齟齬があったらごめん。
ズガァァン!!
銃声と共に、骸が地べたに転がる。
…………。
テイワズの本拠地でありお膝元、巨大艦歳星。
その路地裏のひとつに男たちはいた。
「テメェ!!誰の許しを得てここでウリなんぞしてる!!」
足元には十近い死体が転がり、一人生き残ったやせっぽっちの男は震え、はいつくばりながら申し開きをしている。
「へ、ヘェ、すいやせん。つい出来心で…」
ズガァァン!!
もう一発、今度は足元を狙って撃つ。
「おい」
発砲した男に片腕を上げて静止し、ガクガクと震える男に声を掛ける人影がひとつ。
「ヒャいい!!」
未だ恐怖が冷めやらぬのか、うまく言葉にできないようだ。
「この子らをどこで仕入れた。誰の差金だ」
人影…ジャスレイは視線を合わせるようにしゃがんで、親指で保護した『商品』達を指し示す。
まだ年端も行かぬ子ども、少女達を使って何をさせていたか、そんなことは聞くまでも無い。
「…………」
「だんまりか」
「しゃ、喋ったら殺されちまうよ….」
「今ここでお前を始末するのとどっちが簡単かな?」
立ち上がり歩いて近寄った次の瞬間。
「ヒィィィィ!!」
どこから取り出したのかナイフを持って突進して来る。
「オヤジィ!!」
ジャスレイは懐から拳銃を取り出し、足を撃って動きを封じる。
「ちくしょう……」
「生憎と、窮鼠には噛まれ慣れててな」
そう言いつつ、ゆっくりと拳銃を男のこめかみにゴリっと押し当てる。
「い、痛えよぉ…」
それは拳銃を押し当てられた場所か、それとも撃たれた脚か。
どちらであれ、ジャスレイには関係無い。
「そうか痛いか。だがあの子らの痛みはそんなもんじゃ無いぞ」
目配せをして、保護した少女達をこの場から離れさせるよう部下に指示を出す。
「な、舐めやがって、テ…テメェらだっておんなじだろうが!!」
どうせ死ぬならと思っていることをぶちまけることにしたのだろう。
そして、同時にジャスレイは悟った。
コイツは何も知らない。
でなきゃあ、やけっぱちに相手を刺激するようなことは言わない。
知ってるようなセリフも素振りも、ようはいざって時のブラフだ。
「あん?」
「そうだろう!!だって、ウリに許可がいるだなんて、結局お前らだっておんなじ事だ!!テメェらだってドブネズミだろうが!!」
その言葉にジャスレイは…。
「はぁ〜〜……」
とため息をひとつ。
「オマエ、まだ自分の立場がわかってねぇようだな」
「ヒッ、う…撃つなら撃てよ…正義気取ってたって、どうせお前も地獄行きだ」
その言葉に、ジャスレイは鼻で笑う。
「ハン…おまえ、メキメキカッコ悪くなってるぞ?」
「はぁ!?」
「オレはお前をネズミと言ったが、どうやらそれは違ったようだな」
「な、なんだよ?急に見逃してくれる気になったのかよ?」
希望があると錯覚した男が急に警戒を緩める。が、しかし
「バカか」と一喝するジャスレイ。
「地獄が怖くて悪党やれるか。オメェはオレをドブネズミと言ったが、実際はどうだ?そのドブネズミの巣の傍でチビチビ日銭を稼ぐしかできてねぇ寄生虫野郎だ」
不意に立ち上がり、ズカズカと更に男に詰め寄るジャスレイ。
「ヒィっ!!」
「オレにはなぁ、地獄の門をくぐるのも、自分ちの玄関くぐるのも同じなのよ」
チャッとトリガーに掛けた指に力を込める。
「もうお前に用はない。潔く地獄へ逝きな!!そして、オレのために門でも磨いてやがれ!!」
ズガァァン!!
「クっセェなぁ…こいつ寄生虫じゃなくて寄生虫のフンだったか」
そう言ってジャスレイはその場を後にした。
後片付けは別の奴の仕事だ。
「終わったぞー」
「お、オヤジ…肝を冷やしましたよ…」
「すまん、心配かけたな」
「い、いえ…」
「保護した子らのところへ行くぞ」
「あっはい…こっちです」
用意されたあばらやの一室。
そこには四人の保護された少女達がいた。
「おい、お前ら!!オヤジが来たぞ!!」
見張りが気づいて中にいる仲間に知らせるが
「いやいい、ご苦労」と労う。
ジャスレイはあばらやに入ると、一番話ができそうな少女の前にかがむ。
「お前達みたいな女を迎え入れてくれる男を知ってる。オレの弟だ」
「……」
沈黙。
それはそうだ。この男も自分達を商品として見ていない保証は無い。
弟というのも、今回殺された男達のようなロクデナシでないとも限らない。
故に警戒を緩めない。
「……オマエは賢いな。その歳で状況を判断できるのか」
「………慣れただけ」
ボソリと一言。
「これからどうする」
「………わからない」
「どうすれば信用してもらえる?」
「死んで」
即答。
「このガキ!!」
「ちょっと優しくされたからって……」
怒りのまま掴みかかろうとする部下を、ジャスレイは再び止める。
「まぁ待て」
そう言うと、再び少女に向き合う。
「オマエの怒りはもっともだ。だがな命はやれねぇ。オレにはまだ仕事が山とあるからな」
「じゃあ、その後に死んで」
「まだ言うか!!」
「落ち着け」
ジャスレイは腕を上げて静止する。
「それじゃあ、どうする?なんの後ろ盾もねぇガキが安全に暮らせるほどここは甘くねえ」
「……住み込みで働く」
「そのなりでか?」
「……紹介して」
「またウリか?」
冗談めかして言うが
「違う!!」と怒鳴られる。
「……悪かったよ」
「責任、とってもらって」
「それは出来ねぇな」
「じゃあ死んで」
埒があかない。
結局、その少女はジャスレイの養女に、他三人はタービンズに保護されることとなった。
「よーし、オマエら〜いつもの酒場向かうかぁ」
「おぉ〜!!」
「……おさけ、キライ」
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あぁ〜、疲れた。なんだよめんどくせぇ。
ルールは守んなきゃだろー?
この後書類書かなきゃとかホント地獄だわ。
呑まなきゃやってられんてホント。
お膝元でこれだからなぁ〜。
他所と比べりゃあ少ない方なんだけど。
にしてもビビったわー。
刃物隠し持ってるとか先に言ってよ〜。
漏らしてないよね?ね?
「オヤジは歳星で仕事が終わるとあそこに行きますよね」
部下の一人が話しかけて来る。
これから酒が飲めるからか声は弾んでいる。
「まぁ、色々と行くのが面倒だしなぁ」
「またまたぁ〜」
「そうですよオヤジぃ〜」
悪ノリめんどくせっっ!!
まぁ、コワモテだけど慣れりゃあ気のいい奴らなんだけどもさぁ〜。
オレは酒場の入り口で帽子を被り直す。
この界隈、カッコつけてナンボだからね!!
「今日はトコトンまでやるぞォォォ〜!!」
オオオオ!!
……………。
え?てっかだん?
つづき…いつになるかなぁ。