どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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火の巨人が倒せないので、箸休め(?)に投稿。

攻撃範囲エグい…。

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第13話

「恥ずかしい話だがこれでも若い時分は少し…そう、ほんの少しだけやんちゃでねぇ。父や使用人の皆にも心配や迷惑をかけたものだよ」

屋敷の中庭でお茶を飲みながらそう言う老人…クジャン公はとても楽しげだ。

「生垣の抜け道も、実は昔私がこっそりと開けたものでね?よくよく見ないと分からないだろう?頭に血が上ってカァっとなると、すぐに家出をするすると言って用意したはいいものの、しばらくすると結局頭が冷えて謝るんだが…当時の執事長が容赦とか遠慮のない人物でね。私が癇癪を起こすとすぐに引っ叩いて来て…」

「そんなにおっかなかったんです?」

「それはもうねぇ…ああ言うのをオニというのだろうねぇ…いやぁ、若かった私のプライドはあの時ズタズタにされたなぁ…まぁ、勉強とか視察とか色々とサボろうとしてた私が悪かったんだがね?」

懐かしむようにそう言うクジャン公。

「にしても、いったい何者なんです?その執事長…」

「うん?他家の紹介でね。能力も非常に優秀で仕事もできるんだが、性格に難アリと判断されたらしくてねぇ…。現にウチに来てわずか二、三年で執事長にまでのし上がったんだが、その後あっさりとやめていってね。当時の私は安堵したやら少し寂しかったやら複雑な気持ちだったよ。『貴方が次期当主に相応しい振る舞いをして下さるなら何も言いませんし、何もしませんよ』だなんて言われたなぁ…。見た目の年頃は今のキミと変わらなさそうなんだが、それ以上に凄みというか、気迫のようなものを感じたよ。名前は確かホ…」

「クジャン公」

顎に手を当て、懐かしいという彼の名前を思い出そうとしたその時、メイド長が訪ねて来て、耳打ちする。

それを聞いたクジャン公は、顔を綻ばせてジャスレイに言う。

「キミの担ぎ込んだ彼が、目を覚ましたそうだよ?」と。

「兄貴に会いに行っても?」

ジャスレイは喜びを隠せず、クジャン公に問いかける。

「ああ、行ってあげなさい」

クジャン公も、微笑んで頷いてくれた。

長く、埃ひとつ落ちていない廊下をジャスレイははやる気持ちを抑えつつ進む。

もちろん、道順など知らないので当然ながらメイド長の同伴付きだ。

「スンマセン…」

ジャスレイは申し訳なさそうにそう言う。

「いえ、お気になさらず。クジャン公のご指示ですので」

振り返らず、立ち止まる事もなくそう答えるメイド長。

灰色がかった白髪に眼鏡と言う若くはない出立ちではあるが、背筋はピンと伸びておりハキハキとした受け答えもあわせてしっかり者なのが伝わってくる。

通りすがる侍従たちも、特に気にした風でも無くコソコソと話している様子も無い。

先のクジャン公の発言もあり、あくまで二人を客人として扱ってくれているのだろう。

「こちらです」

そう言って、メイド長はひとつの扉の前で立ち止まると、その扉をノックする。

数秒もせずガチャリと扉が内側から開けられる。

執事らしき人物が促すと、こんな時のマナーも礼儀もよく知らないジャスレイは頭を下げつつ入室する。

「では、ごゆっくり」

そういうと、メイド長と執事の二人は部屋を出る。どうやら二人に気を遣ってくれたようだ。

「兄貴…」

ジャスレイは感極まって、なんと言っていいか分からない。

「おう。心配かけたな」

「今回のことは…」

「わかってる。オレだって恩人がしてくれたことに仇で返すほど薄情でも恥知らずでもねぇつもりだよ」

それを聞くと、ジャスレイは再びホッとした。

それからは、マルコの回復を待ちつつ二人は代わる代わる、時には一緒にクジャン公の話し相手をしていた。

その際に「こう言うのを茶飲み友達って言うんですかね?」

なんてジャスレイが言うと、クジャン公は珍しくキョトンとして

「あぁ…あぁ…そうだなぁ…」

と噛み締めるように言っていたのだった。

それからひと月もせず、二人はクジャン公の取りなしで地球を去る日が来た。

「名残惜しいねぇ…」

用意された船の前で、そういうクジャン公。

「お世話になりました」

「この恩は必ず…」

そう言って頭を下げる二人をクジャン公が手で制すると、合図と共にマルコの世話をしてくれた執事がアタッシュケースを持ってくる。

中を開けて見ると、中には決して少なくない金額と、二つの懐中時計が。

「特別な客人の証さ。餞別に、受け取ってもらえるね?」

「いや、いやいやいや!!流石にこんなには…」

「そうですぜ!!いくらオレらでもそんな…」

「私の生涯で、初の友二人にどうしても贈りたいのさ」

ニコニコとそう言うクジャン公に、ジャスレイとマルコは顔を見合わせる。

さすがにこれ以上の遠慮は相手に恥をかかせるだけなのだとわかったからだ。

それに加えて、この短い間でクジャン公はこう言った時言葉を曲げない人物であるのが理解できていたのもある。

その後、死んだものと思われていた二人が思わぬ手土産を持って来たことにマクマードは度肝を抜かれたと言う。

 

□□□□□□□□

 

いやぁ〜、懐かしいなぁ〜。

あのネタにされてるイオク・クジャンの関係者だからどんな人かとちょっと警戒してたけど…。

良い人過ぎて一生ついて行きたくなっちゃった!!

って言うのはまぁ、半分くらいは冗談だけど。

いやぁ〜、ああ言うのをカリスマってんだろねぇ…。

まぁ断ったけどもさ。

だって仮に向こうについたとして、原作通りだとイオクくんが後継ぐじゃん?

色々やらかしてミカくんに彼ともども標的にされるじゃん?

死ぬじゃん?それが分かってて着いてくなんて出来ねぇじゃん?

かと言って、オレがイオクくんの世話役しようにも木星圏から地球ってどう考えても遠すぎるし…。

って言うか、今思うと忍び込んだ先がクジャン公の邸宅だったとは…偶然ってすごいなぁ…。まぁあそこは別荘だったらしいんだけど…。

我ながらムチャしたもんだよなぁ…。

あと、たまにで良いからって連絡先くれたし…。

なんなら実際、何度か連絡は取ってるし。

やっぱセブンスターズの名前と力はスゴいし。それ抜きにしてもお世話になったしなぁ…。

いやまぁ、あんまり高頻度でもあちらさんに迷惑だろうから回数は弁えてはいるけど…。

「それで、マルコのオジキは情報部に?」

「おう。弾が少しばかり当たった場所が悪かったようでなぁ…。かと言って治療も拒否してるみてぇでよ。不覚傷を一生忘れねぇためってなぁ…」

兄貴ヘンなとこ真面目っていうか、頑固な人だからなぁ〜…。

まぁ、そのおかげでくれる情報は確かなモンばっかなんだけどもさぁ。

あの後奇跡的にクジャン公の跡取りが出来たって聞いた時も、訃報を聞いた時も一緒に泣きながら呑んだなぁ…。

グスン…。

「オヤジ?」

「あぁ…、いやなんでもねぇよ…」

貰い物の懐中時計に涙落ちちゃった。

しょぼん。

 




とりあえず、過去編はここまで。

また、たまにやってみたいですね。

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