2周目スズカさんがトレーナーを手に入れるまで   作:subcul

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作者にそういう知識も経験も無いので、かなり難航しました。


スズカさん、お出かけする【上】

【スズカside】

 

 

今日は待ちに待った、トレーナーさんとのお出かけの日!それもトレーナーさんから誘ってくれた!

 

 

「ふふっトレーナーさん♪」

 

 

こんなに刺激的なことは何時ぶりかしら...♪前世では最初の一年間はお互いハジメテだったから、なかなか距離を縮めれなかった。何でもっと早くにトレーナーさんの魅力に気が付かなかったのか。

 

 

...早く気が付けばその分イチャイチャ出来たのに。

 

 

自分でも異常だとわかる程に尻尾が揺れてしまう。それも昨日から。

 

 

「トレーナーさんとお出かけ♪楽しみだわ...」

 

 

「あぁぁ!尻尾を振り回すのはやめてくださーい!開運グッズが!」

 

 

「wow!情熱的ですネ!」

 

 

なんて、フクキタルとタイキに迷惑をかけてしまった。

 

 

「どんな服がいいかしら?」

 

 

こんなこともあろうかと、何着かトレンドに合わせた服を買っておいて良かった。収納スペースに詰められた服たちを品定めしながら思う。

 

 

問題があるとすれば...

 

 

「トレーナーさんの好みがわからない!」

 

 

あの頃は走ることしか頭に無くて、服もジャージや体操着を除けば一着しか持っていなかった。

 

 

トレセン学園では基本制服だしトレーニングもジャージですることが多い。下着さえあれば困らないと思って(実際困らなかった)寮にもお気に入りだったあの一着しか持ってこなかったから。

 

 

「どうすれば良いの...!?」

 

 

現状でトレーナーさんとはいい関係を築けていると思う。もっと関係を進めるために彼の好みに近づかないと。悩んでいる間に時間は刻一刻と過ぎ、待ち合わせまであと一時間をきっている。

 

 

「トレーナーさんのことを一番理解しているのは私...考えればわかるはず...!」

 

 

辿る。トレーナーさんとの記憶を。言動、表情、全てを鮮明に思い出せる。

 

 

そして、気が付く。

 

 

「今まで何を悩んでいたのかしら、私は♪」

 

 

私と彼は人バ一体。運命を誓ったパートナー(恋人)。お気に入りで、彼もイメージに合っていると褒めてくれたあの服を着ていけば...

 

 

颯爽と身支度をし、パタパタと駆けて行った。

 

 


 

 

【トレーナーside】

 

 

午前10時。駅前。そこで俺は担当バのサイレンススズカと待ち合わせしている。正直未成年とプライベートで会うことは気が気でないが、これも可愛い担当バをより深く知る為。

 

 

ある程度は割り切ろう(開き直ろう)。大分早くに着いてしまったせいか、まだまだ余裕はありそうだ。一度トイレにでも行こう。

 

 

そう思ったが、見つけた。人の波の中でも一際目が惹き付けられる清廉な姿。担当バ、サイレンススズカの姿を。

 

 

それにしても、

 

 

「すげぇ良く似合っている...」

 

 

白いブラウスに、深い緑色のフレアスカート。胸元のリボンや普段から付けている耳のカバーも緑色なので、全体的に色が調和している感じがする。

 

 

「ありがとうございます♡トレーナーさん♡」

 

 

頬を染めながらスズカは微笑んだ。

 

 

「本当に...なんて言うかな、しっくりきてるんだ。制服とジャージくらいしか見てないはずなのに」

 

 

【スズカと言えば緑と白】そんなイメージが勝手にあったと言うか...自分でもよくわからないが、本当にしっくりきている。

 

 

「っ!...お気に入りなんです、この服。緑はターフ。白は雲みたいでこの二色もとても好きな色なんですよ♪」

 

 

「そうなんだ!」

 

 

...よし、良い調子だ!このままより深くスズカのことを知っていこう。しかし今日しか探れない訳でもないし、スズカにストレスを与えない様に慎重に。ゆっくりと触れ合っていけば良いのだから。

 

 

まずは好きな色っと。緑と白か。後でメモ帳にでも書いておこう。勝負服を作るときに役に立つかもしれないな。

 

 

「もうすぐ映画が始まるから行こうか」

 

 

「はいっ♪トレーナーさん♪」

 

 

何よりもスズカが楽しく一日を過ごせるように。たづなさんのアドバイスを参考に頑張らねば!

 

 

⏰⏰⏰

 

 

*映画館

 

 

休日で昼前ということもあってか、人が多い。周りには子連れの夫婦や高校生。カップルの人影も多く見えた。

 

 

「何か観たい映画あるか?」

 

 

ケースには様々な映画のビラが陳列されていて、見ているだけで心が踊る。特にこの...

