実力主義の教室にようこそせず   作:太郎

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お気に入り100件突破。ありがとうございます。僕は承認欲求の権化なのでみんなもっと評価とか感想くれてもええんやで。


4話

 洋介くんたちと別れ、図書室を目指す。この学校の図書室はさすがに地域の図書館よりは小さくともかなりの蔵書数を誇っているらしい。何を隠そう私は読書が好きなのだ。

 ルンルン気分で図書室のドアを開くと中にはまばらに生徒がいる。あと数分で昼休みも終わるので、みんなすぐに出ていくことだろう。入り口近くにある新書のコーナーに目を向けるとめっちゃ充実してる。すご!さすが都会!私の最寄りの図書館ではこうはいかない。先週発売したばっかの本とかあるじゃん。

 私はその宝の中から好きな推理小説シリーズの新刊を見つけて取る。部活動紹介まであと4時間程あるので本がもう2冊は欲しいと思い、新刊コーナーに置いてある上下巻完結の恋愛小説を手に取る。これにしよう。よしっと思い席に座ると周りに人っ子一人いない。時計を見れば既に5限が始まっている。チャイムの音が聞こえなかっただと!?

 しかし司書さんらしき人に退室は促されないし、授業時間中もここにいていいようだ。ちょっとした安堵とともに私は推理小説を開く。私に解けない謎はない。じっちゃんの名にかけて、真実はいつも一つ。

 

 

 

 面白かった。いつもならノートに分かったことや推理を書いていき犯人を探す探偵役として推理小説には参加する派なのだが、今日はノートを持っていなかったため一般観衆役として参加したがそれでもやはり面白いものだ。このシリーズは新刊のでるペースも早いからいい。

 ぐーっと伸びをしてから恋愛小説へと手を伸ばす。私は雑食なので恋愛小説もよく読むがやはり好みとしてはあまり好きではないのだ。しかし、読むからにはこの恋成就されるのみよ。

 

 

 

 面白くなかった。あんだけネタにされときながらまだ「おもしれー女」のフレーズを使う作者様がいるとは、やっぱり恋愛小説は肌に合わない。どうしてだろう。私自身、恋をしたことがないからだろうか?

 それなりの数、告白されたこともあるが、どうしても好きな人は現れない。この人のためなら働いてもいいと思える人に会ったことがないのだ。このままでは私の将来はニートまっしぐらだろう。六助くんのお嫁にとってもらってヒモにでもなろうかな?でもあれの相手するのはダルいな。金無き自由と金有り不自由なら私は金無き自由を選ぶ。はぁ宝くじ当てたい。

 

「あなたも本が好きなんですか?今読んでいたそれもそちらに置いてある推理小説もつい先日発売したばかりのものですよね。」

 

 ふと前から声がかかる。顔を上げると可愛らしいのほほんとした銀髪少女がこちらに目を向けている。なんだその期待でキラキラした目は。表情はないのに。というか図書室に人がいっぱいいる。どうやら既に放課後に突入しているらしい。

 

「この図書室では新書か歴史書、参考書くらいしか新しく読むものがないくらいは好きかな。」

 

「それはすごいですねっ!わたしもミステリーはかなり読んでいるのですが、この図書室にある分全部読んだとはさすがに言えません!」

 

 銀髪少女は嬉しそうに声を大きくする。どうやら私は期待には応えれたらしい。

 

「ちょっと声、大きいよ。」

 

 私が口元に指を持っていきしーっとすると、銀髪少女ちゃんはハッとして周りに頭を下げてから恥ずかしそうにこちらを見る。

 

「すみません、クラスメイトには読書好きがいなさそうだったのでつい興奮してしまいました。わたしは1年Cクラスの椎名 ひよりと言います。」

 

 どうやら銀髪少女ちゃんはひよりちゃんと言い、同学年らしい。

 

「私は1年Dクラスの松崎 美紀。よろしくね、ひよりちゃん。」

 

 私はそう言いながら携帯で時間を確認する。17時20分。私の気のせいでなければもう既に部活動紹介は始まっている。ヤバい。

 

