どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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ちょっと読みやすさ重視で改行してみました。

不評なようなら前の書き方にもどしますね〜。


第19話

通信を切ってしばらく、JPTトラスト保有の『黄金のジャスレイ号』はタントテンポが縄張りとしているコロニー群、アバランチにあるジャンマルコの本拠に到着していた。

船を誘導された通りにドックにつけると、ジャスレイとチャド、そしてライドを含む数名が降り、コロニー内に入る。するとジャンマルコとその護衛らしき二人組が一行を迎えたのだった。

 

「オジキ、待ってたぜ」

「オウ、ジャン坊。出迎え感謝するぜ」

 

ジャスレイは被っていた帽子を脱ぎ、そう言葉を返す。

ジャンマルコは一瞬チラリとジャスレイの後ろを覗き見て、興味深そうに目を細める。

 

「オメェらも歓迎するぜ。まぁまずは寛いでくんな」

 

廊下を歩きがてら、そう言われて案内された先は客間だ。

高そうな椅子に敷物、大型の映像パネルに凝ったデザインのテーブル。

まるでどこかの高級ホテルもかくやといった風だ。

各々旅の疲れを癒すこと数時間。ジャスレイとジャンマルコは向き合うように椅子に腰掛け、内容の確認を行う。

互いの護衛はその両脇に控えるように立っている。

 

「んで…見てやって欲しい奴らってぇのは、そこの二人でいいのか?」

 

ジャンマルコは再び値踏みする視線でチャドとライドの二人を見据えながらそう言う。

二人はタジタジした風だが、ジャスレイはそんなことは気にした風でも無く返す。

 

「オウ。話が早くて助かる。ほれ、挨拶しな」

 

ジャスレイが立ち上がり、二人の背中をバシッと叩いて促す。

 

「はっはい!!鉄華団所属、チャド・チャダーンです!!」

「え?えっとえっと…お、同じく鉄華団所属、ライド・マッスです!!」

 

たどたどしいながらも、二人は何とか挨拶を済ませる。

あちらの護衛の二人は、片方は何やら微笑ましいものを見る目をしており、もう片方はただただ無心でいようとしているのか、ただただ一点を見つめている。

 

「鉄華団?」

 

ジャンマルコはその言葉にピクリと反応を示すが、当の二人は小首をかしげる。

 

「ヘェ〜、お前さんらがねぇ〜…」

「おう。ビックリしたろ?」

 

ジャスレイのイタズラが成功した時の子どものような声に、ジャンマルコは何やら得心いった様子だ。

 

「だからあん時コイツらが何もんかさっさと教えなかったのか」

「まぁなぁ。だが、ヤル気は出たろ?」

「えっと…オジキ、どう言うことです?」

 

ライドは二人の会話を聞いて小首をかしげ、チャドがおずおずと挙手しながら質問を投げかけ、ジャスレイが答える。

 

「あぁ、お前さんらが火星で鹵獲したグレイズあったろ?アレを買ったのが目の前のコイツなのさ」

「えっ?そうなの?」

「そりゃあまた…」

 

それを聞くなり、目をパチクリとさせる二人。

確かに、こんな偶然もそうは無いが。

 

「ま、宇宙は広いが世間は意外と狭いってこったな」

「そんじゃあ、ますます手は抜けねぇなぁ〜…」

「いや、加減はしてやれよ。目的はあくまで手解きなんだからよ」

 

いつに無くやる気に満ちているジャンマルコに、ジャスレイは念押しするようにそう言う。

 

「分かってるって。いくらオレでもそこまで大人気なくは無いっての…」

 

その言葉に込められた明らかな格下扱いにライドは少しムッとするが、チャドが目で制する。

 

「で、機体はどうする?」

「おう。二人にゃウチの百錬を貸してやるよ。シミュレーターで操縦のやり方はだいたい分かってるだろうしな」

 

百錬とは、テイワズ製のモビルスーツでライフルにブレードと無難な兵装のため二人には持ってこいとの判断だ。

ちなみに一緒に運用されることの多い百里を二人のどちらにもあてがわないのは、その機動性ゆえに両者ともに扱いきれないというジャスレイの判断故だ。

 

「そうか。こっちの機体はもう準備できてる」

「あぁ、専用にカスタムしたって自慢げに言ってたなそういや」

「おう。楽しみにしといてくれや」

 

そう言うなり、ジャンマルコは客間を後にした。

そして数時間ののち、一行は次の近傍、通称『ルナズドロップ』と呼ばれる場所に集まっていた。

ここは三百年前に起こった厄祭戦の折り、砕けたという月の破片が漂うエリアで、近場に大型船を付けられる場所もかなり限られるため、ギャラルホルンもなかなか寄らないポイントらしい。

