生まれてきて意識が芽生えた頃、何故か既視感を持っていた。
見たことがある景色、聞いたことがある音楽、習っていないのに理解出来る授業、食べたことがないのに味を知っている料理など。あるはずのない24歳までの人生経験が既視感というものを作り出していた。
そんな普通と違う既視感を持っていることが純粋に気持ち悪かった。直視するたびに幼い僕、24歳の俺…どちらが本当の自分自身なのか分からなくなりそうだから。
行き場のない感情を整理出来たのは、小学生の頃に出会った女の子のおかげだった。
出会った場所は普通の公園。ブランコに乗ってから長時間動く気配がない僕を心配になり、女の子が声をかけてくれた。
初対面であるのにも関わらず僕の悩みを聞いてくれて、話を否定もしないで真剣に聞いてくれた。
名前は聞くのは何故か負けたような気がして、せめて容姿だけでも覚えようと頑張った。
腰まである綺麗な黒髪、こちらを見つめる切れ長の目。将来は可愛いよりもカッコいいと言われそうな印象の女の子。
一生懸命に覚えようとしていた僕を見た俺は「名前を聞け」と呆れて言いながら、女の子の容姿を一緒に覚えてくれた。その時になって透明な心の壁がなくなり、散り散りだった僕と俺が一つになれた。
思い出すだけで心が温かくなる。またどこかで女の子に会いたい。
その時こそ殺し…「クソッが!」
衝動的に起こる殺害意欲を抑えるために、普段から身につけているお守りに触れる。そのまま荒ぶった息をゆっくりと落ち着かせ、ドロドロとした感情をお守りに染み込ませるようにして呑み込む。
5分ほどすると衝動的な感情がスーと身体から消え去る。
「はあ〜そろそろ無理なんだろうな」
日に日に増してくる殺害衝動を抑えるのも限界がきていることを察する。
「17歳まではなんとかなったが…」
もう平凡な日常生活は諦めた。このまま、日本で生活をしていれば犯罪者となることは確定しているのだから。
どこかで決断しなければならない。被害が出るまでに自殺することを…。
そう考えると育ててくれた両親に申し訳なくなる。こんな意味もわからない前世の記憶を持つだけでなく、殺害衝動がある化け物が息子。極め付けは最後には自殺する予定。
「残っている時間を使って親孝行しないと…とにかく最後まで普通の子として生きないとダメだ」
大丈夫、大丈夫なんとかなる。
「よし!高校に行くか」
グチャグチャとした感情を心の奥底で蓋をして普段通りの生活に戻る。いずれ決断する瞬間まで…。