10月30日 午後10時頃 深層洋館 1F 衣裳部屋
ノラの尻尾が歓喜でぶんぶんと左右に揺れる。透過するとはいえ、いちいち尻尾があたるのが不快なのか、尻尾にあたらないように貧乏神がそそとノラから距離を置く。
「赤子の体温がじぃぃぃんわり♥じわじわしみ込んでくるぅ♥秋の夜長に赤子湯たんぽ♥たっまんなーい♥ほわぁぁぁぁぁっ♥♥」
寧々丸から貰った洋館1階の地図を頼りに辿り着いた美術室のクローゼットからおんぶ紐を入手したノラはみるくを背負う。抱っこ紐もあったがちょんまげを吸い上げられたことがトラウマになったみるくに断固拒否されたため、びんぼっちゃまスタイルで剥き出しの背中の地肌に赤子の体温を直に感じることができる。
「……」
ハイテンション過ぎて気持ちの悪いリアクションのノラにみるくは養豚場の豚を見るような冷たい目になるが、おんぶあされて視線が合わない上、有頂天のノラはどこ吹く風。
「やっぱり守るべきものが背中に感じると奮い立ちますね。みるくお嬢様はこの従井ノラが必ず守りします!」
意気揚々とベレッタを構え、他の深層姉妹の救出のためゾンビが徘徊する洋館の探索を開始するノラ。しかし、脅威となるのはなにもゾンビだけではない。
「おぉっ!こんなところにベレッタのマガジンが!」
通路にある木製の棚を動かすと下からベレッタのマガジンを見つけ、懐に収めていく。弾丸だけでなく骨董品ののタイプライターに使うインクリボンや、アメリカ南西部のアークレイ山脈に自生する各種ハーブなどが何故かゴロゴロと転がっている。
「調べれば調べるほど奇妙な洋館ですね。みるくお嬢様。でも、これで大分、弾に余裕が……あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁっっっ!!!」
がしゃーん!
通路の窓ガラスが唐突に破られ、若セバスを食い殺したゾンビ犬”ケルベロス”が洋館内に侵入してきた。
「わぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁっっ!やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
がしゃーん!
絶叫して逃げるノラとみるくの退路を断つように窓ガラスを割ってもう一匹侵入。挟み撃ちにされたノラは止むえず抗戦
する。
「うわぁぁぁぁっ!くるなぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁっっっ!!!」
バン!バンバンッ!バン!バン!
狭い通路ということでケルベロスの機動力は制限されるが的が小さいうえ、泡喰ったノラはあっという間に弾倉の弾丸を使い切ってしまう。
「よ、よし、一匹仕留めた!ちょ、ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」
最後の一発でケルベロスの一匹を仕留めたまでは良かったものの、リロードの隙にケルベロスに飛び掛かられてしまう。
(ダメ!仰向けに倒れると……!)
仰向けに倒れると背負ったみるくを押しつぶしてしまうと、無理矢理に尻もちをついて肛門を強打したことにより、日頃より悪化していた痔が裂けて激痛がノラの背筋を貫く。
「いぎゃぁぁぁ!わ、このぉ!」
バウッ!バウバウッ!!
咄嗟に弾切れのベレッタを投げ出し、ナイフを構えるもケルベロスの牙から身を守るので精一杯。背中のみるくを庇った状態での抵抗に限界が来たその時
「たやぅ!」
ドスリ!
ノラがサイドアームとして所持していたダガーナイフを手に取ると、ケルベロスの眉間に躊躇なくぶっ差す。
「ないすです!みるくお嬢様!」
頭部をダガーナイフで貫かれて怯んだ隙を見逃さずに、ケルベロスの喉笛をサバイバルナイフでかき切ってケルベロスを絶命にいたらしめる。
「ありがとうございます!みるくお嬢様ぁ~~」
「ノラちゃん、無事でよかった。お尻だいじょうび?」
「お尻?いててっ!痔が裂けちゃいました。これは洒落にならない……一刻も早く治療しないと探索どこじゃ……」
ケルベロスとの戦闘以上のダメージを負った痔の患部に薬を塗るべく、安全に痔の薬を塗る場所を求めてよたよたと立ち上がった。
つづく