2周目スズカさんがトレーナーを手に入れるまで 作:subcul
後半にスズカさん以外の視点入ります。
「やった!産まれたぞ!頑張ったなぁ!」
「あぁ...私の可愛い赤ちゃん...」
時計を叩きつけた瞬間意識を失い、目を開けた時に飛び込んできた光景。それは産まれたばかりの私の身体と、記憶よりも若い両親の姿でした。
産まれたばかりの...身体?嘘でしょ!?私とトレーナーさんの運命のターニングポイントである秋の天皇賞。その直前くらいに戻ると思っていたのに!?赤ちゃんの姿だなんて...
「大変です先生!産声をあげません!」
「嘘でしょ...私の赤ちゃんが...」
「しっかり!落ち着いて!何とかしてください先生!」
トレーナーさんに出会ったのはトレセン入学当初だから私は15歳。
つまりあと15年間...
「
「やった!僕らの子は生きている!」
「良かったっ!本当に良かった...」
「
「良かったですねぇ。間違いなく元気な子です」
...でも、逆にこれはいい機会なのかしら?トレーナーさんと会うまでに強い身体を作っておけば、骨折を回避出来るかもしれない...!
待っててくださいトレーナーさん...!前よりも強くなって必ず迎えに行きますから。秋の天皇賞を超えた日には...貴方と...
ふふっ!楽しみ...!
...青筋を浮かべたたづなさんが笑ってくれたような気がした
...なんで青筋なのかしら?
私は自分である程度動けるようになったと同時に散歩を始めた。流石に未発達な身体で走るのは気が引けたから。トレーナーさんと会う前に身体を壊してしまったら元も子もない。少しづつ、少しづつ。
やっと走れるようになったから走り込みをする事にした。子供が走れる範囲内で、無理をしないように。たまに連れて行って貰える草原で思い切り走るのはとても楽しくて気持ちよかった。
今日はトレセン学園の入学式。持久力を付けるようにトレーニングをしたおかげで、現時点では前世と比べてもかなり安定した走りができるようになった。と言ってもトレーナーさんの練習メニューを思い出しながらだから、かなり荒削りだとは思う。でも、他の人に師事を仰ごうとは思わなかった。
「私のトレーナーさんはあの人だけ。今更他の人に師事を仰ごうとも思わないし、何よりトレーナーさんが嫉妬してしまうかも...」
「安心してくださいトレーナーさん。私は貴方だけの愛バ。浮気なんて絶対にしません!」
「だからトレーナーさん?」
「貴方も私だけのトレーナーさんでいてくださいね?」
ふふっと思わず笑ってしまう。周りの子が若干引いたような。怯えたような表情でこちらを見てくる。トレーナーさんを愛しているだけなのに...
先生が入ってくる前に落ち着かないと...
「スズカ〜一緒にご飯食べまショウ!」
「こっちですよこっち!」
前世とも変わらずタイキとフクキタルと仲良くできている。2人とも15年ぶりだから、会った時には思わず泣いてしまいそうになった。あの頃と変わらず3人でよくご飯を食べている。
「スズカさんにんじん占いしませんか?」
にんじん占い...時たまフクキタルがやってくれた占い...
ふふっ懐かしい...
「んーー?っ!出ましたっ!夜にトレーニングをすると吉です!」
「wow!ワタシもやって欲しいデース!」
「良いでしょう良いでしょう!むむっこれは...!」
夜にトレーニング...?それって...
「やっと、やっとなのね...!」
「oh、どうしたんでスカ?スズカ?」
こうしてはいられない。早くイメージトレーニングしなくちゃ...!
「ごめんなさい失礼するわね!」
2人の返事を聞く前に部屋に駆け戻った。
「どうしたんでショウカ?」
「スズカさん結構ああなりますよねぇ」
間違いない!今夜トレーナーさんに会えるんだわ!前世では夜中にターフにいるから変な人だと思って走り去ってしまったけど、今回は絶対にそんなことはしない。
「でも取り乱さないように落ち着かなきゃ...」
いきなり抱きついたりしてもトレーナーさんは突き飛ばしたりはしないだろうけど、変なウマ娘だと思ってスカウトしてくれなくなるかもしれない。最低でもジュニア級が終わるまでは我慢しないと...
落ち着かなきゃ...落ち着かなきゃ...
...結局、瞑想をしても落ち着かず夜まで左回りしてしまった
「はっ...はっ...ふふっ...!」
軽く流すだけの予定が、しっかりとトレーニングしてしまった。やっぱり走るのは気持ちいいし、今夜は星も綺麗に見えている。【やる気】が上がってしまうのも仕方ないわよね...?
...そろそろかしら?
