どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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タントテンポ回。

やっとできたー。


第28話

「なるほどそうか。やはり彼はリアリナ嬢についたか」

 

アバランチコロニーにあるビルの一室と思しき部屋で、椅子に腰掛けて窓の外を眺める男はそう語る。

 

「如何なさいますか?」

 

そう問いかけるのは彼の秘書であり、優秀なスパイでもある妙齢の女性。

しかし…。

 

「何も」

「は?」

「彼には何も、しなくて良い。キミには引き続きロザーリオの監視を任せるよ」

「ですが…」

「…………」

 

微動だにせず、ただそれだけ言うと男は沈黙する。

もうこれ以上言うことはないと言外に伝えて。

 

「では、私はこれで…」

「ああ、ご苦労」

 

男は短くねぎらいの言葉をかけ、部屋の扉が閉まるのを音で確認し、更に足音と共に気配が遠のくのを念入りにチェックする。

スパイとして優秀な彼女に聞き耳を立てられると色々面倒だからだ。

それに、共有すべき情報は既に渡してあるのでその点は問題ない。

 

「さて、後はロザーリオか…」

 

男は振り返り、机に…厳密には机の上の幾らかの紙に目を落とす。

そこには数々の人名や企業名が連なることから名簿であろうことが伺える。

彼はそれをそっと持ち上げペラリとめくり、確かめるようにその枚数を数え、笑みを深めて満足げに頷く。

 

「中立派はすでにほぼほぼこちら側。そして、これを見越してロザーリオ自身には先代の遺産整理の名目で銀行に引きこもってもらっている。曲がりなりにも味方を欺くのは趣味ではないが、まぁ…致し方あるまい。身から出た錆と言うヤツだよ」

 

きっと、ロザーリオは嬉々としてデータを改ざんするだろう。

元より外部の何者かとの怪しい動きを見せてはいたし、彼もそれに気づいてはいたが、ロザーリオとしてもわざわざ弱みを見せることの愚は分かっているだろうし、外部の者としても痕跡を残すのを好むとは思わないため、どちらの利害を考えたとしても多少面倒なくらいでその者の手は借りないはずだ。

自身に有利なように、自らの懐に入るだろうカネを不自然で無い限度いっぱいまで抱え込むことだろう。

だが、それで良い。

それを以って、タントテンポの新たなる主人への最初の献上品とするのだから。

 

「ロザーリオ。キミは有能で…優秀で…才気に溢れた男だ。本当さ」 

 

ひょいと拾い上げた写真に、男はぽつりとそうこぼす。

 

「ただひとつ、たったひとつ…キミの短所を上げるとするならば…」

 

ゴソリ、と懐をまさぐり

 

「キミ自身の大きな野心に見合わぬほど、どこどこまでも小さいその器に他ならない」

 

ライターを取り出して、灰皿の上に置いた写真の角に火をつける。

燃え上がる写真。

火をつけた当の本人は感慨深そうに唸る。

 

「だからこそ…さよならだ」

 

それは若き日の思い出との決別とも、或いは未来のための枷を外す行為とも取れるだろう。

 

しかし

 

その顔はあまりに、晴れやかだった。

 

 

 

黄金のジャスレイ号内にある倉庫前にて、ジャスレイとヴォルコ、アルジにリアリナの四名がいた。

 

「さて、着いたぞ」

「ジャスレイさん。渡したいものとは?」

「おう。お前さんらのアスタロトあんだろ?アレ、そろそろ装甲がダメになってきてるんじゃあねぇか?」

 

これまで騙し騙しやって来ていたのを見抜いたかのような言い草に、ヴォルコは閉口する。

 

「あー、なるほど。それでご褒美ってのは…」

「おう。ウチの技術者連中の補償付きの装備品一式をくれてやろうってことさ。特に気になるパーツ類なんかのデータ取りはもう済んでるみてぇだしな」

 

ジャスレイはパスコードを入力して船内の倉庫を開ける。

ウイィィンと言う機械音によって二重、三重の扉が開いていく。

 