今回は決闘では無くあくまでも手解きのためか、特に障害物が比較的少ない場所での手合わせだ。

 

「大丈夫かなぁ?」

「今更弱音か?乗り込む前まではあんな不服そうだったのに」

 

百錬のコクピット内で不安そうにしているライドに意外そうにチャドは通信で問いかける。

普段のライドなら、実際にモビルスーツを動かせることに喜びそうなものだからだ。

 

「だってよぉ〜…超強い人なんだろ?あのジャンマルコって人…」

「だからいい機会なんじゃあないか。あの人はこの辺でも屈指の実力者なんだろ?むしろ幸運に思うなオレは」

「ポジティブだなぁ〜…オレなんて、オジキに恥かかせるんじゃあないかって気が気じゃないよ…」

 

その言葉を聞いてか、チャドは更に声をかける。

 

「オジキも言ってたろ?今回はオレらを鍛えてもらうのが目的だって。胸を借りるつもりで行かなきゃあ、相手にだって失礼だぞ?」

「おう、その通りだぜ?」

 

その通信に二人が驚いていると、正面から黄色いモビルスーツがやって来る。

二人とも、グレイズがベースと聞いてはいたが、見た目はモノアイ以外はまるで別物だ。

頭部には上向きのツノらしき二本のパーツが付き、背中には赤いマントがはためく。

手には独自のものだろう独特の形状の大型武装まで装備されており、見るからに近接戦特化なのが分かる。

 

「すまんな。ちぃっとばかし待たせたか?」

「いえ…むしろ助かりました」

「あん?助かった?」

「はい。少し、話せたので…」

「……そうかい」

 

そう言うなりジャンマルコは武器を構え、チャドとライドもそれに倣う。

 

「それじゃあ、軽く揉んでやる…ぞっ!!」

「うわぁっ!!とと…」

 

ガキィッッッ……!!

ジャンマルコはライドの方に不意打ち気味に一撃加えるが、なんの幸運か構えていたブレードで軌道を逸らすことに成功する。

 

「ヘェ〜、シミュレーターで特訓してたってぇのもまんざら嘘でも無かったか」

 

ジャンマルコは加減こそしたが、受け止められるとは思わなかったようだ。

鉄華団の二人は再び武器を構え直し、改めてジャンマルコの手解きがはじまったのだった。

 

□□□□□□□□

 

少し離れた場所に浮かぶ船の中、オレは座りながら手解きの様子を見守る。

いやぁ〜、さすがマルコの兄貴の息子っていうか、ところどころ動きに兄貴っぽい思い切りの良さがあるなぁ〜…。

ちょっと懐かしい…。

 

「オジサンあの二人が心配〜?」

 

んぉ?二人いた護衛の片方…護衛ちゃんがひょっこりと声かけてきた。

フレンドリーな子だなぁ〜。

 

「おい、ユハナ…」

 

護衛のもう片方…護衛くんの方が声をかけるも、護衛ちゃん…ユハナちゃんとやらは特に気にしてない。

図太いのか、人との距離感が近い子なのか…オジサンにゃ、最近の若い子はよーわからんね。

 

「いや…ジャン坊はそんな無茶はしねぇさ。ちゃんとした手解きをするって言う約束をした以上、わざわざそれを違えるようなことをしても互いにメリットはねぇだろ?」

「まぁ、それはそうだねぇ〜」

「お前さんらは操縦やるのか?」

「うん。これでも一応パイロットやってるしねぇ〜」

 

へぇ〜。まぁいろんな事情もあるんだろうし、あえて地雷を踏みには行かない方がいいかなぁ〜。

それよりも…。

 

「もしよけりゃあ、お前さんらも今度アイツらの相手してやってもらえるかい?」

 

いろんな相手とやった方がいろんな行動パターンも覚えられるだろうし、我ながらいいアイデアかも。

提案を聞いて一瞬意外そうな表情をするも、ユハナちゃんは悪戯を思いついたようなイイ表情を浮かべる。

 

「いいけど〜、ま、報酬次第かなぁ〜?」

「ユハナ…仕事中だぞ」

 

護衛くんが言うものの、ユハナちゃんは気にした風でもない。 

なかなかしっかりしてるなぁ〜。

ふぅむ…そうだなぁ〜…。

模擬戦一回あたりのパーツの消耗とか、推進剤、それと二人の上達でこれから得られるだろう利益なんかも加味すると〜…。

…こんな感じかなぁ〜。

 

「それじゃあ、こんなもんでどうだ?」

 

タブレットに金額を提示して、それをスッと差し出す。

 

「ど〜れどれ〜?へ?」

「……………………」

 

あ、固まった。

やっべ、少なかった?




エルデンリング…なんとか一周目クリアできました。

だからなんだって言われたらそれまでですけど…。

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