2周目スズカさんがトレーナーを手に入れるまで   作:subcul

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軌道修正を試みました。


♡マーク自重で若干シリアス?


スズカさん、デビューする

【トレーナーside】

 

 

*サイレンススズカが担当になり手続きをした翌日。トレーナーは改めて自分がスカウトしたウマ娘に舌を巻いていた。

 

 

「ははっ!やっぱり規格外だ...!」

 

 

今走らせている距離は3000m 。しかしスズカは息切れすらしていない。デビュー前でこのスタミナは末恐ろしいが、鍛えれば長距離レースすらも走れるかもしれない。

 

 

「俺が絶対に、スターにするからな...!」

 

 

初めての担当にして見つかった【大逃げができるウマ娘】。俺はそんなウマ娘を鍛え、スターにするためにトレーナーになった。こんなラッキーは逃す手はない。絶対にモノにしてみせる...!

 

 

「ふぅ...トレーナーさん。終わりました」

 

 

「あぁ、お疲れさん。バッチリ見てたぞ」

 

 

本来褒められることではないが、【3000mくらいイけるかなぁ】という何の根拠も無い憶測で走らせた。実際イケたしな。

 

 

「ふーっ、ふーっ!」

 

 

...若干息が荒いみたいだ。この距離は辛かったか?目標レースも中距離に偏っていたから、やっぱり適性はマイル〜中距離辺りか。

 

 

「良く頑張ったな。偉いぞ」

 

 

頭のひとつでも撫でてみようかと手を伸ばすと

 

 

「ごめんなさいトレーナーさん。少し待ってください」

 

 

と言われた。謎に懐かれてるから撫でるくらいが丁度いいと思ったんだが、もう少し距離を置いた方が良いのか?

 

 

「...はいっ!お願いします!」

 

 

「ん?...おっ、おう!」

 

 

耳に付けていた緑色のカバーを外し、頭を撫でやすい様に耳を畳んで差し出してきた。

 

 

「良いぞー、良い調子だ」

 

 

「んっ...///とれーなー、さん///」

 

 

...本当に謎なくらいに懐いてるな。現時点で好かれる様なことは何もしていない筈なんだが、何かしたか?俺。

 

 

「...良しっ。終わりだ」

 

 

「むーっ、残念です...!」

 

 

「そうむくれないでくれよ。一旦ベンチに座って休もう」

 

 

今のスズカは間違いなくピカイチの素質を持つウマ娘。だが、

 

 

違和感を拭いきれない。この先スズカが負けるとしたらこの違和感によるモノだと思う。

 

 

話を聞いておかなきゃな。内面のケアもトレーナーとしての仕事だ。

 

 


 

 

はぁ...♡頭撫でられるの懐かしい...!直にトレーナーさんの温もりを感じたかったからカバーを外したけど、正解だった。

 

 

身体がトレーニング後の高揚に加えて更にポカポカしてくる。

 

 

...それにしても、危なかった。昔ドーベルに教えてもらった落ち着くアロマ。それを染みこませたハンカチが無ければもっと暴走していたかも。

 

 

...若干暴走しそうになったの、バレていないかしら?ううん。きっとトレーニング直後だからバレていない筈。

 

 

「スズカ?おーい。大丈夫か?」

 

 

「...はい。大丈夫です!」

 

 

いけない...本能を無理矢理押さえつける濃度を染みこませているせいで、鈍くなっているみたい。気をつけないと...

 

 

「なら良いんだけどな?改めて聞くけど主に狙うのは中距離で間違いないか?長距離のレースはたまに出走する感じで」

 

 

「...長距離は難しいと思いますか?」

 

 

声色からして、トレーナーさんは少し心配しているように感じる。

 

 

「スタミナも頑張って付けますし、走りきる気概もあります!」

 

 

それに...

 

 

「私、速いですよ?きっと誰よりも」

 

 

私はサイレンススズカ。トレーナーさんの、トレーナーさんだけのウマ娘。勝って、勝ち続けて証明してみせる。

 

 

私のトレーナーさんは無能じゃ無いって。今度は誰にも言わせないくらいに。

 

 

「あー、えっと、別にスズカを疑ってるんじゃないんだ。デビュー戦はどれか1つの距離を決めないといけないからさ」

 

 

「一応確認の為に聞いてみただけだ」

 

 

「あっ...ごめんなさい。私...」

 

 

トレーナーさんを疑ってしまうなんて。私をいつだって信じてくれていたのに...

 

 

「でもまあ、心配事があるのは本当だ。それは間違いない」

 

 

「心配事...?」

 

 

「ああ。スズカは」

 

 

「楽しいと思って走っていないんじゃないか?」

 

 

「え?どうして...私は」

 

 

「違和感があるんだよ。出会ったときに見た自主トレ中の楽しそうな顔と、レースについて語っている時のスズカが」

 

 

「いわかん?」

 

 

私は、トレーナーさんがいる先頭の景色を見たくて、その為に...

