実力主義の教室にようこそせず   作:太郎

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1話の平均って何文字くらいなんやろか?


2話

 

「ずばり、授業の出席はいくらで買えますか?」

 

 

 佐枝ちゃん先生は目をギョッと開く。驚いている。授業をサボりたい! せや! 出席を買えばええんや! なんてこと多くの生徒が考えそうなことなのに、歴代の先輩方にはいなかったのだろうか? 

 

「学生の本分は勉強だ。授業の出席なんて売っているはずないだろう」

 

「嘘ですよね。売っているはずです」

 

 佐枝ちゃん先生はため息をつき、私に問う。

 

「なぜそう思う?」

 

「佐枝ちゃん先生は朝、二つのことを言ってました。一つは先程も言った通り、この学校においてポイントで買えないものはない。もう一つは10万ポイントは今の私たちの評価である。つまるところ、来月からの学校から支給されるお小遣いは己の評価によって変わるのでしょう。そして、恐らく授業に欠席することは評価を下げる対象でしょう。誰しも病気や怪我で授業に欠席する場面が絶対出てくる。つまり、評価が下がる瞬間がくる。その下がった評価を元に戻すために出席をポイントで買うという発想に至るのは当たり前のこと。なぜなら、佐枝ちゃん先生曰く、この学校で買えないものはないらしいから。もう一度、聞きます。授業の出席はいくらで買えますか?」

 

 ヤバい、めっちゃ自信満々にドヤ顔で語っちゃった。間違ってたらどうしよう。恥ず。これで買えなかったら、私はこのドヤ顔をどうしまえばいいの? そんなことを考えていると、佐枝ちゃん先生から先程よりも大きなため息が聞こえてくる。

 

「茶柱先生だ。1授業につき、1000ポイント。それで売ってやろう」

 

 よかった。買えた。私はドヤ顔のままでいいらしい。

 

「やっぱり買えるんじゃないですか。ヒヤヒヤさせてくるな〜。欠席した授業に対して、出席の購入期限はいつまでですか?」

 

「成績を付ける関係から、欠席した次の日の放課後までだ」

 

「なるほど、では欠席するより前に先に購入しておくこと、そしてメールでポイントを送金することでの購入は可能ですか?」

 

「どちらも可能だ」

 

 月のはじめに1ヶ月分のポイントを全部払っちゃうのが楽でいいな。

 

「なるほど、ありがとうございます。時間貰っちゃって申し訳ないんですけど、あと二つほど質問があります。まずひとつ、この学校の単位の取得条件を教えてください」

 

「ふむ、少し待て」

 

 佐枝ちゃん先生はそう言うと席を立ち、職員室の奥の方へ向かう。私はドヤ顔を静めながら考える。

 高校の単位の取得条件は普通の高校だと、だいたいは授業への3分の2以上の出席と試験で赤点を取らない、もし取ってしまったらその後補習を受け再試験合格することだろう。そして、年間授業日数は190〜200日。この学校にもこれが適応されているとして、1週間のうち2日が7限残りが6限まで授業があるので一日の平均授業数は6.4授業。

 よって、私が退学になることなくこの学校で1年過ごすために必要なポイントは最低190日ײ/₃ ×6.4授業×1000ポイントの81万666.66……ポイント。とりあえず、今月分は足りるとしても来月からは足りない。どこかで増やさなければ。

 

「すまない、待たせたな。単位の取得条件は授業への3分の2以上の出席、赤点を取らないこと。この2つだ。まぁ普通の高校と一緒だな」

 

 どうやら、私の予想はあっていたらしい。まぁこの学校も国運営なのにその他の公立高校と違ったら変だもんね。しかし、赤点を取らないこととわざわざ言うということは補習は無いのだろうか? まぁこれは私には関係ない事だからいい。いざという時は点をポイントで買えばいい。

 

「ありがとうございます。では最後の質問なんですけど、部活一覧とその部活が行われている場所の一覧を頂けませんか?」

 

 これはズバリ賭けによるポイントの増加。これはボードゲームやカードゲーム、陸上や水泳などの競争系に多いだろう。と言っても陸上や水泳で本職に勝てる気はしないが。もしくは得意そうな部活があれば入っていい成績を残すことで評価を上げつつもしかしたら直接ポイントが貰えるのではないかと思ったからだ。

 

「それは渡してもいいが、明日ある部活動紹介の後でないと新入生は部活に参加出来ないぞ。それにお前が何を考えているかはなんとなく分かるが、それも明日の部活動紹介でそれぞれの部活の特色を聞いてからでも遅くはないだろう」

 

 佐枝ちゃん先生には私が何をしたいか見抜かれているんだろう。というか毎年、私のような生徒が一定数いるんだろう。それにしても部活動紹介で賭けをしていることを公言する部活はあるのだろうか? 

