どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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お久しぶりです…。


第106話

一瞬の閃光。

 

放たれた破壊者の群れは収束し、そして目標に予定通りに向かってゆく。

ガンダムフレームのパイロットは沈みゆく船の未来を想像し、口もとを釣り上げてそう確信した。

 

「やったぞ!!ついにあのジャスレイを仕留めてやった!!」

 

男は歓喜を隠すことも無くコクピット内部でガッツポーズをする。

早速ボスに伝えようと通信機器を操作しているその時、異変に気付き…煙が晴れたと同時に、歓喜のそれはすぐぬか喜びに変わった。

 

思い描いていた未来に似つかわしくない光景が彼の目に入ってきたからだ。

 

それは、例えるならばオーロラの壁。

七色に輝くエイハブリアクターから発せられたのだろう光のカーテンが『JPTトラスト』艦隊を覆っていた。

 

それは美しさは戦場にあってなお、思わず息を呑んでしまうほど鮮烈で力強く、そして艶やかだった。

 

『スヴェル』またの名を『スヴァリン』

 

その言葉の意味するところは冷やすもの。

古ノルド語では『太陽の前に立ちしもの』と表現されるそれは、簡単に言えばエイハブリアクターを応用した防御壁だ。

 

新たな兵装を開発するにあたり、攻撃兵装であればギャラルホルンに要らぬ誤解もされるだろうが、非攻撃用の完全なる防御用兵装であれば『あちら』への言い訳もある程度は通る目算もあるとの考えあって先日テイワズトップ、マクマード・バリストンの命によって『JPTトラスト』が試作したものだ。

 

その効果は艦隊全艦へのあらゆる攻撃はその表層を濡れた石鹸の表面を滑るようにして無効化されるというもの。

 

一見非常に強力でともすれば無敵にも思えるものの、当然ながらその分デメリットもまた大きい。

 

まず制作から日が浅いのもあって、連続稼働時間が最大でも十分と極端に短いのと、再び使えるようになるまで最低でも一時間と、決して短くないクールダウンが必要なこと。

 

防御中は艦隊のほとんどのエイハブリアクターを使用するために攻撃に転じるまで精鋭たる部隊であっても多少のズレが生じてしまうと言う点。

 

またその性質上、艦隊が密集する必要があるために隙も少なくないと言う点。

 

そして受け流すと言う防御の方法故に、逸らす方向もまた重要になってくると言う点と、実用にあたってクリアすべき課題はまだまだ多いのだ。

 

ゆえに使い所を間違えれば意味が無く、だからこそ使用するタイミングの見切りが重要となる。

 

尤も、今現在唖然としている『夜明けの地平線団』の側にそれを知る由は無いのだが。

 

「…どういうことだ?」

 

男はわけがわからないと言った様子で動けずにいる。

 

「ふむ…やはり運命は彼に味方したようだな」

「っ!?テメェ、いつの間に!?」

 

気がつけばガンダムフラウロスの隣にいたのは青いシュヴァルベ・グレイズ。

 

咄嗟のことではあったが、ガンダムフレームの反応速度ならばと距離を取ろうとするが、練度の違いかあっさりと詰められてしまった。

 

あるはずの援護射撃が無いことから、護衛機もこの機体か、もしくはその僚機にやられたのだろう。

完全に少人数での作戦決行が裏目に出た結果となったわけだ。

 

「だが、知ってるぜェその機体…天下のギャラルホルン様がヤクザモンに手ェ貸すのかい?」

 

眼前の機体の所属をめざとく察した男は、わざわざ回線を開いての挑発気味な発言をしたが、シュヴァルベ・グレイズのパイロット…マクギリス・ファリドはそれを敢えて無視して騎士然と答える。

 

「はじめましてだな『夜明け』の君。いきなりで大変申し訳無いが…もう君たちに勝ちの目は無い」

「アァ!?ンなモンまだ分かんねェだろうが!?」

 

よほどの焦りから気持ちに余裕が無いのだろうか、挑発を返されたと思い逆に怒る男に、マクギリスは落ち着いた調子で続けて言う。

 

「ジャスレイ殿はとうに諸君の考えを看破しておられた。まんまと泳がされたな?」

「ンだと…?」

 

まさかと思ったが、フラウロスのパイロットにそれを今確かめる術は無い。

 

「それから、ジャスレイ殿からの言伝だ」

 

マクギリスは貴族とは思えない程口元を意地悪く釣り上げる。

そして童話のセリフをなぞるように咳払いを一つすると、言の葉を紡ぐ。

 

「オメェらにオレ達は…」

 

勿体ぶるように敢えてひと息置いて、マクギリスは続ける。

 

「殺せねェ」

 

刹那、男の脳裏には不敵に笑う憎っくき男の顔が浮かぶ。

 

「…とのことだ。ついでに言っておくとアリアンロッドの本隊も近づきつつある。無駄な抵抗をせず、降伏するのなら悪いようにはしないと約束しよう」

「……」

 

カマかけか?それとも…。

男は沈黙し現状を再確認する。

 

自らの駆るモビルスーツは既に砲塔を片方失い、先ほどので腕部装甲もボロボロ。

 

少数精鋭の補給隊もやられたうえ、それをやったのだろう手練れのギャラルホルンのパイロットがこの近距離でダインスレイヴのリロードも許さないだろう。

 

