闇の組織の幹部的な女がとある少女に絆されるまでの話   作:ひっふー

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襲撃

 

 「──そっちはやれたか?!」

 

 「ああ!残りはこの部屋だけだ!トップ──レオード以外は捕縛したが……更に上がいるかもしれん!気を付けろ!」

 

 ──あぁ、ダメだ。

 

 私は扉の外から聞こえてくる雑音をつまみに酒を傾けながら、そう結論を下していた。目の前で顔を青くして固まっている男──そう、レオードとやらもどうやら同じ結論らしい。

 ただ違うのは、レオードにはこれから絶望しか存在しないと言うことだろうか。可哀想に。

 

 ……ん?なるほど。確かにこんな場面で酒を傾けると言うのもいささか行儀が悪いが、許して欲しい。()()()()の外見からすればあまり良い顔をされない物だ。

 外では飲めず、ここでしか飲めなくて鬱憤が溜まっている。

 

 それもこれも、この都市が非常に少年少女の健康に気を遣わなければならないのにある。……確か、貴族子女をかき集めた学園都市だったか。忌々しい。酒程度許せば良かろうに。

 

 元々この都市は諦めろとボスに献上していたが、何故かそれは認められず──これだ。

 

 まったく、嫌になる。ため息を付くと、どうやらそれを己への怒りだと勘違いしたようだ。

 

 レオードがわめき始めた。

 

 「もっ、申し訳ありません!ここまで早期の侵入は想定しておらず──どうやら内通者がいたようで──すぐに調査を」

 

 「そうか──黙れ」

 

 「──」

 

 パクパクと口を開くだけの人形と化したレオード。人形の真似でもしているのか?笑うところなのだろうが、それよりもイライラが勝る。

 

 「いくらこの部屋の内側からは声が聞こえないとは言え、騒ぐな。煩い……それに──あぁ」

 

 目を扉へ向ける。時間だ。ふんだんに魔術を用いた木材の扉。だが、これから起こる事とを思うと怒りしか沸いてこない。

 

 「──打て!!」

 

 爆音。激しい振動と爆発。まき散らされる粉塵。

 

 ──ああ、本当に気分が悪い。

 

 そして、その思考を最後に、私の体は迫ってくる弾丸にぶつかり──弾け飛んだ。

 

 

 ◆◇

 

 

 「やったか……?」

 

 目の前に舞う血飛沫と肉片。気持ちの良いものではないが、今回だけそれは朗報と成り得る。

 立ち上がるのは土煙と木片。それが視界を覆い、地面へ散らばるそれらを捉えるのをよしとしない。だが、大まかそれの量は確認出来た。

 

 ──少し多い。人間一人と言うには多く、だが二人と言うには少なすぎる。

 

 「……これで、殺せたんでしょうか?」

 

 そしてかけられた声にリゼアは答えようとし──、

 

 「──ああ、一度な」

 

 ──凍り付いた。

 

 やっと晴れ始めた煙の中から、それは現れた。

 長い長い銀髪が揺れる。二つの金色が世界を染め上げる。

 

 そして現れたのは──幼い少女だった。

 

 「……えっ?」

 

 グサリ、と同時に一人の隊員の腹から何かが突き出る。それは、長い長い太刀であった。この時代に余りにそぐわない古の武器。だがそれは、硬質な装備を容易く貫いて一人の男の肉体に届いていた。

 ぬらりと鮮血をその身に纏い、肉体から刃が見える。それがぐちゅり、ぐちゅりとゆっくりと引き抜かれる。

 

 その持ち主、柄を握った少女は、柄を伝い流れる血を眺めながらポツリと呟いた。それは本来なら知られてはいないはずの情報。

 

 「……ふむ、ふむ……ほほう?貴様ら十数名でこの施設を襲撃したのか、感心だ……そして反吐が出る」

 

 「っ──二人とも下がれ!!コイツは見た目通りの存在じゃ──」

 

 腹を刺された程度では問題無い筈だ。そう考え、リゼアは咆えた。

 腹を刺され、倒れていた部下がゆっくりと地面に手をつき──、

 

 「……ギィ、ガァ……ェェォオオオ……あ”ぁ”あ”──ぁ」

 

 ──口の端から泡を吹きながら、再び地面へ倒れ伏した。ビクリと一回、体を魚のように震わし、そして今度こそ完全に沈黙した。目を見開く。

 あり得ない。失血死でも早すぎるし、こんな反応は起きない。剣──いや、何か特別な様相は見られない。毒針──いや、それならば最新鋭の装備が防ぐ筈だ。

 

 ならば──魔術か。

 

 「……まさか、お前」

 

 「んん?なんだ、突然戦意を失ったな。……ん、ああ、お前私が誰か気が付いたか?」

 

 幼気な少女の姿見である目の前の存在が、リゼアには突然余りにも禍々しい物として瞳に映った。そして脳裏に過るのは、裏社会を牛耳るある組織の幹部、その一人。

 今この世界で、生身単身で科学の装備よって固められた軍隊を相手取れる存在は少ない。そう、()()()

 

 

 いるのだ。『魔術』を極め、その述理に従うことで単身にして軍をすら圧倒出来る《化け物》が。

 

 

 遙か昔に魔術に傾倒し、今現代でも欠片もその隆盛を衰える事なき、希代の魔術師。

 

 その一人に名を挙げられる、闇の魔術の代名詞──、

 

 「──キトラ・ケラス」

 

 「……え?」と生き残った部下の一人が驚愕に声を漏らす。聞き慣れた名は、だが余りにも信じられない事実に理解を拒んだ。

 そしてそれを告げられた少女は、その金色の瞳に愉悦を爛々と滲ませ、言った。

 

 

 「──正解だ、正義の犬共」

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