どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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今回は皆さん大好き(?)あのお方の登場です。


第22話

「何故ですか!!」

 

月外縁軌道統制統合艦隊、通称『アリアンロッド艦隊』の旗艦の一室にて、クジャン家現当主イオク・クジャンはラスタル家現当主にしてアリアンロッド総司令官ラスタル・エリオンに噛み付いていた。

 

なお、周囲には護衛がイオクと、ラスタルとでそれぞれ二人ずつついているくらいで一般の兵士にはこの話は聞かれてはいない。

 

「何故何の罪も無いドルトコロニーの労働者達を…」

 

睨むイオクにラスタルはふぅ、と一息つくと神妙な面持ちで語り始める。

 

「見せしめが必要なのだ。人間とは忘れる生き物だからな」

 

要はこれは示威行為なのだと、ラスタルはことのほかあっさりと、あっけらかんと告げる。

 

「だからと言って、娯楽も何も無いような所に低賃金で働かせるなど…そもそもあそこは、立地としても重要な中継地点のはず!!そこの住民達を切り捨てるような…」

「クジャン公」

 

ラスタルは聞き分けのない子供に言い聞かせるような口調で、短く言う。

 

「何故、ドルトコロニーにまともな娯楽が無いのかと、そう問うたな」

「えっ、ええ…」

 

今度はラスタルがイオクに言う。

 

「ならば聞かせてやる。それはな、彼らが元々我々ギャラルホルンの統治に対して懐疑的な連中だからだ」

 

「は?」

 

イオクにはラスタルの言っている意味が、分からない。

 

「そう言った連中を一ヶ所にまとめて、他のコロニーにその思想が広がるのを防ぎ、それと同時に彼らの不満を煽り爆発した頃合いを見計らい我々が制圧をすれば、ギャラルホルン内部での我々アリアンロッドの立場はより盤石なモノとなる訳だ。更に言えば、あそこは位置的にも各企業にとっても重要な中継地点。だからこそ我々も暴徒鎮圧の名目で兵を置ける訳だ。ああ、人員のことなら気にするな。職にあぶれた連中など探せばいくらでもいるからな。そして、そう言った連中ほど、ギャラルホルンの統治にいい感情を抱いてはいない。その場限りの感謝の言葉を述べこそすれ…な」

 

人の世に不平不満は当たり前だ。

ならば、それを少なくするよりも利用しようと、この男はそう言うのだ。

ラスタルはすっくと立ち上がり、唖然とするイオクにツカツカと歩み寄る。

そうして、一言。

 

「キミもまた、その恩恵にあやかっている自覚を持つのだな」

「………………」

 

無言の間、喉の奥から絞り出すように、うめくようにイオクは言葉を発する。

 

「見過ごせと…いうのですか…こんなもの、マッチポンプの生け贄以外の何ものでもないでは無いですか!!」

「そうだ」

 

慟哭するイオクに、ラスタルは冷たくそう言い放つ。

ふと、イオクから目を離して遠い目をしながらラスタルは続ける。

 

「青い理想を抱くのは結構だがな、セブンスターズの当主たるもの、清濁併せ呑む器量を備えねばならぬことも忘れるな」

「ッ……」

「イオク様!!」

「お待ちを!!イオク様!!」

 

イオクはその言葉に黙って退室するしか無く、彼の部下達もまた続くように退室する。

 

「クジャン公…この局面を越え、更なる難局を乗り切れれば彼もまたきっと、大きな存在になってくれるだろう。それこそ先代のように…」

 

イオクが出て行った扉を見つめながら、ラスタルは呟く。

 

「よろしいのですか?」

 

ラスタルの部下の一人がそう問いかける。

 

「まぁ、問題はなかろう。それに、ここで彼を更迭したところでどうなるものでもない。良くも悪くも彼に取って代われる人間はそうそういないからな」

 

不意に、ラスタルは懐からロケットを取り出す。 

 

「……………」

 

開けると、そこには若き日のラスタルと赤みがかった茶髪の男、そして優しい瞳で大事そうに赤子を抱く老人の姿が写っていた。

ラスタルはにわかに笑うと、それを再び懐へしまう。

 

「…先代は、本当に偉大だった」

 

ラスタルは知っている。イオクの父、バラク・クジャンの貢献を、ギャラルホルンへの献身を、そしてその政治手腕を。

 

同時に思い出すのは、かつての悪友。

度々連絡を寄越しては、先代の前でくだらない言い争いや、赤子だった頃のイオクを共に見守った。

最後は、恩師とも言える先代クジャン公が亡くなったおり、彼の常々口にしていた言葉の解釈を巡り、言い争いにまで発展。

それからほとんど絶縁状態になったうえ、数年後に再会した時以来、仕事以外での通信をまったくしなくなった男のこと。

 

「ジャスレイ、我々はどこで道を違えたのか…或いは、はじめから…」

 

その失意の言葉は室内にむなしく響き、彼の部下も俯いて聞かないふりをするのがやっとだった。

 

□□□□□□□□

 

やっぱりと言うべきか、部下からの話があって数分もせずに部屋までライドくんが来た。

 

「オジキ!!ドルトコロニーで異変があったって…」

 

あぁ〜…、やっぱり仲間の安否が気になるのね。

ライドくんてば、相当に取り乱してるなぁ〜。

まぁ、気持ちは分かるけども。

 

「おう。オレもその話は今聞いたぜ」

「みんなは…」

「安心しな。鉄華団の連中に死傷者は出てないそうだ」

「ほっ…よかったぁ〜…」

「ライド、勝手に行くなって言っただろう?」

 

おぉう。後ろからチャドくんも来たよ。

ライドくんを追いかけてきたのかなぁ?

でもチャドくんも、呆れ気味だけど、やっぱ表情的に安心してるっぽいなぁ。よかったよかった。

 

「それで、その後はどうなったんです?」

「おう。怪我人こそ出たが、労働者連中の無謀な革命はご破産。やけっぱちになって突っ込んだ奴ら以外特に怪我人も無かったそうだ」

 

まぁ、どこまで信じられる話なのかはまだちょっと疑念が残るけど。

だからって仕事に集中してもらうためにも不安を煽るのは得策じゃ無いよなぁ。

鉄華団に死傷者が出てないってのはホントだろうし。

 

「そっかぁ…」

「良かった…んですかね?」

「うん?チャドはなんか思うところがあんのかい?」

「あっ、はい…未遂とは言えこう言う事になってしまった以上、ギャラルホルン側は武力弾圧の大義名分を得てしまったんじゃあないかって…」

 

あぁ〜。確かにそれもそうだよなぁ〜。

 

「ま、問題の先延ばしにしかなってねぇのは確かだよなぁ…」

 

後はマスコミがどう報道するかだけども…、十中八九歪められるんだろうなぁ〜…。やるせねぇ。

まぁ後は名瀬ニキからの連絡待ちってとこかね。

ま、こっちはこっちでお仕事済ませちゃいましょうかねぇ〜。




ギャラルホルンサイド…はじめて書いたけど合ってるかな?

イオクくんの明日はどっちだ!?

毎度のことながら、齟齬があったら申し訳ない。

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