 

 

「トレーナーさん?」

 

 

「あっハイ。ごめんない...」

 

 

手に持っていた【UMARS 〜火星大侵攻〜 封じられた秘宝】のビラを叩き落とされてしまった。今日はスズカが楽しく一日を過ごせるように。俺一人で見に来ればいいだけの話だ。

 

 

...そっと落ちたビラをポケットにねじ込んだ。

 

 

「今のは冗談だよ、うん。本当はこれでも観ようかなって」

 

 

そう言って恋愛映画のビラを手に取る。昨日たづなさんに教えてもらった今一番アツい恋愛映画らしい。内容は引退した競走バが、自分のトレーナーと結婚して幸せな日常を送るという物語。

 

 

「意外です。トレーナーさんはこういう映画にも興味があるんですね?」

 

 

尻尾を微かに揺らしながらスズカは言う。恋愛映画もわりと好きらしい。趣味は一般的な女子高校生のソレなのかもしれない。

 

 

「職業柄、大きい声では言えないけどな。俺はお互いに好きあっていれば別に良いと思ってるからさ」

 

 

あくまでも卒業後な?と補足した。

 

 

「はい...♡私もそう思います♡好きあってさえいれば♡」

 

 

なるほど。スキンシップが多いからもしかして...とも思ったが、スズカが恋愛感情を向けてくることは無さそうだな。

 

 

「じゃあこの映画を観ようか。荷物が多くなるだろうから、俺が売店に行ってくるよ。チケット頼めるか?」

 

 

「はい♪わかりました♪飲み物はスペライトでお願いします♪」

 

 

「わかった。買い終わったら合流しよう」

 

 


 

 

【スズカside】

 

 

頭がふわふわしてどうしよう...♡尋常じゃないくらいに気分が高揚している。歩いているとき、トレーナーさんの背中に尻尾を這わせていたのに気付かれたかしら...♡

 

 

券売機の順番が回ってきたのでモニターに目を通す。タイトルと時間を選んで、次は...

 

 

「あの...少し良いですか?」

 

 

「はい?何ですか...?」

 

 

横から見知らぬ女性に話しかけられた。コートを着てマスクとサングラスで顔を覆っている。怪しい...

 

 

「実は彼氏が急に来れなくなってしまって...貴方にこれを使って欲しいんです」

 

 

そう言って渡してきたのは

 

 

「嘘でしょ...カ、カップルシート...!?」

 

 

予約必須らしいカップルシートのチケットだった。映画のタイトルも時間帯もピッタリ買おうとしていたチケットと同じ...!

 

 

「では、私は失礼します」

 

 

渡すだけ渡して行ってしまうの...!?

 

 

「待ってください!あの...ありがとうございます!」

 

 

「いえ、その方が都合が良いので」

 

 

そのまま飄々と行ってしまった。何にしてもどさくさに紛れてトレーナーさんとイチャイチャできるかも♡

 

 

...とりあえず目立つところでトレーナーさんを待たなくちゃ。

 

 

足取り軽くその場を離れた。

 

 

【合流後】

 

 

「ごめんスズカ。遅くなった」

 

 

「いえ、大丈夫です!もう開いてるみたいですよ!早く行きましょう!」

 

 

グイグイとトレーナーさんの上着を引っ張る。座席に驚く姿が目に浮かぶ...♡

 

 

案の定...

 

 

「えっ嘘だよな...?席を間違えるなんておっちょこちょいダナー」

 

 

「目を逸らさないで♡この席ですよ♡親切な人に譲ってもらったんです...♡」

 

 

「しょうが無いなー席を買い直そう!今からでも何とか変えれるかもしれないs」

 

 

「ダメですよ...?」

 

 

というのを繰り返して納得してもらった。よくわからないけど絶好のチャンス!逃す訳にはいかない...!

 

 

「楽しみですね...♡トレーナーさん?」

 

 


 

 

【トレーナーside】

 

 

まだ明るい場内をスズカと歩く。本当はもっと心が踊っていたり、それこそスズカの事を知ろうと躍起にもなっていた筈だ。

 

 

「なんてこった...」

 

 

憂鬱さがシートを目の前にして増長した。リクライニングが可能な座り心地の良さそうなシート。パーテーションを設けているから手元が見やすくなるライトを付けても迷惑にならなそうだ。

 

 

不満は、

 

 

「ペアシート、ですね♡」

 

 

座席が分かれていないこと。見られでもしたら社会的にマズい。普通に映画館でも攻めている方だと言うのに...!

 

 

「早く座りましょう...?トレーナーさん♡」

 

 

...俺は生きて帰れるだろうか。

 

 

⏰⏰⏰

 

 

結論から言って、スズカは普通に映画に引き込まれていた。【意外と】

ではなく【結構】好きなのかもしれない。やはり相談しておいて良かった...

 

 

移動先の、個人経営の隠れ家的な喫茶店でコーヒーを啜りながら思う。

 

 

「引退後の2人が農家をやっているのは羨ましかったな。のどかで、幸せなそうだった」

 

 

「スズカはどのシーンが好きだった?」

 

 

単純な興味として問いかけた。

 

 

「何度生まれ変わっても必ず逢いに行く」

 

「私もいつか、胸を張って言いたいです」

 

 

熱に浮かされた様にそう言った。


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