「ごめん、ひよりちゃん。せっかく話しかけてもらったのに悪いんだけど、部活動紹介に行きたいから私もう行くね。あっ連絡先だけ交換しとこ。」

 

「あ、そうなんですね。」

 

 そんな捨てられた子犬のような目をしないでおくれ。そうやって連絡先を交換すると私は第一体育館へ急ぐ。それにしても連絡帳に初めて人が登録された。それも他クラス。私はきっとこの学校では自クラスよりも他クラスとの交流が大切になってくるはずだ。上がる頬を必死に抑えつつ第一体育館へ走る。

 

 第一体育館前に着くと中からガヤガヤと話しているような声が聞こえる。私は扉の前で息を整えてから、扉を開く。

 どうやら説明会は既に終わり、みんな入部の手続きをしているらしい。間に合わなかった。悔しい。とりあえず、受付のところに立っている部活動の名前が書かれた看板に目を向け、目的の部を探す。

 やっぱりあったボードゲーム部。誰も並んでない。どのような部活か聞きそびれたし、受付にいる先輩に直接聞くとしよう。私はボードゲーム部の受付まで足を運び、受付をしている男子生徒に小さく声をかける。

 

「この部活では賭け事は行われていますか?」

 

 これが1番大切なことだ。いくら楽しそうな部活でもここでNOと返ってくればこの部活には入らない。

 

「あぁ特に決まった日はないが、部員同士でよく行われている。」

 

 よし!やはり私の予想は外れていなかったらしい。

 

「その賭けには部活に所属していないと参加できませんか?それとも道場破りみたいに賭けをしたい時に部室に訪れたら参加させて貰えますか?」

 

「その時部室にいる部員が断らなければ可能だが、見ず知らずの生徒と賭けをする部員は少ないかもな。」

 

 なるほど毎月ある程度まとまった額を稼ぐには部員になった方が楽そうだ。それもそうか。出会い頭に賭けに誘われて乗る人の方が少ないだろう。

 

「ふむ、では部員は何名くらいいますか?あとこの部活に所属するにあたっての決まり事などは?」

 

「部員は俺を合わせて9人。特にこれといった決まり事はなく、毎日部室は開いてるが誰も来ない日も少なくない。あぁでも感想戦だけはみんなきちっとやるな。一応部活だから共に向上していこうという考えはみんな持っている。」

 

 どうやらほんとに緩いらしい。感想戦も大切なのは分かるから大歓迎だ。賭けが行われていて決まり事などはほぼなく緩い。まるで私のために用意された部活じゃないか。よし、この部活に入部させてもらおう。

 

「なるほど。私は1年Dクラスの松崎 美紀です。ぜひ、ボードゲーム部に入部させてもらえないでしょうか?」

 

「あぁ、もちろん歓迎だ。今年は誰も新入部員が入らないのかとヒヤヒヤしていたよ。俺は3年Bクラスの近藤 栄作だ。一応部長を努めさせてもらってる。これからよろしくな。ここに名前とクラスを書いてくれるか?」

 

 そう言って、入部届けをこちらに差し出す栄作先輩。私はそこに必要事項を書きつつ、栄作先輩に尋ねる。

 

「今日は部室に誰か来てますか?」

 

「あぁ俺を除いた部員がいるはずだ。みんな新入部員が入るかどうかワクワクしているからな。今から行くのか?」

 

 私は入部届けを栄作先輩に手渡して言う。

 

「はい、先輩方にあいさつついでに軽く顔を出してきます。」

 

「きっと喜ぶよ。場所は別棟の4-D教室だ。場所は分かるか?」

 

「はい、分かります。では行ってきますね。」

 

 私は栄作先輩に頭を下げ、ボードゲーム部を目指す。新入生は今のところ私1人か。誰かこの後入ってくれるかな?