 

「なるほど。分かりました。明日、部活動紹介に行ってみようと思うので、一覧は大丈夫です。わざわざ教えて頂きありがとうございます」

 

 私がそう言って頭を下げると、佐枝ちゃん先生はまた小さくため息をつき言う。

 

「構わない、また何か聞きたいことや困ったことがあればいつでも来い。できれば授業にも出て欲しいが」

 

 なんていい先生なのだろう。きっと佐枝ちゃん先生はDクラスのみんなから慕われるに違いない。

 

「はい、ありがとうございます。では失礼します」

 

 私はそう言い、職員室を出るとショッピングモールへ向かう。ホントなら部活に殴り込みという名の入部をしようと思っていたが、それは明日行くことになった。よって今は昼食が大切である。

 あぁしまった。部活動紹介がいつから始まるか聞いとけばよかった。明日も学校に行かなきゃじゃん。適当にクラスメイト一人捕まえて連絡先交換しとけばよかった。いや、それに関しては今からでも遅くないな。ショッピングモールまでの道のりで誰かを見つけよう。

 

 

 周りに注意を巡らしていたが、クラスメイトを誰一人見つけることなくショッピングモールに到着する。広い。案内板を見るに多くの店が中に入っているようだ。いろいろと回りたいところではあるが今日は昼食の買い出しのみをして寮に戻ろうと思い、食料品売り場へ行くと思いがけないものが目に入る。無料と書かれたワゴンだ。

 

 その中には食料品や日用品が入っている。そして無料の文字の下には「1ヶ月につき3点まで」と書かれている。

 あれ? これもしかしなくても、お小遣い0ポイントになる可能性ある? このような無料商品がコンビニや食堂にもあるのなら1ヶ月0ポイント生活は全然可能だ。食費が限りなく0ポイントになったことを喜べばいいのか、お小遣いが0になる可能性が大なことを悲しめばいいのか分からない。

 

 私はワゴンの中から塩、醤油、サラダ油をカゴに入れ、袋麺とパスタ、ソースを取るとレジへ向かう。調味料は大切。料理のさしすせそが大切なのだ。味噌? 知らない子だな。しかし、早急にポイントを集めねば焼きそば&パスタ(どちらも具なし)が永遠と続いてしまう。

 

 今日のうちに食堂も見に行ってみようと思い、食堂に入るとそれなりの生徒がいる。そしてやはりあった無料メニュー。山菜定食。山菜の天ぷらに味噌汁、ご飯。普通に美味しそうだ。こちらには回数制限がないようだし、今日のというかこれからしばらくの昼食はこれにしよう。お野菜も取れるし。

 

「山菜定食ひとつ下さい」

 

 食堂のおばちゃんに注文すると、周りからクスクスと笑い声が聞こえる。その方向に視線を向けると、おそらく上級生であろうと思われる女子生徒がこちらを見て笑っている。もしかして山菜定食を頼むのは評価が低く学校から支給されるポイントが少ないヤツの特徴みたいな風潮があるのだろうか? タダなんだから、みんな頼めばいいのに。

 

「山菜定食ひとつ、お待ち!」

 

 食堂のおばちゃんから山菜定食を受け取り、席を探すと1人でモソモソと山菜定食を食べている女子生徒を見つける。

 

「ここ座ってもいいですか?」

 

 その女子生徒は私の問いかけに、少し驚きつつも返してくれる。

 

「うん、いいよ」

 

「ありがとうございます。私、今日からこの学校に入学した松崎 美紀って言います。先輩ですよね?」

 

「うん、私は2年の吉田 かりん。せっかくの初食堂なんだからもっといいもの食べればいいのに」

 

 かりんちゃん先輩は私に少し羨ましそうなそして悲しそうな表情を向けながら言う。

 

「今後、貰えるポイントがどれくらい減るかわからないので、少しでも節約したいですからね。逆に私が山菜定食を頼んだ時に笑ってくる人たちの方が不思議ですよ。あっ、かりんちゃん先輩はもしかして山菜定食を頼むしかないタイプですか?」

 

「えっ!」

 

 かりんちゃん先輩が大きな声を上げる。

 

「どうしたんですか?」

 

 かりんちゃん先輩は口を手で抑えると小声で尋ねてくる。

 

「なんで、貰えるポイントが減るって思ったの?」

 