方や相手は見たところ装甲もよく整備が行き届いているのが目に見えて分かるくらいにピカピカで装備にも余裕がありそうだ。

 

しかし…。

 

「気に入らねェな…」

 

彼にもガンダムフレームを任された責任と、曲がりなりにもパイロットとしての意地とプライドがある以上「はいそうですか」と素直に降伏する選択肢も無い。

 

「ほう…気に入らないとは?」

 

マクギリスが感心したように声を漏らす。

 

「テメェのその舐め腐った態度が気に入らねェ…何よりギャラルホルンのクソッタレ連中にいい思い出が無ェから信用ならねェ。ましてや口約束なんぞ守るとも思えねェ」

「ならば、どうすると?」

 

男はコクピット内でふっ…とひとつ自嘲すると、返答代わりに唯一の近接武器であるアサルトナイフをフラウロスの片手で構える。

 

「こっちは元より玉砕覚悟なんだぜ?それに…これでもサンドバルの野朗には義理があんだよ。その分は働きで返すってだけの話だ」

 

無茶は承知。

それこそあちらの言う無駄な抵抗そのものだろう。

 

…だが連中の思った通りになってやるのも勘弁ならない。

 

むしろたったの一機で補給隊を仕留めた手練れを少しでも足止めできるならこれ以上の戦果も無いと彼のパイロットとしての勘が判断させたのかも知れない。

 

何より彼が乗るのはガンダムフレーム。撃破すら全くの不可能という訳でもあるまいと自身を鼓舞する。

 

きっと凄むように敵を睨むと、すぅっと息を吸い…。

 

「来いやァァァ!!」と男は叫ぶ。

 

それに興が乗ったのか、それとも彼なりに敬意か、バトルアックスを構える。

 

「尋常に勝負というわけか。私はカルタでは無いのだが…まあ、良いだろう。ガンダムフレームの力、存分に見せてもらおうか」

 

そう言うマクギリスの口元には笑みが溢れていた。

 

……………………………

 

「今のを…防いだのか?」

 

場所は変わり艦隊付近で様子見をしていたロイターもまた、突如として現れたオーロラの輝きを見ながら驚愕する。

 

自分達の最後の切り札、ダインスレイヴの一斉射が凌がれたのを目の当たりにしたのだからそれは当然の反応だろう。

 

更に先ほどからフラウロスのパイロットからの通信も途切れていることに気づくと、ロイターはすぐにその答えを悟った。

 

「クッ…ククク…」

 

込み上げてくる感情に、ロイターはやおら口角を上げる。

 

ユーゴーのコクピットで片手で両の目を覆い、どうにかこぼすまいとしたソレは、しかし堰き止めることは叶わない。

 

「はは…ハハハハハ!!それでこそ…それでこそだジャスレイ!!」

 

途中邪魔こそ入ったが、見たいものは見ることが出来た。

 

『買収屋』と陰であげつらわれ、それにも関わらずヘラヘラとしていただけの腑抜けに成り下がったと思ったらこれだ。

 

ジャスレイ率いる『JPTトラスト』は未だ衰えを知らず。

それを知ることが出来た歓喜は彼にとって何にも代え難い。

 

ロイター中でジャスレイへの失望は歓喜に変わり、かつての身を焦がして止まなかった憧れがなおも顔をのぞかせる。

 

ならば、後は…。

 

生き残った部下全員に、ロイターは通信を入れる。

 

打てる手は全て打った。

すべき事も全てやった。

 

その上での敗北。アリアンロッドが近づきつつ今もはや覆しようもないのは明白。

しかし降伏など出来ようはずもない。

 

で、あれば…。

 

「残ったユーゴーは全てオレに続け」

 

せめて最期に、心から敬愛する男の記憶に残るように、そして彼の名声を更に高めるために行動するだけだった。

 

□□□□ □□□□

 

うひぃ〜…。

 

オレ自身は悪運に助けられてるとはいえ、相変わらず心臓に悪いんですけど…。

 

ともあれ、上手くスヴェルが起動してくれて良かったぁ…。

もう手も出し尽くしただろうし、そろそろ降参してくれないかなぁ…。

 

「やった!!すっごいねオジキ!!」

 

ライドくんが無邪気にこっちを見てはしゃいでる…。

 

「そりゃあそうさ。何せテイワズが誇る圏外圏屈指の技術者連中が心血を注いで作ったモンだからな。何百年前の骨董品なんぞに負けるわけがねェだろうよ」

 

オヤジの指示とはいえ無茶させたからなぁ…後で皆んなにお礼言っとかないと…。

 

にしてもサンドバルのヤロー、ことここに至っても降伏しないとか…そんなにオレが嫌い?

 

「しかし油断はできませんな。念の為部隊を展開させましょう」

「おう。頼りにしてるぜ?」

「無論、オヤジのご期待には応えて見せましょう」

 

うんうんやっぱり頼りになるなぁ…。

 

「生憎だが、もうその必要は無い」

「あん?そりゃあどういう意味だ?」

 

突然話に割って入って来たなラスタル…。

って、まさか…。

 

「我々アリアンロッド艦隊現着したからだ。お前たちは下がっていて良い」

 

……………はぁ?

 




久しぶりの更新だからか地味に長くなってしまいました…。
齟齬があったら申し訳ない。
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