コース外周を見回した。
...見回してトレーナーさんを見つけた瞬間。
...【ダメだ】と思った。
...身体に血液が急速に駆け巡り、心臓もバクバクうるさい。会った時に言おうと思っていた言葉も一瞬で飛んでしまった。
「トレーナーさん!!」
...自分の脚を止めることは出来なかった。
「えっ!ちょっと待ってくれ!止まって...」
ドサッと地面に音を立てて転がる。
「いってぇー、何だよ急に」
「とれーなー、さん...とれーなーさんっ!」
彼の胸に顔を押し付けて匂いを吸い込む。ああ...久しぶりの、私の好きな匂い...
最後に嗅いだトレーナーさんの匂いは薬品の匂いにかき消されて、もはや彼自身の匂いは0と言っても良いほどだったのを思い出した。
「トレーナーさんっトレーナーさんっ...!」
止めどなく涙が溢れてくる。ずっとずっと会いたかった...
私の、私だけのトレーナーさん...
「そろそろ退いてくれ...っ!?」
「泣いて...いるのか?」
「ごめん、なさい...私...」
泣き止まないと。トレーナーさんを心配させてしまう。
その時、
「落ち着いて。外傷は無いみたいだから、多分動揺しているんだよな?」
「あそこのベンチに座って話そう。...ゆっくりで良いからな」
そう言いながら頭を撫でてくれた。トレーナーさんがいつも私が不安な時や、甘えたい時に撫でてくれていたのを思い出す。
ああ...やっぱり好きなんだわ。トレーナーさんの事...
安心してしまって、そっと意識を手放した。
[トレーナーside]
「嘘だろ...?寝ることなんてある?」
ついさっきまで元気にターフを駆けていたウマ娘が突然飛びついてきて、泣きながら眠った件について。なんてラノベがありそうだ。
「って、そんな事を言っている場合じゃないよな」
保健室はもう空いてない時間だし、この子の寮も分からない。そもそも家から通っているパターンだったらどうしようもない。
「とりあえず...通報だけはやめてくれよな...?」
ひょいと担いでどうしよう。最悪ウマ娘寮を1つづつローラー作戦するしかないのか?それは流石にどうだろうか。
〜〜♪♪♪♪♪
「うん...?」
恐らく今抱えているこの子の荷物を置いていたであろうベンチ。そこから電子音が聞こえる。たぶん携帯の着メロだ
待てよ着メロ...?
「...っ!待ってくれ!切らないでくれー!」
なんやかんや門限はもう過ぎている。寮長からの電話だとしたら渡りに船だ!
「はいもしもし!」
急いで電話を取る。良かった...
「君は誰だい?私はサイレンススズカに電話をかけたはずなのだけど」
やばい!どう反応すれば良いんだ!?相手からすれば十分に不審者。最悪ウマ娘を連れ出した変態として解雇されてしまう!
...この手で行くか。それしかない!
「俺は...サイレンススズカのトレーナーだ。今日練習を見てスカウトしたんだが、急に眠ってしまってな?手をこまねいていたんだ」
バレたら終わりだバレたら終わりだ...!
「そうなのかい?それは申し訳なかったね」
「私の名前はフジキセキ。栗東寮の寮長だよ」
ヨシっ!解雇は免れたぞ!
「そっか栗東寮か!今から連れていくよ。遅くなってこちらこそ申し訳ない」
俺は早足にサイレンススズカと荷物を抱えて向かった。
「ぜぇ...ぜぇ...やっと...着いた...」
「お疲れ様。スズカのトレーナーさん」
あれから十数分かけて抱えてきた。幾ら軽いとはいえキツいな...
「申し訳ない。あとは頼めるか?これ以上は入れない」
トレーナーはウマ娘寮に進入禁止。今の状況もグレーだ。
「うん、責任をもって部屋まで送ろう!」
ここまでトントン拍子に進んで何よりだ。サイレンススズカを引き渡そうとするが...
「嘘だろ!」
「...これは困ったなあ」
サイレンススズカがワイシャツを掴んで離さない!前に抱き抱えていたのが仇になった...!
「とりあえず力ずくで行こう!頼めるか?」
「わかった。ちゃんと踏ん張っててね...!」
両手を離してフジキセキに抱き抱えてもらい、そのまま引き剥がして貰う作戦だ。流石に離れてくれるだろう。
「んっ...!中々...手強い!」
結論から言って、離れなかった。何故そう頑ななのか。仕方なくワイシャツを脱いでワイシャツごと運んで貰うことにした。
フジキセキの憐れむような視線が辛かった...!今日はもう寝てしまおう。
心も身体も冷え冷えとしたまま寮に帰った。
成長過程飛ばしたのは許して...早くトレーナーと会わせたかったんです...