「ほれ、コレ全部持ってけ。元々次期頭目への手土産のつもりだったしちょうど良いや」

 

倉庫にあったのは見渡す限りの装備品の山。

モビルスーツ用の銃火器にブレード類、弾薬に装甲とより取り見取りだ。

 

「うわっ…すっげ〜」

「本当に…」

「そうだな……アレは…!!」

 

何かに気がついたのだろうヴォルコが目の色を変え、それに近づく。

 

「おい、どうしたんだよ?」

「ヴォルコ?」

 

ヴォルコの普段とは異なる様子にリアリナとアルジは困惑した様子だ。

 

「…間違いない。γナノラミネートソード…それにアスタロトの装甲も…ジャスレイさんが持っててくれたのか。良かった…本当に…」

 

何やら安堵の声を上げるヴォルコにジャスレイが近づいて言う。

 

「おう。それか。闇市で売ってたもんなんだが、売人が言うにゃあ使い道があんまねぇってんで、なんだかもったいなくってよ。もちろんそれもやるぞ?」

「いいんですか!?ガンダムフレームの専用装備ですよ!?そんなにポンっと…」

「だからだよ。使えるヤツが持ってた方がいいだろ?仮にオレがコレクションだなんだって言って、こんなとこに埋もれさせるよりは本来の使い方をされた方がずっといいさ」

「ジャスレイさん。この恩は必ず…」

「…なんか訳ありか?」

 

ジャスレイは何かを察したようにそう問いかける。

そして、気づけばヴォルコは己の身の上と、その目的を軽くだがジャスレイに話していたのだった。

 

「…そうか。そんなことがなぁ。苦労して来てんだなぁ」

「いえ、慣れましたから」

 

その言葉に嘘偽りは無い。

別にヴォルコとしても、ウォーレン家の復興など掲げてはいない。

ギャラルホルンが一度だした裁定を覆すとも思えないし、そこまでしてドロドロとした針のむしろのような経済圏には戻りたくも無かった。

 

「ああ〜…そうかぁ。すまねぇなぁ。事後承諾みたいになっちまって…」

 

ジャスレイは何やら気まずそうに言う。

 

「なんのことです?」

「ほら、さっきウチの技術者連中が調べてみたいってんで、その武装のデータ取りさせてもらったって…」

 

その言葉にヴォルコはなるほどと思い苦笑する。

そう言えばそんなことを言っていたなぁと。

ガンダムフレームの技術は未だにブラックボックスなところが多く、その兵装もまた現代からすればオーバーテクノロジーもいいところ。

まぁ作られた数の少なさからして、それは無理もない話。

テイワズの技術者からすれば、まさに垂涎の宝なのだろう。

まさか本来の持ち主が来るなどと夢にも思わなかったのも頷ける。

と言うか、普通はそんな主張は無視するか訝しむものなのだが。

 

「そのくらいなら別に問題はありませんよ」

「…そうか」

 

見るからに安堵した様子のジャスレイに、ああやはりこの人は変わらないなと、ヴォルコは心中で独りごちるのだった。

 

□□□□□□□□

 

いやぁ〜、まさか闇市で買った品が元とは言えギャラルホルン貴族の持ち物だったとは。

人生って、ホント何があるかわからんね。

って言うか、ガンダムフレームって結構あるのね。

覚えてる限りでも、バルバトスとグシオンと、キマリスとバエルくらいしか知らなかったからなぁ〜…。

おっちゃんビックリ。

 

「そんじゃ、後はここの技術者連中に任せておけば問題ねぇだろ」

「おじさま、ありがとう。お礼は必ず…」

 

お、リアリナちゃん律儀だねぇ。

 

「ま、今は自分たちのことだけ考えてな。貸しも借りも、まずは生きてこそなんだからよ」

 

いやホント、生き伸びるって大事よ。うん。

 




さて、いったい誰なのかなぁ〜?
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