 できればAクラスかBクラスかのどっちかが好ましい。ひよりちゃんとももっと仲良くならなければ。A、B、Cクラスにそれぞれ友達がいれば今後絶対に役立つ。

 4-Dの教室発見。体が高揚しているのを感じながら私はノックをする。

 

「はいどうぞ〜」

 

 優しそうな声が中から聞こえてくる。扉を開け入室すると8つの顔、16個の目がこちらを嬉しそうに見ている。

 

「もしかして新入部員かなっ?」

 

 嬉しそうに弾んだ声だ。ほんとに新入部員が来るのを楽しみに待っていたらしい。

 

「はい、今日からボードゲーム部に入部させて頂くことになりました。1年Dクラスの松崎 美紀と言います。どうぞよろしくお願いします。」

 

 私のあいさつを皮切りに先輩方があいさつをしてくれる。どうやら歓迎ムードのようだ。良かった。しかし、今日はワイワイするために来たのではないのだ。

 

「入部初日でこんなことを言うのは失礼かもしれませんが、先輩方、ぜひ私と賭けを行っていただけないでしょうか?」

 

 先輩方の暖かな目が一気に鋭くなる。

 

「それはいいけど、何で賭けをするの?この部活での王道は将棋、オセロ、チェスのどれかかな?」

 

「その3つならどれでも構いません。私から勝負を申し込むのですから、先輩方の得意なもので。」

 

 私はなにを隠そう小学五年生のときに、ボードゲーム極めたらカッコよくねと思い、学校にほぼ行かずに将棋にオセロ、チェスの練習を死ぬほどやったのだ。

 

「ふ〜ん、随分と舐められたものだね。いいよやってあげる。いくら賭けるの?」

 

「今、私は約7万2000ポイント持っているので、それ以下なら何ポイントでも構いませんよ。」

 

「なら1万ポイントで。私は将棋が得意で対戦してもらおっかな。」

 

「分かりました。よろしくお願いします。」

 

 そうして、二人で駒を並べゲームをスタートする。他の先輩方も見学しているようだ。序盤は様子見として軽く指すが、先輩はあまり強くないように感じる。結局、最初から最後までこちらの優勢のまま私の勝利でゲームは終わる。

 

「これで詰みですね。」

 

「いやー強いね!いきなり賭けを吹っかけてくるだけのことはあるよ!ねーねーここはどうしてこう指したの?」

 

 割とフルボッコにしたけど、先輩はあまり気にした様子もなく感想戦に入る。そうして感想戦を終えて、次の先輩との勝負を始めては勝ち、感想戦をする。

 その後、先輩たち全員と戦って分かったことがある。この人たちホントにボードゲームが好きな人の集まりだ。強くなれるなら後輩にボコされようとある程度のポイントが持っていかれようとどうでもいいんだ。

なんていい狩場なんだろう。この部活に入部して正解だったようだ。

 

「美紀ちゃんなら大会でもいい成績残せるかもね。」

 

「大会があるんですか?」

 

「決まった大会とかはないけど、みんなそれぞれ参加したいときにエントリーしてるよ。」

 

「それっていい成績残せたら、やっぱり学校からポイント貰えるんですか?」

 

「そりゃもうたんまり貰えるよ。」

 

大会の日程を調べる。私は頭のノートにそうメモをした。

 

「さて、そろそろ最終下校時間だから、帰らなきゃ。片付けは私たちでやっとくから美紀ちゃんは先に帰ってていいよ。」

 

「そうですか?ではお言葉に甘えて、お先に失礼します。」

 

 私はそう言って頭を下げ、教室から出ていく。こういうのは素直に甘えたほうがいいのだ。知らんけど。

 学生証を見ると初め7万2000ポイントだったのに今は16万4000ポイントもある。かなり稼げたのではないだろうか。次からは栄作先輩もいるはずだし、もっと稼げるだろう。まぁ大きな賭けは月初めだけにしている方がいいかな。先輩たちが賭けを忌避するようになったら嫌だし。この部活で賭けに勝ち続ける限りは私は学校に登校せずにこの学校を退学することなく卒業することができるだろう。ルンルンと廊下を歩いていると後ろから声がかかる。

 

「ぜひ、私ともポイントを賭けたチェスをしてもらえませんか?松崎さん?」

 

 後ろを振り向くとそこにいたのは、ちっちゃな可愛らしい少女だった。

 

 

 

 




ちっちゃな可愛らしい少女。イッタイダレナンダ?
まだ2日目

ちょっとずつ減る文字数。

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