どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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再びのタントテンポサイドです。



第21話

「馬鹿な…ありえるか!?こんなこと…」

 

月のコロニー群、アバランチ1にあるウェスタバンク本店、その事務所にて、頭取ロザーリオ・レオーネは頭を抱えていた。

 

ロザーリオがジャスレイ・ドノミコルスという男に関して特に懸念しているのは、ジャスレイがかつてジャンマルコを送り込んだ際に見せた手腕だ。

まだ年齢的にも少年に過ぎなかった彼を、ジャスレイは事も無げにタントテンポの先代頭目…つまりはテッド・モルガトンに引き合わせ、下っ端仕事でいいからと言って紹介したのはタントテンポの内部でも有名な話だ。

結果としてジャンマルコは輸送部門のトップにまで上り詰めたことから、ジャスレイの人選を讃えたり、ジャンマルコの才覚を褒める意図で広まった話だが。

それにより、テイワズとの取引の際はジャンマルコがタントテンポ側の窓口となり、同時にジャスレイがテイワズ側の窓口として機能すれば円滑に取引は成され、その利益は二者間である程度コントロール出来る。

そして、それはまさに実現されたのだった。

思えば、これこそジャスレイの目論見だったのかもしれない。

なお、ジャスレイの弟分である名瀬・タービンもまたテイワズ内部の運送部門で名を挙げており、ジャスレイ自身もその前任を勤めていたことからかなりの知識、及び経験の蓄積があるのだろうことが伺える。

自分自身の経験を元に、あの頃からジャンマルコの才覚を見抜き、或いは送り出す前に薫陶を授けて指示を出し、長い時をかけて当然の如くジャンマルコを自身の実力で幹部に据えたのだとしたら…。

そしてそれが、ジャンマルコ以外にもいたのだとしたら…?

 

「クソっ…だがその証拠が見つからない…決定的な証拠…ヤツの弱みとも言える証拠が…」

 

ロザーリオという男は相手の弱みにつけ込むのを得意とする。

卑劣ではあるが、そうする事によって現在の地位にまで上り詰め、同時にその自らの地位を守ってきた。

だがそれは裏を返せば、彼に弱みらしい弱みを見せなければ大それたことができないということでもある。

現に、前々からジャスレイとの()()()()として彼の周囲に探りを入れてはいるものの、これと言った成果は出ていない。

かと言って媚びようにも大抵のものなら自力で揃えられるだろうジャスレイに贈り物はほぼ無意味。

 

「あり得るか?あれほどの実力、あれほどの影響力を持つ男が、まるっきり弱みがないなどと…」

 

もう、期日までさほど時間も無い。

まさかここまで調査の進展が無いのかとロザーリオは辟易すると同時に焦りに焦ってもいた。

こうなればもう、ギャラルホルン頼みにしかならない。

もちろん、その手引きをしている男にはそれだけ大きな借りを作ることにはなるが、この際やむを得ない。

 

「クラーセンめ…まさかこうなる事を分かっていたのか?」

 

ヴィル・クラーセン。

かつて主家であったウォーレン家取り潰しの主犯。

その証拠をでっち上げ、地位を横取りした裏切り者であり、今回のテッド暗殺の際のロザーリオの共犯者でもある。

その力はツテで、ギャラルホルンの一部隊を動かせるくらいには発言力を持ち、彼個人はというと、臆病かつ用意周到。

いけすかないが、最終手段として頭の片隅にくらいは彼を頼る算段も立てる。

 

「ジャスレイの野郎を殺すのは簡単だ。だが、その後のことを考えるとやっかいなことこの上ない」

 

何せ、テイワズはタントテンポにとってもギャラルホルンにとっても大口の取引先だ。

もし彼が周囲から嫌われるような成金野郎だったならともかく、耳にするのは彼の人望の厚さに関する話ばかりだ。

 

故に、殺せない。

 

「それにヤツを始末すれば内部からの反発も必至じゃあねぇかよ…」

 

ジャスレイの信奉者達が、ただ金を握らせれば、それだけでこっちに転がるような連中だったなら楽だった。

しかし、『仁義』がその邪魔をする。

 

「ブブリオのヤツも沈黙を保っていやがるし、もう少し取り乱すかと思ってたが、不気味な野郎だ…」

 

時間が、運命が、刻々と迫っていた。

 

□□□□□□□□

 

「それじゃ、オジサン。まったねぇ〜」

「おう。世話んなったなぁ」

 

ライドくん、チャドくんの二人とジャンマルコくんの最後の手合わせから数日、護衛についてくれた二人は、モビルスーツ…ロディ・フレームのカスタム機に乗って出発する。

どうやらお嬢様とやらを連れて来るのが目的らしい。

 

「そんで?まずはどうすんだい?」

 

出立する二人を見送りながら、オレは問いかける。

 

「おう。まぁまずはドルトに向かってたリアリナ嬢の保護だな。厄介な連中に担ぎ上げられちゃあたまんねぇからよ」

 

ほうほうなるほど。

しっかし、娘かぁ…。

確か十年くらい前と、五年くらい前の二回会ったことがあったっけなぁ。

まぁ、会ったって言っても夜中寝付けなくって父親のテッドに話しかけたそうに客間の扉から覗いていたのをたまたま同席してて見かけたくらいだけども。

 

「テッドの野郎は娘がテメェの仕事に関わることを望んじゃあいねぇしな。ま、妥当な判断か」

「おう。ことの次第が収まるまでこっちで保護すりゃあタヌキどもも手出しは出来ねぇだろうよ」

「ハッハッハ!!頼れるねぇ」

「オイオイ。あんまからかってくれんなよ」

 

ま、何事も起きなんだろうけどなぁ〜。

 

いやぁあんしん…

 

「オヤジぃ!!ドルトで…」

 

うん。できないね!!しってた!!




さて、鉄華団は上手くまとめたのか…。

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