 

 

「勝つことが使命とでも考えていそうな、何か思い詰めた様な表情だった」

 

 

「【このレースに勝ちたい】とか【三冠を獲りたい】みたいな感じでも無い」

 

 

「かといって【こんな風に走りたい】や【誰かに憧れている】訳でもない」

 

 

「もし仮に、純粋に走ることが好きなのだとしても、今のスズカにそれは感じられないんだ」

 

 

最初に感じたのは好きなモノに向き合う姿勢を懐疑的に見られた嫌悪感でも、今までの私を否定された悲しみでも無かった。

 

 

やっぱりこのヒトは私のトレーナーなんだな。と思った。

 

 

私の素質をそのまま伸ばすことだけをせずに、担当バの【本当にやりたい事】を見つけ出して尊重する姿勢。

 

 

【最初】にあったときも私が本当にしたい走りができる様に、先輩のベテラントレーナーに意見してまで助けてくれた。その先も私が走れるようにずっと、ずっと見ていてくれた。

 

 

間違いない。この人が、この人だけが

 

 

私のトレーナーさん(運命のヒト)だ。

 

 

「トレーナーさん。確かに今はあまり楽しいと感じていないかもしれません」

 

 

「じゃあ、何の為に走るんだ?なんでそんなに実績を求める?」

 

 

「私が走っている理由は」

 

 

「楽しく走る為です」

 

 

「?それってどういう...」

 

 

ポカンと惚けているトレーナーさんは可愛い♡

 

 

でも、まだ話すわけにはいかない。

 

 

「1つだけ言えることがあるとしたら...私は自分の意思で走っています」

 

 

「それじゃダメ...ですか?」

 

 

待ってて下さいトレーナーさん♡

 

 

すぐに本当のことを打ち明けて、

 

 

また一緒に歩ける日が来ますから♡

 

 


 

 

【トレーナーside】

 

 

...まだ話してくれそうにないか。

 

 

 仕方ない。時間はまだたくさんある。

 

 

「そうか、わかったよ。でも俺にも1つだけ言えることがある」

 

 

「俺は新人だから頼りなく見えるかもしれない。でもな、【新人】ではあるけど【素人】ではないんだ。」

 

 

「ウマ娘を最大現望むままに走らせたいと思って、死ぬ気で試験を通過して論文だって先輩トレーナー以上に読み込んでいる」

 

 

だから、

 

 

「なにかあれば頼ってほしい。スズカは俺の大切な担当バだ。間違っても1人で抱え込まないでくれ」

 

 

「はい...ありがとうございます...」

 

 

なにか興奮していたスズカはこの言葉を皮切りに落ち着いた。しかし話を聞いている途中からスズカが悲しそうな表情をしていたのが、酷く気になった。

 

 

結局その日はそれで終わってしまった。

 

 

俺がスズカを理解できるのだろうか。

 

 

俺は寄り添えていないのだろうか。

 

 


 

 

*デビュー戦当日

 

 

今日は私の【戦績】として数えられるレースの初陣。芝2000mの良バ場。これ以上ない程コンディションも良い。

 

 

「今なら力を出し切れそう...!」

 

 

ふーっと息を吐き程よくリラックスする。トレーナーさんにいち早く打ち明ける為にも、デビュー戦でつまずきたくない。

 

 

【でも、これで良いの?】

 

 

トレーナーさんに言われたことを思い出す。実績の為に走ることだけを考えていたけど、私が本当にしたい走りは...

 

 

「ここで1番人気を紹介しましょう!8番サイレンススズカ!模擬レースからその頭角を表し、注目を集めています!」

 

 

「私イチオシのウマ娘です。活躍に期待したいところですね」

 

 

...考えるのはあと。今は走らないと

 

 

ムダのないスタートダッシュをイメージする。

 

 

「一斉にスタートです!」

 

 

バンッという音と共に勢いよく加速する。

 

 

前へ前へ。少しでも前へ。

 

 

「先頭が速いのか、レースはやや縦長の展開となっています!」

 

 

私が好きな景色へ近づく為に。

 

 

「逃げる逃げるサイレンススズカ!」

 

 

「彼女の脚質に合っていますね」

 

 

加速して加速して、

 

 

「第3コーナーに差し掛かったぞ!ここから差し返すことができるのか!?」

 

 

「依然として大差が着いています!他のウマ娘は大変辛い状況ですよ!」

 

 

音が消え広がるあぜ道。そう...!この感覚!

 

 

「駆け抜けるっ...!」

 

 

「サイレンススズカ更に加速したぞ!?」

 

 

「とてつもないスピードとスタミナです!大差をつけてなおまだ加速します!」

 

 

もっと早く!もっと先へ!

 

 

「サイレンススズカ!今1着でゴールイン!とてつもない大差をつけて圧勝だ!」

 

 

「この先が楽しみなウマ娘です!この娘を差し返せるウマ娘がいるのか!」

 

 

あれ?...あれ?

 

 

気がついたらレースが終わっていた。自分でも知らない内にスタミナが付いていたみたい...

 

 

もっと考えないと加速しきれない。注意しないと...

 

 

若干気落ちしながら辺りを見回すと、

 

 

「スズカ!お疲れさん!」

 

 

変わらない笑顔でトレーナーさんが待っていてくれた。

 

 

「大好き!」

 

 

うぐっという声を漏らしながら、それでもトレーナーさんは私を受け止めてくれた。

 

 

本当の意味で分かり合える様に、速く認められないといけない。

 

 

「私、頑張りますからっ!」

 

 

彼の手がぎこちなく髪に触れた。





パソコンで打つことによりスマホの5倍の速さを手に入れました。


間が空いたのはスランプ(?)です。


今後、日常のひとコマという形で甘いパートも書いていきたいです。
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