どの道○される男   作:ガラクタ山のヌシ

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ジャスレイ式交渉術。


第33話

一行はブブリオに案内されるがまま、ジャスレイとジャンマルコ、リアリナとその護衛達はエレベーターに乗り込む。

はじめに要人とその護衛を先に行かせて、他は荷下ろしや、各自の当面の仕事をこなす。

そしてそれらは滞りなく進捗していた。

 

「少々お待ちを」

 

無事、エレベーターに乗り込むと、そう言ってジャスレイ達に背を向け、階数ボタンを押すブブリオには、もはや敵意や警戒心は見受けられない。

しかし歩行に杖を要し、且つ、細くか弱く小柄なはずの男の背の大きさは、長年の経験と実績よる風格のようなものすら感じられる。

これが、目の前の自然体の老人の体から発せられていると言う異常。

どれほど苛烈で、過酷な人生を送ればそうなれるのか、或いはなってしまうのか。同じ場に居合わせる若者たちにはとんと見当がつかず。  

少なくとも、それを見て彼を侮る気などは客人達には毛ほども芽生えなかった。

 

「…随分と、デケェもんを背負ってんだな」

 

それを分かってか、ジャスレイはしみじみとそう言う。

 

「えぇ…ですが、約束ですので」

 

ブブリオは、顔だけジャスレイに向けてそう答える。

それは誰とのものなのか、どんな内容のものなのか。ブブリオは語らない。

しかし、ジャスレイはなんとなく察していたようだ。

 

「いいねぇ。律儀もんは好きだぜ?」

「フフ…勧誘ですか?しかし、私はダディに恩義のある身…これからも、何があろうとも、この身はタントテンポ所属のままですよ」

「わぁってらぁ。だからリアリナ嬢を任せられるって話さ」

 

拗ねたようにそう言うジャスレイに、ブブリオはクスリと温和な笑みを浮かべる。

 

「…やはり、あなたは先代に似ておられる」

「あん?別に似ちゃあいねぇだろ?」

「…でも、ブブリオの言いたいことは何となくだけど分かる気がする」

 

話を聞いていたリアリナが、不意にそう言う。

 

「なぁに言ってんだ…少なくともオレぁアイツほど気配りが出来るわけでも、要領良くもねぇっての」

 

直ぐ側で、ライドが何かを言いたそうにムズムズしているが、隣にいるチャドが手でそれを制する。

ジャンマルコはそれを脇目に見て苦笑を浮かべ、一方のサンポとユハナの傭兵兄妹は気を張り過ぎず、かと言って緩め過ぎず、平静を保っている。

二人がそんな軽口を叩き合ううち、エレベーターは目的のフロアへと辿り着く。

 

「さぁ。皆さん到着しましたよ」

 

ジャスレイ達にはここからが本番。

例えブブリオとジャンマルコの印象が良くても、他の六幹部を納得させなければならないからだ。

この先はさながら魑魅魍魎蔓延る魔窟。

月の曲者供を統べる連中の総本山。

まだまだ気は抜けず、一筋縄ではいかないだろうことは想像に難く無い。

 

「待たせたねぇ」

 

部屋に入るなり、ブブリオは揃った面々に向かいそう言う。

いくつかの、様々な思惑のこもった視線が入り口の方を向き、やがて驚きの表情となる。

 

「邪魔ぁするぜ」

 

そう言うのは、他ならぬジャスレイ・ドノミコルスその人だ。

 

「本当に来たのか…」

「やはりブブリオの言ったダディの遺言は真実だったと…?」

 

ざわつく室内。

パン!パン!と、手を鳴らす音が聞こえた方を見ると、ジャンマルコが

 

「まずは、話し合おうや」

 

と、静かに言う。

 

「しかし、ロザーリオがまだ…」

「問題無いさ。彼には後から来てもらう」

 

ブブリオはそう言って、立ち上がって異議を唱える幹部に着席を促す。

 

そしてぽつんと空いている上座に、リアリナを案内し、護衛の二人がその左右に立つ。

 

「しかし、ブブリオの言っていたことが真実だとするならば…」

「ダディの遺志を蔑ろには出来はすまい」

「なら…」

 

リアリナが期待を込めた視線を幹部達に向ける。

 

「しかし、それはそれ。キチンとこちらのメリットを提示していただかねば…」

「そうだ。後ろ盾としての力の程を見せてもらってはじめて信頼は築かれるものだ」

 

その言葉を聞くやリアリナは歯噛みし、何か言いたそうにしていた。が、しかし、彼らの言い分もまた納得いくものだった。

そもそも、事前に聞いたブブリオの言葉とて彼らにしてみれば情報の裏も取れていない不確かなもの。

友情も親愛も、カネの前には脆い。

その事実を彼らは何度も目にしてきたから分かる。

故に、その判断は慎重過ぎるまでに慎重。

彼らとて、何も個人的なわがままだけでゴネているわけでは無い。

要は彼を信じても良いという、その保険が欲しいのだ。

無論、組織のまとめ役が取り急ぎ必要なのは誰の目にも明らかなのだが…。

一転二転、なかなか落とし所の見つからない話し合いに気落ちして見せる周囲とは変わり、ジャスレイは開始当初の態度を崩さない。

どころか、場が煮詰まった頃合いを見計らって発言する。

 

「ま、アンタらの懸念はもっともだな」

 

そう言って、ジャスレイは部下に「アレを」と言うと、そこにはとある紙が握られていた。

 

□□□□□□□□

 

「ま、リアリナ嬢にはもう一部を見てもらってはいるがね。それはオレが持って来た手土産の目録だ」

 

オレは、それを部下の一人に配布してもらって、幹部たちにも内容を確認してもらう。

内容はまぁ、モビルスーツの武装やパーツ類、木星圏で取れる資源にその他諸々ってとこかねぇ。

 

「!!…こ…こんなに…ですか!?」

「さ…流石アニキと言うか…」

 

うわぉ、急な態度変更。

そんなにケチに見えたんかねぇ?

 

「おう。何ならおかわりもあるぜ?」

「おっ、おかわり!?」

 

あ、腰抜かしてる。

 

「まぁ、それでも足りないってんなら仕方ねぇ。祝い金も用意していたが何、いらねぇってんなら…木星圏に持って帰るまでさ」

 

その後の結果は…まぁ考えるまでも無かったかな。

でもくっそ〜!!やっぱ予想した通りの出費になったなぁ〜!!

まっ、まぁ後で取り戻せるし…。

しかしまぁ、オレもちいっとばかし覚悟を決めた。

もうこうなったら完っっ璧にリアリナ嬢のバックアップこなして、立派に育つのを見届けて、後であの世のテッドに墓参りがてら自慢してやるもんね〜。

クックック…絶対羨ましがるぞ〜アイツ。

 




さ〜て、幹部達はどっちを選んだんでしょうねぇ?
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