ガンダムフラウロスのパイロットは最低限の機体の修理ととある準備を終え、数機の護衛と共にすでに『JPTトラスト』艦隊のレーダー範囲外へと脱出していた。
技術と時間の都合上、機体に装備されたダインスレイヴの射出装置は片方しか使えなくなってしまったが、それで充分とばかりにほくそ笑んでいた。
男は『JPTトラスト』の敵であったかつてのディアブロ一味。泣く子も黙るその組織内でいずれは幹部格にと未来を嘱望され、当時は特に少年兵ビジネスを一任されていたほどだった。
少なくとも感情に流され作戦前に呆気なく捕らえられたどこぞのコバンザメとは格が違っていたし、今でもその男のことは正直見下している。
しかし我が世の春、その絶頂付近からただのチンピラへと叩き落とされたされた暗い炎は今なお男の中で沸々と煮えたぎっている。
逆恨みなど知ったことでは無い。
そこへやって来た千載一遇の復讐のチャンスに男は一も二もなく飛び込んだのは言うまでも無かった。
「健気だねぇ…塊になって親分を守ろうってか?だが…見えるぜ?あの金キラキンの悪趣味な色がよォ…」
ジャスレイは若い時分より運命に愛されている。
いや、運命すら従えているとさえ言われる正に生ける伝説とも言える男だが…今回ばかりはその限りではなかったようだ。
少なくとも男はそう感じていた。
何せあの数ある見え見えのダインスレイヴはその全てがフェイク。
この一撃で全てを終わらせるための前座に過ぎない。
ロイターはロイターで「奴を試す」ためだの何だのと言っていたが寧ろこの男からしたら願ったり叶ったりだ。
今頃『JPTトラスト』の連中は心のどこかで気を緩めている頃だろう。
何せあの密集陣形だ。
余程のことがなければ崩れることは無いだろう。
最早邪魔は入らない。
ユーゴーをあらかた片付けたことに安堵してか、モビルスーツ部隊も艦内に撤退しつつある。
いや、回収した子どもたちの介抱を優先した結果か?
ともあれ、男は無骨な巨大兵器のレバーのトリガーに指をかける。
フラウロスもその操作に従い、禁じられた矢を一度に数発構える。
これを引けば憎っくきジャスレイはあの船ごと木っ端微塵になるだろう。
何せ、かの三百年前の厄祭戦で大暴れしたガンダムフレームの武装だ。
その結果はこの戦闘の開幕で証明済み。
まして今回はその一斉射。当たればまず無事では済まない。
やがて、ロイターからの合図が入ったのを確認すると、男は自分でも口の端が上がるのが分かった。
そして男は「あばよ」と迷うことなくトリガーを引いた。
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「よぉし…みんな陣形は敷けたな…」
ライドくん達には退避してもらいたいんだけど、まぁ間に合わないんだろうなぁ…。
それなら一緒にいてもらったほうがまだ良いか。
幸い周辺宙域はウチの自慢のエース達のお陰で綺麗さっぱりだし…。
「オジキぃ…」
ライドくんが不安そうな目でこっちを見てるなぁ…。
とりあえず、落ち着いてもらわないと…。
ほれほれ〜ナデナデ〜。
「落ち着けライド。連中にはまだ隠し球があると見て良いが…現状どうにも絞りきれねェ。逆に言やぁソイツを抑えることができればこっちの勝ちだ」
「なら、やっぱりオレ達打って出た方が…」
「ライド。ヤケと覚悟を履き違えるな」
「けど…」
「なぁに、こう言うときゃあドッシリと構えときゃあ良いのさ」
ここで君に何かあったらオレの死亡フラグがビンビンになるから!!
頼むから大人しくしてて!!たぶん大丈夫だから!!オレだって怖いんだから!!
じゃあ連れて来るなって?
でもできる限り子どものお願いは聞いてあげたいし…。
それに機嫌損ねると怖いし…。
「ティアンユ、頼まぁ」
「はっ…皆の者、スヴェルを起動するぞ!!」
「おうよ!!」
「任してくださいや!!」
あれぇ?やっぱティアンユ、オレより指示出すの様になってない?
……もう引退しても良いかなぁ?
思ったより短いお話になってしまいましたが、どうにか今年中に投稿は出来ましたね…。
齟齬があったら申し訳ないです。