「? 担任の先生が言ってましたよ」

 

 私は首を傾げながら答える。

 

「ホントに?」

 

「えぇ。10万ポイントはお前らの評価だ。って佐枝ちゃん先生が。これって評価によっては貰えるポイントが変わるってことですよね」

 

 かりんちゃん先輩は目を見開き、ゆっくり言う。

 

「美紀ちゃんは何クラスなの?」

 

「Dですよ。かりんちゃん先輩は?」

 

 かりんちゃん先輩が口を開こうとした時、後ろから声が聞こえる

 

「やっぱり不良品同士は引かれ合うのかしら」

 

 私たちをバカにしたような声だ。後ろを振り向くと先程私を笑っていた女子生徒のうちの一人だ。目が合うと私のことをバカにしたようにニヤッと笑い、食堂から出ていく。

 変なのもいるなーと思いつつ、かりんちゃん先輩の方を向き直ると、悲しげな表情を浮かべている。あんなのほっとけばいいのに。

 

「さっきの知り合いですか? 変なのもいるもんですね。不良品同士ってどういう意味なんでしょう」

 

 私の質問に、かりんちゃん先輩は慌ててトレイを持ちながら立ち上がり言う

 

「それは言えないな。でもその前の質問には答えるよ。私はDクラスだし、山菜定食を頼むしかないタイプだよ。声掛けてくれてありがと、久しぶりに昼食が楽しかったよ」

 

 かりんちゃん先輩はそう言ってトレイを返却口に返し、食堂から出ていった。

 私は少し冷めた山菜の天ぷらを食べながら考える。美味しい。かりんちゃん先輩と私は不良品同士。思いつく共通点はクラスと頼んだ無料の定食 。

 無料の定食を頼む主な理由はポイントがないから。そして、ポイントがない奴を不良品と呼ぶのは分かる。だってポイントがないのは学校からの評価が低いとほぼ同義だから。

 

 私を笑った先輩は私がDクラスと言った後に私とかりんちゃん先輩を不良品同士と言った。そして私自身も不良品である自覚はある。また今日のクラスでの自己紹介を思い出しても、六助くんに赤髪不良くん含め自己紹介もせずに出ていった生徒達。

 今日だけで数人、社会不適合者がDクラスにいることが分かる。もしかしてクラス分けには意味があり、Dクラスはホントに不良品の集まりなのだろうか。さらにここから予想するならAからDの順に優秀なのだろう。

 

 だけど、そのようにする意味はなんだろう? パッと思いつくのだと、優秀な生徒に敢えて不良品を見せることでそのような不良品にならないようにと戒めること。しかし、それなら3年間クラス替えなしという制度が邪魔だ。Aクラスの生徒がただ上で胡座をかくだけになる。

 もう1つ自分に都合のいいことを思いつくのなら、学校からの評価は個人ではなくクラスに与えられること。そしてその評価をクラス間で競わせることだろう。そうすることで上は常に下から追われる意識、下は下克上を狙う意識が芽生え、互いに成長を促すことが出来る。そして何より集団で成長することの難しさを学べるだろう。

 

 この仮説があっているなら、私にとってメリット、デメリットがそれぞれある。

 メリットは私自身の評価は低くとも、クラスメイトの頑張り次第ではそれなりのポイントの支給が行われること。しかし、不良品と言われるDクラスに期待できるのだろうか? 私のような生徒の集まりの可能性もある。かりんちゃん先輩も月のはじめから山菜定食を食べていたわけだし。

 デメリットはクラスの評価のためにクラスメイトから学校に来いという催促が来る可能性があることだろう。これは早ければ3日後位から来るかもしれない。めんどくさい。まぁ全く来ない可能性も同じくらいあるが。しかし、Dクラスが評価を上げたいと考えるのなら私がサボり続けている限り、Dクラスで友達を作ることは厳しそうだ。他クラスか部活で友達を作らねば。

 最後に残しておいたミツバの天ぷらを食べ、私は立ち上がる。いろいろと悩んだけど、まぁどうにかなるか。寮に帰ろ。

 

 あっ、もし仮説があってるなら、佐枝ちゃん先生にドヤ顔で語ったこと間違ってたじゃん。恥ず。




というわけでなんとなく学校のシステムの真実に近づいたオリ主ちゃん。僕は原作にわかであり、よう実はほぼ二次創作しか読んでいないのでこれは矛盾してるよってとこあれば遠慮なく教えてください。逆に僕に知識があるが故にオリ主ちゃんの思考がおかしかったりしても教えてください。
あとかりんちゃん先輩はモブです。

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