギャちゃん……来てくれたんだね!」
人狼ハーフのガワになってから会得した高速犬かきでノラとみるく目掛けて泳いでいく。しかし、二人の
再会に水を差すように仄暗い水の底から大水槽の主が現れた。
「ぴゃぁぁぁぁ!?ノラちゃん!ノラちゃん!あれっ!あれぇぇぇぇぇぇっっ!!!!」
「え?、みるくお嬢様。どうしま……ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
人食い鮫の代名詞であるホオジロザメでも6メートル前後。しかし、ぬっと浮上してきた大ザメ―ネプチューンはの体長は優に10メートルに達している。
槍の穂先のような乱杭歯がびっしりと生えた巨大な口腔はノラなど一飲みにしてしまう。ノラの武器のハンドガンやショットガンでは水中の敵に対しては威力が半減してしまう。
「はやく逃げなきゃ……あぁ、もどかしい!」
頭にみるくがしがみついているので、激しい動きができない。ノラが泡を食っている間にネプチューンが目の前まで迫っている。
「ノラちゃん!るーの尻尾を掴んで!」
最高速の犬かきでノラの目の前までたどり着くと反転して狼尻尾をノラに握らせる。
「るるるお嬢様!」
「ちゃんと捕まったね!いくよ!うりゃりゃりゃりゃりゃっー!!」
るるるが犬かきを開始した直後にネプチューンが数舜前にノラがいた通路に突っ込む。図体が大きい分小回りが利かず、方向転換に時間がかかる。
「ひゃぁぁぁぁぁぁ!あ、足持ってかれるとこだった!」
「大丈夫!しっかり捕まってて!」
絶体絶命の窮地を潜り抜けたと思ったらまた一難。ネプチューンから生まれた子ザメが二匹も姿を現し、逃走中のノラたちを追跡する。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!また出た!それも二匹ぃ!」
ノラも悲鳴を上げながら必死で足を動かすがどんどん距離を詰められていく。
「親玉より泳ぐのが早い!このままじゃ追いつかれるよぉ!」
子ザメは鈍重なネプチューンよりも泳ぐスピードも速く小回りも利く。るるるだけならともかく、荷物を抱えた状態で追いつかれるのも時間の問題だ。
「ひぃぃぃぃ!追いつかれるぅぅぅ!」
「たゃう!ノラちゃん、いい加減うるちゃい!」
ノラのお家芸の絶叫にもうんざりしたみるくが閃光手榴弾のピンを抜いて水中に放り入れる。
ギィィィィィィィン!
数秒後、閃光手榴弾が水中で炸裂。轟音と閃光で五感が麻痺した鮫はあらぬ方向に泳いでいく。犬かきで頭を水中に出いるるるるとノラたちはノーダメージ。
「よしよし!てっ!いやぁぁぁぁ!でっかいのがこっちに来たぁぁぁぁぁっ!」
子ザメを退けたと思ったら今度はネプチューンがまっすぐにノラ達めがけて進んできた。
「ノラちゃん!あと、もう少しだから!がんばって!」
ラストスパートをかけてようやく制御室前の階段にたどり着き、るるるがノラを引き上げて、水槽からようやく脱出する。
ドガァ!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!食われるっ!!」
獲物を逃した当てつけの様に階段に体当たりをしてネプチューンは大水槽の中に戻っていった。
「ひっひっ!るるるお嬢様ぁ!助かりましたぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぷぅぅぅぅっ!るるるちゃん!ありがちょ!」
極度の緊張が解けて腰が抜けたノラがるるるの足にしがみついて号泣する。みるくは控えめながら弾力と張りに満ちた乳房に飛び込んで赤子の特権でビキニを捲りあげて乳を求める。
「んまっ!んままっ!ちゅぅぅぅっ!!」
「あはははっ!バブちゃん擽ったいよぉっ!」
るるると戯れるみるくを見てノラの雰囲気が変わった。赤子の特権を振りかざすみるくを強引に引き剥がして、最早存在していることを忘れていた貧乏神の口の中にぽいと放り込む。
「はーい。みるくお嬢様はお身体を温めましょうねー」
「びゃぁぁぁぁぁ!やだぁぁぁぁぁぁぁ!るるるちゃん!おっぱいおっぱいぃぃぃぃ!」
泣き叫ぶ赤子の声は貧乏神の口腔が閉ざされた途端に遮られる。邪魔が無くなり、思いつめたような目をしたノラは貧乏神の口に手を突っ込んでバスタオルを手に取ると、るるると向き合う。
「えっ!ノ、ノラたん……?」
「……るるるお嬢様。お身体を拭きましょう。風邪をひいてしまいます」
有無を言わせない強引さで自分よりも一回り小柄なるるるの身体を丁寧にゆっくりと拭き始める。
健康的な血色の良い白い肌。身体は痩せても筋肉がついたおかげで上向きで生意気に存在を主張している。贅肉一つない腰回りだが臀部には鍛え上げられた筋肉の上にしっとりと脂肪が乗っている。
「く、くすぐったいよ……」
「おほぉ♥控えめながら出るとこはしっかり出てる♥触り心地がたまりませぇん♥」
にまにまと口角を上げながら、鼻の下をだらしなく伸ばす姿はキモオタそのもの。中性的な外見では誤魔化しきれないほどの気色悪さに堪らなくなったるるるが、全身を拭き終ってなお満足いかず素手で撫で回そうとするノラからそっと距離を置く。
「ノラたん、銃の整備でもしようか?連戦でガタがきてるかも」
「はっ!そうですね!すいません。調子に乗ってしまって……!」
るるるのジューシーな肢体を前につい距離感がバグってしまいまたやっちまった自分を恥じるノラ。いたたまれずるるるが振った話題に全力で食い付く。
「いいよいいよ。ノラたんも精神的につらかったんだよね」
内心ではノラにドン引きしていたが、この状況で仲たがいは絶対に避けたいので笑顔に勤めて内心の嫌悪感はおくびにも出さない。
「そ、そうなんです!ボクももう精神的にもう参ってしまって……あっ!これって直せます!」
二人で無理矢理話題を変えて誤魔化すが、一度広がった気まずい雰囲気は中々払拭できなかった。
救出済深層姉妹 現在8/6